Logic Pro 9 エフェクト

Logic Pro 9 エフェクト

Logic Pro 9 エフェクト Copyright © 2011 Apple Inc. 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アンプとペダル 11 Amp D esigner 31 Bass Amp 32 Guitar Amp P r o 39 Pedalboar d 第 2 章 57 ディレイエフェクト 58 Dela y D esigner 79 Echo 80 Sample Dela y 80 S tereo Dela y 83 Tap e Dela y 第 3 章 85 ディストーションエフェクト 86 Bitcrusher 87 Clip Distortion 89 Distortion エフェクト 90 Distortion II 91 O verdriv e 91 Phase Distortion 第 4 章 93 ダイナミックプロセッサ 94 ダイナミックプロセッサの種類 95 Adaptiv e Limiter 97 Compr essor 101 DeEsser 103 Ducker 105 E n veloper 107 Expander 3 目次 108 Limiter 109 Multipressor 112 Noise Gate 115 Silver Compressor 116 Silver Gate 116 Surround Compressor 第 5 章 121 イコライザ 122 Channel EQ 126 DJ EQ 127 Fat EQ 128 Linear Phase EQ 132 Match EQ 139 シングルバンド EQ 141 Silver EQ 第 6 章 143 フィルタエフェクト 143 AutoFilter 149 EVOC 20 Filterbank 155 EVOC 20 TrackOscillator 168 Fuzz-Wah 172 Spectral Gate 第 7 章 175 イメージプロセッサ 175 Binaural Post-Processing 176 Direction Mixer 180 Stereo Spread 第 8 章 183 メータリングツール 184 BPM Counter 184 Correlation Meter 185 Level Meter プラグイン 185 MultiMeter 191 サラウンド MultiMeter 197 Tuner 第 9 章 199 モジュレーションエフェクト 200 Chorus エフェクト 200 Ensemble エフェクト 202 Flanger エフェクト 203 Microphaser 203 Modulation Delay 206 Phaser エフェクト 207 RingShifter 4 目次 214 Rotor Cabinet エフェクト 216 Scanner Vibrato エフェクト 218 Spreader 219 Tremolo エフェクト 第 10 章 221 ピッチエフェクト 221 Pitch Correction エフェクト 226 Pitch Shifter II 227 Vocal Transformer 第 11 章 231 リバーブエフェクト プレート、デジタル・リバーブ・エフェクト、およびコンボリューションリバー ブ 232 232 AVerb 233 EnVerb 236 GoldVerb 239 PlatinumVerb 243 SilverVerb 第 12 章 245 Space Designer コンボリューションリバーブ 246 Space Designer インターフェイスを理解する 247 Space Designer の IR(インパルスレスポンス)パラメータを操作する 251 Space Designer のエンベロープおよび EQ パラメータを操作する 258 Space Designer のフィルタを操作する 260 Space Designer のグローバルパラメータを操作する 267 Space Designer を自動化する 第 13 章 269 スペシャルエフェクト/ユーティリティ 269 Denoiser 272 Enhance Timing 272 Exciter 274 Grooveshifter 275 Speech Enhancer 276 SubBass 第 14 章 279 ユーティリティとツール 279 Down Mixer 280 Gain プラグイン 281 I/O ユーティリティ 283 Multichannel Gain 283 Test Oscillator 目次 5 「Logic Pro」には、広範なデジタル信号処理(DSP)エフェクトおよびプロセッ サが備わっています。これらを使うと、リアルタイムで既存のオーディオ録音 データやソフトウェア音源、外部オーディオソースの音に色づけしたり、音色を 整えたりすることができます。日常的な作業で遭遇するオーディオの処理や操作 上のほぼすべての要求に対応できます。 最も一般的な処理オプションには、EQ、ダイナミックプロセッサ、モジュレー ション、ディストーション、リバーブ、ディレイなどがあります。 また、あまり一般的ではありませんが、アンプおよびスピーカーキャビネットの シミュレーションもあります。これにより、年代物あるいは現代的な各種のサウ ンド再生システムを通じて、音源などの信号を「演奏」することができます。ギ タリストやキーボードプレイヤーには、数々のクラシックなペダルエフェクトの エミュレーションも役立ちます。 さらに高度な機能として、正確な信号メーターとアナライザ、テスト・トーン・ ジェネレータ、ノイズ除去、ピッチ補正、イメージング、低音増強、タイミング 変更などを行うプロセッサやユーティリティがあります。 ご承知の通り、ここに含まれる多くのプロセッサとユーティリティは、実際には 「エフェクト」に分類されるわけではありません。しかし、スタジオで極めて有 益な働きをすることは間違いありません。 この序章では以下の内容について説明します: • 「Logic Pro」のエフェクトについて (ページ 8) • 「Logic Pro」のマニュアルについて (ページ 8) • 追加リソース (ページ 8) 7 Logic Pro のエフェクトの紹介 序章 「Logic Pro」のエフェクトについて すべてのエフェクト、プロセッサ、ユーティリティには操作が簡単になる直観的 なインターフェイスがあり、作業を迅速に進めることができます。必要なとき に、いつでも卓越した音質を確保できます。逆に、サウンドを劇的に変化させる 必要があるときには、極端な処理も可能です。すべてのエフェクトとプロセッサ は、CPU の使用効率が高くなるよう高度に最適化されています。 「Logic Pro」のマニュアルについて 「Logic Pro」には、搭載されているアプリケーションの詳細情報のほか、 Logic Express を使い始める際に役立つさまざまなマニュアルが同梱されていま す。 • 「Logic Pro ユーザーズマニュアル」: このマニュアルでは、「Logic Pro」を 使った録音システムの設定、音楽の構成、オーディオおよび MIDI ファイルの 編集、CD 作成のためのオーディオ出力の方法が総合的に説明されています。 • 「LogicProを使ってみる」: この冊子には、新しいユーザが実際に試すことが できるよう、「Logic Pro」の主な機能とタスクが大まかに紹介されています。 • 「Logic Pro コントロールサーフェスサポート」: このマニュアルには、 「Logic Pro」でのコントロールサーフェスの構成方法と使いかたが説明されて います。 • 「Logic Pro音源」: このマニュアルには、「Logic Pro」に含まれる強力な音源 コレクションの使いかたが総合的に説明されています。 • 「Logic Proエフェクト」: このマニュアルには、「Logic Pro」に含まれる強力 なエフェクトコレクションの使いかたが総合的に説明されています。 • 「LogicProApogeeハードウェアについて」: このマニュアルには、「LogicPro」 での Apogee ハードウェアの使いかたが説明されています。 • 「Impulse Response Utility ユーザーズマニュアル」: このマニュアルには、 「Logic Pro」のコンボリューションベースのリバーブエフェクトである 「Space Designer」用に、モノラル、ステレオ、サラウンドの独自のインパル スレスポンスを「Impulse ResponseUtility」を使って作成する方法が総合的に説 明されています。 追加リソース 「LogicPro」に付属のマニュアルと共に、さまざまなリソースを使って詳細を調 べることができます。 8 序章 Logic Pro のエフェクトの紹介 リリースノートと新機能 アプリケーションごとに、新機能と変更された機能についての詳細な資料が提供 されています。この資料には、以下の場所からアクセスできます: • アプリケーションの「ヘルプ」メニューにある「リリースノート」または「新 機能」リンクをクリックします。 「Logic Pro」の Web サイト 「LogicPro」の一般的な情報、アップデート情報、および最新情報については、 次の Web サイトを参照してください: • http://www.apple.com/jp/logicpro Apple のサービスとサポートの Web サイト すべてのApple製品についてのソフトウェア・アップデートや、よくある質問の 回答については、Appleの一般的なサポートWebページを参照してください。ま た、製品の仕様や参考資料だけでなく、Apple 製品および他社製品の技術情報も 入手できます。 • http://www.apple.com/jp/support/ 「LogicPro」についてのソフトウェア・アップデート、マニュアル、ディスカッ ションフォーラム、およびよくある質問の回答については、次の Web サイトを 参照してください: • http://www.apple.com/jp/support/logicpro 世界各国のすべての Apple 製品に関するディスカッションフォーラムについて は、次の Web サイトを参照してください。ディスカッションフォーラムでは、 回答の検索、質問の投稿、ほかのユーザからの質問に対する回答ができます: • https://discussionsjapan.apple.com/community/professional_applications/logic 序章 Logic Pro のエフェクトの紹介 9 「LogicPro」には、ギターおよびベースアンプとクラシックなペダルエフェクト が豊富に用意されています。これらのアンプとエフェクトを通じてライブ演奏し たり、オーディオおよびソフトウェア音源パートの録音データを処理したりする ことができます。 アンプモデルは、ビンテージや現代的な真空管アンプおよびソリッドステートア ンプを再現しています。リバーブ、トレモロ、ビブラートなどの内蔵エフェクト ユニットも再現されています。アンプに加え、各種スピーカーキャビネットもエ ミュレートされています。定番の組み合わせ以外にもさまざまな方法で使うこと ができ、アンプとの興味深い組み合わせを試すことができます。 また、ギタリストやキーボードディストに昔から人気の高い、数々の「クラシッ クな」フット・ペダル・エフェクト(ストンプボックス)もエミュレートされて います。実物と同様に、任意の順番で自由にペダルをつなげて、申し分のないサ ウンドを作り上げることができます。 この章では以下の内容について説明します: • Amp Designer (ページ 11) • Bass Amp (ページ 31) • Guitar Amp Pro (ページ 32) • Pedalboard (ページ 39) Amp Designer Amp Designer は 20 を超える有名なギターアンプのサウンドと、それらで使用さ れるスピーカーキャビネットをエミュレートします。構成済みの各モデルにはア ンプ、キャビネット、および EQ が組み合わされており、有名なギターサウンド を再現します。ギターの信号を直接処理できるので、これらのアンプシステムを 通じて演奏したギターのサウンドを再現することができます。AmpDesignerは、 サウンドのデザインや処理の実験にも利用できます。これは別の音源にも使うこ とができるため、たとえばギターアンプの音響特性をトランペットやボーカルの パートに適用することも可能です。 11 アンプとペダル 1 Amp Designer でエミュレートされているアンプ、キャビネット、EQ をさまざま に組み合わせれば、音色を劇的に変えることも微妙に変えることもできます。エ ミュレートされているアンプとキャビネットの信号は、仮想マイクを使って取り 込まれます。マイクは 3 種類の中から選ぶことができ、位置を変えられます。 また、AmpDesignerは、スプリングリバーブ、ビブラート、トレモロなどの従来 のギター・アンプ・エフェクトもエミュレートしています。 AmpDesignerのインターフェイスは、パラメータの種類で大きく4つのセクショ ンに分けられます。 Amp parameters Effects parameters Amp parameters Microphone parameters • モデルパラメータ: 「Model」ポップアップメニューは、下部の黒いバーの左 端にあります。これを使って、アンプ、キャビネット、EQ の種類、マイクの 種類が決められた構成済みモデルを選択します。AmpDesignerのモデルを選択 するを参照してください。黒いバーにあるモデル・カスタマイズ・パラメータ を使うと、アンプとキャビネットの種類を個別に選択できます。独自の Amp Designer コンボを作成するを参照してください。EQ の種類は、ノブセク ションの「Bass」、「Mids」、「Treble」ノブの上の「EQ」ポップアップメ ニューから選択します。Amp Designer のイコライザを使うを参照してくださ い。 • アンプパラメータ: ノブセクションの両端にあります。これらのパラメータ を使って、アンプの入力ゲイン、プレゼンス、出力レベルを設定します。Amp Designerのゲイン、プレゼンス、およびマスターコントロールを使うを参照し てください。 • エフェクトパラメータ: ノブセクションの中央にあります。これらのパラメー タを使うと、統合されたギターエフェクトを制御できます。AmpDesignerのエ フェクトパラメータを理解するを参照してください。 12 第 1 章 アンプとペダル • マイクパラメータ: 下部の黒いバーの右端の上方にあります。これらのパラ メータを使って、アンプとキャビネットのサウンドを取り込むマイクの種類と 位置を設定します。AmpDesignerのマイクパラメータを設定するを参照してく ださい。 インターフェイスを全面表示と縮小表示とで切り替えるには µ インターフェイスが全面表示されているときに「Cabinet」ポップアップメニュー と「Mic」ポップアップメニューの間の開閉用三角形をクリックすると、縮小表 示に切り替わります。全面表示に戻すには、縮小表示の「Output」フィールドの 横にある開閉用三角形をクリックします。縮小表示でも、マイクの選択と配置を 除くすべてのパラメータにアクセスできます。 Click here in full interface. Click here in small interface. Amp Designer のモデルを選択する Amp Designer のインターフェイス下部にある黒いバーの左端の「Model」ポップ アップメニューから、アンプ、キャビネット、EQ の種類、マイクの種類が決め られた構成済みモデルを選択できます。以下のカテゴリ内の複数の組み合わせか ら選択できます: • Tweed コンボ • クラシック・アメリカン・コンボ • ブリティッシュスタック • ブリティッシュコンボ 第 1 章 アンプとペダル 13 • ブリティッシュオルタナティブ • メタルスタック • その他のコンボ Tweed コンボ Tweed モデルは、1950 年代から 1960 年代はじめにかけてのブルース、ロック、 カントリーミュージックのサウンドに一役買った、アメリカンコンボをモデリン グしています。ゲインを上げるにつれ、穏やかなディストーションから騒々しい オーバードライブまで滑らかに変化する、温かみがあって複雑かつクリーンなサ ウンドが持ち味です。半世紀が経っても、Tweedは今の時代の音を作り出すこと ができるでしょう。現代のブティックアンプの多くは、Tweed式の電気回路を基 礎としています。 モデル 説明 クリーンからクランチまで自在に変化する 1 × 12 インチコン ボです。ブルースやロックに最適です。より厳密には、 「Treble」および「Presence」コントロールの値を7前後に設 定します。 Small Tweed Combo この 4 × 10 インチコンボはベーシスト用に設計されています が、ブルースやロックのギタリストにも使われました。 「Small Tweed Combo」よりも開放的で透明感のあるサウン ドですが、クランチなサウンドを作り出すこともできます。 Large Tweed Combo 10インチスピーカーを1個搭載した小型アンプです。数え切 れないほどのブルースおよびロックアーティストに使われま した。非常に迫力のあるサウンドです。Tweed コンボの持ち 味であるクリーントーンとクランチトーンを作り出すことが できます。 Mini Tweed Combo ヒント: Tweed コンボは、演奏の強弱に見事に反応します。ノブを調整して歪ん だ音を作ってから、ギターの音量ノブのレベルを下げてよりクリーンなトーンを 作ります。いよいよ激しいソロに差し掛かったら、ギターの音量ノブを上げてく ださい。 クラシック・アメリカン・コンボ Blackface、Brownface、Silverface の各モデルは、1960 年代中期のアメリカンコン ボに着想を得ています。ラウドでクリーンな音になる傾向があります。低音部が タイトで、歪みは比較的抑えられています。クリーントーンのロック、クラシッ クな R & B、サーフミュージック、トゥワンギーなカントリー、ジャズなど、音 をはっきりとさせる必要のあるスタイルに適しています。 モデル 説明 優しく、バランスの良いトーンの 4 × 10 インチコンボです。 ロック、サーフ、R & B の演奏者に好まれました。リバーブ が強くかかったゴージャスなコードや、非常に派手なソロに 適しています。 Large Blackface Combo 14 第 1 章 アンプとペダル モデル 説明 ラウドで非常にクリーンなトーンの 2 × 12 インチコンボで す。パーカッシブで歯切れの良いアタックは、ファンクや R & B、複雑なコードワークに適しています。オーバードライ ブをかけるとクランチになりますが、ほとんどの演奏者はク リーンなトーンを好みます。 Silverface Combo 驚くほどにローエンドの影響が大きい、明るく開放的な響き の 1 × 10 インチコンボです。ややオーバードライブ気味の クリーンなトーンを得意とします。 Mini Blackface Combo 滑らかで豊かな響きの 1 × 12 インチコンボです。細部のレ ベルは正確さが保たれています。 Small Brownface Combo トップエンドは明るく、ローエンドはタイトで明確な 1 × 15 インチコンボです。ブルースやロックの演奏者に好まれてい ます。 Blues Blaster Combo ヒント: これらのアンプを使うとクリーンでタイトな音になりがちですが、 Pedalboardのディストーションストンプボックスを使えば、トレブルは鋭くロー エンドは非常に力強い、鮮明なクランチサウンドを作り出すことができます。 ディストーションペダルおよびPedalboardを参照してください。 ブリティッシュスタック ブリティッシュ・スタック・モデルは、特徴的な 4 × 12 インチキャビネットと の組み合わせでヘビーロックのサウンドを大いに決定づけた、50および100ワッ トのアンプヘッドをモデリングしています。これらのアンプは、ゲインを中程度 に設定すると、厚みのあるコードやリフに最適です。ゲインを上げると、叙情的 なソロのトーンや、パワフルなリズム・ギター・パートに使うことができます。 音のスペクトラム上の複雑なピークとディップによって、激しいディストーショ ンをかけても明るく魅力的なトーンが保たれます。 モデル 説明 パワフルかつ耳に心地よい歪みで有名になった、1960年代後 期の 50 ワットアンプの音が再現されます。ゲインを最大に しても、音の透明感が保たれます。40 年が経ってもなお、 ロックのトーンの定番です。 Vintage British Stack 「Vintage British」ヘッドを受け継ぐ、1980 年代から 1990 年 代にかけてのモデルです。当時のハードロックやメタルのス タイルに最適化されました。「Vintage British」アンプに比 べ、低域はより深く、高域はより明るく、中域はより「ス クープ」が効いています。 Modern British Stack 設計側の意図よりも低い電圧で使うことで、ブリティッシュ ヘッド独自のトーンを引き出すことができます。生み出され る「ブラウン」サウンド(通常よりも歪みがあり、緩やかな トーンであることが多い)によって、面白い具合にギターの 音の厚みが増します。 Brown Stack 第 1 章 アンプとペダル 15 モデル 説明 この 2 × 12 インチコンボは、ブリティッシュヘッドよりもク リーンな、ラウドでアグレッシブなトーンを生み出します。 ゲインを高めに設定すると、厚みのある歪んだトーンになり ます。 Blues Blaster Combo ヒント: ブリティッシュヘッドに 4 × 12 インチキャビネットを組み合わせ、レベ ルを高くして良いリフを演奏すれば、ほとんどの場合失敗はないでしょう。ただ し、お決まりの型を壊すことをおそれないでください。これらのヘッドは、小型 のキャビネットを通すとすばらしい音になり、ゲインを低めに設定するとクリー ンな音になります。「British Blues Combo」の音がクリーンすぎる場合は、 Pedalboard の Hi Drive ストンプボックスと組み合わせてアグレッシブなブルース トーンを作ったり、Candy Fuzz ストンプボックスと組み合わせて激しいロック トーンを作ったりすることができます。ディストーションペダルおよびPedalboard を参照してください。 ブリティッシュコンボ ブリティッシュコンボには、1960 年代のブリティッシュロックおよびポップス と切り離しては語れない、トレブルの効いた勢いのあるサウンドが取り込まれて います。これらのアンプはハイエンドのレスポンスに特徴がありますが、心地よ い歪みと滑らかで自然なコンプレッションによって、耳障りになることはほとん どありません。 モデル 説明 ブリティッシュインベイジョンの動力源となった 1960 年代 初期のアンプに基づく 2 × 12 インチコンボです。繰り返す コードや突き刺すようなソロに最適です。 British Combo 「BritishCombo」の半分のパワーの1×12インチコンボです。 やや暗めで、開放感の少ないトーンになります。 Small British Combo オリジナルの 1960 年代のサウンドを現代的に解釈した 2 × 12 インチコンボです。ほかのブリティッシュコンボに比べ、低 域は強く、高域は穏やかで、より厚いトーンです。 Boutique British Combo ヒント: ブリティッシュコンボの場合、ほかの種類のアンプでは耳障りになるほ どに「Treble」および「Presence」ノブを高く設定すると、すばらしいサウンド が得られることがあります。 16 第 1 章 アンプとペダル ブリティッシュオルタナティブ 「Sunshine」モデルの基となる 1960 年代後期のアンプヘッドとコンボは中域周 波数に深みがあり、ラウドでアグレッシブです。単音のソロやパワーコードに適 しているだけでなく、音域の広いオープンコードにも適しています。このこと は、1990 年代の「ブリットポップ」バンドにこれらのアンプが受け入れられた 理由の 1 つです。「Stadium」アンプは、つぶれたディストーションになること なく、大音量で演奏できるという点で評判です。ゲインを最大に設定しても、歯 切れの良いトレブルと明快な音が保たれます。 モデル 説明 4 × 12 インチキャビネットと組み合わさった、力強い音の ヘッドです。パワフルなポップロックのコードに適していま す。 Sunshine Stack 「ビッグアンプ」サウンドとして知られる現代のアンプに基 づく 1 × 12 インチコンボです。「Sunshine Stack」ヘッドより も明るい、1960年代のブリティッシュコンボ風のサウンドで す。 Small Sunshine Combo 1970年代のアリーナ・ロック・バンドでよく使われた、クラ シックなヘッドと 4 × 12 インチキャビネットという構成で す。Amp Designer のその他の 4 × 12 インチスタックに比べ てクリーンなトーンですが、深みがあり印象的です。力強さ と鮮明さを求める場合に適しています。 Stadium Stack 現代のアンプに基づく 2 × 12 インチコンボです。「Stadium Stack」よりも、やや滑らかでまろやかなトーンです。 Stadium Combo ヒント: 「SunshineStack」のトーンは暗く感じられることもありますが、「Treble」 ノブを高めに設定すると音の開放感が増します。「Small Sunshine Combo」はデ フォルトの 1 × 12 インチキャビネットでも良い音を出せますが、4 × 12 インチ キャビネットと組み合わせても威力を発揮します。「Stadium」アンプは音をゆっ くりと歪ませることができるので、有名なユーザのほとんどはアグレッシブな ファズペダルと一緒に使っています。PedalboardのCandy FuzzまたはFuzzMachine ストンプボックスと組み合わせてみてください。ディストーションペダルおよび Pedalboardを参照してください。 メタルスタック メタル・スタック・モデルは、現代のハードロックやメタルミュージックに量感 を与える、パワフルで非常にゲインの高いアンプヘッドをモデリングしていま す。いずれも 4×12 インチキャビネットと組み合わされています。強い歪みから 猛烈な歪みにいたるトーンが特徴です。強力な低域、刃のごとく鋭い高域、そし て重厚なサスティンを求めるのであれば、まずこれらのモデルを検討してくださ い。 第 1 章 アンプとペダル 17 モデル 説明 ゲインの非常に高いパワフルなアンプです。ヘビーロックや メタルに最適です。「Mids」ノブを使って、最適なスクープ またはブーストの量を設定します。 Modern American Stack パワフルな高ゲインアンプですが、このモデルはゲイン設定 を滑らかに変更できます。また、すばらしく自然なコンプ レッションです。速弾きのソロや、2 音か 3 音のコードに適 しています。 High Octane Stack アグレッシブな音のアンプです。特にゲインを高めに設定す ると、とげとげしい高域とノイジーな倍音が得られます。 ミックスの切れ味を良くしなければならないときには、 「Turbo Stack」を試してみてください。 Turbo Stack ヒント: 「Turbo Stack」をディストーションペダルやファズペダルと組み合わせ ると、かえってアンプの鋭さが抑えられてしまう場合があります。リフを強く印 象付けるには、ドライサウンドにしておく方が無難です。 その他のコンボ このカテゴリのコンボおよびユーティリティモデルは、幅広い音楽スタイルに使 うことのできる多用途アンプです。 モデル 説明 1980 年代と 1990 年代のブティックコンボに基づく 1 × 12 イ ンチコンボです。複数のゲインステージを使って、滑らかで サスティンの効いた歪みを生み出します。力強く明るいク リーンなサウンドは損なわれません。 Studio Combo 1960年代の優れたコンボのサウンドを組み合わせた現代の高 性能アンプから着想を得た、2 × 12 インチコンボです。きら めくクリーンなトーンとクランチトーンを得意とします。昔 ながらの雰囲気の中に、現代のアンプの歯切れのいい高域と 力強い低域を求める場合に適しています。 Boutique Retro Combo 1960年代にアメリカの百貨店で販売されていた安価なアンプ に基づく 1 × 8 インチコンボです。限られた機能や安っぽい 作りをよそに、数多くのロック、ブルース、パンクの演奏者 がひそかにこうしたアンプを使っています。スピーカーが小 さいにもかかわらず、クリーンな音は温かく、歪んだ音は厚 くて満足のいく響きです。 Pawnshop Combo 名前の通り、トーンを変更しないプリアンプステージです。 「Transparent Preamp」を有効にするには、「Model」ポップ アップメニューではなく「Amp」ポップアップメニューを使 うという点に注意してください。 Transparent Preamp 18 第 1 章 アンプとペダル ヒント: 「Studio Combo」アンプをいずれかの 4 × 12 インチキャビネットと組み 合わせて、より激しいサウンドを試してみてください。「Boutique Retro」アン プのトーンコントロールは非常に感度が良く、トーンに無数の陰影をつけること ができます。極端な設定でもすばらしい結果が得られます。「PawnshopCombo」 アンプを Pedalboard の Hi Drive または Candy Fuzz ストンプボックスと組み合わせ ると、1960 年代後期のハードロックのトーンをエミュレートできます。ディス トーションペダルおよびPedalboardを参照してください。 独自の Amp Designer コンボを作成する デフォルトのモデルを使うこともできますが、インターフェイス下部の黒いバー にある「Amp」、「Cabinet」、および「Mic」ポップアップメニューを使って異 なるアンプやキャビネットなどを独自に組み合わせることもできます。ノブセク ションの左側にある「EQ」または「Custom EQ」という文字をクリックすると、 「EQ」ポップアップメニューにアクセスできます。 メモ: 独自の組み合わせのアンプコンボを作成したら、「Settings」メニューを 使ってこのコンボを設定ファイルとして保存できます。この設定ファイルには、 パラメータの変更内容も含まれます。 Model pop-up menu Amp pop-up menu Cabinet pop-up menu Mic pop-up menu EQ pop-up menu Amp Designer モデルの作成方法については、以下のセクションで説明していま す: • Amp Designer のアンプを選択する • Amp Designer のキャビネットを選択する • Amp Designer のイコライザを使う • Amp Designer のマイクパラメータを設定する 第 1 章 アンプとペダル 19 Amp Designer のアンプを選択する Amp Designer インターフェイス下部の黒いバーにある「Amp」ポップアップメ ニューから、アンプのモデルを選択できます。カテゴリごとの各アンプの特徴に ついて詳しくは、以下の章を参照してください: • Tweed コンボ • クラシック・アメリカン・コンボ • ブリティッシュスタック • ブリティッシュコンボ • ブリティッシュオルタナティブ • メタルスタック • その他のコンボ Amp Designer のキャビネットを選択する キャビネットは、ギターサウンドの特徴に大きく影響します(Amp Designer の キャビネット参照表を参照)。何十年も支持を得ている特定のアンプとキャビ ネットの組み合わせもありますが、新鮮なトーンを作り出すには、こうした組み 合わせから離れてみることが有効です。たとえば、ほとんどの演奏者は無意識に ブリティッシュヘッドを 4 × 12 インチキャビネットと組み合わせます。 AmpDesignerでは、強力なヘッドで小型スピーカーを鳴らしたり、小型アンプと 4 × 12 インチキャビネットを組み合わせたりすることができます。 手当たりしだい組み合わせても問題はありません。ただし、キャビネットのサウ ンドを決める変数に関心を持ってみると、従来とは異なるアンプとキャビネット の組み合わせについて見当がつくようになります。考慮するべき要因は次の通り です: コンボかスタックか コンボアンプは、単一の筐体にアンプとスピーカーの両方を搭載しています。通 常はオープンバックなので、音が複数の方向に響きます。その結果、明るく、高 域が軽やかで、全体として広々とした感じの「開放的な」サウンドが得られま す。スタック(「積み重ねられた」)アンプは、アンプヘッドと、別のキャビ ネットに搭載されたスピーカーで構成されます。通常、これらのキャビネットは クローズドバックなので、きっちりと的を絞った「光線」のように音が前方向に 投げ出されます。クローズドバックキャビネットではオープンバックキャビネッ トよりもパワフルな音になり、ハイエンドの透明感が損なわれる代わりにローエ ンドのレスポンスがタイトなことが多くなります。 20 第 1 章 アンプとペダル 新しいスピーカーか古いスピーカーか ビンテージのキャビネットに基づくAmpDesignerのモデルには、年代物のスピー カーの特徴が取り込まれています。これらは新しいスピーカーに比べると若干締 まりがなく切れ味が鈍いですが、多くの演奏者がその滑らかさと音楽性を好んで います。新しいキャビネットに基づくサウンドは、より歯切れ良く、鋭くなる傾 向があります。 大型スピーカーか小型スピーカーか 大型のスピーカーが大きい音を出すとは限りません。事実、史上最も人気のある ベース・ギター・キャビネットでは、たった8インチの小型スピーカーが使われ ています。4 × 12 インチキャビネットよりも、10 インチスピーカーを使った方が 深くて豊かなトーンが得られる可能性は十分にあります。いろいろなサイズを試 して、自分の音楽に最適なものを選択してください。 単一のスピーカーか複数のスピーカーか ギタリストは複数のスピーカーが搭載されたキャビネットを使うことがありま す。これは音量を上げるだけのためではありません。スピーカー間で位相が相殺 されることで音の陰影が増し、興味深いトーンになるのです。たとえば多くの 「クラシックロック」サウンドでは、4 × 12 インチキャビネット内のこのスピー カー間の相互作用による音のピークとディップを処理しなければなりません。 Amp Designer のキャビネット参照表 Amp Designer インターフェイス下部の黒いバーにある「Cabinet」ポップアップ メニューから、キャビネットのモデルを選択できます。AmpDesignerで使用でき る各キャビネットモデルの特徴を以下の表にまとめます。 キャビネット 説明 1950 年代の 12 インチのオープンバックキャビネットです。 温かみがあり、滑らかなトーンです。 Tweed 1 x 12 4 × 10 インチのオープンバックキャビネットです。元はベー シスト用に製作されましたが、きらめくようなプレゼンスが ギタリストに好まれています。本格的な 1950 年代後期のサ ウンドです。 Tweed 4 x 10 1950 年代の、10 インチの単体のオープンバック・コンボ・ アンプ・キャビネットです。滑らかなサウンドです。 Tweed 1 x 10 10インチスピーカーを4つ搭載した、クラシックなオープン バックキャビネットです。「Tweed4x10」よりも深みがあっ て暗いトーンです。 Blackface 4 x 10 1960年代のオープンバックモデルです。ローエンドにすばら しい迫力があります。 Silverface 2 x 12 1960年代のオープンバックキャビネットです。きらめくよう な高域と、驚くほど味わいのある中低域になっています。 Blackface 1 x 10 バランスの良い 1960 年代のオープンバックキャビネットで す。滑らかで豊かなサウンドですが、透明感もあります。 Brownface 1 x 12 第 1 章 アンプとペダル 21 キャビネット 説明 1960 年代初期のオープンバックキャビネットです。 AmpDesignerでエミュレートされたもののうち、最も大きな スピーカーが搭載されています。高域は明るく穏やかで、低 域はタイトで絞り込まれています。 Brownface 1 x15 この 1960 年代後期のクローズドバックキャビネットはクラ シックロックの代名詞です。4つの30ワットスピーカー間で 複雑に位相が相殺されるため、大きくて厚いながらも明るく 陽気なトーンです。 Vintage British 4 x 12 クローズドバックの 4 × 12 インチキャビネットです。 「Vintage British 4 x 12」に比べて明るく、ローエンドが優れ ており、中域はあまり強調されません。 Modern British 4 x 12 4 × 12 インチのクローズドバックキャビネットです。ボトム エンドがすばらしく、中域は複雑です。 Brown 4 x 12 明るい音のオープンバックキャビネットです。低域はソリッ ドで、高域はゲインを高めに設定しても輪郭がぼやけませ ん。 British Blues 2 x 12 豊かな響きの、クローズドバックの4 × 12インチキャビネッ トです。「British 4 x 12」インチキャビネットよりも、中低域 の密度が濃くなっています。 Modern American 4 x 12 コンパクトで鳴りのよいオープンバックキャビネットです。 豊かな中域で、きらめくような高域を備えています。 Studio 1 x 12 1960年代中期のオープンバックキャビネットです。開放的で 滑らかなトーンです。 British 2 x 12 小型のオープンバックキャビネットです。高域は歯切れ良 く、中低域は透明感があります。 British 1 x 12 「British 2 x 12」に基づく 2 × 12 インチキャビネットです。 中域がより豊かで、高域はより鮮明です。 Boutique British 2 x 12 4 × 12 インチのクローズドバックキャビネットです。中域が 厚く豊かです。 Sunshine 4 x 12 12インチの単体のオープンバック・コンボ・アンプです。優 しい高域と透明な中域で明るく陽気なサウンドです。 Sunshine 1 x 12 タイトで華やかな、ブリティッシュ・クローズドバック・ キャビネットです。中高域のピークに迫力があります。 Stadium 4 x 12 バランスの良い現代のブリティッシュ・オープンバック・ キャビネットです。「Blackface 4 x 10」の厚みと「British 2 x 12」の輝きが合わさった音です。 Stadium 2 x 12 「British 2 x 12」に基づく 2 × 12 インチキャビネットです。 中域がより豊かで開放感があり、高域はより鮮明です。 Boutique Retro 2 x 12 現代のヨーロピアン・クローズドバック・キャビネットで す。低域と高域が強く、中域は削られており、メタルやヘ ビーロックに適しています。 High Octane 4 x 12 22 第 1 章 アンプとペダル キャビネット 説明 現代のヨーロピアン・クローズドバック・キャビネットで す。中域は大きく削られ、低域が強く、高域は非常に強いで す。メタルやヘビーロックに適しています。 Turbo 4 x 12 8 インチスピーカーを 1 個搭載したキャビネットです。ロー エンドにすばらしい迫力があります。 Pawnshop 1 x 8 このオプションを使うと、スピーカー・エミュレーション・ セクションがバイパスされます。 Direct ヒント: 創造的なサウンド設計のためには、「Direct」オプションを選択し、 Amp Designer の後に Space Designer をインサートスロットに配置します。続い て、Space Designer の「うねった」スピーカー・インパルス・レスポンスを読み 込みます。 Amp Designer のイコライザを使う ハードウェアのアンプのトーンコントロールは、モデルと製造元によって異なり ます。たとえば、2つのモデルで、トレブルノブで操作できる周波数が異なって いたり、カットやブーストのレベルが異なっていたりということは十分にあり得 ます。一部のイコライザ(EQ)セクションではギター信号がほかよりも増幅さ れ、アンプでの歪ませ方に影響します。 Amp Designer には EQ タイプが複数あり、ハードウェア・アンプのこうした違い を反映させることができます。どの EQ タイプを選択しても、低域、中域、高域 という同じコントロールセットがあります。EQ タイプを切り替えると、これら のコントロールの動作が大きく変化します。 特定のアンプとの従来の組み合わせ以外から EQ タイプを選択すると、通常は音 が大幅に変化します。それも、良い具合に変化するとは限りません。特定のアン プサウンドを上手く再現できるよう、ハードウェア・アンプと同様に、 Amp Designer の EQ はキャリブレーションされています。別の EQ タイプを選択 すると、音が薄くなったり、気持ちの悪い歪みかたをする場合もあります。Amp Designer のイコライザタイプ参照表を参照してください。 第 1 章 アンプとペダル 23 こうした不快なサウンドが発生する可能性はありますが、アンプと EQ をさまざ まに組み合わせてみてください。多くの場合、すばらしいサウンドが生まれま す。 Bass, Mids, and Treble knobs EQ pop-up menu EQ パラメータには、「EQ」ポップアップメニューと、「Bass」、「Mids」、 「Treble」の各ノブがあります。これらのパラメータは、ノブセクションの左端 の方に並んでいます。 • 「EQ」ポップアップメニュー: 「Bass」、「Mids」、および「Treble」ノブの 上にある「EQ」または「CUSTOM EQ」という文字をクリックすると、「EQ」 ポップアップメニューが開きます。このメニューでは、「British Bright」、 「Vintage」、「U.S. Classic」、「Modern」、および「Boutique」EQ モデルを選 択できます。EQモデルごとに固有の音質があり、「Bass」、「Mids」、および 「Treble」ノブの応答方法に影響します。Amp Designer のイコライザタイプ参 照表を参照してください。 • 「Bass」ノブ、「Mids」ノブ、「Treble」ノブ: EQ モデルの周波数域を調整し ます。実物のギターアンプにあるトーンコントロールのノブに似ています。こ れらのノブの動作と応答は、選択中の EQ モデルによって変化します。 Amp Designer のイコライザタイプ参照表 ノブセクションの「Bass」、「Mids」、および「Treble」ノブの上の「EQ」また は「CUSTOMEQ」という文字をクリックすると、イコライザの種類を選択できま す。Amp Designer で使用できる各 EQ タイプの特徴を以下の表にまとめます。 EQ タイプ 説明 1960年代のブリティッシュ・コンボ・アンプに着想を得てい ます。ラウドでアグレッシブです。「Vintage」 EQ 以上に力 強い高域を備えています。この EQ は、音を過度にクリーン にせずに高域をより鮮明にしたい場合に便利です。 British Bright 24 第 1 章 アンプとペダル EQ タイプ 説明 よく似た回路が使われていた「American Tweed」式アンプと ビンテージのブリティッシュ・スタック・アンプの EQ レス ポンスをエミュレートします。ラウドで、やや歪みがちで す。この EQ は、サウンドを粗くしたい場合に便利です。 Vintage 「American Blackface」式アンプのEQ回路を継承しています。 「Vintage」EQ に比べて忠実度が高く、低域はよりタイトで 高域は歯切れが良くなっています。この EQ は、サウンドを 明るくして歪みを減らしたい場合に便利です。 U.S. Classic 1980 年代から 1990 年代にかけて人気のあったデジタル EQ ユ ニットに基づいています。この EQ は、当時のロックやメタ ルのスタイルに合わせて、過剰なほどの高域と唸る低域、削 られた中域を作り上げる場合に便利です。 Modern 「レトロモダン」なブティックアンプのトーンセクションを 再現しています。正確なEQ調整を得意としますが、ビンテー ジアンプと一緒に使うと、望むトーンよりもクリーンになり 過ぎることがあります。この EQ は、よりクリーンで明るい サウンドを求める場合に適しています。 Boutique Amp Designer のゲイン、プレゼンス、およびマスターコントロー ルを使う アンプパラメータには、入力ゲイン、プレゼンス、およびマスター出力用のコン トロールがあります。ノブセクションの左端に「Gain」ノブがあり、右端に 「Presence」ノブと「Master」ノブがあります。 Gain Presence Master • 「Gain」ノブ: 入力信号に適用するプリアンプ処理の度合いを設定します。 このコントロールはアンプモデルによって作用のしかたが異なります。たとえ ば、ブリティッシュ系アンプを使用している場合は、「Gain」設定を最大にす ると力強く張りの良いサウンドを出すことができます。ビンテージまたは現代 のブリティッシュヘッドを使用している場合は、同様の「Gain」設定でも強い ディストーションが生じるため、リードパートのソロに適しています。 • 「Presence」ノブ: 「Treble」コントロールの範囲を上回る高周波数の範囲を 調整します。「Presence」パラメータは、出力(「Master」)段階にのみ影響 します。 第 1 章 アンプとペダル 25 • 「Master」ノブ: アンプのキャビネットへの出力音量を設定します。通常、真 空管アンプでは「Master」レベルを上げると、やや厚みのある飽和したサウン ドとなり、信号がさらに歪んで力強く(音量が大きく)なります。「Master」 を高く設定すると出力が極端に大きくなり、スピーカーや聴覚を損なうおそれ があります。「Master」レベルは徐々に上げるようにしてください。 Amp Designer の最終的な出力レベルは、インターフェイスの右下隅にある 「Output」スライダで設定します。AmpDesignerの出力レベルを設定するを参 照してください。 Amp Designer のエフェクトパラメータを理解する エフェクトパラメータにはトレモロ、ビブラート、リバーブがあり、多くのアン プに見られるプロセッサをエミュレートしています。これらのコントロールはノ ブセクションの中央にあります。 右側のスイッチを使って、トレモロ(「TREM」。サウンドの振幅または音量を モジュレート)またはビブラート(「VIB」。ピッチをモジュレート)のどちら か一方を選択できます。 リバーブは中央のスイッチで操作します。トレモロとビブラートのいずれかに追 加することも、単独で使うこともできます。 メモ: 信号経路内では、「Presence」および「Master」コントロールよりも前に位 置するエフェクトセクションが、プリアンプされた(マスター前)信号を受け取 ります。 リバーブ、トレモロ、ビブラートについては、以下のセクションで説明していま す: • Amp Designer のリバーブエフェクトを使う • Amp Designer のトレモロエフェクトとビブラートエフェクトを使う 26 第 1 章 アンプとペダル Amp Designer のリバーブエフェクトを使う AmpDesignerでは常にリバーブを使うことができます。リバーブ機能のないアン プに基づくモデルを使っている場合でも使えます。リバーブは「On/Off」スイッ チと中央の「Level」ノブで操作します。「Reverb」ポップアップメニューはその 上にあります。リバーブはトレモロまたはビブラートエフェクトのいずれかに追 加することも、単独で使うこともできます。 • 「On/Off」スイッチ: リバーブエフェクトを有効または無効にします。 • 「Reverb」ポップアップメニュー: 「Reverb」という文字をクリックして、ポッ プアップメニューからリバーブタイプを選択します。「Vintage Spring」、 「Simple Spring」、「Mellow Spring」、「Bright Spring」、「Dark Spring」、 「Resonant Spring」、「Boutique Spring」、「Sweet Reverb」、「Rich Reverb」、 「Warm Reverb」の中から選択できます。これらのリバーブタイプの詳細につ いては、Amp Designer のリバーブタイプ参照表を参照してください。 • 「Level」ノブ: プリアンプ処理された信号にかけるリバーブの量を設定しま す。 Amp Designer のリバーブタイプ参照表 アンプセクション中央にある「Reverb」ラベルをクリックすると、リバーブの種 類を選択できます。AmpDesignerで使用できる各リバーブタイプの特徴を以下の 表にまとめます。 リバーブタイプ 説明 1960年代初期以降、コンボアンプのリバーブを大きく決定づ けた、明るく派手なサウンドです。 Vintage Spring Simple Spring より暗く、より繊細なスプリングサウンドです。 Mellow Spring とても暗く、やや忠実度の低いスプリングサウンドです。 ビンテージのスプリングの輝きを一部に残していますが、 サーフ風の跳ね返りは少なくなっています。 Bright Spring 悲しげな音のスプリングです。「Mellow Spring」よりも抑制 がきいています。 Dark Spring もう 1 つの 1960 年代風スプリングです。中域が少し歪みを 加えて強調されています。 Resonant Spring クラシックな「Vintage Spring」の現代版です。低域と中域の トーンがより豊かです。 Boutique Spring 第 1 章 アンプとペダル 27 リバーブタイプ 説明 低域が豊かで高域が抑えられた、滑らかで現代的なリバーブ です。 Sweet Reverb Rich Reverb 力強く、バランスの良い現代的なリバーブです。 中低域が豊かで高域は控え目な、豊潤で現代的なリバーブで す。 Warm Reverb Amp Designer のトレモロエフェクトとビブラートエフェクトを使 う トレモロとビブラートは、ノブセクション右側のエフェクトセクションにある数 個のスイッチと2つのノブで操作します。トレモロはサウンドの振幅または音量 をモジュレートし、ビブラートはピッチをモジュレートします。 • 「On/Off」スイッチ: トレモロまたはビブラートエフェクトを有効または無効 にします。 • 「Trem/Vib」スイッチ: トレモロまたはビブラートのどちらかを選択します。 • 「Depth」ノブ: モジュレーション(トレモロまたはビブラート)の強度を設 定します。 • 「Speed」ノブ: モジュレーションの速度をヘルツ単位で設定します。低めに 設定すると、滑らかで浮遊感のあるサウンドになります。高めに設定すると、 回転翼の音のような効果を生み出します。 • 「Sync/Free」スイッチ: スイッチが「Sync」に設定されている場合は、モジュ レーションの速度がホストアプリケーションのテンポと同期します。「Speed」 ノブを使うと、さまざまな小節、拍、および音符の値(8分音符、16分音符な ど。3 連符や付点音符も含まれます)を選択できます。スイッチが「Free」に 設定されている場合は、「Speed」ノブでモジュレーションの速度の値を設定 できます。 28 第 1 章 アンプとペダル Amp Designer のマイクパラメータを設定する AmpDesignerでは、仮想マイクを3種類のうちから選択することができます。一 連の音作りに関わるその他のコンポーネントと同様、どれを選択するかによって 結果が大きく変わります。キャビネットを選択した後は、エミュレートするマイ クのタイプと、キャビネットに対するマイクの位置を指定できます。「Mic」ポッ プアップメニューは、下部の黒いバーの右端近くにあります。「Mic」ポップアッ プメニューの上の領域にマウスを移動すると、スピーカーを調整するためのグラ フィックが表示されます。 メモ: このセクションで説明するパラメータは、Amp Designer のインターフェイ スを全面表示している場合にのみアクセスできます。縮小表示になっている場合 は、インターフェイス右下端の「Output」フィールドの右側にある開閉用三角形 をクリックすれば全面表示に戻ります。 Move your mouse above the Mic pop-up menu to display the speaker-adjustment graphic. • キャビネットおよびスピーカー調整グラフィック: デフォルトでは、マイク がスピーカーコーンの中央(軸上)に配置されます。この配置の場合、より豊 かで力強いサウンドを生み出せるため、ブルースやジャズのギターの音に適し ています。スピーカーの端にマイクを配置する(軸外)と、明るく線の細い トーンになります。これは、切れのあるロックやR&Bのギターパートに適し ています。スピーカーにマイクを近づけると、低音のレスポンスが強調されま す。 キャビネットの上にマイクの位置が表示され、スピーカー調整グラフィックに 白い点で表されます。白い点をドラッグすると、キャビネットに対するマイク の位置と距離が変化します。配置はニアフィールドの位置に限られます。 • 「Mic」ポップアップメニュー: ポップアップメニューからマイクのモデルを 1 つ選択できます: • Condenser: 高性能のドイツ製スタジオ用コンデンサマイクのサウンドがエ ミュレートされます。コンデンサマイクのサウンドは、きめ細かく、透明 で、バランスも取れています。 第 1 章 アンプとペダル 29 • Dynamic: カージオイド型指向性を持つ一般的なアメリカ製ダイナミックマ イクのサウンドがエミュレートされます。このマイクのサウンドは、 「Condenser」モデルと比べると、より明るくて切れがあります。中域はブー ストされていますが中低域の周波数がそれほど強調されていないため、ロッ クギターの音をマイキングするのに適しています。これは、ミックス内の他 のトラックからギターパートを際立たせたい場合に特に便利です。 • Ribbon: リボンマイクのサウンドがエミュレートされます。リボンマイクは ダイナミックマイクの一種です。そのサウンドはよく、明るく鋭いながらも 温かみがあると言われます。ロックや、クランチなトーン、クリーンなトー ンに適しています。 ヒント: 複数のマイクタイプを組み合わせると面白いサウンドになります。ギ ターのトラックを複製し、両方のトラックに Amp Designer を挿入します。違 うタイプのマイクを各 Amp Designer インスタンスで選択し、そのほかのパラ メータ設定はすべて同一のままにして、トラックの信号レベルを設定したらサ ウンドを聴きます。 Amp Designer の出力レベルを設定する 「Output」スライダ(インターフェイスを縮小表示している場合は「Output」 フィールド)は、AmpDesignerのインターフェイスの右下隅にあります。これは AmpDesignerの最終レベルコントロールとして機能し、「スピーカー裏の」音量 コントロールのようなもので、チャンネルストリップの次のインサートスロット や、直接チャンネルストリップ出力に送られる出力のレベルを設定するのに使用 します。 メモ: このパラメータは「Master」コントロールとは別のもので、2 つの目的で 使用されます。1 つにはサウンドデザインのため、もう 1 つにはアンプセクショ ンのレベルを制御するためです。 30 第 1 章 アンプとペダル Bass Amp Bass Amp では、有名なベースアンプのサウンドをシミュレートできます。直接 Bass Amp を通じてベースギターなどの信号を送ることができ、高品質な数々の ベース・ギター・アンプ・システムを通じて演奏したパートを再現できます。 Bass Amp には以下のパラメータがあります。 • 「Model」ポップアップメニュー: 以下のアンプモデルが用意されています: • American Basic: 1970 年代のアメリカン・ベース・アンプで、10 インチス ピーカーを8個搭載しています。ブルースやロックの録音データに適してい ます。 • American Deep: 「American Basic」アンプモデルをベースにしていますが、 低中域(500Hz以上)が強調されています。レゲエやポップスの録音データ に適しています。 • American Scoop: 「American Basic」アンプモデルをベースにしており、 「American Deep」と「American Bright」の周波数特性も兼ね備えたアンプで す。低中域(500 Hz 以上)および高中域(4.5 kHz 以上)が強調されていま す。ファンクやフュージョンの録音データに適しています。 • American Bright: 「American Basic」アンプモデルをベースにしていますが、 このモデルは高中域(4.5 kHz 以上)が強調されています。 • New American Basic: 1980 年代のアメリカン・ベース・アンプで、ブルース やロックの録音データに適しています。 第 1 章 アンプとペダル 31 • New American Bright: 「New American Basic」アンプモデルをベースにしてお り、2 kHz より高い周波数域が大きく強調されています。ロックやヘビーメ タルに適しています。 • Top Class DI Warm: 有名な DI ボックスのシミュレーションで、レゲエやポッ プスの録音データに適しています。中域周波数(500〜5000Hzの周波数域) が抑制されています。 • Top Class DI Deep: 「Top Class DI Warm」をベースにしており、ファンクや フュージョンに適しています。700Hz 付近の中域周波数が最も強調されてい ます。 • Top Class DI Mid: 「Top Class DI Warm」モデルをベースにしています。ほぼ 平坦な周波数域を特徴としており、周波数が強調されているわけではありま せん。ブルース、ロック、およびジャズの録音データに適しています。 • 「Pre Gain」スライダ: 入力信号のプリアンプレベルを設定します。 • 「Bass」、「Mid」、「Treble」スライダ: 低音、中音、高音のレベルを調整し ます。 • 「MidFreq」スライダ: 中域の中心周波数(200Hz〜3000Hz)を設定します。 • 「Output Level」スライダ: Bass Amp の最終的な出力レベルを設定します。 Guitar Amp Pro Guitar Amp Pro は人気の高いギターアンプのサウンドと、それらで使用されるス ピーカーをシミュレートできます。ギターの信号を直接処理して、数々の高品質 なギター・アンプ・システムを通じて演奏したギターのサウンドを再現すること ができます。 Guitar Amp Pro は、サウンドのデザインや処理の実験にも利用できます。これは 別の音源にも使うことができるため、たとえばギターアンプの音響特性をトラン ペットやボーカルのパートに適用することも可能です。 Guitar Amp Pro でエミュレートされているアンプ、スピーカー、EQ モデルをさま ざまに組み合わせれば、音色を劇的に変えることも微妙に変えることもできま す。エミュレートされているアンプとキャビネットの信号は、仮想マイクを使っ て取り込まれます。マイクは2種類から選ぶことができ、位置を変えられます。 また、GuitarAmpProは、リバーブ、ビブラート、トレモロなどの従来のギター・ アンプ・エフェクトもエミュレートしています。 32 第 1 章 アンプとペダル 「Guitar Amp Pro」ウインドウはパラメータの種類によってセクションが分かれ ています。 Effects section Amp section Microphone Position section Microphone Type section • アンプセクション: 上部にあるモデルパラメータを使って、アンプ、EQモデ ル、スピーカーの種類を選択します。Guitar Amp Pro のモデルを作成するを参 照してください。 アンプセクションの下にV字型に配置されているノブは、トーン、ゲイン、レ ベルの設定に使います。Guitar Amp Pro のゲイン、トーン、プレゼンス、およ びマスターコントロールを使うを参照してください。 • エフェクトセクション: 内蔵のトレモロ、ビブラート、およびリバーブエフェ クトを操作するパラメータがあります。Guitar Amp Pro のリバーブエフェクト を使うおよびGuitar Amp Pro のトレモロエフェクトとビブラートエフェクトを 使うを参照してください。 • 「MicrophonePosition」セクションおよび「Microphone Type」セクション: これ らのセクションでは、マイクの位置と種類を設定できます。Guitar Amp Pro の マイクパラメータを設定するを参照してください。 Guitar Amp Pro のモデルを作成する アンプ「モデル」は、アンプ、スピーカーキャビネット、EQ の種類、マイクの 種類で構成されています。インターフェイス上部のポップアップメニューを使っ て、各種のアンプやキャビネットなどを独自に組み合わせることができます。マ イクの位置と種類は、左右の黄色い領域で選択します。 「Settings」メニューを使って、新しい組み合わせのアンプコンボを設定ファイ ルとして保存できます。この設定ファイルには、パラメータの変更内容も含まれ ます。 第 1 章 アンプとペダル 33 アンプモデルの作成方法については、以下のセクションで説明しています: • Guitar Amp Pro のアンプを選択する • Guitar Amp Pro のスピーカーキャビネットを選択する • Guitar Amp Pro のイコライザを選択する • Guitar Amp Pro のマイクパラメータを設定する Guitar Amp Pro のアンプを選択する インターフェイスの最上部近くにある「Amp」ポップアップメニューから、アン プのモデルを選択できます。 • UKCombo30W: サウンドに癖がなく、クリーントーンや張りの良いリズムパー トに適しています。 • UKTop50W: 高周波数域が強いため、クラシカルなロックサウンドに適してい ます。 • US Combo 40W: クリーンなサウンドのアンプモデルです。ファンクやジャズ のサウンドに適しています。 • USHotCombo40W: 高い中周波数域が強調されるため、ソロのサウンドに理想 的なモデルです。 • US Hot Top 100W: このアンプでは、「Master」設定が低くなっていても非常に 厚いサウンドを出せるため、広がりのある「活気あふれた」サウンドに仕上が ります。 • Custom50W: 「Presence」パラメータをゼロにセットすると、スムーズなフュー ジョンのリードサウンドに最適なアンプモデルとなります。 • British Clean(GarageBand): ロックミュージックでは 1960 年代からからほぼ 原型のまま使われてきた、クラシックなブリティッシュ A 級コンボをシミュ レートします。このモデルは、クリーントーンや張りの良いリズムパートに適 しています。 • BritishGain(GarageBand): ブリティッシュ・チューブ・ヘッドのサウンドを エミュレートし、ロック風のパワフルなリズムパートや、サスティンが豊富な リードギターに適しています。 • American Clean(GarageBand): クリーントーンや張りの良いサウンドに使わ れる、伝統的なフル・チューブ・コンボをエミュレートします。 • AmericanGain(GarageBand): 現代的なハイゲインヘッドをエミュレートして いるため、ディストーションのかかったリズムやリードのパートに適していま す。 • Clean Tube Amp: ゲインが非常に低いチューブ・アンプ・モデルをエミュレー トします(ディストーションは入力レベルや「Gain」/「Master」設定を大幅 に上げた場合にのみ発生します)。 34 第 1 章 アンプとペダル Guitar Amp Pro のスピーカーキャビネットを選択する スピーカーキャビネットは、選択したアンプから引き出せるトーンの種類に大き く影響する場合があります。スピーカーパラメータは、インターフェイスの最上 部近くにあります。 • 「Speaker」ポップアップメニュー: 15 種類のスピーカーモデルから 1 つ選択 できます。 • UK 1 x 12 open back: 12 インチスピーカーを 1 個搭載したクラシックなオー プン型スピーカーボックスで、偏りがなく、バランスに優れ、多機能です。 • UK 2 x 12 open back: 12 インチスピーカーを 2 個搭載したクラシックなオー プン型スピーカーボックスで、偏りがなく、バランスに優れ、多機能です。 • UK 2 x 12 closed: 低周波数域でのレゾナンスが豊かなため、コンボに適して います。低い「Bass」コントロール設定にすると、張りの良いサウンドにも なります。 • UK 4 x 12 closed slanted: オフセンターのマイクと一緒に使用すると、面白い 中周波数域が得られるため、ハイゲインのアンプとの組み合わせに適してい ます。 • US 1 x 10 open back: 低周波数域でのレゾナンスがそれほど大きくありませ ん。ブルース用のハーモニカで使用するのに適しています。 • US 1 x 12 open back 1: オープン型のアメリカン・リード・コンボで、12 イン チスピーカーを 1 個搭載しています。 • US 1 x 12 open back 2: オープン型のアメリカン・クリーン/クランチ・コン ボで、12 インチスピーカーを 1 個搭載しています。 • US 1 x 12 open back 3: オープン型のアメリカン・クリーン/クランチ・コン ボの別タイプです。12 インチスピーカーを 1 個搭載しています。 • USbroadrange: クラシックなエレクトリック・ピアノ・スピーカーをシミュ レートします。 • Analogsimulation: 有名なブリティッシュ真空管プリアンプの内部スピーカー をシミュレートします。 • UK 1 x 12(GarageBand): 12 インチスピーカーを 1 個搭載した、オープン バック型のブリティッシュ A 級真空管アンプです。 • UK 4 x 12(GarageBand): 12 インチのスピーカー(ブラックシリーズ)を 4 個搭載したクラシックなクローズ型スピーカーボックスで、ロックに適して います。 • US 1 x 12 open back(GarageBand): オープン型のアメリカン・リード・コン ボで、12 インチスピーカーを 1 個搭載しています。 • US 1 x 12 bassreflex(GarageBand): クローズ型ベースリフレックスのキャビ ネットで、12 インチスピーカーを 1 個搭載しています。 第 1 章 アンプとペダル 35 • DI-Box: このオプションを選択すると、スピーカーシミュレーションのセク ションを省略できます。 • アンプ-スピーカー・リンク・ボタン: 「Amp」ポップアップメニューと 「Speaker」ポップアップメニューの間にあります。これらのポップアップメ ニューをリンクさせ、アンプモデルを変更した場合にそのアンプに関連付けら れたスピーカーが自動的に読み込まれるようにします。 Guitar Amp Pro のイコライザを選択する 「EQ」ポップアップメニューとアンプ-EQリンクボタンは、インターフェイス の最上部近くにあります。 • 「EQ」ポップアップメニュー: 「British 1」、「British 2」、「American」、お よび「Modern」EQモデルがあります。EQモデルごとに固有の音質があり、ア ンプセクションの「Bass」、「Mids」、および「Treble」ノブの応答方法に影 響します。 • アンプ- EQ リンクボタン: 「Amp」ポップアップメニューと「EQ」ポップ アップメニューの間にあります。これらのポップアップメニューをリンクさ せ、アンプモデルを変更した場合にそのアンプに関連付けられた EQ モデルが 自動的に読み込まれるようにします。 アンプモデルは、モデルごとに関連付けられたスピーカーと EQ モデルを備え ています。アンプ、スピーカー、および EQ 設定のデフォルトの組み合わせに よって、有名なギターサウンドが再現されます。もちろん、どのスピーカーや EQモデルでも、2つのリンクボタンをオフにすることで、任意のアンプと自由 に組み合わせることができます。 Guitar Amp Pro のゲイン、トーン、プレゼンス、およびマスターコ ントロールを使う インターフェイスの上半分に、左から右に向かって「Gain」、「Bass」、 「Mids」、「Treble」、「Presence」、および「Master」ノブがV字型に並んでい ます。 • 「Gain」ノブ: 入力信号に適用するプリアンプ処理の度合いを設定します。 このコントロールによるエフェクトは、どのアンプモデルを選択するかによっ て異なります。たとえば、「British Clean」アンプモデルを使用している場合 は、「Gain」設定を最大にすると力強く張りの良いサウンドを出すことができ ます。「BritishGain」アンプまたは「ModernGain」アンプを使用している場合 は、同様の「Gain」設定でも強いディストーションが生じるため、リードパー トのソロに適しています。 • 「Bass」ノブ、「Mids」ノブ、「Treble」ノブ: EQ モデルの周波数域のレベル を調整します。実物のギターアンプにあるトーンコントロールのノブに似てい ます。 • 「Presence」ノブ: 高周波数域のレベルを調整します。「Presence」パラメー タは、Guitar Amp Pro の出力(「Master」)段階にのみ影響します。 36 第 1 章 アンプとペダル • 「Master」ノブ: アンプのスピーカーへの出力音量を設定します。通常、真空 管アンプでは「Master」レベルを上げると、より厚みのある飽和したサウンド となり、信号がさらに歪んで力強く(音量が大きく)なります。「Master」を 高く設定すると出力が極端に大きくなり、スピーカーや聴覚を損なうおそれが あります。「Master」レベルは徐々に上げるようにしてください。Guitar Amp Pro では、「Master」パラメータで音質特性を調整し、最終出力レベルはイン ターフェイス下部にある「Output」パラメータで設定します。Guitar Amp Pro の出力レベルを設定するを参照してください。 Guitar Amp Pro のエフェクトセクションを理解する エフェクトパラメータにはトレモロ、ビブラート、リバーブがあり、多くのアン プに見られるプロセッサをエミュレートしています。 ポップアップメニューを使って、トレモロ(サウンドの振幅または音量をモジュ レート)またはビブラート(ピッチをモジュレート)のどちらか一方を選択でき ます。 リバーブはトレモロまたはビブラートエフェクトのいずれかに追加することも、 単独で使うこともできます。 エフェクトを使用または調整するには、まず対応する左側のオンボタンをクリッ クしてオンにする必要があります。オンにすると、オンボタンは赤くなります。 メモ: 信号経路内では、「Presence」および「Master」コントロールよりも前に位 置するエフェクトセクションが、プリアンプされた(マスター前)信号を受け取 ります。 トレモロ、ビブラート、リバーブについては、以下のセクションで説明していま す: • Guitar Amp Pro のトレモロエフェクトとビブラートエフェクトを使う • Guitar Amp Pro のリバーブエフェクトを使う Guitar Amp Pro のトレモロエフェクトとビブラートエフェクトを使 う トレモロとビブラートは、エフェクトセクションのオンボタン、「FX」ポップ アップメニュー、「Depth」ノブ、「Speed」ノブ、「Sync」ボタンで操作しま す。トレモロはサウンドの振幅または音量をモジュレートし、ビブラートはピッ チをモジュレートします。 • 「FX」ポップアップメニュー: トレモロまたはビブラートのどちらかを選択 できます。 • 「Depth」ノブ: モジュレーションの強さを設定します。 第 1 章 アンプとペダル 37 • 「Speed」ノブ: モジュレーションの速度をヘルツ単位で設定します。低めに 設定にすると滑らかで浮遊感のあるサウンドになり、高めに設定にすると回転 翼の音のような効果を生み出します。 • 「Sync」ボタン: 「Sync」ボタンがオンになっている場合は、モジュレーショ ンの速度がプロジェクトのテンポと同期します。「Speed」ノブを調整して、 小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符も含まれます)を選択できま す。「Sync」ボタンがオフになっている場合は、「Speed」ノブでモジュレー ションの速度の値を設定できます。 Guitar Amp Pro のリバーブエフェクトを使う リバーブは、最下部近くにあるリバーブセクションのオンボタン、「Reverb」 ポップアップメニュー、「Level」ノブで操作します。リバーブはトレモロまた はビブラートエフェクトのいずれかに追加することも、単独で使うこともできま す。 • 「Reverb」ポップアップメニュー: 3 種類のスプリングリバーブから 1 つを選 択します。 • 「Level」ノブ: プリアンプ処理されたアンプ信号にかけるリバーブの量を設 定します。 Guitar Amp Pro のマイクパラメータを設定する 「Speaker」メニューでスピーカーキャビネットを選択した後は、エミュレート するマイクのタイプと、スピーカーに対するマイクの位置を指定できます。 「Microphone Position」パラメータは左側の黄色い領域で、「Microphone Type」 パラメータは右側の黄色い領域で使うことができます。 「Microphone Position」のパラメータ • 「Centered」ボタン: マイクがスピーカーコーンの中央(軸上とも呼びます) に配置されます。この配置の場合、より豊かで力強いサウンドを生み出せるた め、ブルースやジャズのギターの音に適しています。 • 「Off-Center」ボタン: マイクがスピーカーの端(軸外とも呼びます)に配置 されます。この配置では、明るくシャープでありながら線の細いトーンを生み 出せるため、切れのあるロックや R & B のギターパートに適しています。 いずれかのボタンを選択すると、グラフィック表示のスピーカーに選択内容が 反映されます。 「Microphone Type」のパラメータ • 「Condenser」ボタン: スタジオ用コンデンサマイクのサウンドがエミュレー トされます。コンデンサマイクのサウンドは、きめ細かく、透明で、バランス も取れています。 38 第 1 章 アンプとペダル • 「Dynamic」ボタン: カージオイド型指向性を持つダイナミックマイクのサウ ンドがエミュレートされます。このマイクのサウンドは、「Condenser」モデ ルと比べると、より明るくて切れがあります。また、低中域の周波数がそれほ ど強調されていないため、ロックギターの音をマイキングするのに適していま す。 ヒント: 両方のマイクタイプを組み合わせると非常に面白いサウンドになりま す。ギターのトラックを複製し、両方のトラックにインサートエフェクトとし て Guitar Amp Pro を挿入します。違うタイプのマイクを各 Guitar Amp Pro イン スタンスで選択し、そのほかのパラメータ設定はすべて同一のままにして、ト ラックの信号レベルをミックスします。もちろん、ほかのパラメータを変更す ることもできます。 Guitar Amp Pro の出力レベルを設定する 「Output」スライダは、エフェクトセクションの下、インターフェイス最下部に あります。これは Guitar Amp Pro の最終レベルコントロールとして機能し、「ス ピーカー裏の」音量コントロールのようなもので、チャンネルストリップの次の プラグインスロットや、「Output」チャンネルストリップに送られる出力のレベ ルを設定するのに使用します。 メモ: このパラメータは「Master」コントロールとは別のもので、2 つの目的で 使用されます。1 つにはサウンドデザインのため、もう 1 つにはアンプセクショ ンのレベルを制御するためです。 Pedalboard 「Pedalboard」は、人気のある有名な数々の「ストンプボックス」ペダルエフェ クトのサウンドをシミュレートします。複数のストンプボックスを組み合わせ て、任意のオーディオ信号を処理できます。 ペダルは追加、削除、並べ替えができます。信号はペダル領域を左から右へ流れ ます。スプリッタおよびミキサーユニットを伴う 2 つの個別のバスを追加する と、サウンドデザインを試したり、信号経路の任意の位置で正確に信号を制御し たりすることができます。 第 1 章 アンプとペダル 39 すべてのストンプボックス、スイッチ、スライダは自動化できます。8つのマク ロコントロールによって、MIDI コントローラを使って任意のペダルパラメータ をリアルタイムで変更できます。 Macro Controls area Pedal Browser Routing area Pedal area • ペダルブラウザには、すべてのペダルエフェクトとユーティリティが表示され ます。これらをペダル領域にドラッグすると信号経路に組み込まれます。 Pedalboardのペダルブラウザを使うを参照してください。このインターフェイ ス領域は、通常とは別の読み込みモードにも使われます。Pedalboardの読み込 みモードを使うを参照してください。 • ペダル領域では、エフェクトの順序を決めたり、エフェクトパラメータを設定 したりできます。ここでストンプボックスの追加、置き換え、削除ができま す。Pedalboard のペダル領域を使うを参照してください。 • ルーティング領域は、Pedalboardで使用できる2つのエフェクトバス(「BusA」 と「Bus B」)での信号の流れを制御するために使います。Pedalboard のルー ティング領域を使うを参照してください。 • マクロコントロール領域は、8つのMIDIコントローラの割り当てに使います。 これらの MIDI コントローラを使って、リアルタイムで任意のストンプボック スパラメータを操作できます。Pedalboardのマクロコントロール領域を使うを 参照してください。 • エフェクトとユーティリティペダルについては、以下のセクションで説明して います: • ディストーションペダル • モジュレーションペダル • ディレイペダル • フィルタペダル • ダイナミクスペダル 40 第 1 章 アンプとペダル • ユーティリティペダル Pedalboard のペダルブラウザを使う Pedalboard では、インターフェイス右側のペダルブラウザに、多数のペダルエ フェクトとユーティリティが用意されています。各エフェクトとユーティリティ は、ディストーション、モジュレーションなどのカテゴリに分けられています。 これらのストンプボックスの種類の詳細については、ディストーションペダル、 モジュレーションペダル、ディレイペダル、フィルタペダル、ダイナミクスペダ ル、およびユーティリティペダルを参照してください。 View pop-up menu Import Mode button ペダルブラウザを表示する/隠すには µ ペダル領域の右下隅にある三角形ボタンをクリックします。 特定のペダルグループだけをペダルブラウザに表示するには µ 「View」ポップアップメニューを開き、「Distortion」、「Modulation」、 「Delay」、「Filter」、「Dynamics」、「Utility」のいずれかを選択します。選択 したカテゴリのストンプボックスだけがペダルブラウザに表示されます。 すべてのペダルグループを表示するには、「View」ポップアップメニューから 「Show All」を選択します。 第 1 章 アンプとペダル 41 ペダル領域にストンプボックスを追加するには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダルブラウザからペダル領域の適切な位置に、挿入するエフェクトをドラッグ します。既存のペダルの左右または間にドラッグできます。 µ ペダルブラウザでエフェクトをダブルクリックし、ペダル領域にある既存のスト ンプボックスの右端に追加します。 メモ: ペダル領域のストンプボックスが選択されているときにペダルブラウザで ストンプボックスをダブルクリックすると、選択したペダルが置き換わります。 Pedalboard の読み込みモードを使う Pedalboardには、ペダルの種類ごとにパラメータ設定を読み込むことができる機 能があります。Pedalboardプラグイン全体の設定を読み込むプラグインウインド ウの「設定」メニューとは異なり、この機能を使うと特定の種類のストンプボッ クスの設定を読み込むことができます。 読み込みモードを有効または無効にするには µ 「Import Mode」ボタンをクリックして、直前の Pedalboard 設定で使ったすべて のペダルを表示します。「Import Mode」ボタンが有効なときは、ペダルブラウ ザは読み込んだ設定を表示する別の表示モードに切り替わります。読み込みモー ドが無効なときは、ペダルブラウザは通常の形式で表示されます。 42 第 1 章 アンプとペダル ペダルブラウザにペダル設定を読み込むには 1 「ImportMode」ボタンをクリックして読み込みモードを有効にします。「View」 メニューが「Select Setting」ボタンに変わることに注意してください。 メモ: はじめて設定を読み込む場合は、読み込む設定を選択できるダイアログが 表示されます。 2 「Select Setting」ボタンをクリックして設定を選択してから、「Open」をクリッ クします。選択した設定によって、ペダルブラウザに1つまたは複数のストンプ ボックスが表示されます。読み込んだ設定の名前が、ペダルブラウザの下に表示 されます。 読み込んだペダルをペダル領域に追加するには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダルブラウザからペダル領域の適切な位置に、追加するストンプボックスをド ラッグします。既存のペダルの左右または間にドラッグできます。 µ ペダル領域のペダルが選択されていないことを確認してから、ペダルブラウザで ストンプボックスをダブルクリックし、ペダル領域の既存のエフェクトの右端に 追加します。 メモ: 読み込みモードに追加されたペダルのパラメータ設定も読み込まれます。 読み込んだペダル設定でペダル領域のペダル設定を置き換えるには 1 ペダル領域で、置き換えたいペダルをクリックします。ペダルが青い枠で強調表 示されます。 2 ペダルブラウザのストンプボックスをクリックすると、ペダル領域で選択したペ ダル(ペダル設定)が置き換わります。ペダル領域で選択したペダルの青い枠と ペダルブラウザが点滅し、読み込まれた設定を示します。ペダルブラウザの下部 にある設定名領域に、「Click selected item again to revert」(「元に戻すには、選 択したアイテムをもう一度クリックします」)と表示されます。 メモ: 置き換えを確定するには、ペダルブラウザの背景をクリックするか、 「Import Mode」ボタンをクリックします。 3 選択したペダルを以前の設定に戻すには、ペダルブラウザで強調表示されている ストンプボックスをクリックします。「Import Mode」ボタンと選択したペダル の枠(ペダル領域内)がそのまま強調表示され、元の設定に戻されたことを示し ます。 第 1 章 アンプとペダル 43 Pedalboard のペダル領域を使う Pedalboardのストンプボックスのエフェクトペダルは実物に形状が似ているだけ でなく、使いかたもよく似ています。ただし、わずらわしいコード配線や電力供 給、ねじ止めや固定器具などは不要です。ペダル領域のレイアウトは従来のペダ ルボードに基づいており、信号は左から右に流れます。 ペダル領域にペダルを追加するには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダルブラウザからペダル領域の適切な位置に、挿入するストンプボックスをド ラッグします。既存のペダルの左右または間にドラッグできます。 µ ペダル領域のペダルが選択されていないことを確認してから、ペダルブラウザで ストンプボックスをダブルクリックし、ペダル領域の既存のエフェクトの右端に 追加します。 メモ: 「Mixer」および「Splitter」ユーティリティペダルは別の方法で挿入しま す。Pedalboard のルーティング領域を使うを参照してください。 ペダル領域のエフェクトペダルの位置を変更するには µ 別の位置までストンプボックスを左または右にドラッグします。オートメーショ ンとバスルーティングが有効な場合、これらはエフェクトペダルと一緒に移動し ます。オートメーションとバスルーティングの詳細については、Pedalboard の ルーティング領域を使うを参照してください。 メモ: バスルーティングのルールには 2 つの例外があります:ドラッグしたペダ ルが「Splitter」および「Mixer」ユーティリティの間の唯一のペダルである場合、 両者のユーティリティペダルは自動的に削除されます。また、送信先で2つ目の バス(「Bus B」)が有効になっていない場合、ペダルは「Bus A」に挿入されま す。 ペダル領域の「Mixer」ユーティリティの位置を変更するには µ 別の位置まで「Mixer」ユーティリティを左または右にドラッグします。 左に移動した場合:手前の挿入位置で、「Bus A」と「Bus B」の「ダウンミック ス」が行われます。関連するエフェクトペダルが右に移動し、「Bus A」に挿入 されます。 44 第 1 章 アンプとペダル 右に移動した場合:後の挿入位置で、「BusA」と「BusB」の「ダウンミックス」 が行われます。関連するエフェクトペダルが左に移動し、「Bus A」に挿入され ます。 メモ: 「Mixer」ペダルは、対応する分岐点や「Splitter」ユーティリティの直後 (および左側)には移動できません。 ペダル領域の「Splitter」ユーティリティの位置を変更するには µ 別の位置まで「Splitter」ユーティリティを左または右にドラッグします。 左に移動した場合:手前の挿入位置で、「Bus A」と「Bus B」が分岐します。関 連するエフェクトペダルが右に移動し、「Bus A」に挿入されます。 右に移動した場合:後の挿入位置で、「Bus A」と「Bus B」が分岐します。関連 するエフェクトペダルが左に移動し、「Bus A」に挿入されます。 メモ: 「Splitter」ペダルは、対応する「Mixer」ユーティリティの直前(および右 側)には移動できません。 ペダル領域のペダルを置き換えるには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダル領域の置き換えたいペダルの上に、ペダルブラウザからストンプボックス をドラッグします。 µ ペダル領域で置き換えたいストンプボックスをクリックして選択し、ペダルブラ ウザで該当するペダルをダブルクリックします。 メモ: 置き換えができるのは「エフェクト」ペダルだけです。「Mixer」または 「Splitter」ユーティリティは置き換えられません。バスルーティングは(有効な 場合)、エフェクトペダルが置き換えられても変更されません。 ペダル領域からペダルを削除するには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダル領域の外にペダルをドラッグします。 µ ペダルをクリックして選択し、Delete キーを押します。 Pedalboard のルーティング領域を使う Pedalboard には 2 つの個別の信号バス(「Bus A」と「Bus B」)があります。こ れらはペダル領域の上のルーティング領域にあります。これらのバスを使うと、 とても柔軟に信号の処理経路を設定できます。ペダル領域にドラッグしたすべて のストンプボックスは、デフォルトでは「Bus A」に挿入されます。 第 1 章 アンプとペダル 45 メモ: ペダル領域の真上にポインタを移動するとルーティング領域が表示され、 ポインタを外すと表示されなくなります。2つ目のバスルーティングを作成する ときには、ポインタの位置が外れていてもルーティング領域は引き続き表示され ます。最上部にある小さなラッチボタンをクリックすると、ルーティング領域を 閉じることができます。その後は、ポインタをかざすとルーティング領域は自動 的に開閉します。 2 つ目のバスルーティングを作成するには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダル領域の真上にポインタを移動してルーティング領域を開き、ルーティング 領域でストンプボックスの名前をクリックします。ペダルの名前が上に移動し、 選択したストンプボックスが「Bus B」にルーティングされます。ルーティング 領域に灰色の線が 2 本表示されます。それぞれ「Bus A」と「Bus B」を表してい ます。自動的に「Mixer」ユーティリティペダルが信号経路の末尾に追加されま す。 µ 複数のペダルが挿入されている場合、ペダル領域に「Splitter」ユーティリティペ ダルをドラッグします。また、信号経路に「Mixer」がない場合は、信号経路の 末尾に「Mixer」が自動的に挿入されます。 2 つ目のバスルーティングを削除するには 以下のいずれかの操作を行います: µ ペダル領域から「Mixer」および「Splitter」ユーティリティペダルを削除します。 µ ペダル領域からすべてのストンプボックスを削除する これにより、既存の 「Mixer」ユーティリティも自動的に削除されます。 2 つ目のバスからエフェクトを 1 つ削除するには µ ルーティング領域でペダル名(またはいずれかの灰色の線の上)をクリックしま す。 メモ: 「Bus B」からすべてのエフェクトを削除しても、2 つ目のバスは削除され ません。ペダル領域にストンプボックス(エフェクト)が 1 つでもあれば、 「Mixer」ユーティリティペダルはペダル領域に残ります。これにより、ウェッ ト信号とドライ信号をパラレル・ルーティングできます。ペダル領域からすべて のペダルエフェクトが削除された場合にのみ、「Mixer」ユーティリティ(と 2 つ目のバス)は削除されます。 46 第 1 章 アンプとペダル バス間の分岐点を設定するには µ 複数のバスが有効な場合、ルーティング領域の「ケーブル」(灰色の線)に沿っ て多数の点が表示されます。これらは、点の左下にあるペダルの出力(ソケッ ト)を表します。適切な点をクリックして、分岐点(バス間で信号が送られる位 置)を指定します。点をクリックするとバスの間にケーブルが表示されます。 メモ: 「Mixer」ユーティリティの直前または直後には分岐点を作成できません。 「Splitter」ユーティリティとバスの分岐点を切り替えるには µ ルーティング領域のバスの分岐点をダブルクリックすると、「Splitter」ユーティ リティに置き換えられます。ペダル領域に「Splitter」ユーティリティが表示され ます。 µ ルーティング領域の「Splitter」というラベルをダブルクリックすると、「Splitter」 ユーティリティがバスの分岐点に置き換えられます。ペダル領域から「Splitter」 ユーティリティが削除されます。 「Splitter」および「Mixer」ユーティリティを使う際の注意事項 ペダル領域に「Splitter」ユーティリティをドラッグすると、挿入されているペ ダルの右端に自動的に「Mixer」ユーティリティが挿入されます。 挿入されているペダルの右端、挿入されている「Splitter」ユーティリティの直 後、挿入されている「Mixer」ユーティリティの直前、またはペダル領域の空い ている場所に「Splitter」ユーティリティをドラッグすることはできません。 ペダル領域に「Mixer」ユーティリティをドラッグすると、自動的に信号経路内 の可能な限り手前の位置(可能な限り左)に分岐点が作成されます。 ペダル領域の最初のスロット、挿入されている「Splitter」ユーティリティと 「Mixer」ユーティリティの組み合わせの間、または挿入されている「Mixer」 ユーティリティのすぐ右に「Mixer」ユーティリティをドラッグすることはでき ません。 Pedalboard のマクロコントロール領域を使う Pedalboard には、A から H までの 8 つのマクロターゲットがあります。これらは ペダル領域の下のマクロコントロール領域にあります。これらを使うと、挿入し たストンプボックスの任意のパラメータを「Macro <A–H>」の対象としてマッ ピングできます。Pedalboard の各設定と一緒に異なるマッピングを保存できま す。 コントローラの割り当てを使うか、ワークスペースに「Macro<A–H>Value」用 のノブを作成します。こうすると MIDI ハードウェアのスイッチ、スライダ、ま たはノブを使って、マップした Pedalboard の「Macro <A–H>」の対象パラメー タをリアルタイムで操作できるようになります。詳しくは、「LogicProユーザー ズマニュアル」を参照してください。 第 1 章 アンプとペダル 47 左下の三角形をクリックすると、マクロコントロール領域の非表示と表示が切り 替わります。 • 「Macro <A–H> Target」ポップアップメニュー: MIDI コントローラで操作す るパラメータを指定します。 • 「Macro<A–H>Value」スライダ/フィールド: 対応する「Macro Target」ポッ プアップメニューで選択したパラメータの現在の値を設定および表示します。 「Macro <A–H> Target」を割り当てるには 以下のいずれかの操作を行います: µ いずれかの「Macro <A–H> Target」ポップアップメニューをクリックし、操作 するパラメータを選択します。 各ストンプボックスパラメータが、「スロット番号—ペダル名—パラメータ」と いう形式で表示されます。たとえば、「 Slot 1—Blue Echo—Time」、または「Slot 2—RoswellRinger—Feedback」のように表示されます。「スロット」番号は、ペダ ル領域内の左右のどの位置にペダルが表示されているかを表します。 µ いずれかの「Macro <A–H> Target」ポップアップメニューで「-Auto assign-」項 目を選択してから、挿入されているペダルの適切なパラメータをクリックしま す。 メモ: 「Macro<A–H>Target」ポップアップメニューに、選択したパラメータが 表示されます。 ディストーションペダル このセクションでは、ディストーション・エフェクト・ペダルについて説明しま す。 ストンプボックス 説明 明るく、「ナスティ」な(よく歪む)ディストーションエ フェクトです。「Drive」で入力信号のゲインを操作します。 「Level」でエフェクトの音量を設定します。 Candy Fuzz 48 第 1 章 アンプとペダル ストンプボックス 説明 豪華なディストーションエフェクトです。入力(「Input」) と出力(「Level」)に個別のレベルコントロールがありま す。「Drive」で入力信号に適用するサチュレーションの度合 いを操作します。「Tone」ノブでカットオフ周波数を設定し ます。「Squash」ノブで内部の圧縮回路のしきい値を設定し ます。「Contour」で信号に適用するノンリニアディストー ションの量を設定します。「Mix」でソース信号とディストー ション信号の比率を設定します。「Bright/Fat」スイッチで、 値が固定された 2 つのハイシェルビングフィルタの周波数を 切り替えます。青色と赤色のLEDは、それぞれのスイッチの 状態を示します。 Double Dragon アメリカン「ファズ」ディストーションエフェクトです。 「Fuzz」で入力ゲインを操作します。全体的な出力ゲインは 「Level」で設定します。「Tone」ノブを動かして値を高くす ると高域が上がり、同時にその分だけ低周波が低くなりま す。 Fuzz Machine 「Grinder」は、ローファイでダーティな「メタル」ディス トーションです。「Grind」で入力信号に適用するドライブの 度合いを設定します。トーンは「Filter」ノブで操作します。 高めの値に設定すると、さらに過激でクランチなサウンドに なります。「Full/Scoop」スイッチで、値が固定された2つの ゲイン/Q フィルタ設定を切り替えます。「Full」では 「Scoop」よりもフィルタリングによる効果が弱まります。 全体的な出力レベルは「Level」ノブで操作します。 Grinder ソフトで鳴りの良いディストーションエフェクトです。 「Fuzz」で入力信号に適用するサチュレーションの度合いを 設定します。「Volume」で出力レベルを設定します。 Happy Face Fuzz 信号の高周波成分を強調できるオーバードライブエフェクト です。「Level」でエフェクトの出力を操作します。 「Treble/Full」スイッチで、値が固定されたシェルビング周波 数を設定します。入力信号の高域成分とすべての周波数のど ちらを処理するかを指定できます。 Hi-Drive 飽和した、やや激しいディストーションです。「Roar」で入 力信号に適用するゲインの量を設定します。「Growl」でサ チュレーションの量を設定します。「Tone」でディストー ションの全体的な音色を設定します。「Tone」の値を高めに 設定すると信号の高域成分が増えますが、その分全体の音量 が下がります。「Texture」では、ディストーションを滑らか にしたり粗くしたりできます。「Grain」で信号に適用するノ ンリニアディストーションの量を設定します。エフェクトの 出力は「Level」ノブで操作します。 Monster Fuzz 厚みのあるファズエフェクトです。飽和したソフトなディス トーションを作成できます。「Fuzz」で入力ゲインを操作し ます。「Level」でディストーション信号とソース信号の比率 を設定します。「Tone」ノブでハイパスフィルタのカットオ フ周波数を設定します。 Octafuzz 第 1 章 アンプとペダル 49 ストンプボックス 説明 メタル/ハードロック用ディストーションエフェクトです。 「Crunch」で入力信号に適用するサチュレーションの度合い を設定します。出力ゲインは「Level」で設定します。音色は 「Tone」ノブで設定します。値を高くするとサウンドの明る さが増します。 Rawk! Distortion FET(電界効果トランジスタ)で発生するディストーション をエミュレートするオーバードライブエフェクトです。これ はソリッドステートの楽器用アンプでよく使われます。飽和 状態になると、FET は(「Grinder」でエミュレートされてい るような)バイポーラトランジスタよりも温かみのある響き のディストーションを発生します。「Drive」で入力信号のサ チュレーションの量を設定します。「Tone」でハイカット フィルタの周波数を設定します。この値によって、ソフトな トーンになるか激しいトーンになるかが決まります。「Fat」 スイッチを一番上まで上げると、信号の低周波成分が強調さ れます。「Level」でエフェクトの全体の出力レベルを設定し ます。 Vintage Drive モジュレーションペダル このセクションでは、モジュレーション・エフェクト・ペダルについて説明しま す。 ストンプボックス 説明 サウンドに大きな厚みを加えることができる、豊かで心地よ い響きのコーラスエフェクトです。「Rate」でモジュレーショ ンの速度を設定します。また、「Sync」ボタンを有効にした ときにホストアプリケーションのテンポに同期させるかどう かも設定します。同期させる場合は、小節、拍、および音符 の値(3 連符や付点音符も含まれます)を指定できます。 「Depth」でエフェクトの強度を設定します。「Feedback」 を使うとエフェクトの出力が入力に戻されます。これによ り、サウンドをさらに厚くしたり、混変調を発生させたりす ることができます。「Delay」で元の信号とエフェクト信号の 比率を設定します。「Bright」スイッチが上の位置にあると きは、周波数の固定された内部 EQ が信号に適用されます。 下の位置にあるときは、EQ はバイパスされます。 Heavenly Chorus シンプルなフェイジングエフェクトです。「Rate」でモジュ レーションの速度を設定します。また、「Sync」ボタンを有 効にしたときにホストアプリケーションのテンポに同期させ るかどうかも設定します。同期させる場合は、小節、拍、お よび音符の値(3 連符や付点音符も含まれます)を指定でき ます。「Depth」でエフェクトの強度を設定します。 「Feedback」で、入力に戻されるエフェクト信号の量を指定 します。これを使うと、音質を変化させたり、スイープエ フェクトをより強調したりすることができます。この 2 つを 同時に行うこともできます。 Phase Tripper 50 第 1 章 アンプとペダル ストンプボックス 説明 とても柔軟性の高いデュアルフェイザーエフェクトです。 「LFO 1 Rate」と「LFO2 Rate」でモジュレーションの速度を 設定します。また、「Sync」ボタンを有効にしたときにホス トアプリケーションのテンポに同期させるかどうかも設定し ます。「Ceiling」と「Floor」で、スイープする低周波数帯を 指定します。「Order」でアルゴリズムを切り替えます。数 (偶数)を大きくするにつれ、フェイジングエフェクトの激 しさが増します。奇数にすると、より繊細なコムフィルタリ ングエフェクトになります。「Feedback」で、入力に戻され るエフェクト信号の量を指定します。これを使うと、音質を 変化させたり、フェイジングエフェクトをより強調したりす ることができます。この 2 つを同時に行うこともできます。 「Tone」は中央の位置を起点とし、左に回すとローパスフィ ルタリングの量が増え、右に回すとハイパスフィルタリング の量が増えます。「Mix」で各フェイザーどうしのレベルの 比率を設定します。 Phaze 2 繊細な、ビンテージのコーラスエフェクトです。「Rate」で モジュレーションの速度を設定します。また、「Sync」ボタ ンを有効にしたときにホストアプリケーションのテンポに同 期させるかどうかも設定します。同期させる場合は、小節、 拍、および音符の値(3 連符や付点音符も含まれます)を指 定できます。「Depth」でエフェクトの強度を設定します。 Retro Chorus 柔軟なフランジングエフェクトです。「Rate」でモジュレー ションの速度を設定します。また、「Sync」ボタンを有効に したときにホストアプリケーションのテンポに同期させるか どうかも設定します。同期させる場合は、小節、拍、および 音符の値(3連符や付点音符も含まれます)を指定できます。 「Depth」でエフェクトの強度を設定します。「Feedback」 で、入力に戻されるエフェクト信号の量を指定します。これ を使うと、音質を変化させたり、フランジングエフェクトを より強調したりすることができます。この 2 つを同時に行う こともできます。「Manual」ノブでソース信号とエフェクト 信号の間のディレイ時間を設定します。これにより、フラン ジャーコーラスエフェクトが得られます。また、特に 「Feedback」の値を高くして使うと、金属的な響きのモジュ レーションになります。 Robo Flanger 第 1 章 アンプとペダル 51 ストンプボックス 説明 送られてくるオーディオを金属的なサウンドに(または識別 不能なほどに)変化させたり、トレモロを生成したり、信号 を明るくしたりすることができる、リング・モジュレーショ ン・エフェクトです。「Freq」ノブでフィルタカットオフの 中心周波数を設定します。「Fine」は、フィルタ周波数を微 調整するためのノブです。「Lin/Exp」スイッチで、周波数 カーブの勾配をリニア(1オクターブに12ノート)と指数関 数状のどちらにするかを指定します。「FB」(フィードバッ ク)で、入力に戻されるエフェクト信号の量を指定します。 これを使うと、音質を変化させたり、エフェクトをより強調 したりすることができます。この 2 つを同時に行うこともで きます。元の信号とエフェクト信号とのバランスは「Mix」 ノブで設定します。リングモジュレーションの詳細について は、RingShifterを参照してください。 Roswell Ringer 信号に動きをつけ、信号の位相を変更するフェイザーエフェ クトです。「Rate」でモジュレーションの速度を設定します。 また、「Sync」ボタンを有効にしたときにホストアプリケー ションのテンポに同期させるかどうかも設定します。同期さ せる場合は、小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符 も含まれます)を「Rate」ノブで指定できます。「Intensity」 でエフェクトの強度を設定します。「Vintage/Modern」スイッ チは、「Vintage」にすると周波数が固定された内部 EQ が有 効になり、「Modern」にすると無効になります。 Roto Phase Hammond B3 オルガンでおなじみの、レスリー回転式スピー カーキャビネットをエミュレートします。「Cabinet」でス ピーカーボックスの種類を設定します。「Fast Rate」で、モ ジュレーションの最高速度を設定します(「Fast」ボタンが 有効な場合にのみ適用されます)。「Response」で、ロー ターが最高および最低の速度に達するまでの時間を設定しま す。「Drive」で入力ゲインを上げ、信号を歪ませます。 「Bright」スイッチをオンにすると、ハイシェルビングフィ ルタが有効になります。「Slow」、「Brake」、および「Fast」 ボタンで、「スピーカー」の動作を指定します。「Slow」に すると、スピーカーはゆっくりと回転します。「Fast」にす ると、スピーカーは速く回転します(「Fast Rate」ノブで指 定した最高速度が上限です)。「Brake」にすると、スピー カーの回転が停止します。レスリーエフェクトの詳細につい ては、Rotor Cabinet エフェクトを参照してください。 Spin Box 52 第 1 章 アンプとペダル ストンプボックス 説明 柔軟なトレモロエフェクトです(信号のレベルを変調しま す)。「Rate」でモジュレーションの速度を設定します。ま た、「Sync」ボタンを有効にしたときにホストアプリケー ションのテンポに同期させるかどうかも設定します。同期さ せる場合は、小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符 も含まれます)を指定できます。「Depth」でエフェクトの 強度を設定します。「Wave」と「Smooth」は組み合わさっ て、LFO の波形を変化させます。これを使うと、レベルを流 動的に変更したり、急激に変更したりすることができます。 「Volume」でエフェクトの出力レベルを指定します。「1/2 Speed」および「2 x Speed」ボタンは、現在の「Rate」の値 を即座に半分または倍にします。「Speed Up」および「Slow Down」ボタンを押さえると、現在の「Rate」の値が、可能な 範囲で最大または最小の値まで徐々に変化します。 Total Tremolo トレモロエフェクトです(信号のレベルを変調します)。 「Rate」でモジュレーションの速度を設定します。また、 「Sync」ボタンを有効にしたときにホストアプリケーション のテンポに同期させるかどうかも設定します。同期させる場 合は、小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符も含ま れます)を指定できます。「Depth」でエフェクトの強度を 設定します。「Level」でトレモロの後のゲインの値を設定し ます。 Trem-o-Tone Hammond B3 オルガンのスキャナ・ビブラート・ユニットに 基づくビブラート/コーラスエフェクトです。「Type」ノブ で、3つのビブラート(「V1」、「V2」、「V3」)またはコー ラス(「C1」、「C2」、「C3」)のバリエーションから選択 できます。「Rate」でモジュレーションの速度を設定します。 また、「Sync」ボタンを有効にしたときにホストアプリケー ションのテンポに同期させるかどうかも設定します。同期さ せる場合は、小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符 も含まれます)を指定できます。「Depth」でエフェクトの 強度を設定します。このエフェクトの詳細については、 Scanner Vibrato エフェクトを参照してください。 the Vibe ディレイペダル このセクションでは、ディレイ・エフェクト・ペダルについて説明します。 第 1 章 アンプとペダル 53 ストンプボックス 説明 ディレイエフェクトです。「Time」でモジュレーションの速 度を設定します。また、「Sync」ボタンを有効にしたときに ホストアプリケーションのテンポに同期させるかどうかも設 定します。同期させる場合は、小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符も含まれます)を指定できます。「Repeats」 ノブで、ディレイの反復回数を指定します。「Mix」でディ レイ信号とソース信号とのバランスを設定します。「Tone Cut」スイッチで、周波数が固定された内部フィルタ回路を 操作します。これにより、より多くの低周波(「Lo」)また は高周波(「Hi」)成分が聴こえるようにすることができま す。「Off」を選択して、このフィルタ回路を無効にすること もできます。 Blue Echo スプリング・リバーブ・ペダルです。「Time」で、リバーブ の長さを短、中、長のいずれかの値に設定します。「Tone」 でカットオフ周波数を操作します。これにより、エフェクト が明るくなったり暗くなったりします。「Style」でアルゴリ ズムを切り替えます。アルゴリズムごとに特徴が異なりま す。「Boutique」、「Simple」、「Vintage」、「Bright」、お よび「Resonant」から選択できます。「Mix」でソース信号と エフェクト信号の比率を設定します。 Spring Box ビンテージのテープ・ディレイ・エフェクトです。 「Norm/Reverse」スイッチで、ディレイの再生方向を変更し ます。「Reverse」モードは青色のLEDで、「Normal」モード は赤色のLEDで示されます。「Hi Cut」および「Lo Cut」で、 周波数の固定されたフィルタを有効にします。「Dirt」で、 入力信号のゲインの量を設定します。これにより、オーバー ドライブおよび飽和した音質が得られます。「Flutter」は、 テープの走行メカニズムによる速度の変動をエミュレートし ます。「Time」でモジュレーションの速度を設定します。ま た、「Sync」ボタンを有効にしたときにホストアプリケー ションのテンポに同期させるかどうかも設定します。同期さ せる場合は、小節、拍、および音符の値(3 連符や付点音符 も含まれます)を指定できます。「Feedback」で、入力に戻 されるエフェクト信号の量を指定します。積み重なった反復 信号は、リアルタイムで「Feedback」を調整することによ り、ダブディレイなどのエフェクトとして創造的に使うこと ができます。「Mix」でソース信号とエフェクト信号のバラ ンスを設定します。 Tru-Tape Delay フィルタペダル このセクションでは、フィルタ・エフェクト・ペダルについて説明します。 54 第 1 章 アンプとペダル ストンプボックス 説明 オートワウ(フィルタ)エフェクトです。「Sensitivity」で、 入力信号のレベルに対するフィルタの反応の度合いを決める しきい値を設定します。「Cutoff」でフィルタの中心周波数 を設定します。「BP/LP」スイッチで、バンドパスまたはロー パスのいずれかのフィルタ回路を有効にします。「BP」が選 択されているときは、カットオフポイントを上回る周波数と 下回る周波数が信号からフィルタ除去されます。「LP」が選 択されているときは、カットオフポイントを下回る信号だけ がフィルタを通過できます。「Hi/Lo」スイッチで、プリセッ トされた 2 つの(フィルタ)レゾナンス設定のいずれかを選 択します。「Up/Down」スイッチで、正または負の方向のモ ジュレーションを有効にします(ソース信号の周波数を上 回ったり下回ったりすると、「ワウ」フィルタリングが発生 します)。 Auto-Funk 1970年代の刑事ドラマのサウンドトラックそのものの、ファ ンキーなワウです。ペダルをドラッグして操作します。 Classic Wah よりアグレッシブなワウエフェクトです。ペダルをドラッグ して操作します。「Mode」で、「Retro Wah」、「Modern Wah」、「Opto Wah 1」、「Opto Wah 2」、「Volume」の中 から選択できます。それぞれ音質が異なります。「Q」ノブ で共鳴特性を指定します。Q 値を低くすると、幅広い周波数 範囲に作用して、ソフトなレゾナンスになります。Q 値を高 くすると、狭い周波数範囲に作用して、一層はっきりと強調 されます。 Modern Wah ダイナミクスペダル このセクションでは、ダイナミクスペダルについて説明します。 ストンプボックス 説明 シンプルなコンプレッサーです。「Sustain」でしきい値レベ ルを設定します。これを上回る信号のレベルは下げられま す。「Level」で出力ゲインを指定します。「Attack」スイッ チは、ドラムなどのアタックトランジェントの速い信号には 「Fast」に設定し、弦楽器などアタックフェーズの遅い信号 には「Slow」に設定します。 Squash Compressor ユーティリティペダル このセクションでは、「Mixer」および「Splitter」ユーティリティペダルのパラ メータについて説明します。 第 1 章 アンプとペダル 55 ストンプボックス 説明 「Bus A」の信号と「Bus B」の信号の間のレベルの関係を操 作するためのユーティリティです。信号経路のどこにでも挿 入できますが、通常は信号経路の末尾(ペダル領域の右端) で使います。使いかたの詳細については、Pedalboard のルー ティング領域を使うを参照してください。「A/Mix/B」スイッ チでは、「A」の信号をソロにしたり、「A」の信号と「B」 の信号をミックスしたり、「B」の信号をソロにしたりする ことができます。「Mix」フェーダーのレベル設定は、 「A/Mix/B」スイッチのすべての位置に適用されます。 ステレオインスタンスでは、「Mixer」ユーティリティによっ て、バスごとにパンを操作できます。 Mixer 信号経路のどこにでも挿入できるユーティリティです。 「Splitter」は 2 通りの方法で使うことができます。 「Freq」に設定すると、周波数に応じて入力信号を分割する スプリッタとして機能します。「Frequency」ノブで設定した 周波数を上回る信号は「BusB」に送られます。この周波数を 下回る信号は「Bus A」に送られます。 「Split」に設定すると、入力信号は両方のバスに均等にルー ティングされます。このモードでは「Frequency」ノブは作用 しません。 使いかたの詳細については、Pedalboard のルーティング領域 を使うを参照してください。 Splitter 56 第 1 章 アンプとペダル ディレイエフェクトでは、入力信号を保存し(短時間保持した後で)エフェクト 入力/出力に送信します。 保持して遅らせた信号は一定時間の後に繰り返され、エコーが繰り返される効果 が発生します。原音よりも、その後に続いて繰り返し響く音の方が、音量が小さ くなります。ほとんどのディレイエフェクトでは、ディレイをかけた信号の一定 割合を入力にフィードバックすることもできます。これにより、微妙なコーラス に似た効果や、音が重なり合う混沌としたオーディオを出力できます。 ディレイタイムはほとんどの場合、プロジェクトのグリッド分解能とマッチさせ る(通常は音符の値かミリ秒単位で)ことで、プロジェクトのテンポに同期でき ます。 ディレイの利用例としては、個々のサウンドを二重にして、複数の楽器で同じメ ロディを演奏しているようなサウンドにする、エコー効果を出して、広い空間で 響いているようなサウンドを作る、リズミックな効果を生み出す、ミックス内の トラックのステレオ位置を補正する、などがあります。 ディレイエフェクトは通常、チャンネルのインサートまたはバスエフェクトとし て使用されます。特殊なエフェクトをかけるような場合を除き、(出力チャンネ ルの)ミックス全体に対して使われることはほとんどありません。 この章では以下の内容について説明します: • Delay Designer (ページ 58) • Echo (ページ 79) • Sample Delay (ページ 80) • Stereo Delay (ページ 80) • Tape Delay (ページ 83) 57 ディレイエフェクト 2 Delay Designer Delay Designer はマルチタップディレイです。従来のディレイ装置では、回路に フィードバックできるディレイ(タップ)は1回または2回が限界ですが、Delay Designer では最大 26 回まで発生させることができます。これらのタップはすべ てソース信号から送られます。タップは自由に編集できるので、聴いたことのな いようなディレイ効果を作成できます。 Delay Designer では、各タップで次の要素を制御します: • レベルとパンの位置 • ハイパスフィルタとローパスフィルタ • ピッチトランスポーズ(上下) そのほかに、エフェクト全体に関係するパラメータとして、同期、クオンタイ ズ、およびフィードバックがあります。 Delay Designer という名前が示すように、効果的なサウンドのデザインが可能で す。基本的なエコーからオーディオのパターンシーケンサーまで、どのような場 面でも使用できます。タップのタイミングと同期させることにより、複雑で展開 や動きがあるリズムを作成できます。トランスポーズやフィルタリングと適切に 組み合わせれば、音楽の可能性が広がります。また、複数のタップをほかのタッ プのリピートとして設定できます。これはシンプルなディレイでフィードバック コントロールを使用する場合と似ていますが、リピート部分を個別に調節できる 点が違います。 Delay Designer はモノラル、ステレオ、サラウンドでの入力/出力を行うチャン ネルストリップに使用できます。サラウンドチャンネルストリップで使用する際 の詳細については、サラウンド環境で Delay Designer を操作するを参照してくだ さい。 58 第 2 章 ディレイエフェクト Delay Designer インターフェイスを理解する Delay Designer のインターフェイスは、次の 5 つのセクションで構成されていま す: Sync section Tap pads Tap parameter bar Main display Master section • メインディスプレイ: すべてのタップがグラフィック表示されています。こ の領域で、各タップのパラメータを表示および編集できます。Delay Designer のメインディスプレイを理解するを参照してください。 • タップ・パラメータ・バー: 選択したタップの現在のパラメータ設定の概要 が、数値で表示されます。この領域で、各タップのパラメータを表示および編 集できます。Delay Designer のタップ・パラメータ・バーでタップを編集する を参照してください。 • タップパッド: この 2 つのパッドを使って、Delay Designer でタップを作成で きます。Delay Designer でタップを作成するを参照してください。 • 「Sync」セクション: Delay Designer での同期およびクオンタイズのパラメー タは、すべてこのセクションで設定できます。Delay Designer でタップを同期 させるを参照してください。 • マスターセクション: この領域には、ミックスおよびフィードバックのグロー バルなパラメータが表示されます。Delay Designer のマスターセクションを使 うを参照してください。 第 2 章 ディレイエフェクト 59 Delay Designer のメインディスプレイを理解する DelayDesignerのメインディスプレイは、パラメータの表示と編集に使われます。 表示するパラメータを自由に設定でき、すべてのタップをすばやくズームしたり 選択したりできます。 Toggle buttons View buttons Autozoom button Overview display Tap display Identification bar • 表示ボタン: タップディスプレイに表示する 1 つまたは複数のパラメータを 指定します。Delay Designer の表示ボタンを使うを参照してください。 • 「Autozoom」ボタン: タップ表示がズームアウトされ、すべてのタップが表 示されます。ディスプレイを拡大(オーバービューディスプレイで垂直方向に ドラッグ)して特定のタップを表示したい場合は、「Autozoom」をオフにし ます。 • オーバービューディスプレイ: 時間の範囲内にあるすべてのタップが表示さ れます。Delay Designer のタップディスプレイをズームする/ナビゲートする を参照してください。 • 切り替えボタン: クリックすると、特定のタップのパラメータを有効または 無効にできます。切り替えるパラメータは表示ボタンで選択します。切り替え バーの左にあるラベルには常に、切り替えるパラメータが示されています。詳 細については、Delay Designer のタップ切り替えボタンを使うを参照してくだ さい。 60 第 2 章 ディレイエフェクト • タップディスプレイ: 各タップが影付きの線で表示されます。各タップには 1 本の明るい線(ステレオパンの場合は点)があり、パラメータの値を示して います。タップパラメータはタップディスプレイ領域で直接編集できます。詳 細については、Delay Designer のタップディスプレイのパラメータを編集する を参照してください。 • 認識バー: 各タップの識別文字が表示されます。各タップの時間軸上の位置 を示すインジケータにもなっています。バーおよびタイムラインに沿って、 タップの時間軸上の位置を前後に移動させることができます。Delay Designer でタップを移動する/削除するを参照してください。 Delay Designer の表示ボタンを使う 表示ボタンを使って、Delay Designer のタップディスプレイにどのパラメータを 表示するかを指定します。 • 「Cutoff」ボタン: タップのハイパスフィルタおよびローパスフィルタのカッ トオフ周波数が表示されます。 • 「Reso」(Resonance)ボタン: 各タップのフィルタのレゾナンス値が表示さ れます。 • 「Transp」(Transpose)ボタン: 各タップのピッチトランスポーズが表示され ます。 • 「Pan」ボタン: 各タップのパンパラメータが表示されます。 • モノラルチャンネルからステレオチャンネルの場合、各タップにはパン位置 を示す線が表示されます。 • ステレオチャンネルからモノラルチャンネルの場合、各タップにはステレオ バランスを示す点が表示されます。点から外側に延びている線は、タップの ステレオスプレッドを示しています。 • サラウンドチャンネルの場合、各タップにはサラウンドのアングルを示す線 が表示されます(詳細については、サラウンド環境で Delay Designer を操作 するを参照してください)。 • 「Level」ボタン: 各タップの相対的な音量レベルが表示されます。 ヒント: コマンドキー+Optionキーを押すと、一時的にタップディスプレイの 表示モードを「Level」表示に切り替えることができます。 第 2 章 ディレイエフェクト 61 Delay Designer のタップディスプレイをズームする/ナビゲートす る Delay Designer のオーバービューディスプレイを使うと、タップディスプレイ領 域のズームとナビゲートができます。 Overview display ヒント: タップの背面にオーバービューディスプレイが隠れている場合は、Shift キーを押すと、オーバービューディスプレイを前面に移動できます。 タップディスプレイをズームするには 以下のいずれかの操作を行います: µ オーバービューディスプレイの強調表示されたセクション(明るい長方形の領 域)を縦方向にドラッグします。 µ オーバービューディスプレイの強調表示されているバー(明るい長方形の領域の 右側または左側)を横方向にドラッグします。 62 第 2 章 ディレイエフェクト メモ: 手動でオーバービューディスプレイを拡大する場合には、「Autozoom」ボ タンを無効にする必要があります。少数のタップのグループをズームインした場 合、オーバービューディスプレイにはすべてのタップが表示されたままになりま す。タップディスプレイに表示される領域は、オーバービューディスプレイでは 明るい長方形で示されます。 タップディスプレイの別のセクションに移動するには µ オーバービューディスプレイの明るい長方形の領域(の中央)を横方向にドラッ グします。 タップディスプレイでズームされている画面が、ドラッグに合わせて変化しま す。 Delay Designer でタップを作成する ディレイタップを新規に作成するには3つの方法があります。タップパッドを使 うか、認識バーで作成するか、既存のタップをコピーする方法です。 タップパッドでタップを作成するには 1 上部にあるパッド(「Start」)をクリックします。 メモ: 「Start」パッドをクリックすると、既存のタップはすべて自動的に消去さ れます。この動作のため、あるタップを作成した後で、それとは別にタップを作 成する場合は、認識バーを使って作成してください。 上部のパッドラベルが「Tap」に変わり、赤いタップ録音バーが表示ボタンの下 にあるストリップに表示されます。 2 「Tap」ボタンをクリックすると、新しいタップの録音が始まります。 3 「Tap」ボタンをクリックすると、新しいタップが作成されます。クリックする たびにまったく同じタイミングで新しいタップが作成されるため、クリックのパ ターンに一致したリズムになります。 4 タップの作成を終了するには、「Last Tap」ボタンをクリックします。 これにより最後のタップが追加されてタップの録音が終了し、最後のタップは フィードバックタップとなります(フィードバックタップについては、Delay Designer のマスターセクションを使うを参照してください)。 第 2 章 ディレイエフェクト 63 メモ: 「Last Tap」ボタンをクリックしないと、10 秒後、または 26 番目のタップ が作成されたときのいずれか早い方のタイミングで、自動的に終了します。 認識バーでタップを作成するには µ 作成したい位置でクリックします。 認識バーのタップをコピーするには µ 選択したタップを、Option キーを押したまま該当する位置にドラッグします。 コピーしたタップのディレイタイムが、ドラッグした位置に設定されます。 Delay Designer でのタップ作成のアドバイス 複数のタップを作成する場合、最も早いのはタップパッドを使う方法です。すで に思い描いているリズムがあれば、マウスによるクリックではなく専用のハード ウェアコントローラのボタンでそのリズムをタップした方が簡単な場合もありま す。MIDI コントローラがある場合は、デバイスのボタンにタップパッドを割り 当てることができます。コントローラの割り当ての詳細については、「コント ロールサーフェスサポート」マニュアルを参照してください。 メモ: 「Start」タップパッドをクリックすると、既存のタップはすべて自動的に 消去されます。この動作のため、あるタップを作成した後で、それとは別にタッ プを作成する場合は、認識バーを使って作成してください。 タップを作成したら、タップの位置を自由に調整できます。誤って作成したタッ プは削除できます。詳細については、Delay Designer でタップを移動する/削除 するを参照してください。 64 第 2 章 ディレイエフェクト Delay Designer でタップを識別する タップには、作成した順番に文字が割り当てられます。最初に作成されたタップ は「タップ A」、2 番目のタップは「タップ B」という具合です。一度文字が割 り当てられると、時間軸上で移動しても(つまり順序を変更しても)、それぞれ のタップは同じ文字で識別されます。たとえば、最初に3つのタップを作成する と、それぞれタップ A、タップ B、タップ C という名前になります。ここで、 タップ B がタップ A より先に来るようにタップ B のディレイタイムを変更して も、タップ B はタップ B という名前のままです。 認識バーには、表示中の各タップの文字が示されています。タップ・パラメー タ・バーの「TapDelay」フィールドには、現在選択しているタップの文字(複数 のタップを選択している場合は、編集中のタップの文字)が表示されます(詳細 については、Delay Designer でタップを選択するを参照してください)。 Delay Designer でタップを選択する 少なくとも1つのタップは、常に選択された状態になっています。選択中のタッ プは色で簡単に見分けられます。切り替えバーのアイコンと、認識バーに表示さ れている選択中のタップの文字が、白になっています。 タップを選択するには 以下のいずれかの操作を行います: µ タップディスプレイでタップをクリックします。 µ 認識バーで、選択するタップの文字をクリックします。 µ タップ名の左側にあるいずれかの矢印をクリックすると、次または前のタップを 選択できます。 第 2 章 ディレイエフェクト 65 µ タップ名の右側にあるポップアップメニューを開き、該当するタップの文字を選 択します。 複数のタップを選択するには 以下のいずれかの操作を行います: µ タップディスプレイの背面でドラッグし、複数のタップを選択します。 µ タップディスプレイで、Shiftキーを押しながら離れた位置にある複数のタップを クリックして選択します。 Delay Designer でタップを移動する/削除する タップを時間軸上で前後に移動したり、完全に削除したりすることができます。 メモ: タップを移動すると、タップのディレイタイムを編集することになりま す。 選択したタップを時間軸上で移動するには µ 認識バーでタップを選択し、そのタップを時間軸上で前(左)または後(右)に ドラッグします。 複数のタップを選択している場合でもこの方法が可能です。 メモ: タップ・パラメータ・バーの「Tap Delay」フィールドにあるディレイ・タ イム・パラメータを編集しても、タップを時間軸上で移動できます。「TapDelay」 フィールドとタップの編集方法について詳しくは、Delay Designer のタップ・パ ラメータ・バーでタップを編集するを参照してください。 タップを削除するには 以下のいずれかの操作を行います: µ タップを選択し、Delete キーまたは Backspace キーを押します。 66 第 2 章 ディレイエフェクト µ 認識バーでタップの文字を選択し、タップディスプレイの下にドラッグします。 複数のタップを選択している場合でもこの方法が可能です。 選択したすべてのタップを削除するには µ タップをControlキーを押したままクリック(または単に右クリック)し、ショー トカットメニューで「Delete tap(s)」を選択します。 Delay Designer のタップ切り替えボタンを使う 切り替えバーには各タップの切り替えボタンがあります。このボタンを使うと、 パラメータをすばやくグラフィカルに、有効または無効にできます。切り替えボ タンで切り替わるパラメータは、現在の表示ボタンの選択状態によって異なりま す: • 「Cutoff」表示: 切り替えボタンでフィルタのオン/オフが切り替わります。 • 「Reso」表示: 切り替えボタンによって、フィルタの傾斜が 6 dB 〜 12 dB の 間で切り替わります。 • ピッチ表示: 切り替えボタンによって、ピッチトランスポーズのオン/オフ が切り替わります。 • 「Pan」表示: 切り替えボタンによって、フリップモードが切り替わります。 • 「Level」表示: 切り替えボタンによって、タップをミュートまたはミュート 解除します。 第 2 章 ディレイエフェクト 67 タップのミュートを一時的に切り替えるには µ 現在の表示に関係なく、コマンドキー+ Option キーを押しながら切り替えボタ ンをクリックします。 コマンドキーと Option キーを放すと、切り替えボタンは有効な表示モードの通 常の機能に戻ります。 メモ: フィルタまたはピッチトランスポーズのパラメータをはじめて編集すると きは、それぞれのモジュールが自動的にオンになります。これにより、フィルタ やピッチトランスポーズのモジュールを手動でオンにする手間なしに編集作業に 移れます。ただし、どちらかのモジュールを手動でオフにした場合、再びオンの 状態に戻すには手動で行う必要があります。 Delay Designer のタップディスプレイのパラメータを編集する Delay Designer のタップディスプレイで縦の線として表示されているタップパラ メータは、どれもグラフィカルに編集できます。あるタップのパラメータをほか のパラメータを基準にして編集したい場合や、同時に複数のタップを編集する必 要がある場合には、タップディスプレイが最適です。 タップディスプレイでタップパラメータを編集するには 1 編集したいパラメータの表示ボタンをクリックします。 2 編集したいタップで明るくなっている線を縦方向にドラッグします(複数のタッ プを選択している場合は、選択しているタップのどれか1つをドラッグします)。 複数のタップを選択している場合、選択したすべてのタップの値は互いを基準に して変更されます。 68 第 2 章 ディレイエフェクト メモ: 上記の方法は、「FilterCutoff」および「Pan」パラメータでは少し異なりま す。DelayDesignerのタップディスプレイの「Filter Cutoff」を編集するおよびDelay Designer のタップディスプレイの「Pan」を編集するを参照してください。 複数のタップの値を設定するには µ タップディスプレイにある複数のタップに対してコマンドキーを押したまま横方 向にドラッグします。 タップでドラッグする際に、パラメータ値がマウス位置に合わせて変化します。 コマンドキーを押しながら複数のタップをドラッグすると、紙に鉛筆で曲線を描 くのと同じように、値の曲線を描くことができるということです。 Delay Designer でタップの値をそろえる Delay Designer のタップディスプレイでは、縦の線として表示されているタップ パラメータの値をグラフィカルにそろえることができます。 複数のタップの値をそろえるには 1 コマンドキーを押しながらタップディスプレイをクリックし、コマンドキーを押 したままポインタを動かします。こうするとポインタの軌跡が付きます。 第 2 章 ディレイエフェクト 69 2 該当する位置をクリックして、線の終点をマークします。 始点と終点の間にあるタップの値が線とそろいます。 Delay Designer のタップディスプレイの「Filter Cutoff」を編集する DelayDesignerのタップディスプレイのパラメータを編集するでの方法はグラフィ カルに編集できるパラメータの大部分で使用できますが、「Cutoff」と「Pan」で はパラメータの動作が若干異なります。 「Cutoff」表示で、各タップは 2 つのパラメータ(ハイパスフィルタとローパス フィルタのカットオフ周波数)を示しています。フィルタカットオフ値は、特定 のカットオフ周波数ライン(上の線がハイパス、下の線がローパス)をドラッグ することで、別々に調整できます。また、両方のカットオフ周波数の中間でド ラッグすることで、両方を調整できます。 70 第 2 章 ディレイエフェクト ハイパスフィルタのカットオフ周波数値がローパスフィルタのカットオフ周波数 値より低い場合、表示される線は1本だけです。この線は、両フィルタを通過す る周波数帯域を表しています(つまり両フィルタはバンドパスフィルタとして機 能します)。この設定の場合、2 つのフィルタは直列に機能します。つまり、 タップはまず最初のフィルタを通過し、続いて次のフィルタを通過します。 ハイパスフィルタのカットオフ周波数値がローパスフィルタのカットオフ周波数 値より高い場合、フィルタの動作は直列から並列に移行します。つまり、タップ は両方のフィルタを同時に通過します。この場合、2つのカットオフ周波数の間 の幅が遮断される周波数帯域となります(つまり、両フィルタはバンド遮断フィ ルタの役割を果たします)。 Delay Designer のタップディスプレイの「Pan」を編集する 「Pan」表示での「Pan」パラメータ表示方法は、入力チャンネル設定(モノラル からステレオ、ステレオからステレオ、サラウンド)で異なります。 メモ: 「Pan」は、モノラル設定では使用できません。 モノラル入力/ステレオ出力の設定では、すべてのタップはまずセンターにパン されます。パン位置を編集するには、タップのセンターからタップをパンしたい 方向に縦方向にドラッグします。白い線がセンターからドラッグした方向に延 び、タップのパン位置に反映されます(複数のタップを選択の場合は複数に反 映)。 第 2 章 ディレイエフェクト 71 センター位置より上のラインは左へのパンを、センター位置より下のラインは右 へのパンを表します。左側(青色)と右側(緑色)のチャンネルは簡単に見分け がつきます。 ステレオ入力/出力設定の場合、「Pan」パラメータはステレオ空間におけるタッ プ位置ではなく、ステレオバランスを調整します。「Pan」パラメータは、ステ レオバランスを表すドットとして表示されます。ドットをタップの上または下に ドラッグして、ステレオバランスを調整します。 デフォルトでは、ステレオスプレッドは100%に設定されています。これを調整 するには、どちらかの側のドットをドラッグします。調節すると、ドットから外 に延びている線の幅が変わります。タップ・パラメータ・バーのスプレッドパラ メータを確認しながら調整してください。 サラウンド設定の場合、明るい線はサラウンドアングルを示しています。詳細に ついては、サラウンド環境で Delay Designer を操作するを参照してください。 72 第 2 章 ディレイエフェクト Delay Designer のタップ・パラメータ・バーでタップを編集する タップ・パラメータ・バーからは、選択したタップのすべてのパラメータにすぐ にアクセスできます。タップ・パラメータ・バーからは、「Transpose」や「Flip」 など、タップディスプレイでは使用できないパラメータにもアクセスできます。 1つのタップのパラメータを編集したい場合は、タップ・パラメータ・バーを使 うとすばやく正確に編集できます。選択したタップの全パラメータを対象にで き、ディスプレイ表示を切り替えたり縦線で値を計算したりする必要がありませ ん。タップディスプレイで複数のタップを選択している場合、選択したすべての タップの値は互いを基準にして変更されます。 Optionキーを押しながらパラメータの値をクリックすると、デフォルトの設定値 にリセットされます。複数のタップを選択している場合は、いずれかのタップの パラメータを Option キーを押しながらクリックすると、選択しているすべての タップのパラメータがデフォルト値にリセットされます。 • フィルタ「On」ボタン、「Off」ボタン: 選択したタップのハイパスフィルタ およびローパスフィルタを有効または無効にします。 • 「HP - Cutoff - LP」フィールド: ハイパスフィルタおよびローパスフィルタ のカットオフ周波数(単位は Hz)を設定します。 • スロープ選択ボタン: ハイパスフィルタおよびローパスフィルタのスロープ の傾斜を指定します。「6」dBボタンをクリックするとフィルタの傾斜が穏や かになり、「12」dB ボタンをクリックすると傾斜が急になってより際立った フィルタリング効果が得られます。 メモ: ハイパスフィルタおよびローパスフィルタの傾斜は、別々には設定でき ません。 • 「Reso」(Resonance)フィールド: 両方のフィルタのフィルタレゾナンス量 を設定します。 • 「Tap Delay」フィールド: 上段には選択したタップの番号と名前、下段には ディレイタイムが表示されます。 • ピッチ・オン/オフ・ボタン: 選択したタップのピッチトランスポーズを有 効または無効にします。 • 「Transp」(Transpose)フィールド: 左側のフィールドでは、半音単位でピッ チトランスポーズの量を設定します。右側のフィールドでは、セント単位(半 音の 100 分の 1)で各半音を微調整します。 第 2 章 ディレイエフェクト 73 • 「Flip」ボタン: ステレオまたはサラウンドイメージの左右が入れ替わりま す。このボタンをクリックするとタップ位置が左から右、または右から左に逆 転します。たとえばタップが55%左に設定されている場合、「Flip」ボタンを クリックすることで 55 %右になります。 • 「Pan」フィールド: モノラル入力信号のパン位置、ステレオ入力信号のステ レオバランス、サラウンド設定で使用している場合はサラウンドアングルを調 節します。 • 「Pan」には、パン位置またはタップのバランスが、100%(すべて左)〜- 100%(すべて右)というパーセンテージで表示されます。値が 0 %の場合 はセンターのパノラマ位置です。 • サラウンドで使用している場合は、パーセンテージ表示ではなくサラウンド パンナーが表示されます。詳細については、サラウンド環境でDelayDesigner を操作するを参照してください。 • 「Spread」フィールド: Delay Designer の、ステレオからステレオまたはステ レオからサラウンドのインスタンスを使用している場合は、「Spread」を使っ て、選択したタップのステレオスプレッドの幅を設定できます。 • 「Mute」ボタン: 選択したタップをミュートまたはミュート解除します。 • 「Level」フィールド: 選択したタップの出力レベルを指定します。 ショートカットメニューで Delay Designer のタップを編集する Delay Designer のタップディスプレイで Control キーを押したままタップをクリッ ク(または右クリック)すると、ショートカットメニューが開き、次のコマンド を実行できます: • Copysoundparameters: 選択中の1つまたは複数のタップの全パラメータ(ディ レイタイムは除きます)をコピーします。 • Paste sound parameters: タップのパラメータを、選択中の 1 つまたは複数の タップにクリップボードからペーストします。タップディスプレイで選択した よりも多数のタップがクリップボードに保存されている場合、クリップボード に残っている余分なタップは無視されます。 • Reset sound parameters to default values: 選択中のすべてのタップの全パラメー タ(ディレイタイムは除きます)をデフォルト値にリセットします。 • 2 x delay Time: 選択中のすべてのタップのディレイタイムを倍の長さにしま す。たとえば、3 つのタップのディレイタイムを、タップ A = 250 ms、タップ B = 500 ms、タップ C = 750 ms と設定したとします。この 3 つのタップを選択 してから「2xdelaytime」ショートカットメニューコマンドを選択すると、タッ プ A = 500 ms、タップ B = 1000 ms、タップ C = 1500 ms というディレイタイム に変更されます。つまり、リズミカルなディレイパターンが半分の速度で展開 されます。(音楽的な表現を使うと、半分のテンポで演奏されるということで す。) 74 第 2 章 ディレイエフェクト • 1/2 x delay time: 選択中のすべてのタップのディレイタイムを半分の長さにし ます。先ほどの例で「1/2 x delay time」ショートカットメニューコマンドを使 うと、タップ A = 125 ms、タップ B = 250 ms、タップ C = 375 ms というディレ イタイムに変更されます。つまり、リズミカルなディレイパターンが2倍の速 度で展開されます。(音楽的な表現を使うと、倍のテンポで演奏されるという ことです。) • Delete tap(s): 選択中のすべてのタップを削除します。 Delay Designer のタップの値をリセットする DelayDesignerのタップディスプレイまたはタップ・パラメータ・バーを使うと、 タップパラメータをデフォルトの値にリセットすることができます。 タップの値をリセットするには 以下のいずれかの操作を行います: µ タップディスプレイで、Optionキーを押しながらタップをクリックすると、選択 したパラメータがデフォルト設定にリセットされます。 複数のタップを選択している場合は、いずれかのタップを Option キーを押しな がらクリックすると、選択中のすべてのタップでそのパラメータがデフォルト値 にリセットされます。 µ タップ・パラメータ・バーで、Optionキーを押しながらパラメータの値をクリッ クすると、デフォルト設定にリセットされます。 複数のタップを選択している場合は、いずれかのタップのパラメータを Option キーを押しながらクリックすると、選択しているすべてのタップのパラメータが デフォルト値にリセットされます。 Delay Designer でタップを同期させる DelayDesignerは、プロジェクトのテンポに同期するか、独立して進行できます。 同期モードの場合、音符の継続時間に基づいて、音楽的に適当な場所のグリッド にタップがスナップします。同期モードの場合は、スウィング値も設定できま す。この値によってグリッドの厳密なタイミングを変えることができるので、各 タップにリラックスした(機械的ではない)雰囲気を出すことができます。同期 モード以外では、タップはグリッドにスナップせず、スウィング値も設定できま せん。 同期モードがオンの場合は、選択したグリッドパラメータ値に対応するグリッド が認識バーに表示されます。すべてのタップはグリッド上の最も近いディレイタ イムの値に移動します。以降に作成または移動されるタップは、グリッド上の位 置にスナップされます。 第 2 章 ディレイエフェクト 75 Delay Designer 設定を保存すると、同期モードのステータス、グリッド値および スウィング値はすべて保存されます。同期モードをオンにした状態で設定を保存 した場合は、各タップのグリッド位置も保存されます。これにより、設定が作成 されたプロジェクトのテンポとは異なるテンポのプロジェクトに設定が読み込ま れた場合でも、すべてのタップにおいて、相対的な位置とリズムが新しいテンポ で維持されます。 メモ: Delay Designer では、最長で 10 秒のディレイタイムを設定できます。つま り、作成時のテンポより遅いテンポのプロジェクトに設定を読み込んだ場合、10 秒の制限を超えてしまうタップが出てくる可能性があります。その場合は、タッ プは再生されませんが、設定の一部として保存されています。 • 「Sync」ボタン: 同期モードを有効または無効にします。 • 「Grid」ポップアップメニュー: 何種類かのグリッド分解能があり、これらは 音符の継続時間に対応しています。グリッド分解能は、プロジェクトテンポと 共に各グリッド間隔の長さを指定します。グリッド分解能を変更すると、それ に従って、認識バーに表示される間隔も変化します。これにより、すべての タップのステップ制限も指定されます。 たとえば、現在のテンポが 120 BPM(Beats Per Minute)に設定されているプロ ジェクトがあるとします。「Grid」ポップアップメニューの値は「1/16」(16 分音符)に設定されています。このテンポとグリッド分解能では、各グリッド 間隔は125ミリ秒(ms)です。現在タップAが380msに設定されている場合、 同期モードをオンにするとタップ A は 375 ms になります。もし次にタップ A を時間軸上で進めると、タップ A は 500 ms、625 ms、750 ms にスナップしま す。8 分音符の分解能では、ステップは 250 ms 間隔なので、タップ A は最も 近い目盛(500 ms)に自動的にスナップし、750 ms、1000 ms、1250 ms へ移動 します。 76 第 2 章 ディレイエフェクト • 「Swing」フィールド: 次に続くグリッド間隔が、絶対的なグリッド位置にど れだけ近づくかを指定します。スウィング設定が 50 %の場合、グリッド間隔 はすべて同じ値になります。設定が 50 %未満の場合、次に続くグリッド間隔 は時間軸上でより短くなります。設定が 50 %を超える場合、次に続くグリッ ド間隔は時間軸上でより長くなります。 次に続く間隔のグリッド位置を微妙に変化させると(値は 45 〜 55 %)、リズ ムの印象がより柔らかくなります。これにより、人間が演奏しているようなタ イミングのずれを発生させることができます。スウィング値を極端に高い値に すると、次に続く間隔はその後の間隔のすぐ近くに配置されるため、効果は微 妙どころではなくなります。高い値を使用すると、グリッドを保持して一部の タップをプロジェクトテンポに厳密に同期させ、そのほかのタップには面白く て複雑な二重のリズムを持たせることができます。 Delay Designer のマスターセクションを使う マスターセクションには、2つのグローバル関数のパラメータがあります。ディ レイフィードバックとドライ/ウェットのミックスです。 シンプルなディレイの場合、ディレイをリピートするにはフィードバックを使用 するのが唯一の方法です。Delay Designer は 26 のタップを備えているため、これ を使ってリピートを作成できます。個々のタップにフィードバック動作の指示を する必要はありません。 また、Delay Designer のグローバルなフィードバックパラメータを使用すると、 ユーザが定義した1つのタップの出力をエフェクト入力経由で送り返し、自律的 なリズムやパターンを作ることができます。この種類のタップはフィードバック タップと呼ばれます。 • 「Feedback」ボタン: フィードバックタップを有効または無効にします。 第 2 章 ディレイエフェクト 77 • 「フィードバック・タップ」ポップアップメニュー: フィードバックタップ 用のタップを選択するために使います。 • フィードバック・レベル・ノブ: フィードバックレベルを設定します。Delay Designerの入力に戻される前に、フィードバックタップの出力レベルを調整で きます。 • 値が 0 %のときは、フィードバックが発生しません。 • 値を100%にすると、フル音量でDelayDesignerの入力にフィードバックタッ プが送られます。 メモ: フィードバックがオンの最中にタップパッドでタップの作成を開始する と、フィードバックは自動的にオフになります。タップパッドでタップの作成 を停止すると、フィードバックは自動的にオンに戻ります。 • 「Mix」スライダ: ドライ入力信号と処理後のウェット信号のレベルを個別に 設定します。 サラウンド環境で Delay Designer を操作する Delay Designer は、サラウンド設定での使用に最適な設計になっています。タッ プが 26 あるので、サラウンド空間に自由に配置し、リズミックで空間的な効果 を生み出すことができます。 Delay Designer は常に各入力チャンネルを個別に処理します。 • モノ/ステレオ入力とサラウンド出力という設定の場合、Delay Designer は 2 つのチャンネルを個別に処理するため、サラウンドパンナーを使うと各ディレ イをサラウンド空間に配置できます。 • サラウンド入力とサラウンド出力という設定の場合、Delay Designer は各サラ ウンドチャンネルを個別に処理するため、サラウンドパンナーを使うとサラウ ンド空間で各タップのサラウンドバランスを調節できます。 サラウンド設定で Delay Designer のインスタンスを作成する場合は、タップ・パ ラメータ・バーの「Pan」パラメータがサラウンドパンナーと置き換わるため、 各タップのサラウンド位置を設定できます。 メモ: タップディスプレイのパン表示モードでは、タップのアングルしか調整で きません。タップ・パラメータ・バーでサラウンドパンナーを使って、ダイバシ ティを調整する必要があります。 78 第 2 章 ディレイエフェクト サラウンド位置を簡単に移動するには、次のいずれかを行います: • コマンドキーを押したままドラッグすると、ダイバシティが調整されます。 • コマンドキーと Option キーを押したままドラッグすると、アングルが調整さ れます。 • Optionキーを押しながら青い点をクリックすると、アングルとダイバシティが リセットされます。 メモ: DelayDesignerは、ステレオパンとサラウンドパンの操作ごとにオートメー ションデータを生成します。つまり、サラウンドチャンネルまたはステレオパン のどちらか一方で Delay Designer を使用している場合、もう一方の既存のオート メーションデータには反応しません。 Echo ディレイタイムを常にプロジェクトテンポに同期させる、シンプルなエコーエ フェクトです。曲とテンポが合ったエコーをすばやく作成できます。 • 「Time」ポップアップメニュー: プロジェクトのテンポに基づいて、音符の 継続時間におけるディレイタイムのグリッド分解能を設定します。 • 「T」の値は 3 連符を表します。 • 「.」の値は付点音符を表します。 • 「Repeat」スライダ/フィールド: ディレイエフェクトのリピート頻度を指定 します。 • 「Color」スライダ/フィールド: ディレイ信号のハーモニック量(音色)を 設定します。 • 「Dry」および「Wet」スライダ/フィールド: オリジナル信号とエフェクト 信号の量を制御します。 第 2 章 ディレイエフェクト 79 Sample Delay SampleDelayは、エフェクトというよりはユーティリティに近いものです。これ を使うと、単独のサンプル値のみでチャンネルにディレイをかけることができま す。 Sample Delay は、Gain エフェクトの位相反転機能と一緒に使用した場合、マル チ・チャンネルのマイクで発生するタイミングの問題を修正するのに役立ちま す。また、ステレオマイクのチャンネルセパレーションをエミュレートするとい う、クリエイティブな使いかたも可能です。 1 回のサンプル(周波数 44.1 kHz の場合)は、音波が 7.76 ミリメートル進むのに かかる時間と同じです。ステレオマイクの片方のチャンネルに 13 サンプル分の ディレイをかけると、2本のマイクが10センチメートル離れている状態がエミュ レートされます。 • 「Delay」スライダ/フィールド(ステレオバージョンでは「DelayL」と「Delay R」): 入力信号にディレイをかけるサンプルの数を指定します。 • 「LinkL&R」ボタン(ステレオバージョンのみ): 左右のチャンネルでサンプ ルの数が同じになるようにします。一方のチャンネルの値を調整すると、他方 のチャンネルも調整されます。 Stereo Delay Stereo Delay は Tape Delay(Tape Delayを参照)のように機能しますが、左右の チャンネルで、ディレイ、フィードバック、ミックスの各パラメータを別々に設 定できます。各ステレオサイドにあるクロスフィードノブは、フィードバックの 強さ(つまり各信号が逆のステレオサイドに送られるレベル)を指定します。両 方のステレオサイドに対して個別にディレイを作成したいときは、モノラルのト ラックまたはバスで Stereo Delay を自由に使用できます。 80 第 2 章 ディレイエフェクト メモ: モノラルチャンネルのストリップにこのエフェクトを使用している場合、 トラックやバスには挿入位置から2つのチャンネルが現れます(選択したスロッ トより後ろのインサートスロットはすべてステレオになります)。 左右のディレイパラメータは同じなので、以下では左チャンネルについてのみ説 明します。名前が異なる場合は、括弧の中に右チャンネルの名前を記載します。 両方のチャンネルに共通のパラメータも別々に表示されます。 チャンネルのパラメータ • 「LeftInput」(RightInput)ポップアップメニュー: 2つのステレオサイドへの 入力信号を選択します。「Off」、「Left」、「Right」、「L+R」、「L-R」から 選択できます。 • 「Left Delay」(Right Delay)フィールド: 現在のディレイタイムをミリ秒単位 で設定します(ディレイタイムをプロジェクトのテンポに同期させている場 合、このパラメータは使用できません)。 • 「Groove」スライダ/フィールド: 絶対的なグリッド位置に対する後続のディ レイリピートの近さを指定します(後に続くディレイリピートがどれだけ近い かということです)。 • 音符ボタン: ディレイタイムのグリッド分解能を設定します。音符の継続時 間で表示されます(ディレイタイムをプロジェクトのテンポに同期させていな い場合は使用できません)。 • 「Left Feedback」(Right Feedback)ノブ/フィールド: 左右のディレイ信号の フィードバックの量を設定します。 第 2 章 ディレイエフェクト 81 • 「Crossfeed Left to Right」(Crossfeed Right to Left)ノブ/フィールド: 左チャン ネルのフィードバック信号を右チャンネルに、右チャンネルのフィードバック 信号を左チャンネルに転送します。 • 「Phase」ボタン(左右のフィードバック用): 対応するチャンネルのフィー ドバック信号の位相を反転します。 • 「Phase」ボタン(左右のクロスフィード用): クロスフィードされたフィー ドバック信号の位相を反転します。 共通パラメータ • 「Beat Sync」ボタン: ディレイリピートがプロジェクトのテンポに同期しま す。テンポの変化もあります。 • 「OutputMix」(「Left」および「Right」)スライダ/フィールド: 左右のチャ ンネルの信号を個別に制御します。 • 「Low Cut」および「High Cut」スライダ/フィールド: 「Low Cut」値より低 い周波数、および「High Cut」値より高い周波数は、ソース信号からフィルタ 除去されます。 82 第 2 章 ディレイエフェクト Tape Delay Tape Delay は、旧式のテープエコーマシンの温かいサウンドをシミュレートしま す。プロジェクトのテンポにディレイタイムを簡単に同期させることができる、 便利な機能も付いています。このエフェクトはフィードバックループにハイパス フィルタとローパスフィルタを備えているため、本物のダブエコー効果を簡単に 作り出すことができます。Tape Delay は、ディレイタイムモジュレーション用の LFO も備えています。LFO を使うと、長いディレイであっても、心地良いコーラ スや一風変わったコーラスを作り出すことができます。 • 「Feedback」スライダ: Tape Delay の入力に戻される、ディレイのかかった、 フィルタリングされた信号の量を指定します。「Feedback」スライダを最小値 に設定すると、エコーが 1 回かかります。「Feedback」を一番上まで上げる と、信号が無限に繰り返されます。原音信号とそのタップ(エコーリピート) のレベルが加算されていく傾向があり、その結果、歪みが発生することがあり ます。このような場合は、内蔵のテープサチュレーション回路を使うと、信号 が過剰気味になってもサウンド品質が良好に保たれます。 • 「Freeze」ボタン: 現在のディレイリピートを取り込み、「Freeze」ボタンが オフになるまでそれを保持します。 • 「Delay」フィールド: 現在のディレイタイムをミリ秒単位で設定します(ディ レイタイムをプロジェクトのテンポに同期させている場合、このパラメータは 使用できません)。 • 「Sync」ボタン: ディレイリピートがプロジェクトのテンポに同期します(テ ンポの変化もあります)。 • 「Tempo」フィールド: 現在のディレイタイムを bpm(beats per minute)単 位で設定します(ディレイタイムをプロジェクトのテンポに同期させている場 合、このパラメータは使用できません)。 第 2 章 ディレイエフェクト 83 • 「Groove」スライダ/フィールド: 絶対的なグリッド位置に対する後続のディ レイリピートの近さを指定します(後に続くディレイリピートがどれだけ近い かということです)。「Groove」設定が 50 %の場合、各ディレイのディレイ タイムは同一になります。設定が 50 %未満の場合、後続の各ディレイは時間 軸上でより早く再生されます。設定が 50 %を超える場合、後続の各ディレイ は時間軸上でより遅く再生されます。付点音符の値を作成したい場合は 「Groove」スライダを右端(75 %)まで動かします。3 連符の場合は 33.33 % の設定を選択してください。 • 音符ボタン: ディレイタイムのグリッド分解能を設定します。これはノート の長さとして表されます。 • 「Low Cut」および「High Cut」スライダ/フィールド: 「Low Cut」値より低 い周波数、および「High Cut」値より高い周波数は、ソース信号からフィルタ 除去されます。ハイパスフィルタとローパスフィルタを使い、エコーのサウン ドを成形できます。フィルタはフィードバック回路にあるので、ディレイリ ピートが発生するたびにフィルタ効果が強まります。濁った感じを強めたい場 合は、「HighCut」スライダを左に動かします。エコーを薄めにしたい場合は、 「Low Cut」スライダを右に動かします。設定は適切であるはずなのにエフェ クトが聞こえない場合は、「Dry」/「Wet」コントロール、およびフィルタ設 定の両方を確認してください(「HighCut」フィルタスライダを右端に、「Low Cut」フィルタを左端に動かして確認します)。 • 「Smooth」スライダ/フィールド: LFO とフラッター効果を抑えます。 • 「LFO」の「Rate」ノブ/フィールド: LFO の周波数を設定します。 • 「LFO」の「Depth」ノブ/フィールド: LFOモジュレーションの量を設定しま す。値が 0 の場合、ディレイモジュレーションはオフになります。 • 「FlutterRate」および「FlutterIntensity」スライダ/フィールド: アナログテー プのディレイ装置で使用される、テープの不規則な走行速度をシミュレートし ます。 • 「Flutter Rate」: 速度を設定します。 • 「Flutter Intensity」: 効果の強さを指定します。 • 「Dry」および「Wet」スライダ/フィールド: オリジナル信号とエフェクト 信号の量を個別に制御します。 • 「DistortionLevel」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): ディストー ション(テープサチュレーション)信号のレベルを指定します。 84 第 2 章 ディレイエフェクト ディストーションのエフェクトを使って、アナログまたはデジタルのディストー ションサウンドを再現し、オーディオをがらりと変えることができます。 ディストーションエフェクトは、真空管、トランジスタ、またはデジタル回路で 生み出されるディストーションをシミュレートします。真空管はデジタルオー ディオ技術が発達する前からオーディオアンプに使用されており、現在でも楽器 のアンプに使用されています。真空管の増幅素子に過剰な負荷をかけると、多く の人が音楽的な心地良さを感じるある種の歪みが発生します。そのため、ロック やポップスのサウンドでよく使われるようになりました。真空管によるアナログ ディストーションをかけると、信号が独特の温かみと鋭さを帯びます。 意図的に信号のデジタルディストーションやクリッピングを発生させるディス トーションエフェクトもあります。これらのエフェクトは、歌や曲などのトラッ クを修正して、激しい、不自然な響きを発生させたり、効果音を作成したりする 場合に使用できます。 ディストーションエフェクトには、信号を(通常は周波数ベースのフィルタとし て)どのように変質させるかを調整するトーン用パラメータと、信号の出力レベ ルの変化を調整するゲイン用パラメータがあります。 警告: 出力レベルを高く設定すると、ディストーションエフェクトが聴覚およ びスピーカーに悪影響を及ぼすことがあります。エフェクト設定を調整すると きは、トラックの出力レベルを下げておき、徐々にレベルを上げていくことを お勧めします。 この章では以下の内容について説明します: • Bitcrusher (ページ 86) • Clip Distortion (ページ 87) • Distortion エフェクト (ページ 89) • Distortion II (ページ 90) • Overdrive (ページ 91) • Phase Distortion (ページ 91) 85 ディストーションエフェクト 3 Bitcrusher Bitcrusher は低分解能のデジタル・ディストーション・エフェクトです。初期の デジタル・オーディオ・デバイスのサウンドをエミュレートしたり、サンプル レートを分割することで意図的にエイリアシングを作り出したり、識別不能なレ ベルにまで信号を歪ませたりするのに使用できます。 • 「Drive」スライダ/フィールド: 入力信号に加えるゲインの量(デシベル単 位)を設定します。 メモ: 「Drive」レベルを上げると、Bitcrusherの出力時でのクリッピング量も増 加しやすくなります。 • 「Resolution」スライダ/フィールド: ビットレート(1 〜 24 ビット)を設定 します。これにより、処理の計算精度が変わります。値を下げるとサンプリン グエラー数が増加し、ディストーションが強くなります。ビットレートを極端 に低くすると、ディストーションの量は使用可能な信号のレベルよりも大きく なります。 • 波形ディスプレイ: ディストーション処理にパラメータが及ぼす影響を示し ます。 • 「Downsampling」スライダ/フィールド: サンプルレートを低減させます。 値が「1x」の場合は信号は変わらず、「2x」の場合はサンプルレートが元の信 号の半分に、「10x」の場合は 10 分の 1 に低減します。(たとえば、 「Downsampling」を「10x」に設定した場合は 44.1 kHz の信号が 4.41 kHz でサ ンプリングされます。) メモ: 「Downsampling」は、信号の再生速度やピッチには影響を与えません。 • モードボタン: ディストーションモードを「押さえ込む」、「カット」、ま たは「ずらす」に設定します。クリップレベルを超える信号のピークは処理さ れます。 86 第 3 章 ディストーションエフェクト メモ: 「Clip Level」パラメータは、3 つのいずれのモードの動作にも大きく影 響します。これは波形ディスプレイに反映されるので、各モードボタンを試 し、「ClipLevel」スライダを調整して、どのように機能するかを把握してくだ さい。 • 押さえ込む: クリップ信号の最初と最後のレベルは変更されず、中間の部 分が半分に押さえ込まれます(しきい値を超えると半分のレベルにされま す)。これにより、ソフトなディストーションになります。 • カット: クリッピングのしきい値を超えると、信号が突然歪みます。ほと んどのデジタルシステムで発生するクリッピングは、カットモードに近くな ります。 • ずらす: 信号の最初、中間、最後のレベル(いずれもしきい値を超える値) が補正され、信号のレベルがしきい値以上になるとディストーションが弱ま ります。クリップ信号の中間部分も、カットモードよりもソフトになりま す。 • 「ClipLevel」スライダ/フィールド: 信号がクリッピングを開始する点を設定 します(チャンネルストリップのクリッピングしきい値よりも下です)。 • 「Mix」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): ドライ(オリジナ ル)信号とウェット(エフェクト)信号とのバランスを指定します。 Clip Distortion ClipDistortionは、予想もつかないようなスペクトラムを発生する、ノンリニアの ディストーションエフェクトです。過剰に負荷がかかった真空管によって発生す る温かみのあるサウンドをシミュレートできるだけではなく、過激なディストー ションを発生させることもできます。 ClipDistortionは、フィルタを直列に接続した独特の構造を特徴としています。入 力信号は「Drive」の値で増幅された後、ハイパスフィルタを通過し、続いてノ ンリニアディストーションがかけられます。ディストーション処理の後、信号は ローパスフィルタを通過します。エフェクトのかかった信号は元の信号と再び組 み合わさり、そのミックス信号が別のローパスフィルタを通過します。3 つの フィルタのスロープは、いずれも 6 db/Oct です。 第 3 章 ディストーションエフェクト 87 この独特な組み合わせのフィルタによって、周波数スペクトラムにギャップが生 じ、この種のノンリニアディストーションで優れたサウンドを得ることができる のです。 • 「Drive」スライダ/フィールド: 入力信号に加えるゲインの量を設定します。 信号は「Drive」の値で増幅された後、ハイパスフィルタを通過します。 • 「Tone」スライダ/フィールド: ハイパスフィルタのカットオフ周波数(ヘ ルツ単位)を設定します。 • 「Clip Circuit」ディスプレイ: 「High Shelving」フィルタパラメータ以外のす べてのパラメータの影響を表示します。 • 「Symmetry」スライダ/フィールド: 信号に加えるノンリニア(非対称)の ディストーションの量を設定します。 • 「ClipFilter」スライダ/フィールド: 最初のローパスフィルタのカットオフ周 波数(ヘルツ単位)を設定します。 • 「Mix」スライダ/フィールド: 「Clip Filter」での処理後に、エフェクトのか かった(ウェット)信号と元の(ドライ)信号との比率を設定します。 • 「Sum LPF」ノブ/フィールド: ローパスフィルタのカットオフ周波数(ヘル ツ単位)を設定します。ミックスされた信号を処理します。 • 「High Shelving」の「Frequency」ノブ/フィールド: ハイ・シェルビング・ フィルタの周波数(ヘルツ単位)を設定します。「High Shelving」の 「Frequency」を 12 kHz 付近に設定すると、ステレオのハイファイアンプかミ キサー・チャンネル・ストリップの高音部コントロールのように使用できま す。ただし、高音部コントロールとは異なる点として、「Gain」パラメータを 使うことにより信号を最大で±30 dB 増幅またはカットできます。 • 「High Shelving」の「Gain」ノブ/フィールド: 出力信号に加えるゲインの量 を設定します。 • 「Input Gain」フィールド/スライダ(拡張パラメータ領域): 入力信号に加 えるゲインの量を設定します。 88 第 3 章 ディストーションエフェクト • 「Output Gain」フィールド/スライダ(拡張パラメータ領域): 出力信号に 加えるゲインの量を設定します。 Distortion エフェクト Distortionエフェクトは、バイポーラトランジスタによる濁ったローファイなディ ストーションをシミュレートします。オーバードライブをかけたアンプを通した 楽器演奏をシミュレートしたり、独特なディストーションサウンドを作成したり するのに使用できます。 • 「Drive」スライダ/フィールド: 信号に加えるサチュレーションの量を設定 します。 • ディスプレイ: 信号にパラメータが及ぼす影響を示します。 • 「Tone」ノブ/フィールド: ハイ・カット・フィルタの周波数を設定します。 ディストーションがかかった、倍音の豊かな信号は、柔らかいトーンになりま す。 • 「Output」スライダ/フィールド: 出力レベルを設定します。これを使うと、 ディストーションを追加することによって増大した音量を補正することができ ます。 第 3 章 ディストーションエフェクト 89 Distortion II Distortion II は、Hammond B3 オルガンのディストーション回路をエミュレートし ます。楽器に使用してクラシックなエフェクトを再現することも、新しいサウン ドをデザインするためにクリエイティブな使いかたをすることもできます。 • 「PreGain」ノブ: 入力信号に加えるゲインの量を設定します。 • 「Drive」ノブ: 信号に加えるサチュレーションの量を設定します。 • 「Tone」ノブ: ハイパスフィルタの周波数を設定します。ディストーション がかかった、倍音の豊かな信号は、柔らかいトーンになります。 • 「Type」ポップアップメニュー: 適用したいディストーションのタイプを選 択します。 • Growl: 2 段階式の真空管アンプをエミュレートします。タイプとしては、 Hammond B3 オルガンと組み合わせて使われることの多い Leslie 122 スピー カーキャビネットに似ています。 • Bity: ブルージーな(オーバードライブがかかった)ギターアンプのサウン ドをエミュレートします。 • Nasty: 強いディストーションを発生させるため、迫力のあるサウンドを作 るのに適しています。 90 第 3 章 ディストーションエフェクト Overdrive Overdrive は、FET(電界効果トランジスタ)で発生するディストーションをエ ミュレートします。これはソリッドステートの楽器用アンプやエフェクターハー ドウェアでよく使われます。飽和状態になると、FET は Distortion エフェクトが エミュレートするバイポーラトランジスタよりも温かみのある響きのディストー ションを発生します。 • 「Drive」スライダ/フィールド: シミュレートするトランジスタのサチュレー ションの量を設定します。 • ディスプレイ: 信号にパラメータが及ぼす影響を示します。 • 「Tone」ノブ/フィールド: ハイ・カット・フィルタの周波数を設定します。 ディストーションがかかった、倍音の豊かな信号は、柔らかいトーンになりま す。 • 「Output」スライダ/フィールド: 出力レベルを設定します。これを使うと、 Overdrive の使用によって増大した音量を補正することができます。 Phase Distortion PhaseDistortionエフェクトはモジュレーションがかかったディレイラインを基に しており、コーラスやフランジャー(モジュレーションエフェクトを参照)に似 ています。ただし、これらのエフェクトと異なり、低周波数オシレータ(LFO) ではなく、内部サイドチェーンを使い、ローパスフィルタでフィルタリングされ た入力信号そのものによってディレイ時間がモジュレートされます。つまり、入 力信号はそれ自体の位相位置をモジュレートするということです。 第 3 章 ディストーションエフェクト 91 入力信号は単にディレイラインを通過するだけで、ほかの処理に影響を受けるこ とはありません。「Mix」パラメータでエフェクトのかかった信号と元の信号を ミックスします。 • 「Monitor」ボタン: 入力信号だけを分離して聴けるようにします。ミックス された信号は聴こえなくなります。 • 「Cutoff」ノブ/フィールド: ローパスフィルタのカットオフ周波数(セン ター周波数)を設定します。 • 「Resonance」ノブ/フィールド: カットオフ周波数付近の周波数を強調しま す。 • ディスプレイ: 信号にパラメータが及ぼす影響を示します。 • 「Mix」スライダ/フィールド: エフェクトのかかった信号と元の信号のミッ クスバランスを調整します。 • 「MaxModulation」スライダ/フィールド: 最大ディレイ時間を設定します。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: 信号に加えるモジュレーションの量を設 定します。 • 「PhaseReverse」チェックボックス(拡張パラメータ領域): カットオフ周波 数を上回る入力信号を受信した場合に、右チャンネルのディレイタイムを減少 させることができます。PhaseDistortionエフェクトのステレオインスタンスに のみ使用できます。 92 第 3 章 ディストーションエフェクト ダイナミックプロセッサは、オーディオの聴感上のラウドネスを調整し、トラッ クやプロジェクトにフォーカスとパンチを与え、再生されるサウンドをさまざま な環境に最適化することができます。 オーディオ信号のダイナミックレンジとは、信号が最も弱い部分と最も強い部分 の間の範囲(技術的には、最小〜最大の振幅の範囲)のことです。ダイナミック プロセッサを使うと、個別のオーディオファイル、トラック、またはプロジェク ト全体のダイナミックレンジを調整できます。これにより、聴感上のラウドネス を高めたり、ミックスの中の弱いサウンドを失わずに最も重要なサウンドを強調 したりすることができます。 この章では以下の内容について説明します: • ダイナミックプロセッサの種類 (ページ 94) • Adaptive Limiter (ページ 95) • Compressor (ページ 97) • DeEsser (ページ 101) • Ducker (ページ 103) • Enveloper (ページ 105) • Expander (ページ 107) • Limiter (ページ 108) • Multipressor (ページ 109) • Noise Gate (ページ 112) • Silver Compressor (ページ 115) • Silver Gate (ページ 116) • Surround Compressor (ページ 116) 93 ダイナミックプロセッサ 4 ダイナミックプロセッサの種類 「Logic Pro」には、4 種類のダイナミックプロセッサが含まれています。これら はそれぞれ、異なるオーディオ処理に使用します。 • Compressor: 「Logic Pro」にはいくつかのダウンワードコンプレッサーが用意 されています。コンプレッサーは、自動音量コントロールのような機能を持 ち、しきい値(スレッショルド)と呼ばれるレベルを超えると音量を下げま す。では、なぜダイナミックレベルを下げる必要があるのでしょうか? 信号が最も高くなっているピークと呼ばれる部分を下げると、全体の信号レベ ルが上がり、聞こえる音量を上げることができます。これにより、背景の弱い サウンドを消してしまうことなく、前面の強い部分を際立たせることができる ため、より明瞭な信号が得られます。また、アタックとリリースの設定によっ てトランジェントが強調され、最大音量に達するまでの時間が短縮されること により、サウンドを引き締めて力強くする結果にもなります。 また、圧縮を用いることで、異なるオーディオ環境で再生する場合にプロジェ クトのサウンドを向上させることができます。たとえば、テレビや車内のス ピーカーのダイナミックレンジは、通常、映画館のサウンドシステムと比較し て狭くなっています。ミックス全体に圧縮を適用することで、品質の低い再生 環境でも、ふくよかでクリアなサウンドを得ることができます。 通常、Compressorはミックス全体でボーカルを引き立たせるために、ボーカル トラックで使用します。また、音楽や効果音のトラックにもよく使われます が、アンビエンストラックに対して使うことははめったにありません。 マルチバンドコンプレッサーと呼ばれるコンプレッサーでは、入力信号を異な る周波数帯に分割して、各周波数帯に別々に圧縮設定を適用することができま す。これは、圧縮によるアーチファクトを発生させずにレベルを最大にできま す。マルチバンドコンプレッションは、一般的にミックス全体に対して使われ ます。 • Expander: Expanderは、Compressorと似ていますが、しきい値を超えたとき、 信号を低減させるのではなく、高めるという点で異なっています。Expanderを 使用すると、オーディオ信号に躍動感が出ます。 • Limiter: Limiter(ピークリミッターとも言います)は、Compressorと同じく、 設定されたしきい値を超えたオーディオ信号を低減する機能を持ちます。相違 点として、Compressorはしきい値を超えた信号のレベルを徐々に引き下げるの に対し、Limiterはしきい値よりも大きい信号を即座にしきい値レベルまで引き 下げます。Limiterは主に、全体の最大信号レベルを保ちながら、クリッピング を防止するのに使用されます。 94 第 4 章 ダイナミックプロセッサ • Noise Gate: Noise Gate は、Compressor や Limiter とは反対の方法で信号を変化 させます。Compressorは信号がしきい値を超えた時点でレベルを低減させるの に対して、NoiseGateはしきい値を下回っているすべての信号を低減させます。 強いサウンドは変化することなく通過しますが、アンビエントノイズや、サス ティンの付いた音源のディケイなどの弱いサウンドはカットオフされます。 Noise Gate は、低レベルノイズまたはハムノイズをオーディオ信号から除去す るときによく使われます。 Adaptive Limiter Adaptive Limiterは、聴感上のサウンドのラウドネスを制御するための、応用範囲 の広いツールです。信号のピークを和らげながら、アナログアンプをハードにド ライブしたような効果を生み出します。アンプと同様に、信号のサウンドにやや 色を付ける結果にもなります。Adaptive Limiter を使用すると、信号が 0 dBFS を 超えたときに発生する一般的に不要な歪みやクリッピングを生じることなく、最 大のゲインが得られます。 Adaptive Limiterは一般的に最終ミックスで使用しますが、ミックスのラウドネス を最大にするため、Multipressor などの Compressor の後ろ、最終ゲイン調整の前 に配置することも可能です。Adaptive Limiterを使用すると、ノーマライズした信 号よりも音量の大きいミックスを作成できます。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 95 メモ: 「Lookahead」パラメータを選択した状態で Adaptive Limiter を使用すると レイテンシーが発生します。通常、Adaptive Limiterは、録音時に使用するのでは なく、あらかじめ録音されたトラックのミキシングやマスタリングに使用するよ うにしてください。 • 入力メーター(左側): ファイルやプロジェクトの再生時の入力レベルをリ アルタイムで表示します。「Margin」フィールドには、最高の入力レベルが表 示されます。「Margin」フィールドは、クリックしてリセットできます。 • 「Input Scale」ノブ/フィールド: 入力レベルを調整します。入力信号のレベ ルが高すぎる(または低すぎる)場合にはスケーリングが役立ちます。「Gain」 ノブが効果的に作用するよう、信号のレベルを最も適切な範囲に収めることが できます。一般的には、信号に不要な歪みが生じないよう、信号レベルが 0 dBFS を超えないようにする必要があります。 • 「Gain」ノブ/フィールド: 入力調整を行った後のゲインの量を設定します。 • 「Out Ceiling」ノブ/フィールド: 最大限の出力レベル(上限)を設定しま す。信号がこの値を超えることはありません。 • 出力メーター(右側): 出力レベルが表示され、Limiter 処理の結果を確認で きます。「Margin」フィールドには、最高の出力レベルが表示されます。 「Margin」フィールドは、クリックしてリセットできます。 • 「Mode」ボタン(拡張パラメータ領域): ピークスムーシングの種類を選択 します: • 「OptFit」: リニアカーブに従った上限となり、0 dB を超える信号ピークが 許容されます。 • 「NoOver」: 信号が 0 dB を超えないようにすることで、出力ハードウェア のひずみを排除します。 96 第 4 章 ダイナミックプロセッサ • 「Lookahead」フィールド/スライダ(拡張パラメータ領域): Adaptive Limiter でピーク分析のためにファイルをどの程度まで先読みするかを調整します。 • 「RemoveDC」チェックボックス(拡張パラメータ領域): 信号から直流(DC) 成分を除去するハイパスフィルタを有効にすることができます。低品質のオー ディオハードウェアでは、直流成分が発生することがあります。 Compressor Compressor は、プロ向けのアナログ(ハードウェア)コンプレッサー並みのサ ウンドとレスポンスをエミュレートします。一定のしきい値を超える音を低減さ せ、ダイナミクスをスムーズに調整して、全体の音量(聴感上のラウドネス)を 上げることで、タイトなサウンドが得られます。トラックやミックスの弱い部分 を消してしまうことなく、重要なパートにフォーカスできます。ミキシングにお いて、おそらく EQ に次いで最も多種多様な使いかたができるサウンド加工ツー ルです。 Compressor は、ボーカル、楽器、エフェクトなどの個々のトラックで使用する ことも、ミックス全体で使用することもできます。通常、Compressor はチャン ネルストリップに直接挿入してください。 Compressor のパラメータ Compressor には以下のパラメータがあります: • 「CircuitType」ポップアップメニュー: Compressorでエミュレートする回路の 種類を選択します。「Platinum」、「Class A_R」(Classic A_R)、「Class A_U」 (ClassicA_U)、「VCA」、「FET」、「Opto」(オプティカル)の中から選択 できます。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 97 • 「Side Chain Detection」ポップアップメニュー: 信号がしきい値を超えている か下回っているかを判別するために、Compressorで各サイドチェーン信号の最 大レベルを使用するか(「Max」)、サイドチェーン信号の合計レベルを使用 するか(「Sum」)を指定します。 • 一方のステレオチャンネルがしきい値を上回ったり下回ったりすると、両方 のチャンネルが圧縮されます。 • 「Sum」を選択した場合は、両方のチャンネルの合計レベルがしきい値を上 回らない限り、圧縮が実行されません。 • 「Gain Reduction」メーター: 圧縮の量がリアルタイムで表示されます。 • 「Attack」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を超えてから、Compressorが作 用するまでの時間を設定します。 • 圧縮カーブディスプレイ: 「Ratio」および「Knee」パラメータの値の組み合 わせに基づく圧縮カーブを示します。入力(レベル)はX軸、出力(レベル) は Y 軸に表示されます。 • 「Release」ノブ/フィールド: 信号のレベルがしきい値を下回ってから、 Compressor が信号の低減を止めるまでの時間を設定します。 • 「Auto」ボタン: 「Auto」ボタンを有効にすると、リリース時間がオーディ オ素材に合わせて動的に調整されます。 • 「Ratio」スライダ/フィールド: しきい値を超えた信号を低減させるときの 圧縮比率を設定します。 • 「Knee」スライダ/フィールド: しきい値に近いレベルでの圧縮の強度を調 整します。低めの値にすると、強くて急な圧縮になります(ハードニー)。高 めの値にすると、緩やかな圧縮になります(ソフトニー)。 • 「Compressor Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定しま す。このしきい値レベルを上回る信号は低減されます。 • 「Peak」ボタン/「RMS」ボタン: 「Circuit Type」に「Platinum」を使用する 場合の信号分析方法(Peak または RMS)を設定します。 • 「Gain」スライダ/フィールド: 出力信号に加えるゲインの量を設定します。 • 「Auto Gain」ポップアップメニュー: 圧縮によって生じる音量の低下を補正 するための値を選択します。「OFF」、「0 dB」、「- 12 dB」の中から選択で きます。 • 「Limiter Threshold」スライダ/フィールド: Limiter のしきい値レベルを設定 します。 • 「Limiter」ボタン: 組み込まれている Limiter のオン/オフを切り替えます。 • 「Output Distortion」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): 0 dB を 超えた場合のクリッピングの有無、およびクリッピングの種類を選択します。 「Off」、「Soft」、「Hard」、および「Clip」から選択できます。 98 第 4 章 ダイナミックプロセッサ • 「Activity」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): サイドチェーン を有効または無効にします。「Off」、「Listen」、「On」の中から選択できま す。 • 「Mode」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): サイドチェーンに 使用するフィルタの種類を選択します。「LP」(ローパス)、「BP」(バンド パス)、「HP」(ハイパス)、「ParEQ」(パラメトリック)、「HS」(ハイ シェルビング)の中から選択できます。 • 「Frequency」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): サイドチェー ンフィルタの中心周波数を設定します。 • 「Q」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): サイドチェーンフィル タが作用する周波数帯の帯域幅を設定します。 • 「Gain」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): サイドチェーン信 号に適用するゲインの量を設定します。 • 「Mix」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): ドライ(ソース)信 号とウェット(エフェクト)信号とのバランスを指定します。 Compressor を使う 以下のセクションでは、Compressor の主なパラメータの使用方法について説明 します。 「Compressor Threshold」と「Ratio」を設定する Compressorで最も重要なパラメータとして、「Compressor Threshold」と「Ratio」 があります。「Threshold」では、フロアレベル(デシベル)を設定します。この レベルを上回る信号は、「Ratio」に設定した比率で低減されます。 「Ratio」はレベル全体に対する割合で設定されるため、しきい値を大幅に超過し た信号は、その分だけ大きく低減されます。4:1 の比率では、しきい値を超えた 場合に、入力が 4 dB 増加すると出力は 1 dB 増加することになります。 たとえば、「Threshold」を- 20 dB、「Ratio」を 4:1 に設定した場合、信号が- 16 dB でピークに達すると(しきい値より 4 dB 上)3 dB 下げられ、出力レベルは - 19 dB になります。 適切なコンプレッサーエンベロープの長さを設定する 「Attack」および「Release」パラメータでは、Compressorのダイナミックレスポ ンスを調整します。「Attack」パラメータは、信号がしきい値レベルを超過して から、Compressor によって低減されるまでの時間を設定するものです。 ボイスや楽器などの多くのサウンドでは、この最初のアタックフェーズで核とな る音質やサウンドの特徴が決まります。このようなサウンドを圧縮するときに は、「Attack」を高めの値に設定し、ソース信号のトランジェントが失われたり 変更されたりしないようします。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 99 ミックス全体のレベルを最大にするには、「Attack」パラメータを低めの値に設 定するのが最適です。値が高いと圧縮されなくなったり、わずかにしか圧縮され ないことが多くあります。 「Release」パラメータでは、信号がしきい値レベルを下回ってから元のレベルに 戻るまでの時間を指定します。「Release」の値を高く設定すると、信号のダイナ ミクスの差が均等化されます。ダイナミクスの差を強調するには、「Release」の 値を低く設定します。 重要: 上記の説明は、ソース素材の種類だけでなく、圧縮率やしきい値の設定 によっても大きく変わります。 Compressor の「Knee」を設定する 「Knee」パラメータでは、しきい値レベルに近づいてきた信号を、少しだけ圧縮 するか大きく圧縮するかを指定します。 「Knee」を0に近い値に設定すると、しきい値直前のレベルではまったく圧縮さ れませんが、しきい値レベルでは「Ratio」の値に従って完全に圧縮されます。こ れはハードニー圧縮と呼ばれるもので、信号がしきい値に達すると、多くの場合 不要な、急激な変化を引き起こすことがあります。 「Knee」パラメータ値を増加させると、信号がしきい値に近づくにつれて圧縮量 が増加し、滑らかな変化になります。これはソフトニー圧縮と呼ばれます。 Compressor のほかのパラメータを設定する Compressor はレベルを下げるため、通常、出力信号の全体的な音量は入力信号 より低くなります。出力レベルの調整には、「Gain」スライダを使います。 「AutoGain」パラメータを使うと、圧縮によって生じたレベルの低下を補正する こともできます(- 12 dB か 0 dB のどちらかを選択します)。 「Circuit Type」に「Platinum」を使用する場合、Compressor での信号の分析方法 は、「Peak」または「RMS」(二乗平均平方根)のどちらかになります。技術的 には「Peak」の方が正確ですが、「RMS」を使用すると、信号の聴感上のラウド ネスとして分かりやすくなります。 メモ: 「Auto Gain」と「RMS」を同時に使用すると、信号が過飽和になります。 少しでも歪みを感じた場合は、「Auto Gain」を「Off」にして、歪みが聴こえな くなるまで「Gain」スライダを調節してください。 Compressor でサイドチェーンを使う コンプレッサーでのサイドチェーンの使用は一般的です。サイドチェーンによっ て、ほかのチャンネルストリップのダイナミクス(レベル変更)を基に圧縮を制 御することができます。たとえば、ドラムグルーブのダイナミクスを使って、リ ズミカルにギターパートの圧縮(つまりダイナミクス)を変化させることができ ます。 100 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 重要: ここでのサイドチェーン信号は、検出およびトリガのために使われるだ けです。サイドチェーン信号源は Compressor の制御に使われますが、サイド チェーン信号のオーディオが Compressor にルーティングされるわけではありま せん。 Compressor でサイドチェーンを使うには 1 Compressor をチャンネルストリップに挿入します。 2 Compressorプラグインの「サイドチェーン」メニューで、目的の信号を送るチャ ンネルストリップ(サイドチェーン信号源)を選択します。 3 「SideChainDetection」ポップアップメニューから、希望する分析方法(「Max」 または「Sum」)を選択します。 4 Compressor のパラメータを調整します。 DeEsser DeEsser は特定の周波数を対象とするコンプレッサーで、複雑なオーディオ信号 の特定の周波数帯を圧縮します。これは、信号のヒス(歯擦音)を除去するため に使われます。 高周波数をカットするために EQ の代わりに DeEsser を使う利点は、信号を静的 にではなく動的に圧縮することにあります。これにより、信号に歯擦音が存在し ない場合に、サウンドが暗い雰囲気になるのを防ぐことができます。DeEsser で は、アタックおよびリリースの時間が大幅に短縮されます。 DeEsserを使用するときは、圧縮する周波数範囲(「Suppressor」の周波数)と、 分析する周波数範囲(「Detector」の周波数)を別々に設定できます。この 2 つ の周波数範囲は、DeEsser の「Detector」および「Suppressor」周波数範囲ディス プレイで簡単に比較できます。 周波数が「Detector」のしきい値を超過すると、「Suppressor」の周波数範囲が減 少します。 DeEsserでは、周波数を分離するネットワーク(ローパスフィルタとハイパスフィ ルタを使用したクロスオーバー)は使用されません。周波数帯を分離して減算す るため、位相カーブを変えることはありません。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 101 DeEsser ウインドウの左側には「Detector」パラメータ、右側には「Suppressor」 パラメータがあります。中央には「Detector」ディスプレイおよび「Suppressor」 ディスプレイと、「Smoothing」スライダがあります。 DeEsser の「Detector」セクション • 「Detector」の「Frequency」ノブ/フィールド: 分析する周波数を設定しま す。 • 「Detector」の「Sensitivity」ノブ/フィールド: 入力信号に対する感度を設定 します。 • 「Monitor」ポップアップメニュー: 分離された「Detector」の信号 (「Det.」)、フィルタリングされた「Suppressor」の信号(「Sup.」)、また は「Sensitivity」パラメータに応じて入力信号から除去されたサウンド (「Sens.」)のいずれをモニタするかを選択します。なお、「Off」を選択す ると、DeEsser の出力を聞くことができます。 DeEsser の「Suppressor」セクション • 「Suppressor」の「Frequency」ノブ/フィールド: 「Detector」の感度のしき い値を超過した場合に低減される周波数帯を設定します。 • 「Strength」ノブ/フィールド: 「Suppressor」周波数の周囲にある信号のゲ イン低減量を設定します。 • 「Activity」ライト: フィルタ処理が実行されていることをリアルタイムで表 示します。 DeEsser の中央セクション • 「Detector」および「Suppressor」の周波数ディスプレイ: 上段のディスプレイ には「Detector」の周波数範囲が表示されます。下段のディスプレイには 「Suppressor」の周波数範囲(ヘルツ単位)が表示されます。 102 第 4 章 ダイナミックプロセッサ • 「Smoothing」スライダ: ゲイン低減の開始/終了フェーズの反応速度を設定 します。「Smoothing」により、アタックとリリースの両方の時間をCompressor と同様に制御します。 Ducker ダッキングは、ラジオおよびテレビ放送で使用される一般的な技術です。音楽の 再生中に DJ やアナウンサーが話し出すと、音楽の音量が自動的に引き下げられ ます。話が終わると、音楽は自動的に元の音量に戻ります。 Ducker を使うと、簡単な方法で既存の録音データにこの処理を実行できます。 リアルタイムでは実行されません。 メモ: 技術上の理由により、Ducker を挿入できるのは、出力および Aux チャンネ ルストリップのみです。 Ducker のパラメータ Ducker には、以下のパラメータがあります: • 「Ducking」のオン/オフボタン: ダッキングが有効または無効になります。 • 「Lookahead」のオン/オフボタン: 処理の前に、Duckerが入力信号を先読み できるようにします。これにより、レイテンシーが一切発生しません。主に処 理速度の遅いコンピュータのための機能です。 • 「Amount」スライダ/フィールド: 出力信号となるミュージック・ミックス・ チャンネルストリップの音量を下げる度合いを指定します。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 103 • 「Threshold」スライダ/フィールド: 「Intensity」スライダの設定値に基づい てミュージックミックスの出力レベルを低減させる際に、サイドチェーン信号 が到達している必要のある最低レベルを設定します。サイドチェーンの信号レ ベルがしきい値に達しない場合は、ミュージック・ミックス・チャンネルスト リップの音量は影響を受けません。 • 「Attack」スライダ/フィールド: 音量を下げる速度を制御します。ミュー ジックミックスの信号を緩やかにフェードアウトさせたい場合は、このスライ ダの値を高めに設定します。 信号がしきい値レベルに達する前に信号のレベルを引き下げるかどうかもこの 値で制御されます。早く音量を下げるほど、より多くのレイテンシーが発生し ます。 メモ: この機能は、ダッキング信号がライブではない場合のみ動作します(ダッ キング信号はあらかじめ録音されたものである必要があります)。これは、ホ ストアプリケーションによって信号レベルを再生前に分析し、ダッキング開始 位置を予測する必要があるためです。 • 「Hold」スライダ/フィールド: ミュージックミックスのチャンネルストリッ プの音量を低下させる継続時間を指定します。これを制御することで、サイド チェーンレベルの急速な変化によって発生するチャタリングを防止できます。 サイドチェーンレベルがしきい値を明確に上回るか下回ることなく、しきい値 付近で上下している場合は、「Hold」パラメータの値を高めに設定して、急激 な音量低下を起こさないようにします。 • 「Release」スライダ/フィールド: 音量を元のレベルに戻す速さを制御しま す。アナウンスの終了後にミュージックミックスの音量をゆっくりと戻したい 場合は、この値を高めに設定します。 Ducker を使う 既存の録音データに Ducker を使う手順は以下の通りです。 メモ: 技術上の理由により、Duckerプラグインを挿入できるのは、出力チャンネ ルストリップと Aux チャンネルストリップのみです。 Ducker プラグインを使うには 1 プラグインを Aux チャンネルストリップに挿入します。 2 「ダッキング」(ミックスの音量を動的に下げる)の対象とするすべてのチャン ネルストリップの出力を、バス(手順1で選択したAuxチャンネルストリップ) に割り当てます。 3 Duckerプラグインの「サイドチェーン」メニューで、ダッキングする信号(ボー カル)を入れるバスを選択します。 104 第 4 章 ダイナミックプロセッサ メモ: その他すべてのサイドチェーン対応プラグインとは異なり、Duckerサイド チェーンはプラグインを通過した後で、出力信号とミックスされます。これによ り、ダッキングのサイドチェーン信号(ナレーション)を出力から聞くことがで きます。 4 Ducker のパラメータを調整します。 Enveloper Enveloper は、信号のアタックフェーズとリリースフェーズ、つまり信号のトラ ンジェントの形を設定する特殊なプロセッサです。Enveloper ならではの機能を 持ち、ほかのいかなるダイナミックプロセッサとも異なる結果が得られます。 • 「Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定します。信号の アタックおよびリリースフェーズがしきい値を超えると、その信号のレベルは 変更されます。 • 「Gain」スライダ/フィールド(アタック): 信号のアタックフェーズを上 げたり下げたりします。「Gain」スライダがセンター位置(0 %)に設定して ある場合、信号に影響を与えません。 • 「Lookahead」スライダ/フィールド: 入力信号を先読みする時間を設定しま す。これにより Enveloper は事前に入力信号を認識でき、正確で迅速な処理が できます。 • 「Time」ノブ/フィールド(アタック): 信号がしきい値レベルから最大 「Gain」レベルに増加するまでにかかる時間の長さを設定します。 • ディスプレイ: 信号に適用するアタックカーブおよびリリースカーブを表示 します。 • 「Time」ノブ/フィールド(リリース): 信号が最大「Gain」レベルからしき い値レベルに減少するまでにかかる時間の長さを設定します。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 105 • 「Gain」スライダ/フィールド(リリース): 信号のリリースフェーズを上 げたり下げたりします。「Gain」スライダがセンター位置(0 %)に設定して ある場合、信号に影響を与えません。 • 「Out Level」スライダ/フィールド: 出力信号のレベルを設定します。 Enveloper を使う Enveloperの最も重要なパラメータとして、中央ディスプレイの左右に1つずつ、 合わせて2つの「Gain」スライダがあります。これらのパラメータは、それぞれ アタックフェーズとリリースフェーズのレベルを制御します。 アタックフェーズをブーストするとドラムのサウンドのスナップ感が高まった り、弦楽器をはじく(ピッキングする)音が増幅されたりします。アタックを減 衰させると、パーカッシブ信号のフェードインが緩やかになります。一方、ア タックをミュートすると、ほとんど音が聞こえなくなります。このエフェクトの クリエイティブな使いかたとして、アタックトランジェントを変更し、録音した 楽器パートのタイミングの「ずれ」をマスキングすることもできます。 また、リリースフェーズをブーストすると、対象のチャンネルストリップにかか るリバーブが強められます。逆に、リリースフェーズを減衰させると、もともと リバーブが強くかかっていたトラックがドライなサウンドになります。これは、 ドラムループを使う場合に特に役に立ちますが、ほかにもさまざまな応用例があ ります。いろいろと、工夫を凝らしてみてください。 Enveloper を使用する場合は、「Threshold」を最小値に設定したままにしてくだ さい。リリースフェーズを極端に強くする場合のみ(これを行うと、オリジナル 録音のノイズレベルが大幅に増します)、「Threshold」スライダを少しだけ高め に動かします。これにより、Enveloper の影響を信号の必要な部分のみに制限で きます。 アタックまたはリリースのフェーズを大幅にブーストまたはカットすると、信号 全体のレベルが変わることがあります。「Out Level」スライダを調整することに より、これを補正できます。 一般的に、アタック時間の値は約 20 ms、リリース時間の値は約 1500 ms から始 めるのが適しています。この値を、処理する信号に応じて調整してください。 「Lookahead」スライダを使うと、信号で発生が予測されるイベントをEnveloper でどこまで先読みするかを指定できます。通常、トランジェントの感度が極端に 高い信号を処理する場合を除き、この機能を使う必要はありません。 「Lookahead」の値を上げる場合は、アタックの時間もそれに応じて補正する必 要があります。 Compressor や Expander とは対照的に、Enveloper の動作は入力信号の絶対レベル とは無関係です(「Threshold」スライダが有効な最小値に設定されている場合)。 106 第 4 章 ダイナミックプロセッサ Expander Expander は、Compressor と考え方が似ていますが、しきい値レベルを上回るダ イナミックレンジを小さくするのではなく、大きくする点が異なります。Expander を使うと、躍動感のある鮮明なオーディオ信号を作成できます。 • 「Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定します。このレ ベルを上回る信号は伸張されます。 • 「Peak」ボタン/「RMS」ボタン: 信号の分析方法に「Peak」と「RMS」のど ちらを使うかを指定します。 • 「Attack」ノブ/フィールド: しきい値レベルを上回る信号に Expander が作 用するまでにかかる時間の長さを設定します。 • 伸張カーブディスプレイ: 信号に適用された伸張カーブを表示します。 • 「Release」ノブ/フィールド: 信号がしきい値レベルを下回ってから、Expander が信号の処理を止めるまでの時間を設定します。 • 「Ratio」スライダ/フィールド: しきい値を超えた信号を伸張させるときの 伸張率を設定します。 メモ: このExpanderは、(しきい値の下のダイナミックレンジを広げるダウン ワードエクスパンダとは対照的な)正真正銘のアップワードエクスパンダであ るため、「Ratio」スライダの値の範囲は 1:1 〜 0.5:1 となっています。 • 「Knee」スライダ/フィールド: しきい値に近いレベルでの伸張の強度を調 整します。低めの値にすると、強くて急な伸張になります(ハードニー)。高 めの値にすると、緩やかな伸張になります(ソフトニー)。 • 「Gain」スライダ/フィールド: 出力ゲインの値を設定します。 • 「Auto Gain」ボタン: 伸張によるレベルの増加を補正します。「Auto Gain」 を有効にすると、ピークレベルが同じままであっても信号の音は弱くなりま す。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 107 メモ: (「Threshold」および「Ratio」の値を極端に大きくして)信号のダイナ ミクスを大幅に変更する場合は、「Gain」スライダのレベルを下げ、歪みを防 止する必要があります。ほとんどの場合、「AutoGain」によって信号が適正に 調整されます。 Limiter Limiter の機能は Compressor と似ていますが、1 つ重要な違いがあります。信号 がしきい値を超えた場合、Compressorは比率に基づいて信号を低減させますが、 Limiterはしきい値を上回っているすべてのピークを低くして効率的に信号をこの レベルに制限します。 Limiter は主にマスタリングのときに使われます。通常、Limiter はマスタリング 信号経路の最終処理として適用します。この処理では、信号の全体的な音量を 0 dB に達するまで上げます(ただし 0 dB を超えないようにします)。 Limiter では、ゲインを 0 dB、出力レベルを 0 dB に設定すると、ノーマライズさ れた信号では効果が現れません。信号がクリップすると、Limiterはクリッピング が発生する前に信号レベルを低減させます。ただし、録音時にクリッピングが発 生したオーディオを Limiter で修正することはできません。 • 「Gain Reduction」メーター: 制限の量がリアルタイムで表示されます。 • 「Gain」スライダ/フィールド: 入力信号に加えるゲインの量を設定します。 • 「Lookahead」スライダ/フィールド: Limiterで分析するオーディオ信号の先 読み時間(ミリ秒)を調整します。低減量を調整して、音量のピークに達する 前に作用させることができます。 108 第 4 章 ダイナミックプロセッサ メモ: 「Lookahead」を使用するとレイテンシーが発生しますが、あらかじめ録 音された素材のマスタリングエフェクトとして Limiter を使用する場合、この レイテンシーはまったく感じられません。最大レベルに到達する前に Limiter のエフェクトを発生させ、滑らかに変化するようにしたい場合は、 「Lookahead」の値を高めに設定します。 • 「Release」スライダ/フィールド: 信号がしきい値レベルを下回ってから、 Limiter が処理を止めるまでの時間を設定します。 • 「Output Level」ノブ/フィールド: 信号の出力レベルを設定します。 • 「Softknee」ボタン: 有効にすると、しきい値を満たした場合のみ信号が制限 されます。制限が完全にかかるまでの変化はノンリニアで、弱く緩やかな効果 を生むので、強い制限によって生じる歪みを減らすことができます。 Multipressor Multipressor(マルチバンドコンプレッサー)は、非常に汎用性の高いオーディ オ・マスタリング・ツールです。これにより、入力される信号は別々の周波数帯 (最大4つ)に分離されるので、それぞれの周波数帯を個別に圧縮できます。圧 縮が適用された後、これらの帯域は 1 つの出力信号にまとめられます。 異なる周波数帯を別々に圧縮するメリットは、対象となる帯域の圧縮レベルを上 げても、ほかの帯域に影響しないことです。これにより、大幅な圧縮が原因で起 こりがちなポンピングを防止できます。 Multipressor を使用すると、特定の周波数帯に高い圧縮率を適用することによっ て平均的な音量を上げることができ、アーチファクトが聞こえることもありませ ん。 全体的な音量を上げると、既存のノイズフロアが大幅に増加する場合がありま す。そのため、各周波数帯をダウンワードエクスパンドする機能があります。こ れによって、このノイズを低減あるいは抑制することができます。 ダウンワードエクスパンドは、圧縮に対応する機能です。Compressor によって 高い音量レベルのダイナミックレンジが圧縮されると、ダウンワードエクスパン ダによって低い音量レベルのダイナミックレンジが伸張されます。ダウンワード エクスパンドに伴い、信号がしきい値レベルを下回った場合に信号のレベルが引 き下げられます。この機能はNoiseGateと似ていますが、急激にサウンドをカッ トオフするのではなく、「Ratio」を調整して、滑らかなフェードにすることがで きます。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 109 Multipressor のパラメータ Multipressor ウインドウのパラメータは、主に 3 つの領域にまとめられます。上 部のグラフィック・ディスプレイ・セクション、下部の各周波数帯ごとのコント ロールのセット、右側の出力パラメータです。 Graphic display section Frequency band section Output section Multipressor のグラフィック・ディスプレイ・セクション • グラフィックディスプレイ: 各周波数帯がグラフィカルに表示されます。0dB からのゲインの変化量が、青いバーで表示されます。選択された帯域は、領域 の中央に帯域番号が表示されます。各周波数帯を個別に調整するには、以下の 操作を実行します: • 水平のバーを上下にドラッグして、その帯域のゲインを調整します。 • 垂直の線を左右にドラッグして、その帯域のクロスオーバー周波数を設定し ます。これにより、その帯域の周波数範囲が調整されます。 • 「Crossover」フィールド: 隣接する帯域間のクロスオーバー周波数を設定しま す。 • 「Gain Make-up」フィールド: 各帯域のゲイン調整の量を設定します。 Multipressor の周波数帯セクション • 「Compr Thrsh」(Compression Threshold)フィールド: 選択した帯域の圧縮し きい値を設定します。このパラメータを 0 dB に設定すると、その帯域は圧縮 されません。 110 第 4 章 ダイナミックプロセッサ • 「Ratio」(Compression Ratio)フィールド: 選択した帯域の圧縮率を設定しま す。このパラメータを 1:1 に設定すると、その帯域は圧縮されません。 • 「Expnd Thrsh」(Expansion Threshold)フィールド: 選択した帯域を伸張する しきい値を設定します。このパラメータを最小値(- 60 dB)に設定すると、 そのレベルを下回る信号のみが伸張されます。 • 「Ratio」フィールド(Expansion Ratio): 選択した帯域の伸張率を設定しま す。 • 「Reduction」フィールド(Expansion Reduction): 選択した帯域のダウンワー ドエクスパンド量を設定します。 • 「Peak/RMS」フィールド: 短いピークの検出には小さい値を、RMS 検出には 大きい値を入力します。単位はミリ秒です。 • 「Attack」フィールド: 選択した帯域で信号がしきい値を超えてから、圧縮を 行うまでの時間を設定します。 • 「Release」フィールド: 選択した帯域で信号がしきい値を下回ってから、圧 縮を止めるまでに必要な時間を設定します。 • 帯域のオン/オフボタン(「1」、「2」、「3」、「4」): 各帯域(1 〜 4) の有効/無効を切り替えます。有効にするとボタンが強調表示され、その帯域 が上部のグラフィックディスプレイ領域に表示されます。 • 「Byp」(Bypass)ボタン: 有効にすると、選択した周波数帯をバイパスしま す。 • 「Solo」ボタン: 有効にすると、選択した周波数帯の圧縮だけを聴くことがで きます。 • レベルメーター: 左側のバーに入力レベル、右側のバーに出力レベルが表示 されます。 • しきい値矢印: 各レベルメーターの左側に 2 つの矢印が表示されます。 • 上の矢印で圧縮しきい値(Compr Thrsh)を調整します。 • 下の矢印で伸張しきい値(Expnd Thrsh)を調整します。 Multipressor の「Output」セクション • 「Auto Gain」ポップアップメニュー: 「On」に設定すると、0 dB までの信号 の処理全体を参照するため、出力が強められます。 • 「Lookahead」値フィールド: 音量のピークに達する前に作用してオーディオ 信号を滑らかに変化させるため、エフェクトでオーディオ信号をどこまで先読 みするかを調整します。 • 「Out」スライダ: Multipressor の出力の全体的なゲインを設定します。 • レベルメーター: 全体の出力レベルを表示します。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 111 Multipressor を使う グラフィックディスプレイでは、標準的な Compressor のようにゲインの減少が 示されるほか、ゲインの変化が青いバーで示されます。表示されるゲインの変化 は、圧縮の低減、伸張の低減、オートゲインによる補正、「GainMake-up」の複 合的な値となります。 Multipressor の圧縮パラメータを設定する 「Compr Thrsh」および「Ratio」パラメータは圧縮を制御するための重要なパラ メータです。通常、これら 2 つの設定の最も使いやすい組み合わせは、「Compr Thrsh」(低)と「Ratio」(低)、または「ComprThrsh」(高)と「Ratio」(高) のいずれかです。 Multipressor のダウンワード・エクスパンド・パラメータを設定する 「Expnd Thrsh」、「Ratio」、および「Reduction」パラメータは、ダウンワード エクスパンドを制御するための重要なパラメータです。選択した範囲に適用する 伸張の強度を調整します。 Multipressor の「Peak/RMS」およびエンベロープパラメータを設定する 「Peak」(0 ms、最小値)と「RMS」(二乗平均平方根- 200 ms、最大値)間の パラメータ調整は、圧縮する信号の種類によって異なります。きわめて短いピー ク検出設定は、低出力での短く高いピークの圧縮には適合しますが、これは音楽 では通常発生しません。RMS検出は、オーディオ素材の長時間にわたる出力を測 定するため、音楽を扱うのに有効な方法です。これは、人間の聴覚が、1 つの ピークよりも信号全体の出力に対して敏感であるためです。ほとんどのアプリ ケーションの基本設定として、中間位置に設定することをお勧めします。 Multipressor の出力パラメータを設定する 「Out」スライダによって、全体的な出力レベルを設定します。「Peak/RMS」 フィールドが高めの値(RMS 寄り)に設定されている場合は、「Lookahead」の 値を高めに設定します。「Autogain」を「On」に設定すると、0dBまでの処理全 体を参照するため、出力が強められます。 Noise Gate Noise Gate は、オーディオ信号のレベルが低い場合に聞こえる不必要なノイズを 抑制するためによく使われます。これは、特にバックグラウンドノイズ、ほかの 信号ソースからのクロストーク、低レベルのハムを除去するために使用できま す。 Noise Gate は、しきい値レベルを超える信号は妨げずに通過させ、しきい値を下 回る信号を低減する働きをします。これにより、信号の低レベルな部分を効率的 に除去しながら、オーディオに必要な部分を通過させることができます。 112 第 4 章 ダイナミックプロセッサ Noise Gate のパラメータ Noise Gate には、以下のパラメータがあります。 • 「Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定します。しきい 値を下回る信号のレベルは低減されます。 • 「Reduction」スライダ/フィールド: 信号を低減する量を設定します。 • 「Attack」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を超えてから、ゲートが完全に 開くまでの時間を設定します。 • 「Hold」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を下回ってから、ゲートを開い たままにする時間を設定します。 • 「Release」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を下回ってから、減衰が最大 になるまでの時間を設定します。 • 「Hysteresis」スライダ/フィールド: Noise Gate を開くしきい値と閉じるしき い値の間の差異(デシベル)を設定できます。これにより、入力信号がしきい 値に近づいたときに、ゲートがすぐに開いたり閉じたりするのを防止します。 • 「Lookahead」スライダ/フィールド: Noise Gate がすばやくピークレベルに 対応できるよう、入力信号をどこまで先読みするかを指定できます。 • 「Monitor」ボタン: 有効にすると、High CutおよびLow Cutフィルタのエフェ クトを含むサイドチェーン信号を聴くことができます。 • 「HighCut」スライダ/フィールド: サイドチェーン信号の上部カットオフ周 波数を設定します。 • 「Low Cut」スライダ/フィールド: サイドチェーン信号の下部カットオフ周 波数を設定します。 メモ: 外部サイドチェーンが選択されていない場合は、入力信号がサイドチェー ンとして使用されます。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 113 Noise Gate を使う ほとんどの場合、「Reduction」スライダを可能な限り低い値に設定すると、し きい値を下回るサウンドを完全に抑制できます。「Reduction」の値を高めに設 定すると、低レベルのサウンドは低減されますが、通過が許容されます。また、 「Reduction」を使って、信号を最大20dBごとにブーストすることもできます。 これは、ダッキングに使用できます。 「Attack」、「Hold」、および「Release」の各ノブを使用すると、Noise Gate の ダイナミックレスポンスを変更できます。ドラムなどのパーカッシブ信号のよう に、ゲートを即座に開きたい場合は、「Attack」ノブの値を低めに設定します。 ストリングパッドなど、アタックフェーズが遅いサウンドについては、「Attack」 ノブの値を高めに設定します。同様に、徐々にフェードアウトする信号やリバー ブの残響が長い信号を扱う場合は、「Release」ノブの値を高めに設定すると、自 然なフェードアウトになります。 「Hold」ノブを使うと、ゲートを開いたままにする最小限の時間を指定できま す。「Hold」ノブを使うと、ゲートがごく短時間で開閉する場合に発生する急激 な変化(チャタリング)を回避できます。 「Hysteresis」スライダにはチャタリングを回避するもう 1 つのオプションがあ り、最小のホールド時間を指定する必要がありません。これを使うと、NoiseGate を開くしきい値と閉じるしきい値の間の範囲を設定できます。これは、信号がし きい値付近で上下しているときに役立ちます。信号がしきい値付近で上下してい るとNoiseGateのオンとオフがすばやく切り替わり、好ましくないチャタリング が起こってしまいます。基本的に「Hysteresis」スライダでは、Noise Gate がしき い値のレベルで開くと、次に低いしきい値を下回るまで開いたままにするよう設 定できます。入力信号の上下するレベルが、この2つの値の差の範囲に収まって いれば、Noise Gate はチャタリングを引き起こすことなく機能します。これは、 常に負の値です。一般的に、- 6 dB で開始するのが適切です。 状況によっては、維持したい信号のレベルとノイズ信号のレベルが近いために、 分離が難しいことがあります。たとえば、ドラムキットを録音し、Noise Gate を 使用してスネアドラムのサウンドを分離したい場合に、ハイハットによってゲー トが開くことがよくあります。これに対処するには、「Side Chain」コントロー ルの「High Cut」/「Low Cut」フィルタを使用すると必要な信号を分離できま す。 重要: ここでのサイドチェーン信号は、検出およびトリガのために使われるだ けです。フィルタを使って、サイドチェーン信号源から特定のトリガ信号を分離 します。ただし、実際にゲートがかかっている信号(Noise Gate を通過して送ら れてきたオーディオ)にはフィルタは作用しません。 サイドチェーンフィルタを使うには 1 「Monitor」ボタンをクリックして、High Cut および Low Cut フィルタがトリガ信 号にどのように影響するかを聴きます。 114 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 2 「High Cut」スライダをドラッグして、高周波数を設定します。この値を上回る トリガ信号はフィルタリングされます。 3 「Low Cut」スライダをドラッグして、低周波数を設定します。この値を下回る トリガ信号はフィルタリングされます。 これらのフィルタは、きわめて高い(大きい)信号のピークのみ通過させます。 ドラムキットの例では、高い周波数を持つハイハットの信号をHiCutフィルタで 除去し、スネアの信号は通過させることができます。もっと簡単に適切なしきい 値レベルを設定するには、モニタリングをオフにします。 Silver Compressor Silver Compressor は、Compressor の簡易版です(使いかたのヒントについては、 Compressor を使うを参照してください)。 • 「Gain Reduction」メーター: 圧縮の量がリアルタイムで表示されます。 • 「Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定します。しきい 値を上回る信号のレベルは低減されます。 • 「Attack」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を超えてから、Compressorが作 用するまでの時間を設定します。 • 「Release」ノブ/フィールド: 信号のレベルがしきい値を下回ってから、 Compressor が信号の低減を止めるまでの時間を設定します。 • 「Ratio」スライダ/フィールド: しきい値を超える場合に信号を低減させる 比率を設定します。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 115 Silver Gate Silver Gate は、Noise Gate の簡易版です(使いかたのヒントについては、Noise Gate を使うを参照してください)。 • 「Lookahead」スライダ/フィールド: ノイズゲートがすばやくピークレベル に対応できるよう、Silver Gate が入力信号をどこまで先読みするかを指定でき ます。 • 「Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定します。しきい 値を下回る信号のレベルは低減されます。 • 「Attack」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を超えてから、ゲートが完全に 開くまでの時間を設定します。 • 「Hold」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を下回ってから、ゲートを開い たままにする時間を設定します。 • 「Release」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を下回ってから、ゲートが完 全に閉じるまでの時間を設定します。 Surround Compressor Compressor をベースとする Surround Compressor は、完全なサラウンドミックス の圧縮に特に適しています。通常は、サラウンド出力チャンネルストリップや、 マルチチャンネルオーディオを含むオーディオまたはAuxチャンネルストリップ (バス)に挿入します。 選択したサラウンドフォーマットに応じて、メイン、サイド、サラウンド、およ びLFEチャンネルの圧縮率、ニー、アタック、リリースを調整できます。すべて のチャンネルに Limiter が組み込まれていて、個別のしきい値および出力レベル コントロールがあります。 116 第 4 章 ダイナミックプロセッサ チャンネルを3つのいずれかのグループに割り当てて、リンクすることができま す。グループ化されたいずれかのチャンネルのしきい値または出力パラメータを 調整すると、そのグループに割り当てられたすべてのチャンネルに調整内容が反 映されます。 Main section LFE section Link section Surround Compressor は 3 つのセクションに分かれています。 • 最上部の「Link」セクションには、一連のメニューが含まれており、これによっ て各チャンネルをグループに割り当てます。Surround Compressor の「Link」パ ラメータを参照してください。 • 「Main」セクションには、すべてのメインチャンネルに共通のコントロール と、各チャンネルのしきい値および出力のコントロールがあります。Surround Compressor の「Main」パラメータを参照してください。 • 右下の「LFE」セクションには、LFEチャンネルの個別のコントロールが含まれ ます。Surround Compressor の LFE パラメータを参照してください。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 117 Surround Compressor の「Link」パラメータ Surround Compressorの「Link」セクションには、以下のパラメータがあります: • 「CircuitType」ポップアップメニュー: Compressorでエミュレートする回路の 種類を選択します。「Platinum」、「ClassicA_R」、「ClassicA_U」、「VCA」、 「FET」、「Opto」(オプティカル)の中から選択できます。 • 「Grp.」 (グループ)ポップアップメニュー: チャンネルごとのグループを 設定します。(「A」、「B」、「C」、またはグループに含まれないことを示 す「-」)。グループ化されたいずれかのチャンネルのしきい値または出力レ ベルスライダを動かすと、そのグループに割り当てられたすべてのチャンネル のスライダが移動します。 ヒント: コマンドキー+Optionキーを押したまま、グループ化されたチャンネ ルのしきい値または出力レベルスライダを動かすと、一時的にそのチャンネル をグループからリンク解除できます。これにより、目的とするサラウンドイ メージに必要なサイドチェーン検出のリンクを保ったまま、しきい値を個別に 設定できます。 • 「Byp」(バイパス)ボタン: グループ化されているチャンネルが個別にバイ パスされます。チャンネルがグループに属している場合、そのグループのすべ てのチャンネルがバイパスされます。 • 「Detection」ポップアップメニュー: 信号がしきい値を超えているか下回って いるかを判別するために、SurroundCompressorで各信号の最大レベルを使用す るか(「Max」)、信号の合計レベルを使用するか(「Sum」)を指定します。 • 「Max」を選択した場合、いずれかのサラウンドチャンネルがしきい値を超 えるか下回ると、そのチャンネル(またはグループ化されたチャンネル)は 圧縮されます。 • 「Sum」を選択した場合は、すべてのチャンネルの合計レベルがしきい値を 上回らない限り、圧縮が実行されません。 118 第 4 章 ダイナミックプロセッサ Surround Compressor の「Main」パラメータ SurroundCompressorの「Main」セクションには、以下のパラメータがあります: • 「Ratio」ノブ/フィールド: しきい値を超えた信号を低減させるときの比率 を設定します。 • 「Knee」ノブ/フィールド: しきい値に近いレベルでの圧縮率を調整します。 • 「Attack」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を超えてから、完全に圧縮され るまでの時間を設定します。 • 「Release」ノブ/フィールド: 信号がしきい値を下回ってから、完全に圧縮 解除されるまでの時間を設定します。 • 「Auto」ボタン: 「Auto」ボタンを有効にすると、リリース時間がオーディ オ素材に合わせて動的に調整されます。 • 「Limiter」ボタン: メインチャンネルのLimiterのオン/オフを切り替えます。 • 「Threshold」ノブ/フィールド: メインチャンネルの Limiter のしきい値を設 定します。 • 「Main Compressor Thresholds」のスライダ/フィールド: LFE チャンネルを含 む、各チャンネルのしきい値レベルを設定します。LFE チャンネルには個別の コントロールもあります。 • 「MainOutputLevels」のスライダ/フィールド: LFEチャンネルを含む、各チャ ンネルの出力レベルを設定します。LFE チャンネルには個別のコントロールも あります。 第 4 章 ダイナミックプロセッサ 119 Surround Compressor の LFE パラメータ Surround Compressor の「LFE」セクションには、以下のパラメータがあります: • 「Ratio」ノブ/フィールド: LFE チャンネルの圧縮率を設定します。 • 「Knee」ノブ/フィールド: LFE チャンネルのニーを設定します。 • 「Attack」ノブ/フィールド: LFE チャンネルのアタック時間を設定します。 • 「Release」ノブ/フィールド: LFEチャンネルのリリース時間を設定します。 • 「Auto」ボタン: 「Auto」ボタンを有効にすると、リリース時間がオーディ オ信号に合わせて自動的に調整されます。 • 「Threshold」ノブ/フィールド: LFEチャンネルのLimiterのしきい値を設定し ます。 • 「Limiter」ボタン: LFE チャンネルの Limiter の有効/無効を切り替えます。 120 第 4 章 ダイナミックプロセッサ イコライザ(一般に「EQ」と略記されます)を使うと、特定の周波数帯のレベ ルを変更して、受信するオーディオのサウンドを形成することができます。 イコライゼーションは、ミュージックプロジェクトとビデオのポストプロダク ション作業で最も一般的に使われるオーディオ処理の 1 つです。EQ を使うと、 特定の周波数または周波数範囲を調整することによって、オーディオファイル、 楽器、またはプロジェクトのサウンドをわずかにも大きくも変化させることがで きます。 すべての EQ には、特定の周波数を変更せずに通過させ、その他の周波数のレベ ルを上げ下げ(ブースト/カット)する特殊なフィルタが使われます。一部の EQ は、広範囲の周波数をブーストまたはカットするために、大きなブラシのよ うにして使うことができます。そのほかの EQ として、特にパラメトリック EQ およびマルチバンド EQ は、より精細な制御に使うことができます。 最もシンプルなタイプの EQ はシングルバンド EQ で、ここには Low Cut、High Cut、Low Pass Filter、High Pass Filter、Low Shelving EQ、High Shelving EQ、Parametric EQ が含まれます。 Channel EQ、Fat EQ、および Linear Phase EQ などのマルチバンド EQ には 1 つのユ ニットに複数のフィルタが組み合わせられていて、広範囲の周波数スペクトラム を制御できます。マルチバンド EQ では、各周波数スペクトラム帯域の周波数、 帯域幅、Q 値を個別に設定できます。これにより、個別のオーディオ信号でも ミックス全体でも、ソースを問わず幅広く精細な音作りが可能になります。 「Logic Pro」には、さまざまなシングルバンドおよびマルチバンド EQ が含まれ ます。 この章では以下の内容について説明します: • Channel EQ (ページ 122) • DJ EQ (ページ 126) • Fat EQ (ページ 127) • Linear Phase EQ (ページ 128) • Match EQ (ページ 132) 121 イコライザ 5 • シングルバンド EQ (ページ 139) • Silver EQ (ページ 141) Channel EQ Channel EQ は、非常に応用範囲が広いマルチバンド EQ です。8 種類の周波数帯 (ローパス/ハイパスフィルタ、ロー・シェルビング/ハイ・シェルビング・ フィルタ、フレキシブルな4つのパラメトリックバンド)に対応しています。ま た、変更を加えるオーディオの周波数カーブを表示する高速フーリエ変換(FFT) アナライザも組み込まれており、周波数スペクトラムのどの部分を調整する必要 があるかを知ることができます。 Channel EQは、個別のトラックまたはオーディオファイルのサウンド形成や、プ ロジェクトミックス全体の音作りなど、さまざまな用途に使うことができます。 アナライザ機能とグラフィカルなコントロールを使って、オーディオ信号をモニ タし、リアルタイムで変更する操作を簡単に行うことができます。 ヒント: Channel EQ と Linear Phase EQ のパラメータは同じであるため、2 つの間 で設定を自由にコピーできます。同じインサートスロット内で Channel EQ を Linear Phase EQ に、または Linear Phase EQ を Channel EQ に置き換えると、自動的 に現在の設定が新しい EQ に転送されます。 Channel EQ のパラメータ Channel EQウインドウの左側には、ゲインおよびアナライザコントロールがあり ます。ウインドウの中央の領域には、各 EQ 帯域を形成するためのグラフィック ディスプレイとパラメータがあります。 122 第 5 章 イコライザ Channel EQ のゲインおよびアナライザコントロール • 「Master Gain」スライダ/フィールド: 信号の全体の出力レベルを設定しま す。各周波数帯をブーストまたはカットしてから使います。 • 「Analyzer」ボタン: アナライザのオン/オフを切り替えます。 • 「Pre EQ」/「Post EQ」ボタン: アナライザモードが選択されている場合に、 アナライザで EQ 適用前/適用後のどちらの周波数カーブを表示するかを設定 します。 • 分解能ポップアップメニュー: メニュー項目から、アナライザのサンプル分 解能を設定します。「low」(1024 ポイント)、「medium」(2048 ポイン ト)、「high」(4096 ポイント)の中から選択できます。 Channel EQ のグラフィック・ディスプレイ・セクション • 帯域のオン/オフボタン: クリックすると、対応する帯域のオンとオフが切 り替わります。それぞれのボタンのアイコンは、以下の通りにフィルタの種類 を示します: 帯域 1、ハイパスフィルタ。 帯域 2、ロー・シェルビング・フィルタ。 帯域 3 〜 6、パラメトリック・ベル・フィルタ。 帯域 7、ハイ・シェルビング・フィルタ。 帯域 8、ローパスフィルタ。 • グラフィックディスプレイ: 各 EQ 帯域の現在のカーブが表示されます。 • ディスプレイ上の目的の帯域を囲む部分を左右の方向にドラッグすると、そ の帯域の周波数を調整できます。 • ディスプレイ上の目的の帯域を囲む部分を上下の方向にドラッグすると、そ の帯域のゲインを調整できます(帯域 1 と帯域 8 を除く)。ディスプレイに は、変更が即座に反映されます。 • Q値を調整するには、各帯域のピボットポイントをドラッグします。ピボッ トポイントの上にカーソルを置くと、ポインタの横にQ値が表示されます。 Channel EQ のパラメータセクション • 周波数フィールド: 各帯域の周波数を調整します。 • 「Gain/Slope」フィールド: 各帯域のゲインの量を設定します。帯域 1 および 8 では、これによりフィルタのスロープを変更できます。 • 「Q」フィールド: 各帯域のQ値、すなわちレゾナンス(センター周波数周辺 の影響を受ける範囲)を調整します。 第 5 章 イコライザ 123 メモ: スロープを 6 dB/Oct に設定した場合、帯域 1 と帯域 8 の Q パラメータは 作用しません。Q パラメータを極端に高く(100 など)設定すると、これらの フィルタが影響する周波数帯域が非常に狭くなるため、ノッチフィルタとして 使用できます。 • リンクボタン: Gain-Q Couple(EQ 帯域のゲインの増減に応じた Q(帯域幅) の自動調整)を有効にして、対象とする帯域幅のベルカーブが保たれるように します。 • 「AnalyzerMode」ボタン(拡張パラメータ領域): 「Peak」または「RMS」を 選択します。 • 「Analyzer Decay」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): アナライ ザのカーブのディケイ速度(dB/秒)を調整します(「Peak」モードの場合は ピークディケイ、「RMS」モードの場合は平均ディケイ)。 • 「Gain-Q Couple Strength」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): Gain-Q Couple の量を選択します。 • 「strong」を選択すると、帯域幅のほとんどが保護されます。 • 「light」または「medium」を選択すると、ゲインの上下に応じて帯域幅が多 少変更されます。 • 非対称に設定すると、正のゲイン値よりも負のゲイン値の方がカップリング が強く働くため、ゲインをブーストする場合よりもカットした場合の方が帯 域幅が厳密に保護されます。 メモ: Gain-Q Couple の設定を変えて Q パラメータのオートメーションを再生す る場合、実際の Q 値は、オートメーションを記録したときと異なります。 Channel EQ を使う Channel EQの使いかたは、もちろん作成するオーディオ素材や操作内容によって 異なりますが、多くの状況で次のワークフローが役に立ちます。Channel EQをフ ラットレスポンスに設定し(どの周波数もブースト/カットしません)、アナラ イザをオンにしてオーディオ信号を再生します。グラフィックディスプレイをモ ニタし、周波数スペクトラムのピークの頻出部分やレベルが低い部分を確認しま す。信号の歪みやクリップが起きる場所には、特に注意してください。グラフィッ クディスプレイまたはパラメータコントロール類を使って、周波数帯を調整しま す。 不要な周波数を抑制または除去したり、音量が小さい周波数を大きくして際立た せたりすることができます。帯域2から帯域7のセンター周波数を調整すると、 特定の周波数(ミュージックデータの基音などの強調したい周波数、またはハム やその他のノイズなどの排除したい周波数)を対象にすることができます。同時 に、Qパラメータ(複数可)を小さくして目的の周波数の範囲を狭めることや、 大きくして広範囲の領域を変更することもできます。 124 第 5 章 イコライザ EQ 帯域はそれぞれ異なる色でグラフィックディスプレイに表示されます。左右 の方向にドラッグすると、その帯域の周波数をグラフィカルに調整できます。上 下の方向にドラッグすると、各帯域のゲインの量を調整できます。帯域1および 8では、グラフィックディスプレイの下のパラメータ領域でのみスロープの値を 変更できます。各帯域には、周波数の位置にピボットポイント(カーブ上の小さ な円)があります。このピボットポイントを上下にドラッグすると、Q(帯域 幅)を調整できます。 また、アナライザが有効ではないときに、グラフィックディスプレイの左右の端 (dB スケールが表示されている場所)を上下にドラッグすると、ディスプレイ のデシベルスケールを調整できます。アナライザが有効のときは、左の端をド ラッグすると dB リニアスケールが調整され、右の端をドラッグするとアナライ ザの dB スケールが調整されます。 基線の周囲の特定の領域の EQ カーブディスプレイの分解能を上げるには、グラ フィックディスプレイの左側の dB スケールを上方向にドラッグします。下方向 にドラッグすると、分解能が下がります。 Channel EQ のアナライザを使う アナライザが有効なときは、高速フーリエ変換(FFT)という数学的な処理を利 用して、入力信号のすべての周波数成分がリアルタイムで表示されます。この周 波数成分は、設定した EQ カーブに重ねて表示されます。アナライザカーブには EQ カーブと同じスケールが使用されているため、重要な役割を持つ周波数を容 易に見分けることができます。また、EQ カーブを設定して周波数のレベルおよ び範囲を調整することが簡単になります。 FFT 分析から得られる帯域は、対数スケールに従って分割されるので、オクター ブが高いほど、低い場合よりも多くの帯域に分割されます。 アナライザを有効にすると、グラフィックディスプレイの右側のアナライザ上限 パラメータを変更して、スケールを変更できるようになります。表示される領域 のダイナミックレンジは60dBです。垂直方向にドラッグすると、最大値を+20 〜-80 dB の範囲で設定できます。アナライザのディスプレイは、常に dB 単位の リニア表示です。 メモ: 分解能を選択するときは、分解能を上げると大幅に処理能力が増すことに 留意してください。たとえばベース周波数が非常に低い場合に正確な分析結果を 得るには、分解能を上げる必要があります。該当する EQ パラメータを設定した 後は、アナライザを無効にするか、Channel EQウインドウを閉じることをお勧め します。これにより、CPUリソースを解放して別のタスクに割り当てることがで きます。 第 5 章 イコライザ 125 DJ EQ DJ EQ は、ハイ・シェルビング・フィルタおよびロー・シェルビング・フィルタ (それぞれ固定の周波数)と、パラメトリック EQ を組み合わせたものです。こ のパラメトリックEQでは、周波数、ゲイン、Q値を調整できます。DJEQでは、 フィルタのゲインを- 30 dB まで低減することができます。 • 「High Shelf」スライダ/フィールド: ハイ・シェルビング・フィルタのゲイ ンの量を設定します。 • 「Frequency」スライダ/フィールド: パラメトリックEQのセンター周波数を 設定します。 • 「Q-Factor」スライダ/フィールド: パラメトリック EQ の範囲(帯域幅)を 設定します。 • 「Gain」スライダ/フィールド: パラメトリックEQのゲインの量を設定しま す。 • 「LowShelf」スライダ/フィールド: ロー・シェルビング・フィルタのゲイン の量を設定します。 126 第 5 章 イコライザ Fat EQ Fat EQ はマルチバンド EQ で、個々の音源にもミックス全体にも、さまざまな目 的で使用できます。Fat EQ は最大 5 つまでの周波数帯に対応し、EQ カーブを表 示するグラフィックディスプレイと、各帯域のパラメータセットがあります。 Fat EQ には以下のパラメータがあります。 • 帯域タイプボタン: グラフィックディスプレイの上にあります。帯域 1 〜 2 および 4 〜 5 については、一組のボタンの一方をクリックして、対応する帯域 の EQ タイプを選択します。 • 帯域 1: ハイパスまたはローシェルビングのボタンをクリックします。 • 帯域 2: ローシェルビングまたはパラメトリックのボタンをクリックしま す。 • 帯域 3: 常にパラメトリック EQ 帯域です。 • 帯域 4: パラメトリックまたはハイシェルビングのボタンをクリックしま す。 • 帯域 5: ハイシェルビングまたはローパスのボタンをクリックします。 • グラフィックディスプレイ: 各周波数帯の EQ カーブが表示されます。 • 周波数フィールド: 各帯域の周波数を設定します。 • 「Gain」ノブ: 各帯域のゲインの量を設定します。 第 5 章 イコライザ 127 • 「Q」フィールド: Q、すなわち各帯域の帯域幅(センター周波数周辺の影響 を受ける範囲)を設定します。Q 値を低くすると、EQ の影響が幅広い周波数 範囲に及びます。Q 値を高くすると、EQ 帯域の効果は狭い周波数範囲に限定 されます。Q値の設定は、変更の結果どのように聞こえるかに大きく影響しま す。狭い周波数帯を操作する場合は、一般的にQ値を大きくカットまたはブー ストして違いが分かるようにする必要があります。 メモ: 帯域 1 および 5 では、これによりフィルタのスロープが変更されます。 • 帯域のオン/オフボタン: 対応する周波数帯の有効/無効を切り替えます。 • 「Master Gain」スライダ/フィールド: 信号の全体の出力レベルを設定しま す。各周波数帯をブーストまたはカットしてから使います。 Linear Phase EQ この高品質な Linear Phase EQ エフェクトは、Channel EQ と似ており、パラメータ と8帯域のレイアウトが共通しています。ただし、Channel EQとは基本的なテク ノロジーが異なり、オーディオ信号の位相は完全に保持されます。位相の一貫性 が保たれ、急激な信号のトランジェントに極端な EQ カーブを適用しても、位相 は失われません。 さらに、Linear Phase EQ では、アクティブな帯域の数にかかわらず、一定量の CPU リソースが使用されるという点が異なっています。Linear Phase EQ では、レ イテンシも大きくなります。このためLinear Phase EQは、録音が済んだオーディ オのマスタリングに使用することをお勧めします。ソフトウェア音源のライブ演 奏などには使用しないでください。 ヒント: Channel EQ と Linear Phase EQ のパラメータは同じであるため、2 つの間 で設定を自由にコピーできます。同じインサートスロット内で Channel EQ を Linear Phase EQ に、または Linear Phase EQ を Channel EQ に置き換えると、自動的 に現在の設定が新しい EQ に転送されます。 128 第 5 章 イコライザ Linear Phase EQ のパラメータ Linear Phase EQウインドウの左側には、ゲインおよびアナライザコントロールが あります。ウインドウの中央の領域には、各EQ帯域を形成するためのグラフィッ クディスプレイとパラメータがあります。 Linear Phase EQ のゲインおよびアナライザコントロール • 「Master Gain」スライダ/フィールド: 信号の全体の出力レベルを設定しま す。各周波数帯をブーストまたはカットしてから使います。 • 「Analyzer」ボタン: アナライザのオン/オフを切り替えます。 • 「Pre EQ」/「Post EQ」ボタン: アナライザモードが選択されている場合に、 アナライザで EQ 適用前/適用後のどちらの周波数カーブを表示するかを設定 します。 • 分解能ポップアップメニュー: メニュー項目から、アナライザのサンプル分 解能を設定します。「low」(1024 ポイント)、「medium」(2048 ポイン ト)、「high」(4096 ポイント)の中から選択できます。 Linear Phase EQ のグラフィック・ディスプレイ・セクション • 帯域のオン/オフボタン: クリックすると、対応する帯域のオンとオフが切 り替わります。それぞれのボタンのアイコンは、以下の通りにフィルタの種類 を示します: 帯域 1、ハイパスフィルタ。 帯域 2、ロー・シェルビング・フィルタ。 帯域 3 〜 6、パラメトリック・ベル・フィルタ。 帯域 7、ハイ・シェルビング・フィルタ。 帯域 8、ローパスフィルタ。 第 5 章 イコライザ 129 • グラフィックディスプレイ: 各 EQ 帯域の現在のカーブが表示されます。 • ディスプレイ上の目的の帯域を囲む部分を左右の方向にドラッグすると、そ の帯域の周波数を調整できます。 • ディスプレイ上の目的の帯域を囲む部分を上下の方向にドラッグすると、そ の帯域のゲインを調整できます(帯域 1 と帯域 8 を除く)。ディスプレイに は、変更が即座に反映されます。 • Q値を調整するには、各帯域のピボットポイントをドラッグします。ピボッ トポイントの上にマウスを移動すると、カーソルの横に Q 値が表示されま す。 Linear Phase EQ のパラメータセクション • 周波数フィールド: 各帯域の周波数を調整します。 • 「Gain/Slope」フィールド: 各帯域のゲインの量を設定します。帯域 1 および 8 では、これによりフィルタのスロープを変更できます。 • 「Q」フィールド: 各帯域のQ値、すなわちレゾナンス(センター周波数周辺 の影響を受ける範囲)を調整します。 メモ: スロープを 6 dB/Oct に設定した場合、帯域 1 と帯域 8 の Q パラメータは 作用しません。Q パラメータを極端に高く(100 など)設定すると、これらの フィルタが影響する周波数帯域が非常に狭くなるため、ノッチフィルタとして 使用できます。 • リンクボタン: Gain-Q Couple(EQ 帯域のゲインの増減に応じた Q(帯域幅) の自動調整)を有効にして、対象とする帯域幅のベルカーブが保たれるように します。 • 「AnalyzerMode」ボタン(拡張パラメータ領域): 「Peak」または「RMS」を 選択します。 • 「Analyzer Decay」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): アナライ ザのカーブのディケイ速度(dB/秒)を調整します(「Peak」モードの場合は ピークディケイ、「RMS」モードの場合は平均ディケイ)。 • 「Gain-Q Couple Strength」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): Gain-Q Couple の量を選択します。 • Gain-QCoupleを「strong」に設定すると、帯域幅のほとんどが保護されます。 • 「light」および「medium」設定では、ゲインの上下に応じて帯域幅が多少変 更されます。 • 非対称に設定すると、正のゲイン値よりも負のゲイン値の方がカップリング が強く働くため、ゲインをブーストする場合よりもカットした場合の方が帯 域幅が厳密に保護されます。 メモ: Gain-Q Couple の設定を変えて Q パラメータのオートメーションを再生す る場合、実際の Q 値は、オートメーションを記録したときと異なります。 130 第 5 章 イコライザ Linear Phase EQ を使う 一般的にLinear Phase EQはマスタリングツールとして使うため、通常はマスター または出力チャンネルストリップに挿入します。Linear Phase EQ の使いかたは、 もちろん作成するオーディオ素材や操作内容によって異なりますが、多くの状況 で次のワークフローが役に立ちます。Linear Phase EQ をフラットレスポンスに設 定し(どの周波数もブースト/カットしません)、アナライザをオンにしてオー ディオ信号を再生します。グラフィックディスプレイをモニタし、周波数スペク トラムのピークの頻出部分やレベルが低い部分を確認します。信号の歪みやク リップが起きる場所には、特に注意してください。グラフィックディスプレイま たはパラメータコントロール類を使って、周波数帯を調整します。 不要な周波数を抑制または除去したり、音量が小さい周波数を大きくして際立た せたりすることができます。帯域2から帯域7のセンター周波数を調整すると、 特定の周波数(ミュージックデータの基音などの強調したい周波数、またはハム やその他のノイズなどの排除したい周波数)を対象にすることができます。同時 に、Qパラメータ(複数可)を小さくして目的の周波数の範囲を狭めることや、 大きくして広範囲の領域を変更することもできます。 EQ 帯域はそれぞれ異なる色でグラフィックディスプレイに表示されます。左右 の方向にドラッグすると、その帯域の周波数をグラフィカルに調整できます。上 下の方向にドラッグすると、各帯域のゲインの量を調整できます。帯域1および 8では、グラフィックディスプレイの下のパラメータ領域でのみスロープの値を 変更できます。各帯域には、周波数の位置にピボットポイント(カーブ上の小さ な円)があります。このピボットポイントを上下にドラッグすると、Q(帯域 幅)を調整できます。 また、アナライザが有効ではないときに、グラフィックディスプレイの左右の端 (dB スケールが表示されている場所)を上下にドラッグすると、ディスプレイ のデシベルスケールを調整できます。アナライザが有効のときは、左の端をド ラッグすると dB リニアスケールが調整され、右の端をドラッグするとアナライ ザの dB スケールが調整されます。 基線の周囲の特定の領域の EQ カーブディスプレイの分解能を上げるには、グラ フィックディスプレイの左側の dB スケールを上方向にドラッグします。下方向 にドラッグすると、分解能が下がります。 Linear Phase EQ のアナライザを使う アナライザが有効なときは、高速フーリエ変換(FFT)という数学的な処理を利 用して、入力信号のすべての周波数成分がリアルタイムで表示されます。この周 波数成分は、設定した EQ カーブに重ねて表示されます。アナライザカーブには EQ カーブと同じスケールが使用されているため、重要な役割を持つ周波数を容 易に見分けることができます。また、EQ カーブを設定して周波数のレベルおよ び範囲を調整することが簡単になります。 第 5 章 イコライザ 131 FFT 分析から得られる帯域は、周波数の線法則に従って分割されるので、オク ターブが高いほど、低い場合よりも多くの帯域に分割されます。 アナライザを有効にすると、グラフィックディスプレイの右側のアナライザ上限 パラメータを変更して、スケールを変更できるようになります。表示される領域 のダイナミックレンジは60dBです。垂直方向にドラッグすると、最大値を+20 〜- 40 dB の範囲で設定できます。アナライザのディスプレイは、常に dB 単位 のリニア表示です。 メモ: 分解能を選択するときは、分解能を上げると大幅に処理能力が増すことに 留意してください。たとえばベース周波数が非常に低い場合に正確な分析結果を 得るには、分解能を上げる必要があります。該当する EQ パラメータを設定した 後は、アナライザを無効にするか、Linear Phase EQ ウインドウを閉じることをお 勧めします。これにより、CPUリソースを解放して別のタスクに割り当てること ができます。 Match EQ Match EQ では、特定のオーディオファイルの平均的な周波数スペクトラムをテ ンプレートとして保存し、それを別のオーディオ信号に適用してオリジナルファ イルのスペクトラムとマッチさせることができます。これはフィンガープリント EQ とも呼ばれ、ある音の特徴が別の信号に適用されます。 Match EQ を使用すると、アルバムに収録する複数の曲の音質や全体的なサウン ドを音響的にマッチさせたり、録音したソースの特色を自分のプロジェクトに取 り入れたりできます。 Match EQ は、オーディオファイル、チャンネルストリップの入力信号、テンプ レートなどのオーディオ信号の周波数スペクトラムを分析して学習するイコライ ザです。Match EQ はソースファイル(テンプレート)と現在の素材(プロジェ クト全体でも、プロジェクト内の個々のチャンネルストリップでもかまいませ ん)の平均周波数スペクトラムを分析します。そしてこれら2つのスペクトラム をマッチさせて、フィルタカーブを作成します。このフィルタカーブによって、 現在の素材の周波数応答をテンプレートの周波数応答とマッチさせます。フィル タカーブを適用する前に、いくつかの周波数をブースト/カットしたり、カーブ を反転したりして、修正を加えることができます。 アナライザによって、ソースファイルの周波数スペクトラムと、これによって生 成されるカーブを比べて見ることができるので、スペクトラム範囲内の特定の場 所を手動で簡単に修正できます。 Match EQ には、目的とする結果や対象のオーディオによってさまざまな使いか たがあります。一般的には、作成するミックスのサウンドを(自分やほかのアー ティストの)録音済みのサウンドに近づけるのに使用します。 132 第 5 章 イコライザ メモ: Match EQ は 2 つのオーディオ信号の周波数カーブを音響的にマッチさせま すが、2 つの信号間のダイナミクス上の違いはマッチさせません。 Match EQ のパラメータ Match EQ には以下のパラメータがあります。 Match EQ のアナライザパラメータ • 「Analyzer」ボタン: アナライザ機能のオン/オフを切り替えます。 • 「Pre」/「Post」ボタン: アナライザでの信号の分析を、フィルタカーブの 適用前(「Pre」)と適用後(「Post」)のどちらに行うかを設定します。 • 「View」ポップアップメニュー: グラフィックディスプレイに表示される情 報を設定します。選択肢は以下の通りです: • Automatic: 現在の機能の情報を、グラフィックディスプレイの下部のアク ティブなボタンに応じて表示します。 • Template: 取得したソースファイルの周波数カーブを表示します。この周波 数カーブは赤色で表示されます。 • Current Material: 現在の素材として取得したオーディオの周波数カーブを表 示します。この周波数カーブは緑色で表示されます。 • フィルタ: テンプレートと現在の素材にマッチさせることによって作成さ れたフィルタカーブを表示します。このフィルタカーブは黄色で表示されま す。 • 「View」ボタン: 個々のカーブ(ステレオは「L&R」、サラウンドは「All Cha」)と、最大レベルの合計(ステレオは「LR Max」、サラウンドは「Cha Max」)のどちらをアナライザに表示するかを指定します。 第 5 章 イコライザ 133 メモ: 「View」パラメータは、モノラルチャンネルでエフェクトを使用すると きには無効になります。 • 「Select」ボタン: フィルタカーブ(テンプレートを現在の素材にマッチさせ て作成)に対する変更の適用先を、左チャンネル(「L」)、右チャンネル (「R」)、両チャンネル(「L+R」)のいずれかに設定します。 メモ: 「Select」パラメータは、モノラルチャンネルでエフェクトを使用すると きには無効になります。 • 「Select」メニュー(サラウンドインスタンスのみ): 「Select」ボタンは 「Select」メニューになり、個々のチャンネルまたはすべてのチャンネルを選 択できます。チャンネルを1つだけ選択しているときは、フィルタカーブを変 更すると選択中のチャンネルに反映されます。 • 「Channel Link」スライダ/フィールド: 「Select」ボタンまたは「Select」メ ニューによる設定を微調整します。 • 100%に設定すると、すべてのチャンネル(ステレオの場合は「L」と「R」、 サラウンドの場合はすべてのチャンネル)が共通のEQカーブで表されます。 • 値を0%に設定すると、チャンネルごとに別々のフィルタカーブが表示され ます。チャンネルは「Select」ボタンまたは「Select」メニューで選択できま す。 • 0 〜 100 %の間で設定をして、これらの値を各チャンネルのフィルタカーブ に加えた変更に混ぜ合わせることができます。これにより、混成カーブがで きます。 メモ: 「Channel Link」パラメータは、モノラルチャンネルでエフェクトを使用 するときには無効になります。 • 「LFEHandling」ボタン(拡張パラメータ領域): サラウンドインスタンスで、 LFE チャンネルを処理またはバイパスできます。 Match EQ のディスプレイ、「Learn」および「Match」パラメータ • グラフィックディスプレイ: テンプレートを現在の素材にマッチさせること によって作成されたフィルタカーブを表示します。フィルタカーブは編集が可 能です(Match EQ のフィルタカーブを編集するを参照)。 • 「Template」の「Learn」ボタン: クリックすると、ソースファイルの周波数 スペクトラムの取得が始まります。再度クリックすると、処理が停止します。 • 「Current Material」の「Learn」ボタン: クリックすると、ソースファイルと マッチさせるプロジェクトの周波数スペクトラムの取得が始まります。再度ク リックすると、処理が停止します。 • 「CurrentMaterial」の「Match」ボタン: 現在の素材の周波数スペクトラムを、 テンプレート(ソース)ファイルのスペクトラムとマッチさせます。 134 第 5 章 イコライザ Match EQ の処理パラメータ • 「Phase」ポップアップメニュー: フィルタカーブの操作方法を切り替えま す。 • 「Linear」では、処理によって信号の位相は変更されませんが、プラグイン のレイテンシーが増加します。 • 「Minimal」では、信号の位相が(最小限で)変更されますが、レイテンシー は低減されます。 • 「Minimal, Zero Latency」ではレイテンシーが加わりませんが、その他のオプ ションに比べて CPU の負荷が高くなります。 • 「Apply」スライダ/フィールド: 信号のフィルタカーブのかかり具合を設定 します。 • 値が 100 %を超えると利きが強くなります。 • 値が 100 %を下回ると利きが弱くなります。 • 負の値(- 1 %〜- 100 %)にすると、フィルタカーブのピークとスルーが 反転します。 • 値を 100 %にすると、フィルタカーブは変更されません。 • 「Smoothing」スライダ/フィールド: 半音単位で設定された一定の帯域幅 で、フィルタカーブの滑らかさを設定します。値を0.0にすると、フィルタカー ブは変更されません。値が 1.0 であれば、1 半音の帯域幅でスムージング処理 されます。値が 4.0 であれば、4 半音の帯域幅(長 3 度)でスムージング処理 されます。同様に、値が 12.0 であれば、1 オクターブの帯域幅でスムージング 処理されます。 メモ: スムージングは、フィルタカーブに対して手動で行った変更には影響し ません。 • 「FadeExtremes」チェックボックス(拡張パラメータ領域): 選択すると、周 波数スペクトルの上下の両端でフィルタカーブがスムーシングされます。 Match EQ を使う 以下に、ユーザのワークフローで利用できる一般的な使用例を挙げます。この例 では、ミックスの周波数スペクトラムをソース・オーディオ・ファイルのスペク トラムにマッチさせます。 Match EQ テンプレートを学習する/作成するには 以下のいずれかの操作を行います: µ Finderから「Template」の「Learn」ボタンにオーディオファイルをドラッグし、 ソースチャンネルストリップをサイドチェーンとして選択します。以下を参照し てください。 第 5 章 イコライザ 135 µ ソースチャンネルストリップのMatchEQを使って、設定を保存します。ターゲッ トの Match EQ インスタンスにこの設定を読み込ませます。以下を参照してくだ さい プロジェクトミックスの EQ をソース・オーディオ・ファイルの EQ にマッチさ せるには 1 ソース・オーディオ・ファイルにマッチさせるプロジェクトで、Match EQ のイ ンスタンスを作成します(通常は「Output 1-2」に作成)。 2 ソース・オーディオ・ファイルを「Template」の「Learn」ボタンの上にドラッグ します。 3 ミックスのはじめに戻り、「CurrentMaterial」の「Learn」をクリックしてから、 ミックス(現在の素材)を最初から最後まで再生します。 4 再生が完了したら、「Current Material」の「Match」をクリックします(これに より、自動的に「Current Material」の「Learn」ボタンが解除されます)。 チャンネルストリップでマッチした EQ を使うには: 1 「MatchEQ」ウインドウの「Sidechain」メニューで、マッチさせるチャンネルス トリップを選択します。 2 「Template」の「Learn」ボタンをクリックします。 3 ソース・オーディオ・ファイル全体を最初から最後まで再生してから、再度 「Template」の「Learn」ボタンをクリックします(学習処理が停止します)。 4 ミックスのはじめに戻り、「CurrentMaterial」の「Learn」をクリックしてから、 ミックス(現在の素材)を最初から最後まで再生します。 5 再生が完了したら、「Current Material」の「Match」をクリックします(これに より、自動的に「Current Material」の「Learn」ボタンが解除されます)。 テンプレートと現在の素材のスペクトルの差分をベースに、Match EQ によって フィルタカーブが作成されます。このカーブは、テンプレートと現在の素材のゲ インの差を自動的に補正し、0 dB を基準とする EQ カーブが生成されます。グラ フィックディスプレイに黄色のフィルタ・レスポンス・カーブが表示され、ミッ クスの平均スペクトルが示されます。このカーブは、ソース・オーディオ・ファ イルの平均スペクトルに近い(平均スペクトルを反映した)ものです。 オーディオファイルを「Template」の「Learn」ボタンまたは「Current Material」 の「Learn」ボタンの上にドラッグして、テンプレートまたは現在の素材として 使用できます。Match EQ でファイルを分析する間は、バーに進行状況が示され ます。また、あらかじめ保存されたプラグインの設定を読み込むことや、コピー /ペーストによって別の保存されていない Match EQ インスタンスの設定を読み 込むことも可能です。 136 第 5 章 イコライザ いずれかの「Learn」ボタンをクリックすると、「View」パラメータが 「Automatic」に設定され、機能の周波数カーブがグラフィックディスプレイに 表示されます。処理中のファイルがない場合は、ほかの「View」オプションを選 択することによって、いずれかの周波数カーブを確認できます。 「Match」ボタンが有効の場合、テンプレートまたは現在の素材のスペクトラム が新しく取得または読み込まれるたびに、フィルタカーブが自動的にアップデー トされます。「Match」ボタンを有効または無効にすることによって、マッチ済 みの(つまり調整済みであるか手動で修正済みの)フィルタカーブとフラットレ スポンスを切り替えることができます。 同時に選択できる「Learn」ボタンは、1つだけです。たとえば、「Template」セ クションの「Learn」ボタンが選択されている場合に「CurrentMaterial」セクショ ンの「Learn」ボタンを押すと、テンプレートファイルの分析は停止し、スペク トラムテンプレートとして現在の状況が使用されて、入力されるオーディオ信号 (現在の素材)の分析が開始します。 メモ: 「Match」が選択されているときにスペクトラムを新しく読み込む/取得 するか、新しいスペクトラムが読み込まれた後で「Match」を選択すると、2 つ のオーディオ信号をマッチさせるたびに、フィルタカーブに対する既存の変更は すべて破棄され、「Apply」スライダが 100 %に設定されます。 オーディオ信号の周波数カーブを取得するとき、「Apply」スライダはデフォル トでは100%に設定されます。多くの場合、この設定をやや低くして、ミックス のスペクトラムが極端に変更されないようにするとよいでしょう。また、生成し た EQ カーブのスペクトラムの細部を変更するため、「Smoothing」を使用する ことをお勧めします。 Match EQ のショートカットメニューを使う いずれかの「Learn」ボタンを Control キーを押したままクリック(または右ク リック)すると、ショートカットメニューが開きます。ショートカットメニュー を使うと、テンプレートまたは現在の素材のスペクトラムに適用できるコマンド を実行できます。 • Clear Current Material Spectrum: 現在のスペクトラムを消去します。 • Copy Current Spectrum: クリップボード(現在のプロジェクトのどの Match EQ インスタンスでも使えます)に現在のスペクトラムをコピーします。 • Paste Current Spectrum: 現在の Match EQ インスタンスにクリップボードの内容 をペーストします。 • Load CurrentMaterial Spectrumfromsetting file: 保存されている設定ファイルから スペクトラムを読み込みます。 • Generate Current Material Spectrum from audio file: 選択したオーディオファイル の周波数スペクトラムを生成します。 第 5 章 イコライザ 137 Match EQ のフィルタカーブを編集する グラフィックディスプレイで各帯域に表示されたさまざまな部分を調整すること によって、フィルタカーブをグラフィカルに編集できます。ドラッグしていると きは、グラフィックディスプレイの小さなボックスに現在の値が表示されるの で、微調整することができます。 Match EQ のカーブの値を調整するには µ 水平方向にドラッグすると、その帯域のピーク周波数を(スペクトラム全体にわ たって)シフトできます。 µ 上下の方向にドラッグすると、各帯域のゲインを調整できます。 µ Shift キーを押したまま上下の方向にドラッグすると、Q 値を調整できます。 µ Option キーを押したままドラッグすると、ゲインが 0 dB にリセットされます。 メモ: フィルタカーブを手動で修正する場合は、アナライザディスプレイの背景 を Option キーを押しながらクリックすると、オリジナル(フラット)カーブに 戻すことができます。Optionキーを押しながら再度背景をクリックすると、最新 のカーブに戻ります。 フィルタの Q 値は、クリックした位置とカーブの垂直距離によって設定されま す。 Match EQ の Q 値を設定するには µ カーブを直接クリックすると、Q の値として最大値の 10 が設定されます(ノッ チ型のフィルタ)。 µ カーブの上下をクリックすると、Qの値は減少します。クリックする場所がカー ブから離れるほど、値は小さくなります(最小値は 0.3)。 ディスプレイの左右にある dB スケールのカラーとモードは、選択されている機 能に自動的に適用されます。アナライザが選択されている場合は、左側のスケー ルに信号の平均スペクトラムが表示され、右側のスケールによってアナライザの ピーク値を参照できます。デフォルトで表示されるダイナミックレンジは 60 dB です。これでも精度が低い場合は、範囲を広げることができます。 Match EQ のスケールの範囲を変更するには µ いずれかのスケールをドラッグし、+ 20 〜- 100 dB の範囲で値を設定します。 Match EQ のゲインをスケールで変更するには µ いずれかのスケールをドラッグし、フィルタカーブの全体的なゲインを- 30 〜 + 30 dB の範囲で調整します。 左のスケールに(アナライザが無効の場合は右のスケールにも)フィルタカーブ の dB 値が対応する色で示されます。 138 第 5 章 イコライザ シングルバンド EQ 次のセクションでは、「Logic Pro」が搭載している以下のシングルバンド EQ エ フェクトについて説明します: • Low Cut フィルタおよび High Cut フィルタ • High Pass Filter および Low Pass Filter • High Shelving EQ および Low Shelving EQ • Parametric EQ 上記のエフェクトは、プラグインメニューを開いて「EQ」>「Single Band」と選 択すると表示されます。 Low Cut フィルタおよび High Cut フィルタ Low Cut Filter は選択した周波数を下回る範囲の周波数を減衰します。High Cut Filter は設定した周波数を上回る範囲の周波数を減衰します。「Frequency」スラ イダおよびフィールドを使うと、カットオフ周波数を設定できます。 High Pass Filter および Low Pass Filter High Pass Filter は設定した周波数を下回る範囲の周波数に影響を与えます。設定 を上回る周波数は、フィルタを通過します。High Pass Filter を使って、選択した 周波数を下回るベース周波数を除去することができます。 これに対して、Low Pass Filter は選択した周波数を上回る範囲の周波数に影響を 与えます。 • 「Frequency」スライダ/フィールド: カットオフ周波数を設定します。 第 5 章 イコライザ 139 • 「Order」スライダ/フィールド: フィルタのオーダーを設定します。段数が 多ければ多いほど、フィルタリングの効果が強くなります。 • 「Smoothing」スライダ/フィールド: スムージングの量(ミリ秒)を設定し ます。 High Shelving EQ および Low Shelving EQ Low Shelving EQ は選択した周波数を下回る範囲の周波数だけに影響します。The High Shelving EQ は選択した周波数を上回る範囲の周波数だけに影響します。 • 「Gain」スライダ/フィールド: カットまたはブーストする量を設定します。 • 「Frequency」スライダ/フィールド: カットオフ周波数を設定します。 Parametric EQ Parametric EQは、センター周波数を変更するシンプルなフィルタです。オーディ オスペクトラムに含まれる周波数帯をブーストまたはカットするのに使用でき、 幅広い周波数範囲を対象にすることも、ごく狭い範囲のノッチフィルタとして使 用することも可能です。センター周波数を中心に、周波数範囲が対称的にブース ト/カットされます。 • 「Gain」スライダ/フィールド: カットまたはブーストする量を設定します。 • 「Frequency」スライダ/フィールド: カットオフ周波数を設定します。 • 「Q-Factor」スライダ/フィールド: Q(帯域幅)を設定します。 140 第 5 章 イコライザ Silver EQ Silver EQ は、ハイシェルビング EQ、パラメトリック EQ、ローシェルビング EQ の 3 つの帯域に対応しています。ハイシェルビング EQ とローシェルビング EQ のカットオフ周波数を調整できます。パラメトリック EQ の、中心周波数、ゲイ ン、Q 値を調整できます。 • 「HighShelf」スライダ/フィールド: ハイシェルビングEQのレベルを設定し ます。 • 「High Frequency」スライダ/フィールド: High Shelving EQ のカットオフ周波 数を設定します。 • 「Frequency」スライダ/フィールド: パラメトリックEQのセンター周波数を 設定します。 • 「Q-Factor」スライダ/フィールド: Parametric EQ の範囲(帯域幅)を調整し ます。 • 「Gain」スライダ/フィールド: パラメトリックEQのカットまたはブースト の量を設定します。 • 「Low Shelf」スライダ/フィールド: ローシェルビング EQ のレベルを設定し ます。 • 「Low Frequency」スライダ/フィールド: Low Shelving EQ のカットオフ周波 数を設定します。 第 5 章 イコライザ 141 フィルタを使うと、オーディオ信号の周波数を強調または抑制して、オーディオ の音質を変化させることができます。 「LogicPro」にはフィルタをベースにした高度な各種エフェクトがあり、クリエ イティブなオーディオ編集に役立てることができます。これらのエフェクトは、 サウンドまたはミックスの周波数スペクトラムを大幅に変えるために最もよく使 われます。 メモ: イコライザ(EQ)は、特殊なタイプのフィルタです。通常、イコライザは 「エフェクト」としては使われませんが、サウンドまたはミックスの周波数スペ クトラムを微調整するためのツールとして使われます。イコライザを参照してく ださい。 この章では以下の内容について説明します: • AutoFilter (ページ 143) • EVOC 20 Filterbank (ページ 149) • EVOC 20 TrackOscillator (ページ 155) • Fuzz-Wah (ページ 168) • Spectral Gate (ページ 172) AutoFilter AutoFilter は汎用的なフィルタエフェクトで、ユニークな機能をいくつか持って います。典型的なアナログスタイルのシンセサイザーエフェクトの作成や、クリ エイティブなサウンドデザインのツールとして使用することができます。 このエフェクトは、しきい値パラメータを使って入力信号のレベルを分析するこ とで機能します。しきい値を上回る信号は、シンセサイザースタイルの ADSR エ ンベロープまたはLFO(低周波オシレータ)をトリガするために使われます。こ れらのコントロールソースは、フィルタカットオフを動的にモジュレートするた めに使われます。 143 フィルタエフェクト 6 AutoFilter を使うと、異なるフィルタ・タイプやスロープの選択や、レゾナンス の量の調整、力強いサウンドにするためのディストーション、オリジナルのドラ イな信号と処理済みの信号をミックスするなどの操作も可能です。 AutoFilter インターフェイスを理解する 「AutoFilter」ウインドウのメイン領域には、「Threshold」、「Envelope」、 「LFO」、「Filter」、「Distortion」および出力パラメータのセクションがありま す。 Threshold parameter Envelope parameters Filter parameters LFO parameters Distortion parameters Output parameters • 「Threshold」パラメータ: 入力信号レベルを設定します。入力信号レベルが しきい値レベルを超えると、エンベロープまたは LFO がトリガされ、動的に フィルタのカットオフ周波数をモジュレートできます。AutoFilterの「Threshold」 パラメータを参照してください。 • 「Envelope」パラメータ: 時間軸に沿ってフィルタのカットオフ周波数をどの ようにモジュレートするかを指定します。AutoFilterの「Envelope」パラメータ を参照してください。 • 「LFO」パラメータ: LFO でフィルタのカットオフ周波数をどのようにモジュ レートするかを指定します。AutoFilterの「LFO」パラメータを参照してくださ い。 • 「Filter」パラメータ: フィルタリングされたサウンドの音質を制御します。 AutoFilter の「Filter」パラメータを参照してください。 • 「Distortion」パラメータ: フィルタの前と後で信号を歪ませます。AutoFilter の「Distortion」パラメータを参照してください。 • 出力のパラメータ: ドライ信号とエフェクト信号の両方のレベルを設定しま す。AutoFilter の出力のパラメータを参照してください。 144 第 6 章 フィルタエフェクト AutoFilter の「Threshold」パラメータ 「Threshold」パラメータでは、入力信号のレベルを分析します。入力信号がしき い値レベルを上回ると、エンベロープと LFO が再トリガされます。これは 「Retrigger」ボタンが有効な場合にのみ適用されます。 エンベロープとLFOを使うと、動的にフィルタのカットオフ周波数をモジュレー トできます。 AutoFilter の「Envelope」パラメータ エンベロープを使うと、フィルタのカットオフを時間軸に沿って形成できます。 設定したしきい値レベルを入力信号が超えると、エンベロープがトリガされま す。 • 「Attack」ノブ/フィールド: エンベロープのアタック時間を設定します。 • 「Decay」ノブ/フィールド: エンベロープのディケイ時間を設定します。 • 「Sustain」ノブ/フィールド: エンベロープのサスティン時間を設定します。 入力信号がエンベロープのサスティンフェーズに達する前にしきい値レベル未 満に下がった場合、リリースフェーズがトリガされます。 • 「Release」ノブ/フィールド: エンベロープのリリース時間を設定します(入 力信号がしきい値未満に下がるとすぐにトリガされます)。 第 6 章 フィルタエフェクト 145 • 「Dynamic」ノブ/フィールド: 入力信号のモジュレーションの量を指定しま す。このコントロールを動かすと、エンベロープセクションのピーク値を調整 できます。 • 「CutoffMod.」スライダ/フィールド: カットオフ周波数へのエンベロープの かかり具合を設定します。 AutoFilter の「LFO」パラメータ LFO はフィルタカットオフのモジュレーションソースとして使われます。 • 「Rate」の「Coarse Rate」ノブ、「Fine Rate」スライダ/フィールド: LFO モ ジュレーションの速度設定に使います。「Coarse Rate」ノブをドラッグすると LFO 周波数(Hz)を設定できます。「Fine Rate」スライダ(「Coarse Rate」ノ ブ上部の半円状のスライダ)をドラッグすると周波数を微調整できます。 メモ: 「Beat Sync」が有効な場合は、「Rate」ノブ、スライダ、およびフィー ルドのラベル表記が変わります。「Rate」ノブ(およびフィールド)のみを使 用できます。 • 「BeatSync」ボタン: 有効にすると、LFOがホストアプリケーションのテンポ に同期します。小節の値や3連符値などを選択できます。これらの値は「Rate」 ノブまたはフィールドで指定します。 • 「Phase」ノブ/フィールド: 「Beat Sync」が有効な場合、LFO とホストアプ リケーションのテンポとの位相関係をシフトします。「Beat Sync」が無効な場 合、このパラメータは灰色で表示されます。 • 「Decay/Delay」ノブ/フィールド: LFOが0から最大値に達するまでの時間を 設定します。 • 「RateMod.」ノブ/フィールド: 入力信号レベルとは独立して、LFO周波数の モジュレーションレートを設定します。通常、入力信号がしきい値を超える場 合、LFO のモジュレーション幅は 0 から「Rate Mod.」の値まで増加します。こ のパラメータを使うと、この動作を上書きできます。 146 第 6 章 フィルタエフェクト • 「Stereo Phase」ノブ/フィールド: AutoFilter のステレオインスタンスの場合 に、2 つのチャンネル上における LFO モジュレーションの位相関係を設定しま す。 • 「CutoffMod.」スライダ/フィールド: カットオフ周波数へのLFOのかかり具 合を設定します。 • 「Retrigger」ボタン: 「Retrigger」ボタンが有効な場合、しきい値を超えるた びに波形が 0 からスタートします。 • 「Waveform」ボタン: いずれかのボタンをクリックして、LFO の波形を設定 します。下降鋸、上昇鋸、三角形、正弦波、パルス波形、またはランダムの中 から選択できます。 • 「PulseWidth」スライダ/フィールド: 選択した波形のカーブを調節します。 AutoFilter の「Filter」パラメータ 「Filter」パラメータでは、音質を正確に調整できます。 • 「Cutoff」ノブ/フィールド: フィルタのカットオフ周波数を設定します。高 い周波数は減衰されますが、低い周波数はローパスフィルタを通過できます。 ハイパスフィルタではこの逆になります。「State Variable Filter」がバンドパス (BP)モードの場合、通過できる周波数帯の中心周波数はフィルタカットオフ によって決まります。 • 「Resonance」ノブ/フィールド: カットオフ周波数に近い周波数帯の信号を ブーストまたはカットします。「Resonance」の値を非常に高くすると、カッ トオフ周波数でフィルタが発振し始めます。レゾナンスの値が最大になる前 に、この自励発振が生じます。 第 6 章 フィルタエフェクト 147 • 「Fatness」スライダ/フィールド: 低周波成分のレベルをブーストします。 「Fatness」を最大値に設定した場合、「Resonance」を調節してもカットオフ 周波数未満の範囲には効果がありません。このパラメータを使うと、ローパ ス・フィルタ・モードの場合に、高いレゾナンス値によって弱く(もろく) なったサウンドを補正できます。 • 「State Variable Filter」ボタン: ハイパス(HP)、バンドパス(BP)、または ローパス(LP)モードにフィルタを切り替えます。 • 「4-Pole Lowpass Filter」ボタン: 「State Variable Filter」でローパス(LP)フィ ルタが選択されている場合に、フィルタのスロープを 1 オクターブにつき 6、 12、18、または 24 dB のいずれかに設定します。 AutoFilter の「Distortion」パラメータ 「Distortion」パラメータを使うと、フィルタの入力または出力をオーバードライ ブさせることができます。ディストーションのインプットモジュールとアウト プットモジュールは同じですが、信号経路上でそれぞれフィルタの前と後に位置 しているため、かなり異なるサウンドが生み出されます。 • 「Input」ノブ/フィールド: フィルタセクションの前にかけるディストーショ ンの量を設定します。 • 「Output」ノブ/フィールド: フィルタセクションの後にかけるディストー ションの量を設定します。 148 第 6 章 フィルタエフェクト AutoFilter の出力のパラメータ 出力のパラメータを使うと、ウェットとドライのバランス設定や、全体のレベル の設定ができます。 • 「Dry Signal」スライダ/フィールド: フィルタ済み信号に加えるオリジナル のドライ信号の量を設定します。 • 「MainOut」スライダ/フィールド: AutoFilterの全体の出力レベルを設定し、 ディストーションやフィルタリング処理自体の結果として上昇したレベルを補 正できます。 EVOC 20 Filterbank EVOC 20 Filterbank は、2 つのフォルマント・フィルタ・バンクでできています。 入力信号は2つのフィルタバンクを並行して通過します。バンクそれぞれ最大で 20 の周波数帯についてのレベルフェーダーを備えているため、各帯域のレベル を独立して制御できます。レベルフェーダーを最低値に設定すると、その周波数 帯でフォルマントが完全に除去されます。「FormantShift」パラメータを使うと、 フィルタ帯域の位置を調整できます。また、2 つのフィルタバンク間でクロス フェードもできます。 第 6 章 フィルタエフェクト 149 フォルマントについての基礎知識 フォルマントとは、サウンドの周波数スペクトラムのピークのことです。人間 の声に関してこの用語を使用する場合、フォルマントは異なる母音を聞き分け ることを可能にする、重要な要素になります。人間は純粋に周波数に基づいて 異なる母音を聞き分けているからです。人間の話し声や歌声のフォルマントは 声道で発生し、ほとんどの母音には4つ以上のフォルマントが含まれています。 EVOC 20 Filterbank インターフェイスを理解する EVOC 20 Filterbank のインターフェイスは、主に 3 つのセクションに分けられま す。ウインドウ中央のフォルマント・フィルタ・パラメータ・セクション、中央 下部のモジュレーション・パラメータ・セクション、右側のアウトプット・パラ メータ・セクションです。 Formant Filter parameters Output parameters Modulation parameters • フォルマント・フィルタ・パラメータ: 以下の 2 つのフィルタバンクで周波 数帯を調節します。フィルタバンク A(上段の青い部分)とフィルタバンク B (下段の緑色の部分)です。EVOC20 Filterbank のフォルマント・フィルタ・パ ラメータを参照してください。 • モジュレーションパラメータ: フォルマント・フィルタ・パラメータのモジュ レート方法を操作します。EVOC20 Filterbank のモジュレーションパラメータを 参照してください。 • 出力のパラメータ: EVOC 20 Filterbank の全体的な出力レベルとパンを操作し ます。EVOC 20 Filterbank の出力パラメータを参照してください。 150 第 6 章 フィルタエフェクト EVOC 20 Filterbank のフォルマント・フィルタ・パラメータ このセクションのパラメータを使うと、フィルタのレベルと周波数を精密に操作 できます。 Bands value field Lowest button Formant Shift knob High and Low Frequency parameters Frequency band faders Boost A knob Fade AB slider Boost B knob Highest button Slope pop-up menu Resonance knob • 高域/低域周波数パラメータ: フィルタバンクを通過する周波数の下限と上 限を設定します。それ以外の周波数成分は遮断されます。 • 上部にある横長の青いバーの長さは周波数範囲を示します。青いバーをド ラッグすると、周波数範囲の全体を移動できます。青いバーの両端にある銀 色のハンドルで、それぞれ高域周波数と低域周波数の値を設定します。 • 数値フィールドを使用して、周波数の値を個別に調整することもできます。 • 周波数帯フェーダー: フィルタバンクA(上段の青いフェーダー)またはフィ ルタバンク B(下段の緑色のフェーダー)の各周波数帯のレベルを設定しま す。フェーダーの行で横方向にドラッグする(描画する)ことにより、複雑な レベルカーブがすばやく作成できます。 • 「Formant Shift」ノブ: 両方のフィルタバンクですべての帯域を周波数スペク トラムの上または下に移動します。 メモ: 「Formant Shift」を調整すると、「Resonance」値を高くしたときに異常 な共振が起こる場合があります。 • 「Bands」値フィールド: 各フィルタバンクで 最大 20 の周波数帯の数を設定 します。 第 6 章 フィルタエフェクト 151 • 「Lowest」ボタン: 最低のフィルタ帯域がバンドパスまたはハイパスのどちら のフィルタとして動作するかを、クリックして指定します。バンドパス設定を 選択すると、最低周波数帯域より低い、または最高周波数帯域より高い周波数 成分は遮断されます。ハイパス設定を選択すると、最低周波数帯域より低いす べての周波数成分はフィルタリングされます。 • 「Highest」ボタン: 最高のフィルタ帯域がバンドパスまたはローパスどちら のフィルタとして動作するかを、クリックして指定します。バンドパス設定を 選択すると、最低周波数帯域より低い、または最高周波数帯域より高い周波数 成分は遮断されます。ローパス設定を選択すると、最高周波数帯域より高いす べての周波数成分はフィルタリングされます。 • 「Resonance」ノブ: 両方のフィルタバンクの基本的な音響特性を定義します。 「Resonance」を増加させると、各帯域で中心周波数が強調されます。設定を 低くするとソフトになり、設定を高くするとシャープで明るくなります。 • 「Boost A」および「Boost B」ノブ: フィルタバンク A または B の周波数帯に かかるブースト(またはカット)の量を設定します。1 つまたは複数の帯域の レベルを下げることで発生する音量低下を補正できます。「Boost」を使って フィルタバンクを混ぜ合わせる比率(レベル)を設定するときに、「FadeA/B」 (下記「「Fade AB」スライダ」を参照)を使うと、音色が変わるだけでレベ ルは変わりません。 • 「Slope」ポップアップメニュー: 両方のフィルタバンクの全フィルタに適用 するフィルタ減衰の量を設定します。「1」(1 オクターブごとに 6 dB)およ び「2」(1 オクターブごとに 12 dB)から選択します。「1」はサウンドがソ フトになり、「2」はサウンドがタイトになります。 • 「Fade AB」スライダ: フィルタバンク A とフィルタバンク B の間でクロス フェードします。最も上の位置にあるときは、バンクAだけが聞こえます。最 も下の位置にあるときは、バンクBだけが聞こえます。中央の位置では、両方 のバンクを通過する信号が均等にミックスされます。 152 第 6 章 フィルタエフェクト EVOC 20 Filterbank のモジュレーションパラメータ モジュレーションセクションには、2 つの LFO があります。左側のコントロール の「LFO Shift」パラメータは、「Formant Shift」パラメータを制御します。右側 のコントロールの「LFO Fade」パラメータは、「Fade AB」パラメータを制御し ます。 • 「LFO Shift」の「Intensity」スライダ: 「Shift LFO」による「Formant Shift」の 変調強度を設定します。 • 「Rate」ノブ/フィールド: モジュレーションの速度を指定します。中央より 左側に回すとホストアプリケーションのテンポに同期し、小節(あるいは3連 符の拍)などを単位とした値が表示されます。右側に回すと非同期になり、Hz 単位(毎秒サイクル)で表示されるようになります。 メモ: 小節値を同期して使えるため、1 小節のパーカッションパートをサイク ルさせて、4 小節ごとにフォルマントをシフトするなどの使いかたができま す。また、同じパート内で、8 分音符の 3 連符ごとに同じフォルマントシフト を実行することもできます。いずれの方法も面白い効果が得られ、新たな着想 を得るきっかけになったり、古いオーディオ素材をよみがえらせたりすること につながるかもしれません。 • 「Waveform」ボタン: 左側の「Shift LFO」または右側の「Fade LFO」で使う波 形を設定します。選択肢としては、三角波、鋸波(上昇方向および下降方向)、 両極の矩形波(正と負の両方に振れ、トリルに向く)、単極の矩形波(正の方 向にのみ振れ、2 つのピッチを交互に反復するトレモロに向く)、ランダムス テップ波形(サンプル&ホールド)、レベルの変化を滑らかにしたランダムス テップがあります。 • 「LFO Fade」の「Intensity」スライダ: 「Fade LFO」による「Fade AB」の変調 強度を設定します。 ヒント: LFO モジュレーションは、EVOC 20 Filterbank 独特のエフェクトを作る 場合に重要です。両方のフィルタバンクで、完全に異なるフィルタカーブと補 完的なフィルタカーブのいずれかを設定します。ドラムループなどのリズミカ ルな素材を入力信号として使い、LFOごとに「Rates」を変えて、テンポの同期 したモジュレーションを設定することができます。EVOC 20 Filterbankの後に、 Tape Delay などのテンポを同期したディレイエフェクトをかけて、ユニークな ポリリズムを作ってみてください。 第 6 章 フィルタエフェクト 153 EVOC 20 Filterbank の出力パラメータ 出力パラメータでは、全体的な出力レベルとステレオ幅を操作します。出力セク ションには、内蔵のオーバードライブ(ディストーション)回路もあります。 • 「Overdrive」ボタン: クリックすると、オーバードライブ回路のオンとオフが 切り替わります。 メモ: オーバードライブサウンドを鳴らすには、一方または両方のフィルタバ ンクのレベルブーストが必要になることがあります。 • 「Level」スライダ: EVOC 20 Filterbank の出力信号の音量を制御します。 • 「Stereo Mode」ポップアップメニュー: EVOC 20 Filterbank の入力/出力モー ドを設定します。「m/s」(モノ入力でステレオ出力)、「s/s」(ステレオ入 力でステレオ出力)のいずれかを選択できます。 • 「s/s」モードの場合、左右のチャンネルは別々のフィルタバンクで処理され ます。 • 「m/s」モードの場合、ステレオ入力信号はまずモノにまとめられてからフィ ルタバンクに送られます。 • 「Stereo Width」ノブ: フィルタ帯域の出力信号をステレオフィールドへ配分 します。 • このノブを左いっぱいに回すと、全帯域の出力信号が中央から聞こえてくる ようになります。 • 中央位置では、すべての帯域の出力が左から右に上昇します。 • ノブを右にすると、左右のチャンネルから各帯域が交互に出力されます。 154 第 6 章 フィルタエフェクト EVOC 20 TrackOscillator EVOC 20 TrackOscillator はモノフォニックピッチのトラッキングオシレータを備え たボコーダーです。このトラッキングオシレータは、モノフォニック入力信号の ピッチをトラック(追跡)します。入力信号がボーカルメロディである場合、歌 部分のノートの各ピッチは合成エンジンがトラックし再現(演奏)します。 EVOC 20 TrackOscillator には、分析バンクと合成フィルタバンクという 2 種類の フォルマント・フィルタ・バンクがあります。どちらにも複数の入力オプション があります。 分析信号のソースは、EVOC 20 TrackOscillator の挿入先チャンネルストリップの入 力部で受け取ったオーディオや、別のチャンネルストリップからのサイドチェー ン信号を使って取り込むことができます。 合成ソースは、EVOC 20 TrackOscillator の挿入先チャンネルストリップのオーディ オ入力、サイドチェーン信号、またはトラッキングオシレータから生成できま す。 分析および合成の入力信号が共に自由に選択できるため、ピッチ・トラッキン グ・エフェクト以外にも EVOC 20 TrackOscillator を使うことができます。独自の フィルタエフェクトとして非常に役立ちます。たとえば、あるチャンネルスト リップのオーケストラの録音データを、別のチャンネルストリップの電車の音で サイドチェーンフィルタリングすることも可能です。または、あるドラムループ を別のドラムループやリズムギター、クラビネット、およびピアノパートなどの サイドチェーン信号で処理するというのも効果的な使いかたです。 ボコーダーとは ボコーダー(Vocoder)とは「VOice enCODER」の略語です。ボコーダーは、分析 入力部で受け取ったオーディオ信号の音響特性を分析し、それをシンセサイザー のサウンドジェネレータに送ります。その処理結果が、ボコーダーの出力として 発音されます。 旧式のボコーダーでは、分析信号として人間の話し声、合成信号としてシンセサ イザー音を使っていました。1970 年代後半から 1980 年代初頭にかけて、この音 が広く知られるようになります。ローリー・アンダーソンの「O Superman」、 リップスの「Funky Town」、さらにクラフトワークの「Autobahn」や「Europe Endless」、「The Robots」、「Computer World」などにもボコーダーが使われて います。 このような「歌うロボット」としての使いかたばかりではなく、ボコーダーサウ ンドは映画にも数多く取り入れられています。「宇宙空母ギャラクティカ」のサ イロン兵や、さらに有名なものとしては「スター・ウォーズ」に出てくるダー ス・ベイダーの声もそうです。 第 6 章 フィルタエフェクト 155 ボコーダーの処理そのものは、人の声以外の音を材料にしても構いません。たと えばドラムループを分析信号として使い、合成入力に与えられた弦楽合奏の音を 変形させる、ということも可能です。 ボコーダーの動作原理 ボコーダーの音声の「分析」あるいは「合成」機能の実体は、バンドパスフィル タを並べた、2組のフィルタバンクです。バンドパスフィルタには、周波数スペ クトル全体のうち1つの周波数帯域(スライス)をそのまま通し、それ以外の成 分は除去する働きがあります。 EVOC 20 プラグインでは、この 2 組のフィルタバンクを「分析セクション」およ び「合成セクション」と呼んでいます。それぞれに並べるフィルタの数は同じに します。すなわち、たとえば分析セクションフィルタバンクを 1 〜 5 番の 5 つの フィルタで構成するならば、合成セクションのフィルタバンクにも同じ 5 つの フィルタを用意します。分析セクションのバンクの1番帯域は合成セクションの バンクの 1 番帯域に対応し、2 番、3 番なども同様です。 分析セクションに入力されたオーディオ信号は、分析フィルタバンクで複数の帯 域に分割されます。 周波数帯域ごとにエンベロープフォロワーがついています。これはフィルタを 通った各帯域の信号の音量変化に追随し、動的に制御信号を生成します。 この制御信号を合成フィルタバンクに送り、対応する帯域の信号レベルを、アナ ログボコーダーの VCA(Voltage Controlled Amplifier:電圧制御アンプ)で調整し ます。これにより、分析フィルタバンク内での帯域の音量変化が、合成フィルタ バンク内の同じ帯域に反映されます。こうしたフィルタの変化が、元の入力信号 を合成して再生した音(2つのフィルタバンクの信号のミックス)として聞こえ ます。 ボコーダーがこの分割帯域数を多くするほど、分析信号の音声特性を忠実に反映 した信号が合成されます。EVOCプラグインでは、バンクごとに最大20の帯域に 分割されます。曲作りに役立つよう、各バンドパスフィルタの出力レベルは自由 に操作できます。このため、周波数スペクトラムに独自の劇的な変化をつけるこ とも簡単です。 156 第 6 章 フィルタエフェクト EVOC 20 TrackOscillator インターフェイスを理解する EVOC 20 TrackOscillator ウインドウは、複数のパラメータセクションに分かれてい ます。 LFO parameters Analysis In parameters Formant Filter parameters U/V Detection parameters Output parameters Synthesis In parameters Tracking Oscillator parameters • 「Analysis In」パラメータ: 分析フィルタバンクによって入力信号がどのよう に分析および使用されるかを指定します。EVOC 20 TrackOscillator の「Analysis In」パラメータを参照してください。 • 「U/VDetection」パラメータ: 合成信号の無声音部分を検出して、聞き取りや すさを改善します。EVOC 20 TrackOscillator の「U/V Detection」パラメータを参 照してください。 • 「SynthesisIn」パラメータ: 合成フィルタバンクによって入力信号がどのよう に使用されるかを指定します。EVOC20 TrackOscillatorの「SynthesisIn」パラメー タを参照してください。 • トラッキング・オシレータ・パラメータ: オシレータによって分析入力信号 がどのように使用されるかを指定します。基本的なトラッキング・オシレー タ・パラメータを参照してください。 • フォルマント・フィルタ・パラメータ: フィルタバンクの分析と合成につい て設定します。EVOC 20 TrackOscillator のフォルマント・フィルタ・パラメータ を参照してください。 • モジュレーションパラメータ: オシレータのピッチまたはフォルマント・フィ ルタ・パラメータをモジュレートします。EVOC 20 TrackOscillator のモジュレー ションパラメータを参照してください。 • 出力のパラメータ: EVOC 20 TrackOscillator の出力信号を設定します。 EVOC 20 TrackOscillator の出力パラメータを参照してください。 第 6 章 フィルタエフェクト 157 EVOC 20 TrackOscillator の「Analysis In」パラメータ 「Analysis In」セクションのパラメータでは、EVOC 20 TrackOscillator によって入 力信号がどのように分析および使用されるかを指定します。可能な限り音声を聞 き取りやすくし、正確に追跡できるようにするため、これらのパラメータは可能 な限り正確な値にする必要があります。 • 「Attack」ノブ: 上昇する信号に対し、分析の各フィルタ帯域に対応するエン ベロープフォロワーが反応する速度を指定します。 • 「Release」ノブ: 下降する信号に対し、分析の各フィルタ帯域に対応するエ ンベロープフォロワーが反応する速度を指定します。 • 「Freeze」ボタン: 有効にすると、現在の分析サウンドスペクトラムを無期限 に保持(フリーズ)します。「Freeze」ボタンを放すまでの間に入力されるソー ス信号は、分析フィルタバンクでは無視されます。また、「Attack」や 「Release」ノブの設定には影響を受けません。 • 「Bands」フィールド: EVOC 20 TrackOscillator で使用する周波数帯の数を最大 20 まで設定します。 • 「Analysis In」ポップアップメニュー: 分析信号のソースを設定します。選択 項目は次の通りです: • トラック: EVOC20 TrackOscillatorの挿入先チャンネルストリップの入力オー ディオ信号を分析信号として使用します。 • サイドチェーン: サイドチェーンを分析信号として使用します。プラグイ ンウインドウの最上部にある「サイドチェーン」ポップアップメニューか ら、サイド・チェーン・ソースのチャンネルストリップを選択します。 メモ: 「SideCh」を選択した場合にサイド・チェーン・チャンネルストリップ が割り当てられていなければ、EVOC 20 TrackOscillator は「トラック」モードに 戻ります。 EVOC 20 TrackOscillator の「Analysis In」パラメータを使う ここでは、「Analysis In」のパラメータの設定と使いかたの概要を説明します。 158 第 6 章 フィルタエフェクト 「Attack」時間を設定する この「Attack」時間の値を大きめにすると、分析入力信号の変化(レベルのスパ イク)にゆっくりと追従するようになります。話し声やハイハットなどパーカッ シブな要素を持つ入力信号の場合、「Attack」の値が大き過ぎると、ボコーダー の音は歯切れ悪くなってしまいます。明瞭な発音になるよう、「Attack」パラメー タの値はできるだけ小さくしてください。 「Release」時間を設定する この「Release」時間の値を大きめにすると、分析入力信号のレベルが落ちても、 ボコーダーの出力にしばらくの間その影響が残るようになります。話し声やハイ ハットなどパーカッシブな要素を持つ入力信号の場合、「Release」の値が大き過 ぎると、ボコーダーの音は歯切れ悪くなってしまいます。ただし「Release」時間 が極端に短くても、ボツボツとして粗い音になります。開始位置は「Release」値 を 8 〜 10 ms にしておくと便利です。 「Freeze」ボタンを使う 分析信号をフリーズ(固定)すると、その時点のソース信号特性が、合成セク ションの複雑なフィルタ形状として反映されたままになります。これは、以下の ような場合に便利なことがあります: 話し声をソース信号とした場合、ある単語中の、たとえば母音「a」のアタック 段やテイル段における信号特性を固定できます。 とても息が続かないような長いフレーズを、えんえんと伸ばしているようにした い場合にも「Freeze」ボタンを使うことができます。歌の区切り(息継ぎ)で分 析ソース信号が途切れる場合も、「Freeze」ボタンで声のフォルマントレベルを 固定すれば、合成信号が長く伸びても問題なく処理できます。「Freeze」パラ メータは自動化できるので、このような場合に便利です。 帯域数を設定する 細かく分割するほど、入力信号の特性をより正確に再現できます。逆にこの値を 小さくすると、大まかにしか分割されないので、合成エンジンで再現される信号 の精度が落ちてしまうことになります。通常は 10 〜 15 帯域程度にしておけば、 比較的精度も高く、特に会話や歌の場合は聞き取りやすさも保たれ、その一方で 負荷も適度に抑えることができます。 ヒント: ピッチをできるだけ正確にトラッキングするためには、ピッチの重なり がないモノ信号を使う必要があります。未処理でバックグラウンドノイズのない 信号が理想的です。たとえば少量であってもリバーブ処理がかかった信号を使う と、通常の使用には不都合な、おかしな音になります。ドラムループなどの聞こ えるピッチを使用していない信号では、さらにおかしな音となります。ただし、 場合によってはプロジェクトにとって望ましい結果が得られることもあります。 第 6 章 フィルタエフェクト 159 EVOC 20 TrackOscillator の「U/V Detection」パラメータ フォルマントについての基礎知識での説明の通り、人間の話し声は、有声音(高 低のある音またはフォルマント)と無声音(フォルマントではない継続鼻音、摩 擦音、破裂音)から構成されています。有声音は声帯が振動して出ますが、無声 音は唇や舌、口蓋、喉、喉頭などで空気の流れを妨げて作るものです。 有声音と無声音が混ざった音声を分析信号としてボコーダーに与えても、その違 いが合成エンジンに伝わらず、弱い音になってしまいます。この問題を回避する には、ボコーダーの合成セクションに何らかの工夫を加えて、有声音と無声音が 区別されるようにする必要があります。 EVOC 20 TrackOscillator には、この特別な目的のために U/V ディテクターが組み込 まれています。分析信号から無声音の部分を検出し、合成信号の対応する部分を 雑音に置き換える、あるいは雑音を合成信号に重ねる、または元の信号と重ねる という処理を行います。U/Vディテクターが有声音を検出した場合は、その情報 を合成セクションに伝え、有声音の部分については通常の合成信号をそのまま使 います。 • 「Sensitivity」ノブ: U/V検出セクションの応答性を決めます。このノブを右に 回すと、入力信号の無声音の部分が認識しやすくなります。高い設定にすると 無声音信号に対する感度が高まるため、「Mode」メニュー(下記「Mode」メ ニュー」で説明)によって決まるU/V音源が、有声音信号も含め、ほとんどの 入力信号で使われることになります。その結果、ラジオ音声のように、頻繁に 途切れて常に雑音が混ざっているような信号になってしまいます。 • 「Mode」メニュー: 入力信号が無声音になっている部分を置き換える音源を 設定します。以下から選択できます: • Noise: 無声音の部分に雑音を補います。 • Noise + Synth: 無声音の部分に、雑音のほか、シンセサイザーで合成した音 を加えて補います。 160 第 6 章 フィルタエフェクト • Blend: 分析信号をハイパスフィルタに通して、無声音の部分に使います。 この設定では、「Sensitivity」パラメータを調整しても何の影響もありませ ん。 • 「Level」ノブ: 入力信号が無声音になっている部分を置き換える信号の音量 を操作します。 重要: 特に「Sensitivity」の値が大きい場合、EVOC20 TrackOscillatorの負荷が高 くなり過ぎないよう、「Level」ノブには注意が必要です。 EVOC 20 TrackOscillator の「Synthesis In」パラメータ 「SynthesisIn」セクションでは、シンセサイザーのトラッキング信号のさまざま な部分を制御します。トラッキング信号は、内部シンセサイザーをトリガするた めに使われます。 • 「SynthesisIn」ポップアップメニュー: トラッキング信号のソースを設定しま す。選択項目は次の通りです: • オシレータ(Osc.): トラッキングオシレータを合成ソースとして設定しま す。このオシレータは、分析入力信号のピッチを再現(追跡)します。 「Osc.」を選択すると、分析セクションにあるほかのパラメータが有効にな ります。「Osc.」を選択していない場合、このセクションにある「FMRatio」、 「FM Int」などのパラメータは作用しなくなります。 • トラック: EVOC20 TrackOscillatorの挿入先チャンネルストリップのオーディ オ入力信号を合成信号として使います。この信号が内部シンセサイザーを作 動させます。 • サイドチェーン: サイドチェーンを合成信号として使用します。 EVOC 20 TrackOscillator ウインドウの最上部にある「サイドチェーン」ポップ アップメニューからサイドチェーンのソースチャンネルを選択します。 メモ: サイドチェーンを選択した場合にサイド・チェーン・チャンネルが割り 当てられていなければ、EVOC 20 TrackOscillator は「トラック」モードに戻りま す。 • 「Bands」フィールド: 「Synthesis In」セクションで使う周波数帯の数を指定 します。 第 6 章 フィルタエフェクト 161 基本的なトラッキング・オシレータ・パラメータ このトラッキングオシレータは、モノフォニックオーディオ入力信号のピッチを 追跡し、合成したサウンドでこれらのピッチを再現します。トラッキングオシ レータの FM トーンジェネレータは、正弦波を生成する 2 つのオシレータからで きています。オシレータ 1(搬送波)の周波数はオシレータ 2(モジュレータ) によってモジュレートされ、オシレータ1の正弦波が変形します。これにより、 倍音が豊富に含まれた波形になります。 重要: ここで説明するパラメータは、「SynthesisIn」メニューが「Osc.」に設定 されている場合にのみ使用できます。 • 「FM Ratio」フィールド: サウンドの基本的な特性を決めるオシレータ 1 とオ シレータ2との比率を設定します。偶数の値とその倍数はハーモニックなサウ ンドを生成し、奇数の値とその倍数は非ハーモニックでメタリックなサウンド を生成します。 • 「FM Ratio」を 1.000 にすると、鋸波に似た結果が得られます。 • 「FM Ratio」を 2.000 にすると、パルス幅が 50 %の矩形波に似た結果が得ら れます。 • 「FM Ratio」を 3.000 にすると、パルス幅が 33 %の矩形波に似た結果が得ら れます。 • 「FMInt」ノブ: モジュレーションの強度を指定します。値を高くするほど、 倍音の多い複雑な波形になります。 • 値が0の場合、FMトーンジェネレータは無効となり、鋸波が生成されます。 • 値が 0 を超える場合、FM トーンジェネレータが有効になります。値を高く するほど、複雑さが増し、明るいサウンドになります。 • 「Tune」の「Coarse」値フィールド: オシレータのピッチオフセットを半音単 位で設定します。 • 「Tune」の「Fine」値フィールド: ピッチオフセットを 1/100 単位で設定しま す。 162 第 6 章 フィルタエフェクト トラッキングオシレータのピッチ補正パラメータ トラッキングオシレータのピッチパラメータでは、トラッキングオシレータの自 動ピッチ補正機能を制御します。これらのパラメータを使うと、スケールまたは コードに合わせてトラッキングオシレータのピッチを制限できます。これにより 細かなピッチ補正から粗いピッチ補正まで処理することができ、シンバルやハイ ハットなど高いハーモニックのピッチ補正されていない素材に対してもクリエイ ティブな使いかたができます。 • 「Pitch Quantize」の「Strength」スライダ: 自動ピッチ補正の強さを指定しま す。 • 「PitchQuantize」の「Glide」スライダ: ピッチ補正に必要な時間量を設定し、 クオンタイズしたピッチへの移行を円滑にします。 • 「Root/Scale」のキーボード/ポップアップメニュー: トラッキングオシレー タをクオンタイズする際の基準となるピッチ(複数可)を指定します。 • 「Max Track」値フィールド: 最も高い周波数を設定します。このしきい値を 上回るすべての周波数成分はカットされ、ピッチ検出の正確さが増します。 ピッチ検出の結果が不安定な場合は、このパラメータをできる限り低い値に設 定し、該当するすべての入力信号を聴いたり処理したりできるようにします。 トラッキングオシレータのピッチをクオンタイズする 「Root/Scale」のキーボードおよびポップアップメニューを使うと、トラッキン グオシレータのクオンタイズの基準とするピッチを指定できます。 ルートまたはスケールを選択するには 1 「Root/Scale」というラベルの下にある緑色の値フィールドをクリックすると、 ポップアップメニューが表示されます。 2 ピッチ補正のベースとなるスケールまたはコードを選択します。 メモ: 「Root」値フィールドを縦方向にドラッグするか、ダブルクリックして C とBとの間にルートを入力し、各スケールまたはコードのルートキーを設定する こともできます。「Root」パラメータは、「Root/Scale」値が「chromatic」また は「user」に設定されている場合には使用できません。 選択したスケールまたはコードにノートを追加する/選択したスケールまたは コードからノートを削除するには µ 小型キーボードの使われていないキーをクリックすると、スケールまたはコード に追加されます。 第 6 章 フィルタエフェクト 163 µ 選択したノート(点灯します)をクリックすると、削除されます。 ヒント: 最後に編集した内容は保存されます。新しいスケールやコードを選択し た場合に変更を加えなければ、以前設定したスケールに戻ることができます。こ れには、ポップアップメニューで「user」を選択します。 EVOC 20 TrackOscillator のフォルマント・フィルタ・パラメータ EVOC 20 TrackOscillator には「AnalysisIn」セクション用と「SynthesisIn」セクショ ン用に1つずつ、合わせて2つのフォルマント・フィルタ・バンクがあります。 基本的に、入力信号の全体的な周波数スペクトラムは分析され(分析セクショ ン)、複数の周波数帯に均等に分割されます。各フィルタバンクでは、周波数帯 を最大 20 まで制御できます。詳細については、ボコーダーの動作原理を参照し てください。 フォルマント・フィルタ・ディスプレイは上下2つに分かれており、上半分が分 析セクション、下半分が合成セクションに対応します。パラメータの値を変更す るとフォルマント・フィルタ・ディスプレイに瞬時に反映されます。これは、2 つのフォルマント・フィルタ・バンクを通過する信号の状態を把握するのに役立 ちます。 • 高域/低域周波数パラメータ: フィルタセクションを通過する周波数の下限 と上限を設定します。それ以外の周波数成分は遮断されます。 • 「Formant Stretch」および「Formant Shift」(下記の「「Formant Stretch」ノ ブ」と「「Formant Shift」ノブ」で説明します)が使われていない場合、青 いバーの長さは分析と合成の両方の周波数範囲を示します。上部にある横長 の青いバーをドラッグすると、周波数範囲の全体を移動できます。青いバー の両端にある銀色のハンドルで、それぞれ高域周波数と低域周波数の値を設 定します。 • 数値フィールドを使用して、周波数の値を個別に調整することもできます。 164 第 6 章 フィルタエフェクト • 「Lowest」ボタン: 最低のフィルタ帯域がバンドパスまたはハイパスのどちら のフィルタとして動作するかを、クリックして指定します。バンドパス設定を 選択すると、最低周波数帯域より低い、または最高周波数帯域より高い周波数 成分は遮断されます。ハイパス設定を選択すると、最低周波数帯域より低いす べての周波数成分はフィルタリングされます。 • 「Highest」ボタン: 最高のフィルタ帯域がバンドパスまたはローパスどちら のフィルタとして動作するかを、クリックして指定します。バンドパス設定を 選択すると、最低周波数帯域より低い、または最高周波数帯域より高い周波数 成分は遮断されます。ローパス設定を選択すると、最高周波数帯域より高いす べての周波数成分はフィルタリングされます。 • 「Formant Stretch」ノブ: 合成セクションのフィルタバンクのすべての帯域に ついて、幅と分布を変更します。これは、青いバーで指定した値(上記の「高 域/低域周波数パラメータ」を参照)と同じ周波数範囲でなくても構いませ ん。 • 「Formant Shift」ノブ: 合成セクションのフィルタバンクのすべての帯域につ いて、周波数スペクトラムを上下に動かします。 • 「Resonance」ノブ: 「Resonance」パラメータは、ボコーダーの基本的な音響 特性を調整します。値が小さいほど柔らかい響き、大きいほどとげとげしく鋭 い響きになります。技術的には、各周波数帯域の中心周波数付近を強調する、 という処理を行っています。 「Formant Stretch」および「Formant Shift」を使う 「Formant Stretch」と「Formant Shift」は、重要なフォルマント・フィルタ・パ ラメータです。単独でも組み合わせても使用できます(EVOC 20 TrackOscillator の フォルマント・フィルタ・パラメータを参照)。 「FormantStretch」の値が0の場合、下部の合成フィルタバンクの各帯域の幅は、 上部の分析フィルタバンクの各帯域の幅と同じになります。値を低くすると合成 セクションのバンクの各帯域の幅が狭まり、値を高くすると広がります。制御範 囲は全帯域幅の比率として表されます。 「Formant Shift」の値が 0 であれば、合成セクションのフィルタバンクと分析セ クションのフィルタバンクの各帯域が同じになります。正の値を指定すれば分析 フィルタバンクの帯域に比べて合成フィルタバンクの中心周波数が高くなり、負 の値ならば低くなります。 「Formant Stretch」と「Formant Shift」を組み合わせると、最終的なボコーダー 音のフォルマント構成が変わり、面白い音質の変化が得られます。たとえば、話 し声の信号に対して「Formant Shift」の値を大きくすると、ミッキーマウスのよ うな声になります。 第 6 章 フィルタエフェクト 165 「Formant Stretch」および「Formant Shift」は、合成信号の周波数スペクトルが 分析信号の周波数スペクトルと対応していない場合に特に有用です。たとえば、 主として低域の信号を変調する分析信号を使って、高域の合成信号を生成するよ うなことも可能です。 メモ: 「Formant Stretch」および「Formant Shift」パラメータを使用した場合、 「Resonance」設定が高いと、極端にずれたレゾナンス周波数が生じることがあ ります。 EVOC 20 TrackOscillator のモジュレーションパラメータ このセクションのLFO制御パラメータを使うと、トラッキングオシレータの周波 数(ピッチ)をモジュレートしてビブラートを発生させたり、合成フィルタバン クの「Formant Shift」パラメータをモジュレートしたりすることができます。 • 「Shift」の「Intensity」スライダ: LFO による「Formant Shift」の変調強度を設 定します。 • 「Pitch」の「Intensity」スライダ: LFO によるピッチモジュレーション(ビブ ラート)の量を調節します。 • 「Waveform」ボタン: LFO で使用する波形の種類を選択します。選択肢とし ては、三角波、鋸波(上昇方向および下降方向)、両極の矩形波(正と負の両 方に振れ、トリルに向く)、単極の矩形波(正の方向にのみ振れ、2 つのピッ チを交互に反復するトレモロに向く)、ランダムステップ波形(サンプル& ホールド)、レベルの変化を滑らかにしたランダムステップがあります。 • 「LFO」の「Rate」ノブ/フィールド: モジュレーションの速度を指定します。 中央より左側に回すとホストアプリケーションのテンポに同期し、小節(ある いは3連符の拍)などを単位とした値が表示されます。右側に回すと非同期に なり、Hz 単位(毎秒サイクル)で表示されるようになります。 メモ: 小節値を同期して使えるため、1 小節のパーカッションパートをサイク ルさせて、4 小節ごとにフォルマントをシフトするなどの使いかたができま す。また、同じパート内で、8 分音符の 3 連符ごとに同じフォルマントシフト を実行することもできます。いずれの方法も面白い効果が得られ、新たな着想 を得るきっかけになったり、古いオーディオ素材をよみがえらせたりすること につながるかもしれません。 166 第 6 章 フィルタエフェクト EVOC 20 TrackOscillator の出力パラメータ 出力セクションでは、EVOC 20 TrackOscillator から送られる信号の種類、ステレオ 幅、レベルを制御できます。 • 「Signal」メニュー: EVOC 20 TrackOscillator のメイン出力に送信する信号を指 定します。以下の設定から選択できます: • 「Voc」(ボコーダー): 選択すると、ボコーダーエフェクトが聞こえま す。 • 「Syn」(合成): 選択すると、シンセサイザーの信号だけが聞こえます。 • 「Ana」(分析): 選択すると、分析信号だけが聞こえます。 メモ: 下から 2 つの設定は主にモニタ用です。 • 「Level」スライダ: EVOC 20 TrackOscillator の出力信号の音量を制御します。 • 「Stereo Mode」ポップアップメニュー: EVOC 20 Filterbank の入力/出力モー ドを設定します。「m/s」(モノ入力でステレオ出力)、「s/s」(ステレオ入 力でステレオ出力)のいずれかを選択できます。 メモ: 入力信号がモノの場合は「Stereo Mode」を「m/s」に、入力信号がステ レオの場合は「s/s」に設定します。「s/s」モードの場合、左右のステレオチャ ンネルは別々のフィルタバンクで処理されます。ステレオ入力信号に「m/s」 を使った場合、信号はまずモノにまとめられてからフィルタバンクに渡されま す。 • 「Stereo Width」ノブ: ステレオ空間に合成セクションの各フィルタ帯域の出 力信号を配置します。 • このノブを左いっぱいに回すと、全帯域の出力信号が中央から聞こえてくる ようになります。 • 中央位置では、すべての帯域の出力が左から右に上昇します。 • ノブを右にすると、左右のチャンネルから各帯域が交互に出力されます。 第 6 章 フィルタエフェクト 167 Fuzz-Wah Fuzz-Wah プラグインは、クラビネットで使われることの多いクラシックなワウ ワウエフェクトをエミュレートすると共に、コンプレッションやファズディス トーションのエフェクトも加えます。ワウワウという名前は、これを適用したと きの音の響きに由来します。ジミ・ヘンドリックスがエレクトリックギターで効 果的に使ったことで、ペダルエフェクトとしてよく知られるようになりました。 バンドパスフィルタやローパスフィルタのカットオフ周波数を、ペダルで制御し ます。場合によってはハイパスフィルタについても制御することがあります。 Fuzz-Wah インターフェイスを理解する Fuzz-Wah のインターフェイスは、以下のセクションに分かれます。 Effect Order buttons Fuzz parameters Wah parameters Auto Wah parameters • エフェクト・オーダー・ボタン: 信号経路内でワウワウエフェクトをファズ エフェクトの前にするか(「Wah-Fuzz」)、あるいは逆にするか (「Fuzz-Wah」)を選択します。エフェクト・オーダー・ボタンを参照してく ださい。 • 「Wah」パラメータ: ワウワウエフェクトの種類とトーンを操作します。 「Wah」パラメータを参照してください。 • 「Auto Wah」パラメータ: 自動ワウワウエフェクトの深さとエンベロープタ イムを設定します。「Auto Wah」パラメータを参照してください。 • 「Fuzz」パラメータ: 圧縮率を設定し、内蔵のディストーション回路のトーン とレベルを制御します。「Fuzz」パラメータを参照してください。 168 第 6 章 フィルタエフェクト エフェクト・オーダー・ボタン これらのボタンで、「Fuzz-Wah」エフェクトの信号経路を指定します。 「Wah-Fuzz」または「Fuzz-Wah」をクリックし、希望する信号経路を選択しま す。 Fuzz-Wah プラグインには、内蔵の圧縮回路があることに注意してください。コ ンプレッサーは、常にファズエフェクトに先行します。「Wah-Fuzz」を選択する と、コンプレッサーはワウワウエフェクトとファズエフェクトの間に配置されま す。ただし、「Fuzz-Wah」を選択した場合は、コンプレッサーは信号経路の最初 に配置されます。 「Wah」パラメータ このグループのパラメータは、ワウワウエフェクトのトーンと動作を制御しま す。 • 「Wah Mode」ポップアップメニュー: 次のワウワウエフェクト設定がありま す: • オフモード: ワウワウエフェクトが無効になります。 • ResoLP(レゾナンス効果付きのローパスフィルタ): このモードでは、ワウ ワウがレゾナンス効果付きのローパスフィルタとして動作します。ペダル位 置を最小にすれば、低周波成分のみが通過します。 • ResoHP(レゾナンス効果付きのハイパスフィルタ): このモードでは、ワ ウワウがレゾナンス効果付きのハイパスフィルタとして動作します。ペダル 位置を最大にすれば、高周波成分のみが通過します。 • Peak: このモードでは、ワウワウがレゾナンス効果付きのピーク(ベル) フィルタとして動作します。カットオフ周波数に近い周波数が強調されま す。 • CryB: よく知られている「クライ・ベイビー」のワウワウペダルを真似た設 定です。 • Morl1: 有名なワウワウペダルを真似た設定です。軽いピーク特性が特徴で す。 第 6 章 フィルタエフェクト 169 • Morl2: 有名なディストーション・ワウワウ・ペダルを真似た設定です。Q 値が一定している設定です。 • 「Auto Gain」ボタン: ワウワウエフェクトを使うと出力レベルの変動が大き くなる可能性があります。「Auto Gain」を「On」にするとこの動作が補正さ れ、出力信号のダイナミクスが制限されます(「AutoGain」でワウワウレベル を設定するを参照)。 • 「Wah Level」ノブ: ワウフィルタをかける信号の量を設定します。 • 「Relative Q」スライダ: モデルの設定を基準にメイン・フィルタ・ピークを 調整し、ワウワウスイープをよりシャープ/ソフトにすることができます。値 を0に設定した場合、モデルのオリジナルのピークレベル設定が有効になりま す。 • 「PedalRange」スライダ: MIDIフットペダルで操作する場合に、ワウワウフィ ルタのスイープ範囲を設定します。このパラメータは、MIDIフットペダルと典 型的なワウワウペダルとの間に生じる機械的な差異を補正するために設計され ています(ペダル範囲を設定するを参照)。 「Auto Wah」パラメータ MIDI フットペダルのほか、「Auto Wah」機能を使ってもワウワウエフェクトを 操作できます。この機能を使うと、範囲全体に継続的にフィルタスイープが実行 されます。Fuzz-Wah を使うを参照してください。 • 「Depth」ノブ: 「Auto Wah」エフェクトの深さを設定します。0 に設定する と、自動ワウワウ機能は無効になります。 • 「Attack」ノブ: ワウワウフィルタが完全に開くまでの時間を設定します。 • 「Release」ノブ: ワウワウフィルタが閉じるまでの時間を設定します。 170 第 6 章 フィルタエフェクト 「Fuzz」パラメータ これらのパラメータは、内蔵のディストーション回路と圧縮回路を制御します。 コンプレッサーは、常にファズエフェクトに先行します。 • 「Comp Ratio」(Compression Ratio)ノブ: 圧縮率を設定します。 • 「Fuzz Gain」ノブ: ファズまたはディストーションエフェクトのレベルを設 定します。 • 「Fuzz Tone」ノブ: ファズエフェクトの音質を調整します。低い値に設定す ると温かい音になり、高い値に設定すると明るく激しい音になります。 Fuzz-Wah を使う 以下のセクションでは、Fuzz-Wah パラメータを使うための実際的なヒントを紹 介します。 「Auto Gain」でワウワウレベルを設定する ワウワウエフェクトを使うと出力レベルの変動が大きくなる可能性があります。 「Auto Gain」を「On」にするとこの特性が補正され、出力信号を安定的な範囲 内に維持します。 「Auto Gain」を使った場合の違いを聴いて確認するには 1 「Auto Gain」をオンにします。 2 ミキサーのクリッピング限度のすぐ下の値までエフェクトレベルを上げます。 3 「Relative Q」設定を高くしてスイープを行います。 4 「Auto Gain」をオフにし、スイープを繰り返します。 重要: ホストアプリケーションのマスター出力レベルを低めに設定してから始 めてください。低めに設定しておかないと、聴覚やスピーカーを損ねるおそれが あります。 ペダル範囲を設定する 普通の MIDI フットペダルの機械動作範囲は、典型的なワウワウペダルより広く なっています。 第 6 章 フィルタエフェクト 171 ワウワウフィルタのスイープ範囲は、「PedalRange」パラメータで設定します。 MIDIフットペダルが到達する最高値と最低値は、「Pedal Position」スライダ(こ のスライダはワウワウペダルの現在位置を示します)周囲のグレイの括弧でグラ フィカルに表示されます。 スライダの括弧の左右にあるハンドルをドラッグすると、範囲の上限と下限を個 別に設定できます。スライダの括弧の中央部分をドラッグすると、範囲の全体を 移動できます。 Spectral Gate Spectral Gate は特殊なフィルタエフェクトで、クリエイティブなサウンドデザイ ンのツールとして使用することができます。 これは、「Center Freq.」および「Bandwidth」パラメータで指定した中心周波数 の上下で入力信号を2つの周波数範囲に分割します。指定した帯域の上下の信号 範囲は、「Low Level」および「High Level」パラメータと、「Super Energy」およ び「Sub Energy」パラメータで個別に処理できます。Spectral Gate を使うを参照 してください。 Spectral Gate のパラメータ Spectral Gate のパネルには、以下のパラメータがあります: Gain slider Sub Energy and Low Level controls Center Freq. and Bandwidth knobs Speed, CF Modulation, and BW Modulation sliders Graphic display Super Energy and High Level controls Threshold slider • 「Threshold」スライダ/フィールド: 周波数帯を分割するためのしきい値レ ベルを設定します。しきい値を上回ると、「Center Freq.」および「Bandwidth」 のパラメータで指定した周波数帯が上下の周波数範囲に分割されます。 • 「Speed」スライダ/フィールド: 指定した周波数帯のモジュレーション周波 数を設定します。 172 第 6 章 フィルタエフェクト • 「CF(Center Frequency)Modulation」スライダ/フィールド: 中心周波数のモ ジュレーションの強さを設定します。 • 「BW(Band Width)Modulation」スライダ/フィールド: 帯域幅モジュレー ションの量を設定します。 • グラフィックディスプレイ: 「Center Freq.」および「Bandwidth」パラメータ で指定した周波数帯を表示します。 • 「Center Freq.」(Center Frequency)ノブ/フィールド: 処理する周波数帯の中 心周波数を設定します。 • 「Bandwidth」ノブ/フィールド: 処理する周波数帯の幅を設定します。 • 「Super Energy」ノブ/フィールド: しきい値を上回る周波数範囲のレベルを 調節します。 • 「High Level」スライダ/フィールド: 指定の周波数帯を上回るオリジナル信 号の周波数と処理済み信号とをミックスします。 • 「Sub Energy」ノブ/フィールド: しきい値を下回る周波数範囲のレベルを調 節します。 • 「LowLevel」スライダ/フィールド: 指定の周波数帯を下回るオリジナル信号 の周波数と処理済み信号とをミックスします。 • 「Gain」スライダ/フィールド: Spectral Gate の出力レベルを設定します。 Spectral Gate を使う Spectral Gate の操作を理解するには、まずドラムループから始めてみるのも良い 方法です。「Center Freq.」を最小値(20 Hz)に、「Bandwidth」を最大値 (20,000 Hz)に設定して、周波数帯全体を処理できるようにします。「Super Energy」ノブと「Sub Energy」ノブを片方ずつ上げてみて、続いてさまざまなし きい値設定を試してみましょう。これにより、しきい値レベルが異なるとどのよ うに「Super Energy」と「SubEnergy」のサウンドに影響するか、把握できるはず です。好みのサウンドや使えそうなサウンドが見つかった場合は、「Bandwidth」 を大幅に狭め、「Center Freq.」を徐々に上げ、続いて「Low Level」スライダと 「High Level」スライダを使ってオリジナルの信号から高音と低音を適量ミック スします。「Speed」設定が低い場合は、「CF Mod.」ノブまたは「BW Mod.」ノ ブを上げます。 Spectral Gate を理解するには、以下の手順に従ってください。 1 「Center Freq.」および「Bandwidth」パラメータを使い、処理する周波数帯を設 定します。 グラフィックディスプレイには、この2つのパラメータが指定する帯域が視覚的 に表示されます。 2 周波数帯を指定したら、「Threshold」パラメータを使ってレベルを設定します。 第 6 章 フィルタエフェクト 173 しきい値レベルよりも高い、または低い入力信号は、すべて上下の周波数帯に分 割されます。 3 「SuperEnergy」ノブでしきい値を超える周波数のレベルを調節し、「SubEnergy」 ノブでしきい値未満の周波数のレベルを調節します。 4 周波数帯(「Center Freq.」および「Bandwidth」パラメータで指定)の外側にあ る周波数と、処理済みの信号とをミックスできます。 a 「LowLevel」スライダを使って、指定の周波数帯を下回る周波数と処理済み信 号とをミックスします。 b 「High Level」スライダを使って、指定の周波数帯を上回る周波数と処理済み 信号とをミックスします。 5 指定した周波数帯は「Speed」、「CFModulation」、および「BW Modulation」パ ラメータでモジュレートできます。 a 「Speed」ではモジュレーション周波数を指定します。 b 「CFModulation」では、中心周波数のモジュレーションの強さを指定します。 c 「BW Modulation」では、帯域幅モジュレーションの量を調節します。 6 調節が終わったら、「Gain」スライダで処理済み信号の最終出力レベルを調整で きます。 174 第 6 章 フィルタエフェクト 「LogicPro」のイメージプロセッサは、ステレオイメージを操作するためのツー ルです。これを使うと、特定のサウンドまたはミックス全体に幅や奥行きを与え ることができます。また、ミックス内の個々のサウンドの位相を変えることで、 特定のトランジェントを拡張または抑制することもできます。 この章では以下の内容について説明します: • Binaural Post-Processing (ページ 175) • Direction Mixer (ページ 176) • Stereo Spread (ページ 180) Binaural Post-Processing 「Logic Pro」の各チャンネルストリップでは、Binaural Panner として知られる特 別な「Pan」ノブを使うことができます。これは、標準のステレオ信号を送った ときに、あらゆる音源の位置(左右だけでなく上下の位置情報も含む)を、音響 心理学に再現するプロセッサです。 Binaural Panner からの出力信号の再生には、ヘッドフォンが適しています。ただ しBinaural Pannerでの設定条件を組み合わせることで、スピーカーまたはヘッド フォンのサウンドをニュートラルに再生できます。 175 イメージプロセッサ 7 メモ: 複数の Binaural Panner を(複数チャンネル上で)使用する場合、条件の組 み合わせはオフにし、バイノーラルでパンした信号をAuxチャンネルに送信した 方がよいでしょう。この Aux チャンネルに Binaural Post-Processing プラグインを 挿入し、1 回で Binaural Panner のすべての出力に拡散場補正をかけます。こうす ると、管理が簡単で音質も良くなる上、コンピュータの負荷が軽減されます。 • 「Compensation」ポップアップメニュー: さまざまな再生システムに適用する 処理の種類を指定します。以下から選択できます: • Headphone FF - optimized for front direction: ヘッドフォン再生用の設定です。 自由場補正を使用します。このモードの場合、聴取位置の手前に置かれるサ ウンドソースのサウンド特性はニュートラルになります。 • Headphone HB - optimized for horizontal directions: ヘッドフォン再生用の設定 です。水平面上にある(または平面に近接した)音源がニュートラルなサウ ンドになります。 • Headphone DF - averaged over all directions: ヘッドフォン再生用の設定です。 拡散場補正を使用します。このモードの場合、平均して、サウンドは自由に 配置または移動したソースで最もニュートラルになります。 • Speaker CTC - Cross Talk Cancellation: スピーカー再生用の設定です。バイノー ラル的にパンニングされた信号をステレオスピーカーで再生できます。音響 空間の再現は、スピーカーの間の左右対象面のリスニングポジションの範囲 に制限されます。 • 「CTC—Speaker Angle」フィールド/スライダ: このパラメータは「Speaker CTC」補正モードを選択した場合にのみ作用します。最高のバイノーラル効果 を発揮するには、センター方向(聴取位置)に向けたステレオスピーカーのア ングルを入力してください。 Binaural Post-Processing プラグインでの Binaural Panner の使用方法に関する詳細 は「Logic Pro ユーザーズマニュアル」を参照してください。 Direction Mixer DirectionMixerを使うと、MS録音のデコードをしたり、左/右録音におけるステ レオベースを広げて、そのパン位置を定義したりすることが可能です。 176 第 7 章 イメージプロセッサ Direction Mixer は、マイキング技術を問わず、あらゆる種類のステレオ録音に使 うことができます。XY、AB、およびMS録音の詳細については、ステレオマイキ ング技術を理解するを参照してください。 • 「Input」ボタン: 入力信号が標準の左/右信号である場合は「LR」ボタンを クリックし、MS エンコード信号である場合は「MS」ボタンをクリックしま す。 • 「Spread」スライダ/フィールド: LR 入力信号のステレオベースの広がりを 指定します。MS 入力信号のサイド信号のレベルを指定します。Direction Mixer の「Spread」パラメータを使うを参照してください。 • 「Direction」ノブ/フィールド: 録音されたステレオ信号のパン位置の中央 (ステレオベースの中央)を指定します。Direction Mixer の「Direction」パラ メータを使うを参照してください。 Direction Mixer の「Spread」パラメータを使う Direction Mixer の「Spread」パラメータの動作は、MS 信号と LR 信号のどちらを 受信するかによって変化します。この違いは次の通りです。 LR 信号を操作する場合、Direction Mixer の「Spread」パラメータは次のように機 能します: • ニュートラル値の1にすると、信号の左/右サイドがそれぞれ正確に左右に配 置されます。「Spread」値を小さくすると、両サイドがステレオイメージの中 央に向かって移動します。 • 値を0にすると、モノラルに合成した信号が生成され、入力信号の両サイドが 2 つの出力に同じレベルで振り分けられます。1 より大きい値では、ステレオ ベースがスピーカーの空間的な限界を超えたイメージ上のポイントまで広がり ます。 MS 信号を操作する場合は次のように機能します: • 1 以上の値ではサイド信号のレベルが上がり、中央信号よりも高くなります。 • 値を 2 にすると、サイド信号しか聞こえません。 第 7 章 イメージプロセッサ 177 Direction Mixer の「Direction」パラメータを使う 「Direction」を値 0 に設定すると、ステレオ録音でステレオベースの中央ポイン トがミックスのちょうど中央に配置されます。 LR 信号を操作する場合は次のように機能します: • 90°では、ステレオベースの中央が完全に左にパンされます。 • - 90°では、ステレオベースの中央が完全に右にパンされます。 • 値が大きくなると、ステレオベースの中央がステレオミックスの中央に戻りま すが、この場合、録音におけるステレオサイドが入れ替わる結果になります。 たとえば、値を180°または-180°にすると、ステレオベースの中央がミックス 内でデッドセンターになりますが、録音の左/右サイドは入れ替わります。 MS 信号を操作する場合は次のように機能します: • 90°では、中央信号が完全に左にパンされます。 • - 90°では、中央信号が完全に右にパンされます。 • 値が大きくなると、中央信号がステレオミックスの中央に戻りますが、この場 合、録音におけるサイド信号が入れ替わる結果になります。たとえば、値を 180°または- 180°にすると、中央信号がミックス内でデッドセンターになりま すが、サイド信号の左/右サイドは入れ替わります。 ステレオマイキング技術を理解する 録音によく使われるステレオマイキングには 3 つの手法があります。「AB」、 「XY」、および「MS」です。ステレオ録音とは、簡単に言えば、2つのチャンネ ル信号を使った録音のことです。 ABおよびXY録音でも左右のチャンネル信号を録音しますが、左右のチャンネル を組み合わせて中央信号が生成されます。 MS録音では実際の中央信号を録音し、左右のチャンネルはサイド信号からデコー ドする必要があります。サイド信号とは、左右のチャンネル信号を合成した信号 です。 AB マイキングを理解する AB録音では、2つのマイク(一般に無指向性ですが、極性は使用できます)を中 央から均等に配置し、音源に正対させます。マイク間の間隔が、全体的なステレ オ幅とステレオフィールド内の楽器の位置感覚に大きく影響します。 一般に、AB 技術はオーケストラの 1 つのセクション(弦楽器など)や、少人数 のボーカルグループの録音に使われます。また、ピアノやアコースティックギ ターの録音にも効果的です。 178 第 7 章 イメージプロセッサ AB はフルオーケストラやグループの録音にはあまり向いていません。中心から 外れた位置にある楽器のステレオ音像(位置)が不鮮明になりがちだからです。 また、モノラルへのミックスダウンにも向いていません。チャンネル間の位相が 打ち消されるおそれがあります。 XY マイキングを理解する XY録音では、2つの指向性マイクをステレオフィールドの中心から同じ角度に配 置します。右側のマイクは、音源の左側と音源の中央との中間点に向けます。左 側のマイクは、音源の右側と音源の中央との中間点に向けます。音源から 45°〜 60°外れた位置で各チャンネルが録音されます(チャンネル間の角度が 90°〜 120°)。 XY 録音では両方のチャンネルのバランスがとれていることが多く、的確な位置 情報がエンコードされます。XY録音は、ドラムの録音によく使われます。また、 大きな編成や多くの楽器の録音にも向いています。 通常、XY録音ではAB録音よりもサウンドフィールドが狭くなるため、再生時に ステレオ幅を感じられない場合があります。XY 録音はモノラルにミックスダウ ンできます。 MS マイキングを理解する MS(Middle Side)録音を行うには、2つのマイクを互いにできるだけ近くに配置 します(通常はスタンドを使うかスタジオの天井から吊り下げます)。1 つは カーディオイド型指向性(または無指向性)マイクで、録音する音源に正対させ ます。もう 1 つは双指向性マイクで、(音源の)左右に向けて 90°開いて配置し ます。カーディオイド型指向性マイクは、中央信号をステレオの片側に録音しま す。無指向性マイクは、サイド信号をステレオの他方の側に録音します。このよ うに行われた MS 録音は Direction Mixer でデコードすることができます。 MS 録音を再生するときには、サイド信号が 2 回使われます: • 録音時と同じ状態 • 完全に左にパンされた状態。または位相が反転し、完全に右にパンされた状態 MS は、モノラルへの絶対的な互換性を保持する必要があるすべての場合に最適 です。XY録音と異なり、MS録音には、録音するステレオの中央信号がカーディ オイドマイクの指向性の軸にそろうという利点があります。どのようなマイクで も指向性軸がずれることで周波数応答性のゆらぎが生じますが、MS 録音では常 にモノラルの互換性が保持されるため、これを軽減することができます。 第 7 章 イメージプロセッサ 179 Stereo Spread 通常、Stereo Spread はマスタリングに使われます。ステレオベース(空間の感 覚)を広げるには、リバーブなどのエフェクトを使用する、信号の位相を変える といった方法があります。これらの方法は効果的ではありますが、トランジェン トレスポンスが発生して、ミックスにおける全体的なサウンドが弱くなってしま うなどの問題が生じがちです。 Stereo Spreadでは、中音域をいくつかの周波数帯域(数は可変)に分け、左チャ ンネルと右チャンネルに振り分けることによって、ステレオベースを広げます。 中音域を左チャンネルに、中音域を右チャンネルにというように、交互に振り分 けがなされます。特にモノラル録音の素材にステレオ効果を与える場合、ほとん ど違和感のない出力が得られます。 • 「LowerInt.」(LowerIntensity)スライダ/フィールド: 低周波数帯についてス テレオベースの広がりを設定します。 • 「UpperInt.」(UpperIntensity)スライダ/フィールド: 高周波数帯についてス テレオベースの広がりを設定します。 メモ: 「Lower Int.」および「Upper Int.」スライダを設定する際、次の点に注意 が必要です。ステレオ効果は主として中・高音域で顕著に現れるため、低音域 を左右のスピーカーに分配すると、ミックス全体のエネルギーが大幅に変化す る場合があります。したがって、「Lower Int.」パラメータの値は低めにおさ え、「Lower Freq.」パラメータの設定を少なくとも 300 Hz 程度にしてくださ い。 • グラフィックディスプレイ: 信号を分割する周波数帯の数と、高周波数帯/ 低周波数帯のStereo Spreadエフェクトの強度が表示されます。上部セクション の表示が左チャンネル、下部セクションは右チャンネルに対応します。周波数 スケールは右に行くほど高くなっています。 • 「Upper Freq.」/「Lower Freq.」(Upper/Lower Frequency)スライダ/フィール ド: ステレオイメージに戻される周波数の上限と下限を設定します。 180 第 7 章 イメージプロセッサ • 「Order」ノブ/フィールド: 信号をいくつの周波数帯に分割するかを指定し ます。通常、ほとんどの作業では 8 つの周波数帯で十分ですが、最大 12 の周 波数帯まで分割することができます。 第 7 章 イメージプロセッサ 181 メータリングツールを使うと、さまざまな方法でオーディオを分析することがで きます。これらのプラグインによって、チャンネルストリップに各種の便利な情 報を表示することができます。メータリングツールは、オーディオ信号には影響 せず、診断の手助けとして使うために設計されています。 表示するオーディオ信号の特性はメーターごとに異なり、それぞれスタジオの特 定の状況下で役立つよう設計されています。たとえば、BPM Counter はオーディ オファイルのテンポを、Correlation Meter は位相関係を、Level Meter は入力され るオーディオ信号のレベルを表示します。 この章では以下の内容について説明します: • BPM Counter (ページ 184) • Correlation Meter (ページ 184) • Level Meter プラグイン (ページ 185) • MultiMeter (ページ 185) • サラウンド MultiMeter (ページ 191) • Tuner (ページ 197) 183 メータリングツール 8 BPM Counter BPMCounterを使うと、入力されるオーディオのテンポをbpm(1分あたりのビー ト数)で分析できます。検出回路により、入力信号にあるトランジェント(イン パルスとも呼ばれます)がすべて探し出されます。トランジェントとは、信号の アタック部分にある、とても速く周期を持たないサウンドイベントです。この衝 撃が明瞭であるほど、BPMCounterはテンポを検出しやすくなります。そのため、 パーカッシブなドラムやインストゥルメントのリズムパート(たとえばベースラ インなど)はテンポ分析に適しています。パッドサウンドは、BPM Counter によ るテンポ分析には適していません。 LED に分析プロセスの状態が表示されます。LED が点滅状態のときは、回路がテ ンポを測定しています。LEDが点灯したら分析が終了したということで、テンポ の測定値が表示されます。測定範囲は 80 〜 160bpm です。測定値は小数点第 1 位まで表示されます。LEDをクリックすると、BPMCounterをリセットできます。 メモ: BPM Counter は信号中のテンポの変動も検出し、正確な分析を試みます。 再生時に LED が点滅し始めたら、BPM Counter が最後に受信した(または設定し た)テンポとずれたテンポ変動を検出したことを表しています。新しくかつ一定 のテンポを検出すると、LEDはそのまま点灯し続け、新しいテンポが表示されま す。 Correlation Meter Correlation Meter ではステレオ信号の位相関係が表示されます。 • 「+ 1」(右の位置)は、左右のチャンネルが 100 %相関していることを表し ます(すなわち、左右の信号がまったく同じ位相であるということです)。 • 「0」(中央の位置)は、左右の信号に可能な範囲で最大の差があり、きわめ て広範なステレオ効果が得られることを表します。 • 0 より小さい値は、位相を外れた素材があることを示します。ステレオ信号を 混ぜ合わせてモノラル信号にしたとすれば、位相が打ち消された状態になるは ずです。 184 第 8 章 メータリングツール Level Meter プラグイン LevelMeterでは現在の信号レベルがデシベル(dB)単位で表示されます。各チャ ンネルの信号レベルは青いバーで示されます。信号レベルが 0dB を超えると、 0dB よりも右のバーの部分が赤に変わります。 LevelMeterのステレオインスタンスは左右のバーで別々に表示されますが、モノ インスタンスは1つのバーで表示されます。サラウンドインスタンスは各チャン ネルの(水平ではなく垂直の)バーで表示されます。 現在のピーク値は数字で表示されるほか、グラフィック表示でも示されます。こ れらの値は、表示部分をクリックするとリセットすることができます。 「Peak」、「RMS」または「Peak & RMS」の設定を利用して、Level Meterの表示 レベルを設定できます。グラフィックディスプレイの下のポップアップメニュー から、該当する設定を選択します。RMSのレベルは暗い青色のバーで表示されま す。ピークレベルは明るい青色のバーで表示されます。ピークおよび RMS のレ ベルを同時に表示するよう選択することも可能です。 「Peak」と「RMS」について ピーク値は、信号が到達する最高のレベルのことです。RMS(二乗平均平方根) 値は、信号全体の実効値です。つまり、信号の連続した出力が測定されていま す。 人間の聴覚は連続した信号を最も捉えやすいようにできているので、人間の耳 は、ピークを読み取る計器よりもRMS計器に似ています。このため、ほとんど の場合、RMSメーターを使った方が意味のある結果が得られます。または、RMS メーターとピークメーターを併用することも可能です。 MultiMeter Multimeter は高機能なメーター類や分析ツールを集めたもので、1 つのウインド ウで表示されます。以下のメーター/ツールが含まれます: • 1/3 オクターブごとに周波数帯のレベルを表示する Analyzer • ステレオ・サウンド・フィールドの位相の一貫性を判断するためのGoniometer • モノラル位相の互換性を検証する Correlation Meter 第 8 章 メータリングツール 185 • 各チャンネルの信号レベルを表示する統合された Level Meter メインディスプレイ領域には、AnalyzerまたはGoniometerのいずれかの結果を表 示することができます。表示の切り替えやほかの Multimeter パラメータの設定 は、インターフェイスの左側にある制御パネルで行います。 Peak parameters Analyzer parameters Goniometer parameters Correlation Meter Level Meter Main display in Analyzer view MultiMeterは任意のチャンネルストリップに直接挿入できますが、ミックス全体 を操作する場合は一般にホストアプリケーションのマスター・チャンネル・スト リップで使います。 なお、Multimeterにはサラウンドバージョンもあり、各チャンネルのパラメータ が用意され、レイアウトが若干異なっています。サラウンドMultiMeterを参照し てください。 186 第 8 章 メータリングツール Multimeter の Analyzer を使う 「Analyzer」モードでは、入力信号の周波数スペクトラムが31の周波数帯に分け て MultiMeter のメインディスプレイに表示されます。各周波数帯の幅は 1 オク ターブの1/3です。「Analyzer」パラメータを使うと、「Analyzer」モードを有効 にしたり、入力信号をメインディスプレイに表示する方法をカスタマイズしたり することができます。 Analyzer parameters Scale • 「Analyzer」ボタン: メインディスプレイを「Analyzer」モードに切り替えま す。 • 「Left」/「Right」/「LRMax」/「Mono」ボタン: メインディスプレイに 「Analyzer」の結果を表示するチャンネルを指定します。 • 「Left」/「Right」: 左または右チャンネルを表示します。 • 「LRmax」: ステレオ入力の最大レベルを表示します。 • 「Mono」: 両方の入力(ステレオ)を合成してモノラルにした場合のスペ クトラムを表示します。 • 「View」フィールド: 表示範囲の最大値(「Top」)と全体のダイナミックレ ンジ(「Range」)を設定して、「Analyzer」に値を表示する方法を変更しま す。 • モードボタン: レベルの表示方法を指定します。「Peak」、「Slow RMS」、 「Fast RMS」のいずれかの特性を選択できます。 • 2 つの「RMS」モードは信号の実効値平均を表し、耳に聴こえる音量レベル に合致しています。 • 「Peak」モードにすると、レベルの正確なピーク値が表示されます。 第 8 章 メータリングツール 187 • スケール(メインディスプレイに表示): レベルのスケールを示します。強 く圧縮をかけた素材の場合、このスケールを調整すると便利です。レベルの変 化が小さい場合でも、その変化が見やすくなります。上下にドラッグするとス ケールが調整されます。 Multimeter の Goniometer を使う Goniometer を使うと、ステレオイメージの干渉を検証して、左右のチャンネル 間の位相の差を定義することができます。中央のラインのM(中央/モノラル) に沿ってトレースが打ち消しあう状況があれば、位相に問題があることが簡単に 分かります。 Goniometer の原理は、古くから 2 チャンネル方式のオシロスコープに使われて いたものです。Goniometer のようなデバイスを使用するには、左右のステレオ チャンネルの信号を X 軸と Y 軸の入力に接続し、表示を 45°傾けます。するとス テレオ位相が目に見える形で表現されます。 信号トレースはゆっくりと黒に戻ります。これはグロー管を使った古くからの Goniometer の動作を真似たものですが、信号を読み取るにはこの方式が最も優 れているようです。 • 「Goniometer」ボタン: メインディスプレイを「Goniometer」モードに切り替 えます。 • 「Auto Gain」フィールド: 入力レベルが低い場合に表示を補正する度合いを 設定します。「Auto Gain」レベルは 10%ずつ増やすことができます。また、 この機能をオフにすることも可能です。 188 第 8 章 メータリングツール メモ: ほかのエフェクトやプロセッサ(Compressor など)の「Auto Gain」パラ メータと混同されないよう、メーターでは「AutoGain」は表示用パラメータと してのみ使われます。この「AutoGain」パラメータは、レベルを上げて表示を 見やすくするためのものです。オーディオレベル自体は変化しません。 • 「Decay」フィールド: Goniometer が黒に戻るまでの時間を指定します。 Multimeter の Level Meter を使う LevelMeterでは現在の信号レベルが対数のデシベル(dB)単位で表示されます。 各チャンネルの信号レベルは青いバーで示されます。 RMS と Peak レベルは同時に表示され、RMS レベルは濃青のバーで、Peak レベル は淡青のバーで表示されます。信号レベルが 0 dB を超えると、0 dB を超えた部 分のバーが赤に変わります。 現在のピーク値は、LevelMeter上部に数字(dB)で表示されます。表示部分をク リックするとピーク値をリセットできます。 Multimeter の Correlation Meter を使う Correlation Meter はステレオ信号の位相関係を計測します。Correlation Meter のス ケールの値は以下の状態を示しています: • 「+ 1」は、左右のチャンネルが 100 %相関していることを表します。すなわ ち、左右の信号がまったく同じ位相であるということです。 第 8 章 メータリングツール 189 • 相関値が「+ 1」から中央位置にかけての青い領域に入っていれば、ステレオ 信号がモノラル信号と互換性があることを表します。 • 中央位置にあれば、左右の信号に可能な範囲で最大の差があり、きわめて広範 なステレオ効果が得られることを表します。 • 相関値が中央から左側の赤い領域に入っていれば、位相を外れた素材があるこ とになります。ステレオ信号を混ぜ合わせてモノラル信号にしたとすれば、位 相が打ち消された状態になるはずです。 Multimeter の「Peak」パラメータを使う Multimeter の「Peak」パラメータを使うと、ピークホールド機能の有効/無効を 切り替えたり、全種類のメーターのピーク値をリセットしたりすることができま す。一時的なピークホールド時間を指定することもできます。 • 「Hold」ボタン: MultiMeterの各メーターについて、ピーク値の表示方式を以 下の通りに設定します: • Analyzer: 各1/3オクターブ・レベル・バーの上に黄色い小さな区画が現れ、 ここに最新のピーク値が表示されます。 • Goniometer: いったん光ったピクセルは、ピークのホールド時間中ずっと 光ったままになります。 • CorrelationMeter: 相関値を表す針が左右に動いた範囲がリアルタイムで相関 インジケータにより白く表示されます。左寄りの赤い縦線で、負の方向に最 も針が振れた位置が示されます。再生時にこの線をクリックすると、リセッ トすることができます。 • Level Meter: 各ステレオ・レベル・バーの上に黄色い小さな区画が現れ、こ こに最新のピーク値が表示されます。 • ホールド時間ポップアップメニュー: ピークを保持した場合、ホールド時間 を設定し、あらゆる測定ツールについて 2 秒、4 秒、6 秒、または無限大に切 り替えることができます。 • 「Reset」ボタン: 「Reset」ボタンを選択すると、すべての測定ツールのピー クホールド値がリセットされます。 190 第 8 章 メータリングツール サラウンド MultiMeter Multimeterのサラウンドバージョンは、特にマルチ・チャンネル・サラウンド・ ファイルの分析と計測のために設計されています。メインディスプレイ領域に は、Analyzer、Goniometer、またはCorrelation Meterのいずれかの結果を表示する ことができます。表示の切り替えやほかのMultimeterパラメータの設定は、イン ターフェイスの左側にある制御パネルで行います。LevelMeter(Peak/RMS)は右 側に表示されます。 サラウンドMultiMeterは任意のチャンネルストリップに直接挿入できますが、サ ラウンドミックス全体を操作する場合は一般にホストアプリケーションのマス ター・チャンネル・ストリップで使います。 Balance/Correlation button Main display Goniometer parameters (Goniometer shown) Peak parameters Analyzer parameters 第 8 章 メータリングツール 191 サラウンド Multimeter の Analyzer を使う 「Analyzer」モードでは、入力信号の周波数スペクトラムが31の周波数帯に分け て MultiMeter のメインディスプレイに表示されます。各周波数帯の幅は 1 オク ターブの1/3です。「Analyzer」パラメータを使うと、「Analyzer」モードを有効 にしたり、入力信号をメインディスプレイに表示する方法をカスタマイズしたり することができます。 Analyzer parameters Scale • 「Analyzer」ボタン: メインディスプレイを「Analyzer」モードに切り替えま す。 • 「Sum」ボタンと「Max」ボタン: 「Analyzer」の結果として合計レベルと最 大レベルのどちらをメインディスプレイに表示するかを指定します。これらの ボタンは、チャンネルボタンで複数のチャンネルが選択されている場合にのみ 作用します。 • チャンネルボタン: 1つのチャンネルを選択することも、チャンネルを組み合 わせて計測することもできます。これらのボタンの数と表示は、選択中のサラ ウンドモードによって変化します。 • 「View」フィールド: 表示範囲の最大値(「Top」)と全体のダイナミックレ ンジ(「Range」)を設定して、「Analyzer」に値を表示する方法を変更しま す。 • モードボタン: レベルの表示方法を指定します。「Peak」、「Slow RMS」、 「Fast RMS」のいずれかの特性を選択できます。 • 2 つの「RMS」モードは信号の実効値平均を表し、耳に聴こえる音量レベル に合致しています。 • 「Peak」モードにすると、レベルの正確なピーク値が表示されます。 192 第 8 章 メータリングツール • スケール(メインディスプレイに表示): レベルのスケールを示します。強 く圧縮をかけた素材の場合、このスケールを調整すると便利です。レベルの変 化が小さい場合でも、その変化が見やすくなります。上下にドラッグするとス ケールが調整されます。 サラウンド Multimeter の Goniometer を使う Goniometer を使うと、ステレオイメージの干渉を検証して、左右のチャンネル 間の位相の差を定義することができます。中央のラインのM(中央/モノラル) に沿ってトレースが打ち消しあう状況があれば、位相に問題があることが簡単に 分かります。 Goniometer の原理は、古くから 2 チャンネル方式のオシロスコープに使われて いたものです。Goniometer のようなデバイスを使用するには、左右のステレオ チャンネルの信号を X 軸と Y 軸の入力に接続し、表示を 45°傾けます。するとス テレオ位相が目に見える形で表現されます。信号トレースはゆっくりと黒に戻り ます。これはグロー管を使った古くからの Goniometer の動作を真似たものです が、信号を読み取るにはこの方式が最も優れているようです。 サラウンド MultiMeter の「Goniometer」はマルチチャンネル信号を扱うため、 ディスプレイが図のように複数の区画に分割されます。それぞれの区画はスピー カーの位置を示しています。チャンネルストリップにサラウンドパンナーを挿入 すると、これに応じてインジケータも変化します。これにより、左右のチャンネ ルの干渉だけでなく、前後の干渉も確認できます。 • 「Goniometer」ボタン: メインディスプレイに「Goniometer」の結果を表示し ます。 • 「Auto Gain」フィールド: 入力レベルが低い場合に表示を補正する度合いを 設定します。「Auto Gain」レベルは 10 %ずつ増やすことができます。また、 この機能をオフにすることも可能です。 第 8 章 メータリングツール 193 メモ: ほかのエフェクトやプロセッサ(Compressor など)の「Auto Gain」パラ メータと混同されないよう、メーターでは「AutoGain」は表示用パラメータと してのみ使われます。この「AutoGain」パラメータは、レベルを上げて表示を 見やすくするためのものです。オーディオレベル自体は変化しません。 • 「Decay」フィールド: Goniometer が黒に戻るまでの時間を指定します。 • 「L-R」/「Ls–Rs」/「Both」ボタン: メインディスプレイに表示するチャン ネルペアを指定します。サラウンド Multimeter を 2 チャンネルペアの構成(4 チャンネル、5.1、6.1構成)で使用する場合、「Both」を選択すればGoniometer に両方のペアを表示することができます。1 つのペア(L-R)がグラフィック ディスプレイの上半分に、もう1つのペア(Ls-Rs)は下半分に表示されます。 サラウンド Multimeter の Level Meter を使う LevelMeterでは現在の信号レベルが対数のデシベル(dB)単位で表示されます。 各チャンネルの信号レベルは青いバーで示されます。 RMS と Peak レベルは同時に表示され、RMS レベルは濃青のバーで、Peak レベル は淡青のバーで表示されます。信号レベルが 0 dB を超えると、0 dB を超えた部 分のバーが赤に変わります。 現在のピーク値は、LevelMeter上部に数字(dB)で表示されます。表示部分をク リックするとピーク値をリセットできます。 194 第 8 章 メータリングツール サラウンド Multimeter の「Balance/Correlation」パラメータを使う サラウンド Multimeter の Correlation Meter は、すべての入力信号間のバランス (サウンドの配置)を計測します。強い相関信号は明確に、弱めの相関信号は不 明瞭な領域で表示されます。サラウンドMultimeterの「Balance/Correlation」ボタ ンを有効にすると、メインディスプレイに Correlation Meter が表示されます。 選択したサラウンドフォーマットに応じて、スピーカーの位置を示す点(図は 5.1構成でのL、R、C、Ls、Rs)が表示されます。これらの点にラインが接続され ます。各接続ラインの中央位置が青いマーカーで表示されます。 灰色のボールはサラウンド空間/サウンドの配置を示します。チャンネルスト リップのサラウンドパンナーを動かすと、Correlation Meter のボールに動きが反 映されます。青色のマーカーもリアルタイムで動きます。灰色の影付きの線は、 各接続ラインの中央位置からの広がりを示します。 LFE channel Correlation Meter は、メインディスプレイの下に表示されています。 相関値を表す針が左右に動いた範囲がリアルタイムで相関インジケータにより白 く表示されます。これは両方向に表示されます。左寄りの赤い縦線で、負の方向 に最も針が振れた位置が示されます。再生時にこの線をクリックすると、リセッ トすることができます。 LFE Correlation Meter のスケールの値は以下の状態を示しています: • 「+ 1」は、信号が均衡な状態にあることを表します。 • 相関値が「+ 1」から中央位置にかけての青い領域に入っていれば、信号がモ ノラル信号と互換性があることを表します。 • 中央位置にあれば、チャンネルに可能な範囲で最大の差があることを表しま す。 • 相関値が中央から左側の赤い領域に入っていれば、バランスのとれていない素 材があることになります。 第 8 章 メータリングツール 195 サラウンド Multimeter の「Peak」パラメータ サラウンド MultiMeter には、以下の「Peak」パラメータがあります: • 「Hold」ボタン: サラウンド MultiMeter の各メーターについて、ピーク値の 表示方式を以下の通りに設定します: • Analyzer: 各レベルバーの上に黄色い小さな区画が現れ、ここに最新のピー ク値が表示されます。 • Goniometer: いったん光ったピクセルは、ピークのホールド時間中ずっと 光ったままになります。 • Level Meter: 各レベルバーの上に黄色い小さな区画が現れ、ここに最新の ピーク値が表示されます。 • バランス/相関メーター: 相関値を表す針が左右に動いた範囲がリアルタ イムで相関インジケータにより白く表示されます。 メモ: このメーターは「Balance/Correlation」ボタンをクリックして手動で開く 必要があります。 • ホールド時間ポップアップメニュー: ピークを保持した場合、ホールド時間 を設定し、あらゆる測定ツールについて 2 秒、4 秒、6 秒、または無限大に切 り替えることができます。 • 「Reset」ボタン: 「Reset」ボタンを選択すると、すべての測定ツールのピー クホールド値がリセットされます。 196 第 8 章 メータリングツール Tuner Tuner ユーティリティを使うと、お使いのシステムに接続された音源をチューニ ングすることができます。これにより、外部音源の録音がプロジェクト内のほか のソフトウェア音源、既存のサンプル、既存の録音と調和するようになります。 Graphic tuning display Tuning adjustment slider and field Keynote/Octave displays Precision button • 「Precision」ボタン: チューニングのグラフィックディスプレイはデフォルト でリニアスケールになっています。「Precision」ボタンを有効にするとスケー ルが変更され、中央から外側に向かって拡張します。 • チューニングのグラフィックディスプレイ: 「Keynote/Octave」ディスプレイ の中心の半円状の領域にノートのピッチが表示されます。センター位置(12 時の方向)にあれば、ノートは正確にチューニングされています。インジケー タが中央から左に動く場合は、基準のノートよりも音が低くなっています。イ ンジケータが中央から右に動く場合は、基準のノートよりも音が高くなってい ます。 ディスプレイの端の数字は、目的とするピッチとの「ずれ」をセント単位で示 しています。中央から上下に半音単位で6つずつ範囲が表示されています。以 降は刻みが大きくなります。 • 「Keynote」/「Octave」ディスプレイ: 「Keynote」ディスプレイの上部には、 演奏中のノートの目的とするピッチが表示されます(チューニングされた最も 近いピッチ)。下部の「Octave」ディスプレイには、入力されるノートが属す るオクターブが表示されます。これは MIDI オクターブスケールにマッチして おり、中間以上の C が C4、中間の C が C3 と表示されます。 第 8 章 メータリングツール 197 • チューニング調整スライダ/フィールド: チューニングのベースとして使用 するノートのピッチを設定します。デフォルトでは、Tuner はプロジェクトの チューニングパラメータの値に設定されています。ノブを左にドラッグする と、A に対応するピッチが低くなります。ノブを右にドラッグすると、A に対 応するピッチが高くなります。現在の値はフィールドに表示されます。 Tuner を使うには 1 Tuner をオーディオ・チャンネル・ストリップに挿入します。 2 音源で単音を鳴らしてディスプレイの表示を確認します。基準のノートと音の高 さに差がある場合は、中央より左または右のバーが点灯し、ピッチが(セント単 位で)どれだけずれているかが表示されます。 3 チューニングのグラフィックディスプレイでインジケータが中央に表示されるよ うに音源をチューニングします。 198 第 8 章 メータリングツール モジュレーションエフェクトを使うと、サウンドに動きと深みを与えることがで きます。 コーラス、フランジング、フェイジングなどのエフェクトがよく知られていま す。一般にモジュレーションエフェクトは、入力信号を数ミリ秒遅延させた後、 LFO で遅延信号をモジュレートします。一部のエフェクトでは、遅延時間をモ ジュレートするために LFO を使うこともあります。 LFO(低周波オシレータ)はシンセサイザーの音を生成するオシレータによく似 ていますが、LFOで生成される周波数は低く、耳には聞こえません。このため、 LFO はモジュレーションだけを目的として使われます。LFO のパラメータには、 速度(周波数)と深さ(強さ)のコントロールがあります。 また、エフェクトのかかった(ウェット)信号と元の(ドライ)信号の比率も制 御できます。フィードバックパラメータを備えたモジュレーションエフェクトも あります。これはエフェクト出力の一部をエフェクト入力に戻します。 ほかのモジュレーションエフェクトはピッチにも影響します。最も基本的なピッ チ・モジュレーション・エフェクトは、ビブラートです。ビブラートではLFOを 使ってサウンドの周波数をモジュレートします。ほかのモジュレーションエフェ クトと異なり、ビブラートは遅延信号だけを変化させます。 Ensembleは「Logic Pro」で最も複雑なモジュレーションエフェクトの1つです。 これはオリジナル信号と複数の遅延信号をミックスします。 この章では以下の内容について説明します: • Chorus エフェクト (ページ 200) • Ensemble エフェクト (ページ 200) • Flanger エフェクト (ページ 202) • Microphaser (ページ 203) • Modulation Delay (ページ 203) • Phaser エフェクト (ページ 206) • RingShifter (ページ 207) 199 モジュレーションエフェクト 9 • Rotor Cabinet エフェクト (ページ 214) • Scanner Vibrato エフェクト (ページ 216) • Spreader (ページ 218) • Tremolo エフェクト (ページ 219) Chorus エフェクト Chorus エフェクトは元の信号にディレイをかけます。ディレイ時間は LFO でモ ジュレートされます。ディレイおよびモジュレートされた信号は、元の(ドラ イ)信号とミックスされます。 Chorus エフェクトを使うと、入力信号の響きを豊かにし、複数の楽器や声がユ ニゾンで演奏しているような印象を生み出すことができます。LFOによって生成 されるディレイ時間のわずかな差によって、複数のミュージシャンやボーカリス トで演奏しているときに生じるピッチやタイミングの微妙な「ずれ」がシミュ レートされます。また Chorus を使用することで信号に豊かさや深みも加わり、 低い音や持続音に動きを与えることができます。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: モジュレーションの量を設定します。 • 「Rate」ノブ/フィールド: LFO の周波数(つまり速度)を指定します。 • 「Mix」スライダ/フィールド: ドライ信号とウェット信号のバランスを指定 します。 Ensemble エフェクト Ensemble は最大で 8 つのコーラスエフェクトを合成します。2 つの標準 LFO と 1 つのランダムLFO(ランダムなモジュレーションを生成)により、複雑なモジュ レーションを生成できます。処理された信号の動きは、Ensemble のグラフィッ クディスプレイによって視覚的に示されます。 200 第 9 章 モジュレーションエフェクト Ensemble エフェクトでは、特にボイスを多く使った場合に、サウンドに豊かさ と動きを大幅に加えることができます。パートに厚みを持たせるために非常に役 立つエフェクトです。また、ボイス間のピッチのずれをより大胆にエミュレート できるので、チューニングを外したように素材を処理することもできます。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: 各 LFO のモジュレーションの量を設定し ます。 • 「Rate」ノブ/フィールド: 各 LFO の周波数を制御します。 • 「Voices」スライダ/フィールド: 個別のコーラスインスタンスをいくつ使用 するか、つまり元の信号に加えてボイス(信号)をいくつ生成するかを指定し ます。 • グラフィックディスプレイ: モジュレーションの形状と強度を表します。 • 「Phase」ノブ/フィールド: 各ボイスモジュレーション間の位相関係を制御 します。ここで指定する値はボイスの数によって異なります。そのため、度数 ではなくパーセンテージで表示されています。100(または- 100)という値 は、すべてのボイスのモジュレーション位相間の最大距離を示します。 • 「Spread」スライダ/フィールド: ステレオ空間またはサラウンド空間全体に ボイスを分布させます。値を200%に設定すると、ステレオまたはサラウンド のベースが人工的に拡張されます。ただし、その場合はモノラルとの整合性に 問題が発生することがあるので注意してください。 • 「Mix」スライダ/フィールド: ドライ信号とウェット信号とのバランスを指 定します。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 201 • 「Effect Volume」ノブ/フィールド: エフェクト信号のレベルを指定します。 「Voices」パラメータの変更によって生じた音量の変化を補正するのに便利な ツールです。 メモ: Ensembleエフェクトをサラウンドで使用する場合、入力信号はモノに変 換されてから処理されます。このため、Ensemble エフェクトはマルチモノイ ンスタンスとして挿入してください。 Flanger エフェクト Flanger エフェクトは Chorus エフェクトと似たような動作をしますが、かなり短 いディレイ時間を使います。また、エフェクト信号をディレイラインの入力に フィードバックすることも可能です。 フランジングは通常、浮遊感または水中にいるような感じを入力信号に与える場 合に使用されます。 • 「Feedback」スライダ/フィールド: 入力に戻されるエフェクト信号の量を指 定します。これを使うと、音質を変化させたり、スイープエフェクトをより強 調したりすることができます。「Feedback」を負の値にすると、戻された信号 の位相が反転します。 • 「Rate」ノブ/フィールド: LFO の周波数(速度)を指定します。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: モジュレーションの量を指定します。 • 「Mix」スライダ/フィールド: ドライ信号とウェット信号とのバランスを指 定します。 202 第 9 章 モジュレーションエフェクト Microphaser Microphaser は、噴射するようなフェイジング効果をすぐに作ることができるシ ンプルなプラグインです。 • 「LFO Rate」スライダ/フィールド: LFO の周波数(速度)を指定します。 • 「Feedback」スライダ/フィールド: 入力に戻されるエフェクト信号の量を指 定します。これを使うと、音質を変化させたり、スイープエフェクトをより強 調したりすることができます。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: モジュレーションの量を指定します。 Modulation Delay Modulation Delay は、Flanger エフェクトや Chorus エフェクトと同じ原理に基づ いていますが、ディレイ時間を設定できるため、コーラスとフランジングの両方 の効果を作り出すことができます。また、モジュレーションを使わずにレゾネー タやダブリングの効果を得る場合にも使用できます。モジュレーションのセク ションは、さまざまな周波数を選択できる 2 つの LFO で構成されています。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 203 フランジングとコーラスを組み合わせて豊かなエフェクトを作成することもでき ますが、Modulation Delay は大胆なモジュレーションエフェクトを作り出すこと ができます。たとえば、テープの速度のずれをエミュレートしたり、ロボットの ような金属的な音に入力信号を変化させたりすることができます。 • 「Feedback」スライダ/フィールド: 入力に戻されるエフェクト信号の量を指 定します。極端なフランジング効果が欲しい場合は、「Feedback」値を高くし ます。シンプルにダブリングしたい場合は、フィードバックを使わないでくだ さい。負の値にするとフィードバック信号の位相が反転し、より混沌としたエ フェクトになります。 • 「Flanger-Chorus」ノブ/フィールド: 基本となるディレイ時間を設定します。 左に設定するとフランジャー効果、中央に設定するとコーラス効果、右に設定 するとはっきり聞き分けられるディレイ効果が発生します。 • 「De-Warble」ボタン: オンにするとモジュレートした信号のピッチが一定に 保たれます。 • 「Constant Mod.」 (固定モジュレーション)ボタン: オンにすると、モジュ レーションレートに関係なくモジュレーション幅が一定に聞こえます。 メモ: 「Const Mod.」をオンにした場合は、モジュレーション周波数が高くな るとモジュレーション幅が狭くなります。 • 「Mod. Intensity」スライダ/フィールド: モジュレーションの量を設定しま す。 • 「LFO Mix」スライダ/フィールド: 2 つの LFO のバランスを指定します。 • 「LFO 1 Rate」および「LFO 2 Rate」ノブ/フィールド: 左ノブで左ステレオ チャンネルのモジュレーションレートを設定し、右ノブで右ステレオチャンネ ルのモジュレーションレートを設定します。 サラウンドインスタンスでは、センターチャンネルに左右の「LFO 1 Rate」ま たは「LFO 2 Rate」ノブの中間値が割り当てられます。そのほかのチャンネル には左右の LFO レートの間の値が割り当てられます。 204 第 9 章 モジュレーションエフェクト メモ: 右の「LFO 1 Rate」または「LFO 2 Rate」ノブはステレオインスタンスお よびサラウンドインスタンスでのみ使用可能で、「Left」と「Right」のリンク ボタンが無効になっている場合にのみ単独で設定できます。 • LFOの左右リンクボタン: ステレオおよびサラウンドインスタンスでのみ使用 できます。左右のステレオチャンネルのモジュレーションレートをリンクさせ ます。レートノブを調整すると、ほかのチャンネルに作用します。 • 「LFO Phase」ノブ/フィールド: ステレオおよびサラウンドインスタンスで のみ使用できます。個々のチャンネルのモジュレーションの位相関係を制御し ます。 • 0°の場合、全チャンネルで同時にモジュレーションが極限値の状態になりま す。 • 180°(または- 180°)という値は、チャンネルのモジュレーション位相間の 最大距離を示します。 メモ: 「LFO Phase」パラメータは、LFO の左右リンクボタンが有効な場合のみ 使用できます。 • 「Distribution」ポップアップメニュー: サラウンドインスタンスでのみ使用可 能です。各チャンネル間の位相のオフセットがサラウンド空間でどのように分 布されるのかを定義します。「circular」、「left↔right」、「front↔rear」、 「random」、および「new random」から分布を選択できます。 メモ: 「random」オプションを使用する設定を読み込んだ場合、保存した位相 のオフセット値が呼び出されます。位相設定を再度ランダムにしたい場合、 「Distribution」ポップアップメニューで「new random」を選択します。 • 「VolumeMod」(VolumeModulation)スライダ/フィールド: エフェクト信号 の振幅に対する LFO モジュレーションの影響の度合いを指定します。 • 「OutputMix」スライダ/フィールド: ドライ信号とウェット信号とのバラン スを指定します。 • 「All Pass」ボタン(拡張パラメータ領域): 追加のオールパスフィルタを信 号経路上に導入します。オールパスフィルタは、信号の位相角度をシフトして ステレオイメージに変化を与えます。 • 「All Pass Left」および「All Pass Right」スライダ/フィールド(拡張パラメータ 領域): 各ステレオチャンネルに対して位相シフトが 90°(合計 180° の中間 点)で交差する地点の周波数を指定します。サラウンドインスタンスでは、左 右以外のチャンネルにこの2つの設定の間の値が自動的に割り当てられます。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 205 Phaser エフェクト Phaserエフェクトは、元の信号と、若干位相がずれたそのコピー信号を合成しま す。つまり、2つの信号の振幅は、わずかな時間差で最大値と最小値に達すると いうことです。この 2 つの信号間の時間差は、独立した 2 つの LFO でモジュレー トされます。また、Phaserにはフィルタ回路と内蔵エンベロープフォロワーがあ り、入力信号での音量変化を追跡して動的なコントロール信号を生成します。こ の制御信号はスイープ範囲を変化させます。音響的には、フェイジングを使う と、周波数スペクトラムが周期的に変化し、浮遊感と揺らぎのあるサウンドを作 成できます。一般にギター用のエフェクトとして使われますが、さまざまな信号 に適しています。 Phaser の「Feedback」セクション • 「Filter」ボタン: フィルタセクションを有効にして、フィードバック信号を 処理します。 • 「LP」および「HP」ノブ/フィールド: フィルタセクションのローパスフィ ルタ(「LP」)およびハイパスフィルタ(「HP」)のカットオフ周波数を設定 します。 • 「Feedback」スライダ/フィールド: エフェクトの入力に戻されるエフェクト 信号の量を指定します。 Phaser の「Sweep」セクション • 「Ceiling」および「Floor」スライダ/フィールド: それぞれのスライダを操作 し、LFO モジュレーションで影響を受ける周波数の範囲を指定します。 • 「Order」スライダ/フィールド: 異なるフェイザーアルゴリズムを選択でき ます。段数が多ければ多いほど、利きが強くなります。 4、6、8、10、12 段の設定により、合計 5 種類のフェイザーアルゴリズムを自 由自在に扱うことができます。この5種類はいずれもアナログ回路をモデルと したもので、それぞれが特定の用途のために設計されています。 奇数(5、7、9、11)を設定することも可能ですが、厳密に言うと、この場合 は実際にはフェイジングが発生しません。ただし、奇数番号を設定すること で、より繊細なコムフィルタ効果を生み出せることがあります。 206 第 9 章 モジュレーションエフェクト • 「EnvFollow」スライダ/フィールド: 周波数範囲(「Ceiling」および「Floor」 のコントロールで設定)に入力信号レベルが及ぼす影響の度合いを指定しま す。 Phaser の「LFO」セクション • 「LFO 1 Rate」および「LFO 2 Rate」ノブ/フィールド: 各 LFO の速度を設定し ます。 • 「LFO Mix」スライダ/フィールド: 2 つの LFO の比率を指定します。 • 「EnvFollow」スライダ/フィールド: LFO1の速度に対する入力信号レベルの 影響の度合いを指定します。 • 「Phase」ノブ/フィールド: ステレオおよびサラウンドインスタンスでのみ 使用可能です。各チャンネルモジュレーション間の位相関係を制御します。 0°の場合、全チャンネルで同時にモジュレーションが極限値の状態になりま す。180°(または- 180°)という値は、チャンネルのモジュレーション位相間 の最大距離を示します。 • 「Distribution」ポップアップメニュー: サラウンドインスタンスでのみ使用可 能です。各チャンネル間の位相のオフセットがサラウンド空間でどのように分 布されるのかを定義します。「circular」、「left↔right」、「front↔rear」、 「random」、および「new random」から分布を選択できます。 メモ: 「random」オプションを使用する設定を読み込んだ場合、保存した位相 のオフセット値が呼び出されます。位相設定を再度ランダムにしたい場合、 「Distribution」ポップアップメニューで「new random」を選択します。 Phaser の「Output」セクション • 「OutputMix」スライダ/フィールド: ドライ信号とウェット信号のバランス を指定します。負の値を指定すると、エフェクトと直接信号(ドライ信号)の 位相が反転してミックスされます。 • 「Warmth」ボタン: ディストーション回路が有効になります。温かみのある オーバードライブ効果に適しています。 RingShifter RingShifterエフェクトは、リングモジュレータと周波数シフターエフェクトを組 み合わせたものです。どちらも 1970 年代に人気を博したエフェクトで、今また 再評価の波に乗りつつあります。 リングモジュレータは、内部オシレータまたはサイドチェーン信号のいずれかを 使用して、入力信号の振幅をモジュレートします。その結果として得られるエ フェクト信号の周波数スペクトラムは、元の2つの信号の周波数成分の和と差に 等しくなります。サウンドとしては、金属的な感じ、無機物をぶつけ合わせた音 などとよく表現されます。リングモジュレータは 1970 年代初期にジャズロック やフュージョンのレコーディングで頻繁に使われました。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 207 周波数シフターは、入力信号の周波数成分を一定量シフトさせることにより、元 の倍音の周波数関係を変化させます。その結果、優しくゆったりとしたフェイジ ング効果から風変わりでロボット的な音質まで、幅広いサウンドが得られます。 メモ: 周波数シフトとピッチシフトとを混同しないようにしてください。ピッチ シフトでは元の信号がトランスポーズするだけで、倍音周波数の関係は変化しま せん。 RingShifter インターフェイスを理解する RingShifter のインターフェイスは、次の 6 つのセクションで構成されています。 Mode buttons Delay parameters Output parameters Envelope follower LFO parameters parameters Oscillator parameters • モードボタン: RingShifterが周波数シフターまたはリングモジュレータのどち らで動作するのかを指定します。RingShifter のモードを設定するを参照してく ださい。 • オシレータ関連のパラメータ: 内部正弦波オシレータを設定するのに使用し ます。このオシレータは、2 つの周波数シフターモードとリングモジュレータ の OSC モードで、入力信号の振幅をモジュレートします。RingShifter のオシ レータを使うを参照してください。 • ディレイ関連のパラメータ: エフェクト信号にディレイをかけるのに使いま す。RingShifter のディレイを使うを参照してください。 • エンベロープフォロワー関連のパラメータ: オシレータの周波数と出力信号 は、エンベロープフォロワーでモジュレートできます。エンベロープフォロ ワーで RingShifter をモジュレートするを参照してください。 208 第 9 章 モジュレーションエフェクト • LFOのパラメータ: オシレータの周波数と出力信号は、LFOでモジュレートで きます。LFO で RingShifter をモジュレートするを参照してください。 • 出力のパラメータ: RingShifterの「Output」セクションには、フィードバック ループと、ステレオ幅およびドライ/ウェット信号の量を設定するためのコン トロールがあります。RingShifter の「Output」パラメータを制御するを参照し てください。 RingShifter のモードを設定する 4 つのモードボタンのいずれかを選択し、RingShifter が周波数シフターまたはリ ングモジュレータのどちらで動作するのかを指定します。 • 「Single」(周波数シフター)ボタン: 周波数シフターは、シフトした単一の エフェクト信号を生成します。「Oscillator」セクションの「Frequency」コント ロールで、信号がシフトアップ(正の値)するのかシフトダウン(負の値)す るのかを指定します。 • 「Dual」(周波数シフター)ボタン: 周波数シフト処理により、シフトされ たエフェクト信号が左右のステレオチャンネルで1つずつ生成されます。一方 はシフトアップ、もう一方はシフトダウンです。「Oscillator」セクションの 「Frequency」コントロールで、左右のチャンネルのシフト方向を指定します。 • 「OSC」(リングモジュレータ)ボタン: リングモジュレータは、内部正弦波 オシレータを使って入力信号をモジュレートします。 • 「Side Chain」(リングモジュレータ)ボタン: リングモジュレータは、サイ ドチェーン入力経由で割り当てられたオーディオ信号を使用して、入力信号の 振幅をモジュレートします。正弦波オシレータはオフになり、「Side Chain」 モードが有効な間は「Frequency」コントロールが使用できなくなります。 RingShifter のオシレータを使う 2 つの周波数シフターモードおよびリングモジュレータの「OSC」モードでは、 内部正弦波オシレータによって入力信号の振幅がモジュレートされます。 • 周波数シフターモードの場合、入力信号に加える周波数シフト(アップおよび /またはダウン)の量を「Frequency」パラメータで制御します。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 209 • リングモジュレータの「OSC」モードの場合は、得られる効果の周波数成分 (音質)を「Frequency」パラメータで制御します。微妙なトレモロから金属 的なサウンドまで、幅広い音質が得られます。 • 「Frequency」コントロール: 正弦オシレータの周波数を設定します。 • 「Lin」(線形表示)ボタンおよび「Exp」(指数関数による表示)ボタン: 「Frequency」コントロールには次の目盛表示があります: • 「Exp」(指数関数による表示): 「Exp」(指数関数による表示)モードで は0ポイント付近の刻みが非常に小さいため、ゆったりとしたフェイジング 効果やトレモロ効果をプログラミングするときに便利です。 • 「Lin」(線形表示): 「Lin」(線形表示)モードでは、目盛の刻みは均一 です。 • 「Env Follow」スライダ/フィールド: オシレータのモジュレーション深度に 対する入力信号レベルの影響の度合いを指定します。 • 「LFO」スライダ/フィールド: LFO によるオシレータのモジュレーションの 量を指定します。 210 第 9 章 モジュレーションエフェクト RingShifter のディレイを使う エフェクト信号は、オシレータの次にディレイを通過します。 • 「Time」ノブ/フィールド: ディレイ時間を設定します。自由なテンポで実 行する場合はヘルツ単位、「Sync」ボタンが有効な場合は音符の値(3 連符や 付点音符も含まれます)で設定します。 • 「Sync」ボタン: プロジェクトのテンポにディレイを同期させます。「Time」 ノブで音符の値を選択します。 • 「Level」ノブ/フィールド: リングモジュレータで処理された信号、または 周波数がシフトされた信号に対して加えるディレイのレベルを設定します。 「Level」値を 0 にすると、エフェクト信号が直接出力に渡されます(バイパ ス)。 エンベロープフォロワーで RingShifter をモジュレートする 「Oscillator」セクションの「Frequency」パラメータと「Output」セクションの 「Dry/Wet」パラメータは、内部のエンベロープフォロワーおよび LFO でモジュ レートできます(LFO で RingShifter をモジュレートするを参照)。オシレータの 「Frequency」では 0 Hz 付近までモジュレーションできるため、オシレーション の方向も変更できます。 エンベロープフォロワーは、入力信号の振幅(音量)を分析し、その結果に基づ いて、常に変化する制御信号を発信します。これは入力信号の動的音量エンベ ロープと呼ばれます。この制御信号はモジュレーションにも使用されます。 • 「Power」ボタン: エンベロープフォロワーのオンとオフを切り替え、以下の パラメータを有効にします。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 211 • 「Sens」(Sensitivity)スライダ/フィールド: 入力信号に対するエンベロープ フォロワーの感度を指定します。低めに設定すると、エンベロープフォロワー は最も強い信号のピークにだけ反応します。高めに設定すると、エンベロープ フォロワーは信号をより厳密に追跡しますが、動的な反応が弱くなることがあ ります。 • 「Attack」スライダ/フィールド: エンベロープフォロワーの応答時間を設定 します。 • 「Decay」スライダ/フィールド: エンベロープフォロワーが高い値から低い 値に戻るまでの時間を操作します。 LFO で RingShifter をモジュレートする 「Oscillator」セクションの「Frequency」パラメータと「Output」セクションの 「Dry/Wet」パラメータは、LFO とエンベロープフォロワーでモジュレートでき ます(エンベロープフォロワーでRingShifterをモジュレートするを参照)。オシ レータの「Frequency」では0Hz付近までモジュレーションできるため、オシレー ションの方向も変更できます。LFO は連続的で反復的な制御信号です。 • 「Power」ボタン: LFO のオンとオフを切り替え、以下のパラメータを有効に します。 • 「Symmetry」および「Smooth」スライダ/フィールド: これらのコントロー ルは波形ディスプレイの両側にあり、LFO の波形を変化させます。 • 波形ディスプレイ: LFO の波形表示には、波形についてのフィードバックが 視覚的に表示されます。 • 「Rate」ノブ/フィールド: LFO の速度(波形周期)を設定します。 • 「Sync」ボタン: 音符の値に基づいてLFOサイクル(LFOレート)がプロジェ クトのテンポに同期します。 212 第 9 章 モジュレーションエフェクト RingShifter の「Output」パラメータを制御する 「Output」パラメータを使うと、エフェクトと入力信号とのバランス設定や、 RingShifter の幅とフィードバックの設定ができます。 • 「Dry/Wet」ノブ/フィールド: ドライ入力信号とウェットエフェクト信号と の混合比率を設定します。 • 「Feedback」ノブ/フィールド: エフェクト入力に戻される信号の量を設定し ます。「Feedback」を使うと、RingShifter のサウンドに激しさが加わり、さま ざまな特殊効果に利用できます。ゆったりとしたオシレータの揺れと組み合わ せれば、濃厚なフェイジングサウンドを作ることができます。「Feedback」を 高い値に、ディレイ時間を短い値(10 ms 未満)に設定すると、コムフィルタ 効果が生じます。長いディレイ時間と高い値の「Feedback」を組み合わせる と、上昇と下降を繰り返す周波数シフトの効果を作成できます。 • 「Stereo Width」ノブ/フィールド: ステレオ空間でのエフェクト信号の幅を 指定します。「Stereo Width」は RingShifter のエフェクト信号のみに影響し、 ドライ入力信号には影響しません。 • 「EnvFollow」スライダ/フィールド: 入力信号レベルによる「Dry/Wet」パラ メータのモジュレーションの量を指定します。 • 「LFO」スライダ/フィールド: LFO による「Dry/Wet」パラメータのモジュ レーション深度を設定します。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 213 Rotor Cabinet エフェクト Rotor Cabinet エフェクトは、Hammond オルガンの回転式ラウドスピーカーキャ ビネットであるレスリーエフェクトをエミュレートします。デフレクタあり/な しの両タイプの回転式スピーカーキャビネットと、サウンドを取り込むマイクを シミュレートします。 基本的な回転式スピーカーパラメータ Rotor Cabinet には、以下の基本的な回転式スピーカーパラメータがあります: • ローターの速度ボタン: これらのボタンでローターの速度を次のように切り 替えることができます: • Chorale: ゆっくり動きます。 • Tremolo: 速く動きます。 • Brake: ローターが停止します。 • 「Cabinet Type」ポップアップメニュー: 以下のキャビネットモデルから選択 できます: • Wood: 筐体が木製の Leslie 122、147 モデルに似たサウンドを出すことがで きます。 • Proline: 筐体が開放型の Leslie 760 モデルに似たサウンドを出すことができ ます。 • Single: フルレンジのシングルローターを備えたレスリーサウンドをシミュ レートします。サウンドは Leslie 825 モデルに似ています。 • Split: 低音部ローターの信号はやや左側、高音部ローターの信号は右側によ り多く送られます。 • Wood & Horn IR: この設定では、木製の筐体を持つレスリーのインパルスレ スポンスを使用します。 214 第 9 章 モジュレーションエフェクト • Proline & Horn IR: この設定では、開放型の筐体を持つレスリーのインパルス レスポンスを使用します。 • Split & Horn IR: この設定ではレスリーのインパルスレスポンスを使用しま す。低音部ローターの信号はやや左側に送られ、高音部ローターの信号は右 側により多く送られます。 詳細な回転式スピーカーパラメータ Rotor Cabinet には、以下の詳細な回転式スピーカーパラメータがあります: • 「HornDeflector」ボタン: レスリーキャビネットの内部にはダブル・ホーン・ スピーカーがあり、そのアサガオ形の部分にはデフレクタが付いています。こ のデフレクタが、まさにレスリースピーカーならではの音を作っているので す。振幅モジュレーションを強め、周波数モジュレーションを弱めるために、 あえてデフレクタを取り外す場合があります。「HornDeflector」ボタンを使っ てデフレクタのオンとオフを切り替えることで、これをエミュレートすること ができます。 • 「MotorCtrl」ポップアップメニュー: 「Motor Control」ポップアップメニュー では、低音部ローターと高音部ローターにそれぞれ異なる速度を設定できま す: メモ: シングルキャビネットではローターが低音部と高音部に分かれていない ため、「Cabinet」メニューで「Single」キャビネットを選択した場合、「Motor Control」の設定は無効になります。 • Normal: ローター速度ボタンで指定した速度が、両方のローターで使用さ れます。 • Inv(inversemode): 「Tremolo」モードの場合、低音部コンパートメントは 高速で回転し、ホーンコンパートメントはゆっくりと回転します。「Chorale」 モードではその逆になります。「Brake」モードでは両方のローターが停止し ます。 • 910: 「910」モード(Memphis モード)の場合、バスドラムの回転速度は 遅いまま、ホーンコンパートメントの速度だけが切り替わります。低音部の サウンドを安定させ、高音部に動きを持たせたい場合に適しています。 • Sync: ホーンとバスドラムの加速/減速がほぼ同じになります。両者がロッ クされているかのように聞こえますが、この効果がはっきりと聞こえるのは 加速または減速している間だけです。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 215 • 「Rotor Fast Rate」スライダ: ローターの最大回転速度(Tremolo)を設定しま す。「Tremolo」の回転速度はヘルツ単位で表示されます。 • 「Acc/Dec Scale」スライダ: レスリーモーターは、キャビネット内のスピー カーホーンの回転速度を物理的に上げ下げするためのものですが、その加速度 には限界があります。「Acc/Dec」パラメータを使って、ローターの回転が決 められた速度に達するまでの時間、およびローターが減速するのにかかる時間 を指定します。 • スライダを左端に設定すると、一瞬で所定の回転速度に切り替わります。 • 右側に動かすほど、加速または減速を聞き取れるまでにかかる時間が長くな ります。 • デフォルト値(1)では、レスリーキャビネットのように動作します。 Rotor Cabinet のマイクパラメータ Rotor Cabinet には、以下のマイクパラメータがあります: • 「Mic Distance」スライダ: エミュレートされているスピーカーキャビネット から仮想マイクまでの距離(聴取位置)を指定します。値を高めにすると、暗 く、不鮮明なサウンドになります。音源から離れたところにマイクを置いた状 態に相当します。 • 「MicAngle」スライダ: マイクの角度(もちろんソフトウェア的にシミュレー トしたもの)を変えることにより、音の立体感を調整するためのものです。 • 角度が 0°だと、モノサウンドになります。 • 角度が 180°だと、位相が打ち消されます。 Scanner Vibrato エフェクト Scanner Vibrato は Hammond オルガンのスキャナビブラートをシミュレートしま す。スキャナビブラートは、いくつかのローパスフィルタで構成される、アナロ グ・ディレイ・ラインによる効果です。ディレイラインの信号を、回転スキャナ の付いた多極コンデンサスイッチでスキャンします。単純なLFOではシミュレー トできない、独特の音響効果が得られます。 216 第 9 章 モジュレーションエフェクト ビブラートとコーラスを 3 種類の中から選べます。エフェクトのステレオバー ジョンには、「Stereo Phase」、「Rate Right」という 2 つの追加パラメータがあ ります。これらのパラメータを使って、左右のチャンネルのモジュレーション速 度を別々に設定できます。 The stereo parameters of the mono version of the Scanner Vibrato are hidden behind a transparent cover. • 「Vibrato」ノブ: 3種類のビブラート設定(V1、V2、V3)または3種類のコー ラス設定(C1、C2、C3)から選択して使います。 • 各「Vibrato」設定では、強度の異なるディレイライン信号のみが聞こえま す。 • 3種類のコーラス設定(C1、C2、C3)では、原音とディレイラインから得ら れた信号がミックスされて出力されます。ビブラート信号と、ピッチが一定 の原音とを混ぜ合わせると、コーラス効果が得られるのです。このオルガン 式のコーラスサウンドは、「Logic Pro」の Chorus プラグインとは異なりま す。 • 「C0」に設定すると、コーラスもビブラートも無効になります。 • 「Chorus Int」ノブ: 選択したコーラスの強さを設定します。ビブラートが選 択されている場合、このパラメータによる影響はありません。 • 「Stereo Phase」ノブ: 0°〜 360°の間に値を設定すると、左右のチャンネルモ ジュレーションの位相関係が決定し、ステレオ効果の同期が有効になります。 ノブを「free」に選択した場合は、左右のチャンネルのモジュレーション速度 を別々に設定できます。 • 「RateLeft」ノブ: 「StereoPhase」が「free」に設定されている場合に、左チャ ンネルのモジュレーション速度を設定します。「Stereo Phase」が 0°〜 360°の 間の値に設定されている場合は、左右両方のチャンネルのモジュレーション速 度を設定します。「Rate Right」はこのモードでは機能しません。 • 「Rate Right」ノブ: 「Stereo Phase」が「free」に設定されている場合に、右 チャンネルのモジュレーション速度を設定します。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 217 Spreader Spreader は、信号のステレオスペクトラムを拡張します。Spreader エフェクト は、元の信号の周波数範囲を周期的にシフトし、信号の認識幅を変化させます。 また、チャンネル間のディレイを指定して(サンプル単位)、ステレオ入力信号 の幅やチャンネル間の距離感を広げることもできます。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: モジュレーションの量を指定します。 • 「Speed」ノブ/フィールド: 内蔵 LFO の周波数(つまりモジュレーション速 度)を指定します。 • 「ChannelDelay」スライダ/フィールド: サンプルのディレイ時間を指定しま す。 • 「Mix」スライダ/フィールド: エフェクト信号と入力信号とのバランスを設 定します。 218 第 9 章 モジュレーションエフェクト Tremolo エフェクト Tremolo エフェクトは、入力信号の振幅をモジュレートして周期的に音量を変化 させます。年代物のギター・コンボ・アンプによく付いているエフェクトです (誤ってビブラートと呼ばれることもあります)。グラフィックディスプレイに は、「Rate」を除き、すべてのパラメータが表示されます。 • 「Depth」スライダ/フィールド: モジュレーションの量を指定します。 • 波形ディスプレイ: 出力される波形を表示します。 • 「Rate」ノブ/フィールド: LFO の周波数を設定します。 • 「Symmetry」および「Smoothing」ノブ/フィールド: LFO の波形を変化させ るために使用します。 「Symmetry」を 50 %、「Smoothing」を 0 %に設定すると、LFO の波形は矩形 の凹凸になります。これは、最大音量と最小音量のタイミングが等しくなり、 2 つの状態が突然切り換わることを意味します。 • 「Phase」ノブ/フィールド: ステレオおよびサラウンドインスタンスでのみ 使用可能です。各チャンネルモジュレーション間の位相関係を制御します。0° の場合、全チャンネルで同時にモジュレーションの値に達します。180°(また は-180°)という値は、チャンネルのモジュレーション位相間の最大距離を示 します。 • 「Distribution」ポップアップメニュー: サラウンドインスタンスでのみ使用可 能です。各チャンネル間の位相のオフセットがサラウンド空間でどのように分 布されるのかを定義します。「circular」、「left↔right」、「front↔rear」、 「random」、および「new random」から分布を選択できます(位相をランダ ムにするには「new random」を選択します)。 第 9 章 モジュレーションエフェクト 219 • 「Offset」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): モジュレーション (サイクル)が左または右にシフトする量を設定し、トレモロの変化に強弱を 付けます。 220 第 9 章 モジュレーションエフェクト 「LogicPro」のピッチエフェクトを使うと、オーディオ信号のピッチをトランス ポーズまたは補正できます。また、サウンドをユニゾンにしたり、パートに厚み を持たせたり、ハーモニーを付けたりする場合にも利用できます。 この章では以下の内容について説明します: • Pitch Correction エフェクト (ページ 221) • Pitch Shifter II (ページ 226) • Vocal Transformer (ページ 227) Pitch Correction エフェクト Pitch Correctionエフェクトを使うと、入力されるオーディオ信号のピッチを補正 できます。たとえば、ボーカルトラックではイントネーションが不自然になって しまうことが頻繁に発生します。適度な補正を施す限り、Pitch Correctionによる 作為は最小限なので、かろうじて聞こえる程度でしかありません。 ピッチ補正機能は、オーディオの再生速度を速めたり遅くしたりすることで働 き、入力信号(歌のボーカル)は常に正しいノートピッチにマッチします。大き めのインターバルを補正すると、特殊な効果を生み出すことができます。ブレス ノイズなどのアーティキュレーションは、本来の演奏のまま保たれます。任意の スケールを基準ピッチ(技術的には、ピッチ・クオンタイズ・グリッドとして知 られています)として指定できます。不自然なイントネーションのノートは、こ のスケールに合わせて補正されます。 メモ: 合唱などのポリフォニックな録音データや、ノイズが目立つパーカッシブ な信号の場合、特定のピッチに補正することはできません。このような例もあり ますが、ドラム信号についてもこのプラグインを気軽に試してみてください。 221 ピッチエフェクト 10 Pitch Correction のパラメータ Pitch Correction エフェクトには以下のパラメータがあります。 • 「Use Global Tuning」ボタン: ピッチ補正プロセス用にプロジェクトのチュー ニング設定を有効にします。無効な場合は、「Ref. Pitch」フィールドで参照 チューニングを(セント単位で)自由に設定できます。Pitch Correction の参照 チューニングを設定するを参照してください。 • 「Normal」/「Low」ボタン: このパラメータでは、補正が必要なノートを探 したいピッチレンジを指定します。Pitch Correction エフェクトのクオンタイズ グリッドを定義するを参照してください。 • 「Ref.Pitch」フィールド: 任意の参照チューニングを、ルートに対してセント 単位で設定します。Pitch Correction の参照チューニングを設定するを参照して ください。 • 「Root」ポップアップメニュー/フィールド: このフィールドをクリックす ると、「Root」ポップアップメニューからスケールのルートノートを選択でき ます。Pitch Correction エフェクトのクオンタイズグリッドを定義するを参照し てください。 • 「Scale」ポップアップメニュー/フィールド: このフィールドをクリックす ると、「Scale」ポップアップメニューからさまざまなピッチ・クオンタイズ・ グリッドを選択できます。Pitch Correction エフェクトのクオンタイズグリッド を定義するを参照してください。 • キーボード: キーをクリックすると、ピッチ・クオンタイズ・グリッドから そのノートを除外できます。スケールからキーを完全に削除することで、それ 以外で最も近いピッチ(キー)にノート補正が行われます。Pitch Correction の 補正対象からノートを除外するを参照してください。 222 第 10 章 ピッチエフェクト • 「Byp」(Bypass)ボタン: 対応するノートを補正対象から外すために使用し ます。つまり、このピッチにマッチするノートがすべて補正されるわけではあ りません。これはユーザと内蔵のスケール・クオンタイズ・グリッドの両方に 適用されます。Pitch Correction の補正対象からノートを除外するを参照してく ださい。 • 「BypassAll」ボタン: 補正信号とオリジナル信号をすばやく比較したり、オー トメーションチェンジを行ったりする場合に便利です。 • 「ShowInput」/「ShowOutput」ボタン: 入力信号または出力信号のピッチが キーボードのノートの上にそれぞれ表示されます。 • 「CorrectionAmount」ディスプレイ: ピッチの変化の度合いが表示されます。 長時間における補正度合いの平均が赤いマーカーで示されます。録音時にボー カルのイントネーションについてシンガーと検討(およびイントネーションを 最適化)するときに、このディスプレイを利用できます。 • 「Response」スライダ/フィールド: ボイスが補正後の目標ピッチに到達する までの時間を指定します。歌には、ポルタメントなどのグライドテクニックが 用いられています。「Response」に非常に高速の値を選択すると、継ぎ目のな い滑らかなポルタメントが半音刻みのグリッサンドに変わりますが、イント ネーションは完璧になります。一方、「Response」の値が低すぎると、出力信 号のピッチが十分な速度で変化しなくなります。このパラメータの最適な値 は、元の演奏の歌唱スタイル、テンポ、ビブラート、および正確さにより異な ります。 • 「Detune」スライダ/フィールド: 設定した値で出力信号をデチューンしま す。 Pitch Correction エフェクトのクオンタイズグリッドを定義する Pitch Correction エフェクトの「Normal」/「Low」ボタンを使うと、補正が必要 なノートを探したいピッチレンジを指定できます。「Normal」がデフォルトレン ジで、ほとんどのオーディオ素材でうまく機能します。「Low」は、非常に低い 周波数(100Hz未満)が含まれ、ピッチ補正が正しく機能しなくなるようなオー ディオ素材についてのみ使用してください。このパラメータは、目的とするピッ チレンジ内のトラッキングを最適化することを目的としているもので、サウンド には影響しません。 「Scale」ポップアップメニューからさまざまなピッチ・クオンタイズ・グリッド を選択できます。手動で設定されたスケール(プラグインウインドウに表示され たキーボードを使用)は「User Scale」と呼ばれます。デフォルトの設定はクロ マチックスケールです。指定のスケールに使用されるインターバルに疑問がある 場合は、「Scale」メニューから選択して画面上のキーボードに表示される値を確 認してください。選択したスケール上の任意のノートを、対応するキーボードの キーをクリックすることにより変更できます。こうして行われた調整は、既存の ユーザースケール設定に上書きされます。 第 10 章 ピッチエフェクト 223 1 つのプロジェクトには 1 つのユーザースケールしかありません。ただし、複数 のユーザースケールを作成して、それらをPitchCorrectionプラグインの設定ファ イルとして保存することもできます。 ヒント: ドローンスケールでは 5 度音程をクオンタイズグリッドとして使用し、 シングルスケールの場合はノートを1つだけ定義します。これらのスケールはど ちらも、現実的な歌声にしようとしているものではないので、関心のあるエフェ クトを施した後で、これら両方を試してみてください。 「Root」ポップアップメニューを開いて、スケールのルートノートを選択しま す。(「Scale」ポップアップメニューでユーザースケールまたはクロマチックを 選択した場合、「Root」ポップアップメニューは機能しません。)短音階と長音 階、およびコードにちなんだスケールを自由にトランスポーズすることができま す。 Pitch Correction の補正対象からノートを除外する Pitch Correctionエフェクトの画面上のキーボードを使って、ピッチ・クオンタイ ズ・グリッドからノートを除外することができます。このエフェクトを最初に開 くと、クロマチックスケールのノートがすべて選択された状態になっています。 つまり、入力されるノートはすべて、クロマチックスケール内の最も近いノート に補正されます。ボーカルのイントネーションが不適切だと、ノートが正確に識 別されず、望まないピッチに補正される可能性があります。たとえば、Eの音を 歌ったつもりでも実際は D# の音に近かった場合を考えてみましょう。ソングに D# の音を入れたくない場合には、キーボードの D# のキーを無効にしてくださ い。元の音のピッチは D よりも E に近いので、その音は E に補正されます。 メモ: 設定は、すべてのオクターブ範囲について有効です。さまざまなオクター ブについて個別に設定する機能はありません。 緑のキー(黒鍵)の上と青のキー(白鍵)の下にある小さい「バイパス」ボタン を使うと、対応するノートを補正対象から外すことができます。これは、ブルー ノートに便利な機能です。ブルーノートはピッチ間をスライドするので、キーの メジャーとマイナーのステータスを識別するのが困難です。ご存知のように、C マイナーと C メジャーの主な違いは、E と B の音の代わりに Eb(E フラット)と Bb(Bフラット)の音が使われる点です。ブルースシンガーはこれらのノートの 間でピッチを揺らし、スケール間の不安定さや緊張感を演出しています。「バイ パス」ボタンを使うと、特定のキーを補正対象から除外して、元のまま残すこと ができます。 「BypassAll」ボタンを選択すると、入力信号は処理や補正がまったく行われない まま送られます。この機能は、オートメーションを用いてピッチのスポット補正 を行う場合、大変便利です。「Bypass All」は、あらゆる状況のバイパス設定を シームレスに有効または無効にできるよう最適化されています。 224 第 10 章 ピッチエフェクト ヒント: 多くの場合、コードに最も関係の深いノートだけを補正すると、最も良 い結果が得られます。たとえば、「Scale」ポップアップメニューから「sus 4」 を選択し、プロジェクトキーとマッチするようルートノートを設定すると、補正 対象がキースケールのルートノートと第4音、第5音に限定されます。ほかのす べてのノートでバイパスボタンを有効にすると、最も重要で注意を要するノート だけが補正され、ソングのそれ以外の音は元のまま残ります。 Pitch Correction の参照チューニングを設定する 「ファイル」>「プロジェクト設定」>「チューニング」と選択すると、すべて のソフトウェア音源について参照チューニングを定義することができます。 「Pitch Correction」ウインドウの「UseGlobal Tuning」がオンになっている場合、 ホストアプリケーションのチューニング設定がピッチ補正プロセスに使用されま す。このパラメータをオフにすると、「Ref.Pitch」フィールドから参照チューニ ングを(ルートキーまたはノートに)自由に設定できます。 たとえば、ボーカルラインのイントネーションが、ソング全体で若干シャープま たはフラットになっている場合がよくあります。「Ref.Pitch」パラメータを使う と、ピッチ検出プロセスの入力時にこの問題に対処することができます。ピッチ の一定の「ずれ」を反映するよう、「Ref.Pitch」をセント値で設定します。これ により、ピッチ補正がより正確に行われるようになります。 メモ: 同じ合唱の中でそれぞれの声のノートを個別に補正する際には、ソフト ウェア音源チューニングとは異なるチューニングを使用すると効果的な場合があ ります。すべての声を個別に補正した結果、完全に同じピッチになると、合唱の 効果が一部失われてしまいます。これを防ぐには、ピッチ補正を個別にチューニ ング(デチューニング)してください。 Pitch Correction エフェクトをオートメーション化する Pitch Correctionエフェクトは完全にオートメーション化することができます。つ まり、「Scale」および「Root」のパラメータをプロジェクトのハーモニーに合わ せるようなオートメーション化が可能です。元のイントネーションの正確さに よっては、該当するキー(「Scale」パラメータ)を設定するだけで十分な場合も あります。イントネーションの正確さが低いほど、「Scale」と「Root」のパラ メータを大幅に変更する必要があります。 第 10 章 ピッチエフェクト 225 Pitch Shifter II Pitch Shifter IIを使うと、ピッチをシフトした信号とオリジナルの信号を簡単に組 み合わせることができます。 • 「Semi Tones」スライダ/フィールド: ピッチシフトの値を半音単位で設定し ます。 • 「Cents」スライダ/フィールド: ピッチシフトの値をセント単位(半音の 1/100)でデチューンします。 • 「Drums」/「Speech」/「Vocals」ボタン: 一般的なオーディオ素材向けの 3 種類のアルゴリズムから選択できます: • 「Drums」: 元の信号のグルーブ感(リズム感)が保たれます。 • 「Speech」: 信号のリズムと響きのバランスを調整します。話し声やラップ ミュージックなど、複雑な信号に向いています。また、リズムギターのよう な「混成」信号にも適しています。 • 「Vocals」: イントネーションが変更されずに残るので、ストリングパッド など、和声的または旋律的な音楽に向いています。 • 「Mix」スライダ/フィールド: エフェクト信号と元の信号とのバランスを設 定します。 • 「Timing」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): タイミングの生成 方法を指定します。選択したアルゴリズムにタイミングを合わせるか (「Preset」)、入力信号を分析するか(「Auto」)、下記の「Delay」、 「Crossfade」、「Stereo Link」パラメータの設定を使用するか(「Manual」) のいずれかを指定します。 メモ: 下記の3つのパラメータは、「Timing」ポップアップメニューで「Manual」 が選択されている場合にのみ有効です。 • 「Delay」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): 入力信号に適用す るディレイの量を設定します。入力信号の周波数が低ければ低いほど、信号を 効果的にピッチシフトするために、設定するディレイ時間の値を高く(長く) します。 226 第 10 章 ピッチエフェクト • 「Crossfade」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): 入力信号の分析 に使う範囲を設定します(元の信号のパーセンテージで表示)。 • 「StereoLink」ラジオボタン(拡張パラメータ領域): 「Inv.」を選択してステ レオチャンネルの信号を反転させると、右チャンネルの信号が左、左チャンネ ルの信号が右から出るようにすることができます。「Normal」を選択すると信 号は変更されません。 ピッチシフトの際には以下のステップを実行します。 1 「Semi Tones」スライダでトランスポーズ(ピッチシフト)の度合いを設定しま す。 2 「Cents」スライダでデチューニングの量を設定します。 3 「Drums」、「Speech」、または「Vocals」ボタンをクリックして、処理する素 材に最適なアルゴリズムを選択します。 上記の分類にあてはまらない素材を処理する場合は、各アルゴリズムを順番に (「Speech」から)試してその結果を比較し、処理する素材に最も適したアルゴ リズムを使用するようにします。 ヒント: 異なる設定を試聴/比較する際は、一時的に「Mix」パラメータを100% に設定するとよいでしょう。「Pitch Shifter II」の効果を聞き取りやすくなりま す。 Vocal Transformer Vocal Transformer を使えば、ボーカルラインのピッチを変更することから、旋律 の範囲を広げたり狭めたりすることはもちろん、音高を1つだけにすることや、 旋律のピッチを逆にすることさえ可能です。メロディーのピッチをどのように変 えても、信号の構成要素(フォルマント)は変わりません。 フォルマントだけをシフトすることができるので、ピッチは変えずにボーカルト ラックをミッキーマウスのような声に変えたりすることができます。フォルマン トとは、所定の周波数範囲だけ音量が特性的に強調されている部分のことです。 これは固定的なもので、ピッチと共に変化することはありません。フォルマント は、その人固有の声質を決める音響要素です。 Vocal Transformer は、強烈な音声変調効果を生み出すのに最適です。モノフォ ニック信号(モノフォニック音源トラックを含む)について使用すると最高の結 果が得られます。ポリフォニックなボイス(合唱を 1 トラックに収めた場合な ど)など、コードを伴うトラックには使用できません。 第 10 章 ピッチエフェクト 227 Vocal Transformer のパラメータ Vocal Transformer には以下のパラメータがあります。 • 「Pitch」ノブ/フィールド: 入力信号に適用するトランスポーズの度合いを 定義します。Vocal Transformerの「Pitch」と「Formant」のパラメータを設定す るを参照してください。 • 「Robotize」ボタン: 「Robotize」モードを有効にします。「Robotize」モード は旋律を広げたり、狭めたり、逆にしたりするために使用されます。Vocal Transformer の「Robotize」モードを使うを参照してください。 • 「Pitch Base」スライダ/フィールド(「Robotize」モード時のみ有効): 「Tracking」パラメータ(下記を参照)が基準とするノートのトランスポーズ に使用します。Vocal Transformerの「Robotize」モードを使うを参照してくださ い。 • 「Tracking」スライダ/フィールド/ボタン(「Robotize」モード時のみ有効): 「Robotize」モードにおける旋律の変化を制御します。Vocal Transformer の 「Robotize」モードを使うを参照してください。 • 「Mix」スライダ/フィールド: 元の信号(ドライ信号)とエフェクト信号の レベル比を定義します。 • 「Formant」ノブ/フィールド: 入力信号のフォルマントをシフトします。 Vocal Transformerの「Pitch」と「Formant」のパラメータを設定するを参照して ください。 • 「Glide」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): ボーカルトランス フォーメーションに要する時間を定義し、ピッチ値の設定に応じて徐々に変化 するようにします。 • 「GrainSize」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): Vocal Transformer エフェクトのアルゴリズムはグラニュラ合成に基づいています。「GrainSize」 パラメータでは、グレインのサイズをきめ細かく設定できるため、処理プロセ スを精密に行うことができます。いろいろ試して、最適な設定を探してくださ い。まず、「Auto」を試してみるとよいでしょう。 228 第 10 章 ピッチエフェクト • 「Formants」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): すべてのフォル マントを処理するか(「Process always」設定)、またはボイス部分のみを処理 するか(「Keep unvoiced formants」設定)を指定します。「Keep Unvoiced Formants」オプションを選択すると、ボーカルの歯擦音はそのまま残ります。 信号によっては、この設定の方が自然なトランスフォーメーションエフェクト になります。 • 「Detune」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): 設定した値で入 力信号をデチューンします。このパラメータは、自動化すると特に便利です。 Vocal Transformer の「Pitch」と「Formant」のパラメータを設定す る Vocal Transformer の「Pitch」パラメータを使うと、信号のピッチを上下にトラン スポーズできます。調整は半音刻みで行われます。入力ピッチは「Pitch Base」 フィールド下の縦線で示されます。5 度上(Pitch =+ 7)、4 度下(Pitch =- 5)、または 1 オクターブ上下(Pitch =±12)のトランスポーズが、和声的には 最も有用です。 「Pitch」パラメータを変更しても、フォルマントは変わりません。フォルマント とは、所定の周波数範囲だけ音量が特性的に強調されている部分のことです。こ れは固定的なもので、ピッチと共に変化することはありません。フォルマント は、その人固有の声質を決める音響要素です。 「Pitch」パラメータは音声の特性ではなくピッチを変更するために使用されま す。女声のソプラノについて負のピッチ値を設定すれば、そのシンガーの声の特 性を変えずにアルトにすることができます。 「Formant」パラメータは、ピッチをまったく変えないか、個別に変更しながら フォルマントをシフトします。このパラメータに正の値を設定すると、ミッキー マウスのような歌声になります。このパラメータの値を小さくすると、「スター・ ウォーズ」のダースベイダーを思わせるサウンドエフェクトを実現できます。 ヒント: 「Pitch」を 0、「Mix」を 50 %、「Formant」を+ 1(「Robotize」はオ フ)にすると、元の歌い手の横に少し小さな歌い手が並んでいる状態を作り出す ことができます。2人の歌い手はほぼ同じ声で合唱します。声のダブリングは非 常に効果的で、「Mix」パラメータで簡単にレベルを調整することができます。 第 10 章 ピッチエフェクト 229 Vocal Transformer の「Robotize」モードを使う 「Robotize」を有効にすると、旋律を広げたり狭めたりすることができます。 「Tracking」パラメータを使うと、元の音からの離れ具合を調整できます。 「Tracking」スライダおよびフィールドには 4 つのボタンがあり、以下の最も便 利な値に即座にスライダを設定できます: • -1(スライダを- 100 %に設定): すべての音程が逆になります。 • 0(スライダを 0 %に設定): ボーカルトラックのすべての音が同じピッチで 歌われるという面白い結果が得られます。この値を小さくすると、歌われてい る旋律が話し声のようになります。 • 1(スライダを 100 %に設定): 旋律の範囲が維持されます。値が大きくなる と旋律が広がり、値が小さくなると旋律が狭まります。 • 2(スライダを 200 %に設定): 音程が倍になります。 「Pitch Base」パラメータは、「Tracking」パラメータが基準とするノートのトラ ンスポーズに使います。たとえば「Tracking」を0%にすると、選択した基準ピッ チの値にノート(話し声)のピッチがトランスポーズされます。 230 第 10 章 ピッチエフェクト リバーブエフェクトを使うと、部屋、コンサートホール、洞窟、広場などの音響 環境の音をシミュレートすることができます。 音波はあらゆる空間内の壁や天井、窓などの面や物体に当たって反射を繰り返し ながら減衰していき、やがて聞こえなくなります。反射による音声波形は反射パ ターン、より一般的な名前で言えば残響(またはリバーブ)になります。 残響信号の開始部分は、リバーブテイルが拡散し増大していく前にはっきりと聞 き分けることができる、いくつかの不連続な反射音から構成されています。この 初期反射音は、人間の耳が部屋の大きさや形状といった空間の特徴を聞き分ける ために不可欠です。 Signal Discrete reflections Diffuse reverb tail Reflection pattern/reverberation Time この章では以下の内容について説明します: • プレート、デジタル・リバーブ・エフェクト、およびコンボリューションリ バーブ (ページ 232) • AVerb (ページ 232) • EnVerb (ページ 233) • GoldVerb (ページ 236) • PlatinumVerb (ページ 239) • SilverVerb (ページ 243) 231 リバーブエフェクト 11 プレート、デジタル・リバーブ・エフェクト、およびコ ンボリューションリバーブ 音楽制作にリバーブが使われ始めた頃は、実際に硬い壁面を持つ専用の部屋(エ コールームと呼びます)が使用されていました。信号にエコーをかけるための部 屋です。楽器やマイクの出力信号にリバーブをかけるには、金属プレートやスプ リングなどの機械的な装置も使用されていました。 デジタル録音では、波長や強度の異なる多数のディレイで構成されたデジタル・ リバーブ・エフェクトが導入されました。原音信号と初期反射音との時間差は、 一般にプリディレイと呼ばれるパラメータによって調節します。特定の時間あた りの平均反響数は、密度パラメータで指定します。密度の規則性または不規則性 は、拡散パラメータで制御します。 今日のコンピュータでは、コンボリューションリバーブを使用した、実際の空間 の反響特性のサンプリングも可能になりました。この空間特性のサンプリング データは、「インパルスレスポンス」(IR)と呼ばれています。 コンボリューションリバーブでは、空間の反響特性の IR データを用いて音声信 号の畳み込み(結合)を行います。Space Designer コンボリューションリバーブ を参照してください。 AVerb AVerb は、単一のパラメータ(Density/Time)によってエフェクトの初期反射音 と拡散したリバーブテイルの両方を制御する、シンプルなリバーブエフェクトで す。一風変わった空間効果やエコー効果を手軽に作ることができるツールです。 ただし、実際の音響環境をシミュレートするのには最適とは言えません。 • 「Predelay」スライダ/フィールド: 原音信号とリバーブ信号の初期反射音と の時間間隔を指定します。 • 「Reflectivity」ノブ/フィールド: 仮想の壁、天井、および床の反響特性を定 義します。つまり、壁の硬さや材質を定義します。ガラス、石材、木材、カー ペットなどの素材は、リバーブのトーンに大きく影響します。 232 第 11 章 リバーブエフェクト • 「Room Size」ノブ/フィールド: シミュレートする部屋の大きさを指定しま す。 • 「Density/Time」スライダ/フィールド: リバーブの密度と継続時間を指定し ます。 値を小さくすると、初期反射音のかたまりがはっきりとに区別できるようにな り、エコーに近い効果になります。値を大きくすると、よりリバーブに近い効 果になります。 • 「Mix」スライダ/フィールド: エフェクト(ウェット)信号と直接(ドラ イ)信号とのバランスを指定します。 EnVerb EnVerb は、独自の機能を持つ、汎用性の高いリバーブエフェクトです。拡散し たリバーブテイルのエンベロープ(形状)を自由に調整できます。 Time parameters Mix Sound parameters インターフェイスは、以下の 3 つの領域に分けることができます: • タイムパラメータ: このパラメータでは、原音信号のディレイタイムとリバー ブテイルを指定し、時間の経過に合わせてリバーブテイルを変化させることが できます。グラフィックディスプレイは、時間の経過に伴うリバーブのレベル (エンベロープ)を視覚的に表します。EnVerbのタイムパラメータを参照して ください。 • サウンドパラメータ: リバーブ信号のサウンドの形状を指定できます。また、 「Crossover」パラメータを使えば、入力信号を2つの帯域に分割することがで き、低周波数帯域のレベルを独立して設定できます。EnVerb のサウンドパラ メータを参照してください。 • 「Mix」パラメータ: エフェクト(ウェット)信号と直接(ドライ)信号との バランスを指定します。 第 11 章 リバーブエフェクト 233 EnVerb のタイムパラメータ EnVerb には以下のタイムパラメータがあります: • 「Dry Signal Delay」スライダ/フィールド: 原音信号のディレイを指定しま す。ドライ信号は、ミックスパラメータを 100%以外の値にしたときに聞き取 ることができます。 • 「Predelay」ノブ/フィールド: 原音信号と、リバーブのアタックの開始位置 (初期反射音の開始位置)との時間間隔を設定します。 • 「Attack」ノブ/フィールド: リバーブがピークレベルに到達するまでの時間 を定義します。 • 「Decay」ノブ/フィールド: リバーブのレベルがピークからサスティンレベ ルへ降下するまでの時間を定義します。 • 「Sustain」ノブ/フィールド: サスティンで維持されるリバーブのレベルを 設定します。値は、リバーブ信号の最大音量に対する割合(パーセント)で示 されます。 • 「Hold」ノブ/フィールド: サスティンの継続時間を設定します。 • 「Release」ノブ/フィールド: サスティンが終わってから、リバーブが完全 にフェードアウトするまでの時間を設定します。 234 第 11 章 リバーブエフェクト EnVerb のサウンドパラメータ EnVerb には以下のトーン・コントロール・パラメータがあります: • 「Density」スライダ/フィールド: リバーブの密度を設定します。 • 「Spread」スライダ/フィールド: リバーブのステレオイメージを制御しま す。0%では、モノラルのリバーブが生成されます。200%では、ステレオベー スが人工的に拡張されます。 • 「HighCut」スライダ/フィールド: 設定された値よりも高い周波数がリバー ブテイルからフィルタ除去されます。 • 「Crossover」スライダ/フィールド: 入力信号を 2 つの周波数帯域に分けて 別々に処理するために、その境界として使う周波数を指定します。 • 「Low Freq Level」スライダ/フィールド: クロスオーバー周波数よりも低い (リバーブ信号の)周波数の相対的なレベルを指定します。多くの場合、この パラメータを負の値にすると、良い結果が得られます。 第 11 章 リバーブエフェクト 235 GoldVerb GoldVerbでは、初期反射音と拡散したリバーブテイルの両方を独立して編集でき るため、実際の部屋の正確なエミュレーションをより簡単に行うことができま す。 Early Reflections parameters Balance ER/Reverb slider Reverb parameters Mix slider and field インターフェイスは、以下の 4 つのパラメータ領域に分けられています: • 「Early Reflections」パラメータ: 原音信号について、実際の部屋の壁、天井、 床で反射されたときの初期反射音をエミュレートするために使います。GoldVerb の「Early Reflections」パラメータを参照してください。 • 「Reverb」パラメータ: 拡散残響を制御します。GoldVerb の「Reverb」パラ メータを参照してください。 • 「Balance ER/Reverb」スライダ: 初期反射音とリバーブ信号とのバランスを制 御します。スライダがどちらかの極値にある場合、他方の信号は聞こえませ ん。 • 「Mix」スライダ/フィールド: エフェクト(ウェット)信号と直接(ドラ イ)信号とのバランスを指定します。 236 第 11 章 リバーブエフェクト GoldVerb の「Early Reflections」パラメータ GoldVerb には、以下の「Early Reflections」パラメータがあります: • 「Predelay」スライダ/フィールド: 原音信号の開始から初期反射音が到着す るまでの時間間隔を指定します。「Predelay」の設定時間を短くしすぎるとサ ウンドに影響し、信号の位置を特定しにくくなります。「Predelay」の設定時 間を長くしすぎると不自然なエコーに聞こえ、原音信号と初期反射音とが離れ てしまい、間が空いた音に聞こえることもあります。 最適な「Predelay」の設定は、入力信号の種類(より正確に言えばエンベロー プ)によって異なります。パーカッシブな信号であれば、通常は「Pre-Dly」の 長さを信号よりも短くし、アタックが徐々にフェードインするように設定する 必要があります。最も良い設定方法は、音響エコーなどの望ましくない現象が 出ない範囲で、「Predelay」をできるだけ長くすることです。この状態に達し たら「Predelay」の設定を若干短くします。 • 「RoomShape」スライダ/フィールド: 部屋の幾何学的な形状を定義します。 3 〜 7 の数値は、部屋の角の数を表します。グラフィックディスプレイには、 この設定が視覚的に表示されます。 • 「Room Size」スライダ/フィールド: 部屋の大きさを指定します。数値は部 屋の壁の長さ(2 つの角の間の距離)を表します。 • 「StereoBase」スライダ/フィールド: シミュレートする部屋で信号をキャプ チャするために使用する 2 つの仮想マイクの間の距離を定義します。 メモ: 一般に、マイク間の距離を人の両耳の間の距離よりもやや長くすると、 最もリアルで良い結果が得られます。このパラメータは、エフェクトのステレ オインスタンスのみで使用可能になります。 第 11 章 リバーブエフェクト 237 GoldVerb の「Reverb」パラメータ GoldVerb には、以下の「Reverb」パラメータがあります: • 「InitialDelay」スライダ/フィールド: 原音信号と拡散したリバーブテイルと の時間間隔を設定します。自然で違和感のないリバーブを作るには、初期反射 音とリバーブテイルの間をできるだけ切れ目なくスムーズにする必要がありま す。初期反射音とリバーブテイルの切れ目が目立たなくなるように、「Initial Delay」パラメータを設定してください。 • 「Spread」スライダ/フィールド: リバーブのステレオイメージを制御しま す。0%では、モノラルのリバーブが生成されます。200%では、ステレオベー スが人工的に拡張されます。 • 「HighCut」ノブ/フィールド: 設定された値よりも高い周波数がリバーブ信 号からフィルタ除去されます。でこぼこした面や吸収性の面(壁紙、ウッドパ ネル、カーペットなど)は、高い周波数よりも低い周波数を反射する傾向があ ります。「High Cut」フィルタは、この効果を模倣します。「High Cut」フィ ルタを最大値まで緩めて通過帯域を広く設定すると、石材やガラスで反響した ようなリバーブになります。 • 「Density」ノブ/フィールド: 拡散したリバーブテイルの密度を制御します。 通常、信号はできるだけ高い密度に設定されます。ただし、「Density」の値を 高く設定すると、まれにサウンドに影響が出る場合があります。この場合、 「Density」ノブの値を下げれば解決できます。逆に、「Density」の値を低くし すぎると、リバーブテイルが荒々しく聞こえます。 • 「Reverb Time」ノブ/フィールド: リバーブレベルが 60 dB 降下するまでの時 間です。たいていの場合、RT60 と表記されます。一般的な部屋では、リバー ブ時間は 1 〜 3 秒と短めになります。リバーブ時間は、カーペットやカーテン などの吸収性の面や、ソファ、肘掛け椅子、戸棚、机などの音を通さない家具 によって減少します。広くて障害物がないホールや教会でのリバーブ時間は 8 秒にもなり、洞窟や大聖堂のような場所はこの値をさらに上回ります。 • 「Diffusion」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): リバーブテイル の拡散を設定します。「Diffusion」の値を高くすると密度が均一化され、拡散 したリバーブ信号全体でレベル、時間およびパノラマ位置がほとんど変動しな くなります。「Diffusion」の値を低くすると、反響の密度が、不均一に、粗く なります。これはステレオスペクトラムにも影響します。「Density」と同様、 信号に最適なバランスを見つけてください。 238 第 11 章 リバーブエフェクト PlatinumVerb PlatinumVerbでは、初期反射音と拡散したリバーブテイルの両方を独立して編集 できるため、実際の部屋の正確なエミュレーションをより簡単に行うことができ ます。デュアルバンドの「Reverb」セクションでは、入力信号が2つの帯域に分 割され、それぞれの帯域が個別に処理されます(さらに編集も可能です)。 Early Reflections parameters Balance ER/Reverb slider Output parameters Reverb parameters インターフェイスは、以下の 4 つのパラメータ領域に分けられています: • 「Early Reflections」パラメータ: 原音信号について、実際の部屋の壁、天井、 床で反射されたときの初期反射音をエミュレートします。PlatinumVerbの「Early Reflections」パラメータを参照してください。 • 「Reverb」パラメータ: 拡散残響を制御します。PlatinumVerb の「Reverb」パ ラメータを参照してください。 • 「Output」パラメータ: エフェクトがかかった(ウェット)信号と直接の(ド ライ)信号とのバランスを指定します。PlatinumVerb の「Output」パラメータ を参照してください。 • 「Balance ER/Reverb」スライダ: 「Early Reflections」セクションと「Reverb」セ クションとのバランスを制御します。スライダを末端位置に設定すると、使用 しないほうのセクションが無効になります。 第 11 章 リバーブエフェクト 239 PlatinumVerb の「Early Reflections」パラメータ PlatinumVerb には、以下の「Early Reflections」パラメータがあります: • 「Predelay」スライダ/フィールド: 原音信号の開始から初期反射音が到着す るまでの時間間隔を指定します。「Predelay」の設定時間を短くしすぎるとサ ウンドに影響し、信号の位置を特定しにくくなります。「Predelay」の設定時 間を長くしすぎると不自然なエコーに聞こえ、原音信号と初期反射音とが離れ てしまい、間が空いた音に聞こえることもあります。 最適な「Predelay」の設定は、入力信号の種類(より正確に言えばエンベロー プ)によって異なります。パーカッシブな信号であれば、通常は「Pre-Dly」の 長さを信号よりも短くし、アタックが徐々にフェードインするように設定する 必要があります。最も良い設定方法は、音響エコーなどの望ましくない現象が 出ない範囲で、「Predelay」をできるだけ長くすることです。この状態に達し たら「Predelay」の設定を若干短くします。 • 「RoomShape」スライダ/フィールド: 部屋の幾何学的な形状を定義します。 3 〜 7 の数値は、部屋の角の数を表します。グラフィックディスプレイには、 この設定が視覚的に表示されます。 • 「Room Size」スライダ/フィールド: 部屋の大きさを指定します。数値は部 屋の壁の長さ(2 つの角の間の距離)を表します。 • 「StereoBase」スライダ/フィールド: シミュレートする部屋で信号をキャプ チャするために使用する 2 つの仮想マイクの間の距離を定義します。 メモ: 一般に、マイク間の距離を人の両耳の間の距離よりもやや長くすると、 最もリアルで良い結果が得られます。このパラメータは、エフェクトのステレ オインスタンスのみで使用可能になります。 • 「ERScale」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): 時間軸に沿って、 初期反射音を収縮/拡張させます。「Room Shape」、「Room Size」、および 「Stereo Base」パラメータに同時に影響します。 240 第 11 章 リバーブエフェクト PlatinumVerb の「Reverb」パラメータ PlatinumVerb には、以下の「Reverb」パラメータがあります: • 「InitialDelay」スライダ/フィールド: 原音信号と拡散したリバーブテイルと の時間間隔を設定します。 • 「Spread」スライダ/フィールド: リバーブのステレオイメージを制御しま す。0%では、モノラルのリバーブが生成されます。200%では、ステレオベー スが人工的に拡張されます。 • 「Crossover」スライダ/フィールド: 入力信号を 2 つの周波数帯域に分けて 別々に処理するするために、その境界となる周波数を指定します。 • 「Low Ratio」スライダ/フィールド: 低周波数帯域と高周波数帯域の相対的 なリバーブ時間を指定します。これはパーセンテージで表されます。100 %の 場合、2 つの帯域のリバーブ時間は同一になります。100 %よりも低い値の場 合、クロスオーバー周波数よりも低い周波数のリバーブ時間が短くなります。 100 %を超える値の場合、低周波のリバーブ時間が長くなります。 • 「LowFreqLevel」スライダ/フィールド: 低周波数のリバーブ信号のレベルを 設定します。0dBの場合は、高低2つの帯域の音量が同じになります。大部分 のミックスでは、低周波数のリバーブ信号のレベルを低めにする必要がありま す。これにより、入力信号のレベルをブーストして、パンチの効いた音にする ことができます。また、低音をマスクする現象を相殺するためにも使用できま す。 • 「HighCut」スライダ/フィールド: 設定された値よりも高い周波数がリバー ブ信号からフィルタ除去されます。でこぼこした面や吸収性の面(壁紙、ウッ ドパネル、カーペットなど)は、高い周波数よりも低い周波数を反射する傾向 があります。「High Cut」フィルタは、この効果を再現します。「High Cut」 フィルタを最大値まで緩めて通過帯域を広く設定すると、石材やガラスで反響 したようなリバーブになります。 第 11 章 リバーブエフェクト 241 • 「Density」スライダ/フィールド: 拡散したリバーブテイルの密度を制御し ます。通常、信号はできるだけ高い密度に設定されます。ただし、「Density」 の値を高く設定すると、まれにサウンドに影響が出る場合があります。この場 合、「Density」スライダの値を下げれば解決できます。逆に、「Density」の値 を低くしすぎると、リバーブテイルが荒々しく聞こえます。 • 「Diffusion」スライダ/フィールド: リバーブテイルの拡散を設定します。 「Diffusion」の値を高くすると密度が均一化され、拡散したリバーブ信号全体 でレベル、時間およびパノラマ位置がほとんど変動しなくなります。 「Diffusion」の値を低くすると、反響の密度が、不均一に、粗くなります。こ れはステレオスペクトラムにも影響します。「Density」と同様、信号に最適な バランスを見つけてください。 • 「ReverbTime」スライダ/フィールド: 高周波数帯域のリバーブ時間を指定し ます。一般的な部屋では、リバーブ時間は 1 〜 3 秒と短めになります。リバー ブ時間は、カーペットやカーテンなどの吸収性の面や、ソファ、肘掛け椅子、 戸棚、机などの音を通さない家具によって減少します。広くて障害物がない ホールや教会でのリバーブ時間は8秒にもなり、洞窟や大聖堂のような場所は この値をさらに上回ります。 PlatinumVerb の「Output」パラメータ PlatinumVerb には、以下の「Output」パラメータがあります: • 「Dry」スライダ/フィールド: 原音信号の量を設定します。 • 「Wet」スライダ/フィールド: エフェクト信号の量を設定します。 242 第 11 章 リバーブエフェクト SilverVerb SilverVerbはAVerbと似ていますが、リバーブが適用された信号を調整できるLFO が加えられています。また、ハイカットフィルタおよびローカットフィルタが含 まれており、リバーブ信号から特定の周波数をフィルタリングすることができま す。高周波音は、通常はいくぶん不快に聞こえ、話し声を不明瞭にし、原音信号 の倍音を消してしまいます。低音が強く、長いリバーブテイルは、一般に不鮮明 な印象を与えます。 • 「Predelay」スライダ/フィールド: 原音信号とリバーブ信号との時間間隔を 指定します。 • 「Reflectivity」スライダ/フィールド: 仮想の壁、天井、および床の反響特性 を定義します。 • 「Room Size」スライダ/フィールド: シミュレートする部屋の大きさを指定 します。 • 「Density/Time」スライダ/フィールド: リバーブの密度と継続時間を指定し ます。 • 「Low Cut」スライダ/フィールド: 設定された値よりも低い周波数がリバー ブ信号からフィルタ除去されます。このフィルタは、リバーブ信号のトーンの みに影響し、元の信号には影響しません。 • 「HighCut」スライダ/フィールド: 設定された値よりも高い周波数がリバー ブ信号からフィルタ除去されます。このフィルタは、リバーブ信号のトーンの みに影響し、元の信号には影響しません。 • 「Mod Rate」(Modulation Rate)ノブ/フィールド: LFO の周波数(速度)を 指定します。 • 「Mod Phase」(Modulation Phase)ノブ/フィールド: リバーブ信号の左右の チャンネルのモジュレーションの位相を指定します。 • 0°では、左右のチャンネルが同時にモジュレーションの最大または最小値に なります。 第 11 章 リバーブエフェクト 243 • 180°では、左右のチャンネルが同時にそれぞれ逆の極値(左チャンネルが最 小、右チャンネルが最大、またはこの逆)になります。 • 「Mod Intensity」(Modulation Intensity)スライダ/フィールド: モジュレー ションの量を設定します。値が0の場合は、ディレイのモジュレーションがオ フになります。 • 「Mix」スライダ/フィールド: エフェクト(ウェット)信号と元の(ドラ イ)信号とのバランスを指定します。 244 第 11 章 リバーブエフェクト Space Designer は、コンボリューション(畳み込み演算)リバーブエフェクトで す。これを使うと、現実世界を限りなくリアルに再現した音響環境にオーディオ 信号を配置することができます。 Space Designer は、オーディオ信号をインパルスレスポンス(以下、「IR」と呼 びます)リバーブサンプルにコンボリューションする(畳み込む)方法によって リバーブを生成します。インパルスレスポンスとは、部屋のリバーブ特性を記録 したデータのことです。より正確には、特定の部屋で発した音の最初の信号(ス パイク)に続いて生じた反響音をすべて記録したデータです。実際の IR ファイ ルは、標準的なオーディオファイルです。 これがどのように機能するかを理解するために、ボーカルトラックに Space Designerを使う場合について考えてみましょう。実際のオペラハウスで録音した IR を Space Designer に読み込みます。この IR はボーカルトラックにコンボリュー ションされ、オペラハウスの中で歌っているときと同じ残響が生まれます。 コンボリューション方式ならば、どのような空間でもオーディオ信号をシミュ レートできます。スピーカーキャビネットの中や、プラスチックの玩具、段ボー ル箱の内部などの空間も、その残響を録音した IR があれば再現できます。必要 なのは、その空間で録音した IR だけです。 また、IR を読み込むだけでなく、Space Designer には IR 合成機能も組み込まれて います。これにより、合成 IR を使って実際の空間では得られないユニークな効 果を生み出すことができます。 Space Designer の「IR Sample」メニューからアクセスできる「Impulse Response Utility」を使ってインパルスレスポンスを録音および編集することもできます。 Space Designer では、エンベロープ、フィルタ、EQ、ステレオ/サラウンド・バ ランス・コントロールなどの機能を利用し、残響の強弱や音色、長短を緻密に制 御することもできます。 Space Designer は、モノ、ステレオ、トゥルーステレオ(各チャンネルが個別に 処理されるステレオ)、サラウンドエフェクトのいずれの信号でも処理できま す。 245 SpaceDesignerコンボリューショ ンリバーブ 12 この章では以下の内容について説明します: • Space Designer インターフェイスを理解する (ページ 246) • Space Designer の IR(インパルスレスポンス)パラメータを操作する (ページ 247) • Space Designer のエンベロープおよび EQ パラメータを操作する (ページ 251) • Space Designer のフィルタを操作する (ページ 258) • Space Designer のグローバルパラメータを操作する (ページ 260) • Space Designer を自動化する (ページ 267) Space Designer インターフェイスを理解する Space Designer のインターフェイスは、次のセクションで構成されています: Global parameters Filter parameters Impulse response parameters Global parameters Main display Button bar Envelope and EQ parameters Parameter bar • IR(インパルスレスポンス)パラメータ: これらを使用して、(録音または合 成の)IR ファイルの読み込みや保存、操作を行います。選択した IR ファイル によって、オーディオ信号とのコンボリューションに何が使用されるかが決ま ります。Space Designer の IR(インパルスレスポンス)パラメータを操作する を参照してください。 246 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ • エンベロープおよびEQパラメータ: メインディスプレイとパラメータバーを エンベロープビューと EQ ビューとで切り替えるには、ボタンバーのビューボ タンをクリックします。表示されたパラメータは、メインディスプレイのグラ フィックスまたはパラメータバーの数値のどちらを使っても調整できます。 SpaceDesignerのエンベロープおよびEQパラメータを操作するを参照してくだ さい。 • フィルタパラメータ: SpaceDesignerのリバーブの音色を変化させるために使 います。複数のフィルタモードから選択でき、レゾナンスを調整したり、フィ ルタエンベロープを時間の経過に従って動的に調整したりできます。Space Designer のフィルタを操作するを参照してください。 • グローバルパラメータ: IRを読み込んだ後は、これらのパラメータを使って、 Space Designer による信号全体および IR の処理方法を指定します。入力および 出力パラメータ、ディレイおよび音量補正、プリディレイなどがあります。 Space Designer のグローバルパラメータを操作するを参照してください。 Space Designer の IR(インパルスレスポンス)パラメータ を操作する Space Designer では、録音した IR ファイルまたは独自の合成 IR を使用できます。 エンベロープおよびメインディスプレイの左側の円形の領域には、IRパラメータ が格納されています。これらを使うと、IR モード(IR Sample モードまたは Synthesized IRモード)の指定、IRの読み込みまたは作成、サンプルレートと長さ の設定ができます。 • 「IR Sample」ボタンおよび「IR Sample」メニュー: 「IR Sample」ボタンをク リックすると、IR Sample モードに切り替わります。IR Sample モードでは、IR サンプルを基に、残響効果が生成されます。「IRSample」ボタンの横の下向き の矢印をクリックすると「IRSample」ポップアップメニューが開きます。この ポップアップメニューでは、IRサンプルの読み込みと操作や、「ImpulseResponse Utility」を使用したインパルスレスポンスの録音および編集ができます。Space Designer の IR Sample モードで作業するを参照してください。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 247 • 「sample rate」スライダと「preserve length」ボタン: 「sample rate」スライダ では、読み込んだ IR のサンプルレートを指定します。「preserve length」ボタ ンを有効にすると、サンプルレートが変更されてもIRの長さは維持されます。 Space Designer の IR サンプルのレートを設定するを参照してください。 • 「Length」フィールド: IR の長さを調整します。Space Designer の IR の長さを 設定するを参照してください。 • 「SynthesizedIR」ボタン: クリックすると、Synthesized IRモードが有効になり ます。新しい合成 IR が生成されます。これは、「Length」、エンベロープ、 「Filter」、EQ、および「Spread」パラメータの値に基づいています。Space Designer の Synthesized IR モードで作業するを参照してください。 メモ: 読み込んだIRサンプルと合成IRを自由に切り替えることができます。また その際、切り替わったほうの設定も失われません。詳細については、SpaceDesigner の Synthesized IR モードで作業するを参照してください。 重要: リアルタイムでオーディオをコンボリューションするために、Space Designerではまず、インパルスレスポンスに対するパラメータの調整結果が計算 されます。パラメータの編集後はこの計算のために多少の時間がかかります。計 算の進捗状況は青い進行状況バーで示されます。パラメータ編集の後処理を行っ ている間も、パラメータの調整を続けることができます。計算が始まると、青い バーが赤く変化し、計算の開始を知らせます。 Space Designer の IR Sample モードで作業する IR Sample モードでは、Space Designer は音響環境を記録した IR を読み込んでこれ を使用します。入力されるオーディオ信号と IR がコンボリューションされ、IR から取り込んだ音響空間に信号が配置されます。 IR Sample モードを有効にするには µ メインディスプレイ左側の円形の領域で「IRSample」ボタンをクリックし、任意 のフォルダから目的の IR ファイルを選択します。 248 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ メモ: IR ファイルをすでに読み込んでいる場合は、「IR Sample」ボタンをクリッ クすると、Synthesized IR モードから IR Sample モードに切り替わります。 読み込んだ IR ファイルを管理するには µ 「IRSample」ボタンの横の下向き矢印をクリックし、以下のコマンドのあるポッ プアップメニューを開きます: • Load IR: エンベロープを変更せずに IR サンプルを読み込みます。 • Load IR & Init: IR サンプルを読み込み、エンベロープを初期化します。 • Show in Finder: 現在読み込まれている IR ファイルの場所を示す Finder ウイン ドウを開きます。 • Open IR Utility: インパルスレスポンスの録音および編集ができる「Impulse Response Utility」を開きます。詳しくは、「Impulse ResponseUtilityユーザーズマ ニュアル」を参照してください。 「Logic Pro」に付属の IR はすべて「/ライブラリ/Audio/Impulse Responses/Apple」 フォルダにインストールされます。デコンボリューションファイルの拡張子 は、.sdir です。 IR には、モノ、ステレオ、AIFF、SDII、または WAV ファイルを使用できます。ま た、最大で 7.1 サラウンドのサラウンドフォーマット、単体のサラウンド IR とし て構成されるディスクリートオーディオファイルや B フォーマットオーディオ ファイルも使用できます。 Space Designer の Synthesized IR モードで作業する Synthesized IR モードでは、Space Designer は、「Length」、「Envelope」、 「Filter」、「EQ」、および「Spread」パラメータの値によって決まる合成 IR を 生成します。このモードに切り替えるには、IR パラメータセクションの 「Synthesized IR」ボタンをクリックします。 有効になった「SynthesizedIR」ボタンを繰り返しクリックすると、反響パターン が少しずつ異なる新しい IR がランダムに生成されます。現在の IR の状態(合成 IRの反響パターンと特性を示すパラメータなどの値も含む)は設定ファイルと共 に保存されます。 メモ: 「IR Sample」モードのときに「Synthesized IR」ボタンをクリックすると、 設定と共に保存されている合成 IR に切り替わります。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 249 Space Designer の IR サンプルのレートを設定する 「sample rate」スライダでは、IR のサンプルレートを指定します。 • Orig: 現在のプロジェクトのサンプルレートが使用されます。IRが読み込まれ る際に、必要に応じて、IRのサンプルレートが現在のプロジェクトのサンプル レートに自動的に変換されます。この処理により、たとえば 44.1 kHz の IR を 96kHzのプロジェクトに読み込むことができますし、逆に96kHzのIRを44.1kHz のプロジェクトに読み込むこともできます。 • /2、/4、/8: これらの設定では、それぞれ元の値の1/2、1/4、1/8になります。 以下の例のようになります。 • プロジェクトのサンプルレートが96kHzの場合は、それぞれ48kHz、24kHz、 12 kHz になります。 • プロジェクトのサンプルレートが 44.1 kHz の場合は、それぞれ 22.05 kHz、 11.025 kHz、5512.5 Hz になります。 サンプルレートを変更すると、IR の周波数応答特性(および長さ)の値が増減 し、リバーブの全体的な音質も大幅に影響を受けます。サンプルレートを上げる 利点があるのは、元の IR サンプルにより高い周波数が実際に含まれている場合 だけです。サンプルレートを下げた場合は、必要な音質が保たれているかどうか を耳で確かめてください。 メモ: 通常の室内(コンクリートやタイル貼りの部屋は除きます)では、高周波 数の反響は最小限にとどまります。IRのレートを半分にしても最大にしても結果 はほとんど変わりません。 半分のサンプルレートを選択すると、IRの長さは2倍になります。残響を加える ことができる最大周波数は半分になります。この操作により、部屋の各寸法を2 倍(容積を 8 倍)にしたのと同じ状態を作り出すことができます。 サンプルレートを減らすもう1つの利点として、処理要件がかなり小さくて済む ことが挙げられます。サンプルレート設定を半分にすることは、広い空間をシ ミュレートする場合に役立ちます。 250 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 「Preserve Length」ボタンを有効にすると、サンプルレートが変更されても IR の 長さは維持されます。この2つのパラメータを自分の好きなように操作すると、 面白い効果が生まれることがあります。 サンプルレートを低くする方法は、面白いテンポやピッチ、レトロ風のデジタル サウンドのような効果を得たいときにも使用できます。 サンプルレートがIRよりも高いプロジェクトでSpace Designerを実行している場 合に、IR のサンプルレートを下げることもできます。「Preserve Length」機能が 有効になっていることを確認してください。これにより、リバーブの音質を維持 しながら CPU の負荷を抑えることができます。リバーブの音質が損なわれるこ とはありません。プロジェクトのサンプルレートを高くしておいても IR には何 ら良い影響はありません。 SynthesizedIRモードでも、同様の調整を加えることができます。一般的なリバー ブサウンドには高周波成分がそれほど含まれていません。たとえばサンプルレー トが 96 kHz の場合は、リバーブサウンドによくあるまろやかな周波数応答特性 を得るために、ローパスフィルタを深めに設定する必要があります。最初に 「sample rate」スライダで先に高周波成分を1/2または1/4にまで減らしてから、 ローパスフィルタを加えるとよいでしょう。これにより、CPUの負荷をかなり抑 えることができます。 Space Designer の IR の長さを設定する 「Length」パラメータを使用すると、(サンプルまたは合成)IRの長さを設定で きます。 すべてのエンベロープは、この長さに対する比率で自動的に計算されます。つま り、このパラメータを変更すると、変更内容に対応するようにエンベロープカー ブが伸縮するので、時間と手間を省くことができます。 IR ファイルを使用している間は、「Length」パラメータ値を実際の IR サンプル の長さよりも大きくすることはできません。(サンプルの場合も合成の場合も) IR が長くなるほど、CPU に対する負荷は大きくなります。 Space Designer のエンベロープおよび EQ パラメータを操 作する Space Designer のメインインターフェイス領域は、エンベロープおよび EQ パラ メータの表示と編集に使われます。メインインターフェイス領域には3つの要素 があります。上部にあるボタンバーと、メインディスプレイ、パラメータバーで す。 • ボタンバーは、現在の表示/編集モードの選択に使います。 • メインディスプレイでは、エンベロープか EQ カーブを表示して視覚的に編集 できます。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 251 • パラメータバーでは、エンベロープか EQ カーブを表示して数値で編集できま す。 Display in Envelope view Display in EQ view Main display Parameter bar Button bar Space Designer のボタンバーを使う メインディスプレイとパラメータバーをエンベロープビューと EQ ビューとで切 り替えるには、ボタンバーを使います。また、エンベロープと EQ のリセット や、IR のリバースに使うボタンもあります。 • 「Reset」ボタン: 現在表示されているエンベロープまたはEQをデフォルト値 にリセットします。 • 「All」ボタン: すべてのエンベロープおよびEQをデフォルト値にリセットし ます。 • 「VolumeEnv」ボタン: メインディスプレイの前面にボリュームエンベロープ を表示します。ほかのエンベロープカーブは、背面に透過表示されます。Space Designer の音量エンベロープを操作するを参照してください。 • 「FilterEnv」ボタン: メインディスプレイの前面にフィルタエンベロープを表 示します。ほかのエンベロープカーブは、背面に透過表示されます。Space Designer のフィルタを操作するを参照してください。 • 「DensityEnv」ボタン: メインディスプレイの前面に密度エンベロープを表示 します。ほかのエンベロープカーブは、背面に透過表示されます。SpaceDesigner の Synthesized IR モードで作業するを参照してください。 • 「EQ」ボタン: メインディスプレイに4バンドパラメトリックEQを表示しま す。Space Designer の EQ を操作するを参照してください。 252 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ • 「Reverse」ボタン: IR とエンベロープをリバースします。IR をリバースする と、実際にはサンプルの先頭ではなく末尾の部分を使用している状態になりま す。リバースをかける際、場合によっては「Pre-Delay」などのパラメータの値 を変更する必要があります。 Space Designer のエンベロープビューをズームする/ナビゲートす る エンベロープを表示すると、メインディスプレイに以下のズームおよびナビゲー ションパラメータが表示されます(EQ ビューには表示されません)。 Overview display • オーバービューディスプレイ: 現在 IR ファイルのどの部分がメインディスプ レイに表示されているかが一目で分かるため、ズーム表示中でも全体を容易に 把握できます。 • 「ZoomtoFit」ボタン: クリックすると、メインディスプレイにIRの波形全体 が表示されます。エンベロープの長さが変更されると、表示も自動的に更新さ れます。 • 「A」ボタンと「D」ボタン: クリックすると、メインディスプレイに表示さ れている選択中のエンベロープのアタック(A)部分とディケイ(D)部分に 「ZoomtoFit」機能が限定されます。「A」ボタンと「D」ボタンは、音量エン ベロープとフィルタエンベロープの表示中にのみ有効です。 Space Designer のエンベロープパラメータを設定する すべての IR の音量エンベロープおよびフィルタエンベロープと、合成 IR の密度 エンベロープを編集できます。どのエンベロープも、メインディスプレイのグラ フィックスとパラメータバーの数値のどちらを使っても調整できます。 一部のパラメータはエンベロープ固有のものですが、どのエンベロープも「Attack Time」パラメータと「Decay Time」パラメータで構成されています。「Attack Time」パラメータと「Decay Time」パラメータの合計は、ディケイ時間を減らさ ない限り、(合成およびサンプル)IR の全体の長さと同じです。Space Designer の IR の長さを設定するを参照してください。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 253 大きなノードは、ウインドウ下部にあるパラメータバーに表示されるパラメータ (「Init Level」、「Attack Time」、「Decay Time」など)の値を示します。パラ メータバーのいずれかの数値を編集すると、対応するノードがメインディスプレ イで移動します。 Space Designer のエンベロープノードをグラフィカルに移動するには µ 移動できる方向にノードをドラッグします。 メインディスプレイのノードにカーソルを重ねると2つの矢印が現れ、移動でき る方向が表示されます。 Space Designer のエンベロープカーブの形状をグラフィカルに変更するには 1 メインディスプレイにエンベロープカーブをドラッグします。 2 エンベロープカーブを微調整するには、ラインに付いている小さなノードをド ラッグします。これらのノードはエンベロープカーブ自体に結びついているの で、エンベロープハンドルと見なすことができます。 Move the nodes vertically or horizontally to change the shape of the envelope curve. 254 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ Space Designer の音量エンベロープを操作する 音量エンベロープを使うと、リバーブの初期レベルを設定し、音量の経時的な変 化を調整することができます。どの音量エンベロープパラメータも、数値を入力 して編集できます。また、パラメータの大部分はグラフィックスからでも編集で きます(Space Designer のエンベロープパラメータを設定するを参照)。 Attack/Decay Time node Init Level node Decay Time/End Level node • 「Init Level」フィールド: IR のアタックフェーズの初期音量を設定します。こ の値は、IR ファイルの全体の音量に対するパーセンテージで表されます。通 常、アタックフェーズは通常IRの中で最も音量の大きな部分です。「InitLevel」 を 100 %に設定すると、初期反射音を最大音量で鳴らすことができます。 • 「AttackTime」フィールド: 音量エンベロープのディケイフェーズが始まるま での時間を指定します。 • 「Decay Time」フィールド: ディケイフェーズの長さを設定します。 • 音量ディケイ・モード・ボタン: 音量ディケイカーブの種類を指定します。 • 「Exp」: 音量エンベロープの出力の形状を指数関数アルゴリズムによって 決定します。きわめて自然な響きのリバーブテイルが得られます。 • 「Lin」: 音量ディケイは線形に近い(より人工的な響きを生み出す)形状 になります。 • 「EndLevel」フィールド: リバーブの最後の音量を設定します。この値は、音 量エンベロープ全体に対するパーセンテージで表されます。 • 0 %に設定すると、リバーブテイルをフェードアウトできます。 • 100 %に設定すると、リバーブテイルはフェードアウトされず、突然切れま す(終了位置がリバーブテイル内にある場合)。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 255 • 終了位置がリバーブテイルの外側にある場合は、「End Level」は作用しませ ん。 Space Designer の密度エンベロープを使う 密度エンベロープでは、合成IRの密度を経時的に制御できます。密度エンベロー プは、パラメータバーで数値を入力して調整できます。また、「Init Level」、 「RampTime」、「EndLevel」の各パラメータは、SpaceDesignerのエンベロープ パラメータを設定するで説明している方法によって編集できます。 メモ: 密度エンベロープは、Synthesized IR モードでのみ使用できます。 • 「Init Level」フィールド: リバーブの初期密度(一定時間内での平均反響回 数)を設定します。密度を下げると、反響パターンを聞き取ることができるよ うになり、エコーも控えめになります。 • 「RampTime」フィールド: 初期レベルから最終レベルまでの間隔を調整しま す。 • 「EndLevel」フィールド: リバーブテイルの密度を設定します。「EndLevel」 の値が小さすぎると、リバーブテイルのサウンドが粗くなります。また、この 値を低くしすぎると、ステレオスペクトラムに影響が出ることもあります。 • 「ReflectionShape」スライダ: 仮想スペースに備え付けられている壁、天井、 備品に当たって跳ね返る初期反射音クラスタの傾斜(形状)を指定します。値 を小さくすると鋭い輪郭を持つクラスタになり、値を大きくすると指数関数的 な勾配を持つ滑らかなサウンドになります。このパラメータは、異なる素材の 部屋を再現する場合に便利です。「ReflectionShape」をエンベロープ、密度、 初期反射音の最適な設定と組み合わせると、どのような形状や素材の部屋でも ほぼ再現できます。 256 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ Space Designer の EQ を操作する SpaceDesignerには、2つのパラメトリックミッドバンドに加え、2つのシェルビ ングフィルタ(ローシェルビングフィルタ、ハイシェルビングフィルタがそれぞ れ 1 つずつ)で構成された、4 バンド EQ があります。EQ のパラメータは、パラ メータバーの数値またはメインディスプレイのグラフィックスのどちらを使って も調整できます。 EQ On/Off button Individual EQ band buttons • EQ のオン/オフボタン: EQ セクション全体を有効または無効にします。 • 各 EQ 帯域ボタン: 各 EQ 帯域が有効または無効になります。 • 「Freq」(周波数)フィールド: 選択した EQ 帯域の周波数を設定します。 • 「Gain」フィールド: 選択したEQ帯域のゲインのカットまたはブーストを調 整します。 • 「Q」フィールド: 2 つのパラメトリックバンドの Q 値を設定します。「Q」 値は、0.1(非常に狭い)から 10(非常に広い)までの間で調整できます。 Space Designer の EQ カーブをグラフィカルに編集するには 1 パラメータバー上段にある EQ のオン/オフボタンと EQ 帯域ボタンで、EQ と 1 つまたは複数の帯域を有効にします。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 257 2 メインディスプレイでカーソルを横方向にドラッグします。カーソルが帯域のア クセス領域内に入ると、対応するカーブとパラメータ領域が自動的に強調表示さ れ、ピボットポイントが表示されます。 3 横方向にドラッグすると、各帯域の周波数を調整できます。 4 上下の方向にドラッグすると、各帯域のゲインの量を増減できます。 5 パラメトリック EQ 帯域の(強調表示された)ピボットポイントを上下にドラッ グすると、Q 値を増減できます。 Space Designer のフィルタを操作する Space Designer のフィルタはリバーブの音色を制御します。 複数のフィルタ・タイプから選択ができ、音量エンベロープとは別に、エンベ ロープでフィルタのカットオフを制御できます。フィルタ設定を変更すると、リ バーブを通して再生されている間にサウンドが直接変更されるのではなく、IRが 再計算されます。 258 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ Space Designer のメイン・フィルタ・パラメータを使う メイン・フィルタ・パラメータは、インターフェイスの左下隅にあります。 • フィルタ「On」ボタン、「Off」ボタン: フィルタセクションのオンとオフを 切り替えます。 • 「Filter」のモードノブ: フィルタモードを指定します。 • 6dB(LP): 明るい響きを作り出す、用途の広いフィルタモードです。ある 程度のフィルタリング効果を得ながらも、素材となる信号の特徴的な部分は 残したい場合に使用できます。 • 12 dB(LP): フィルタ効果を抑え気味にし、暖かいサウンドが欲しいとき に役に立ちます。明るいリバーブを伸びやかに鳴らしたいときに便利なモー ドです。 • BP: 1 オクターブにつき 6 dB 減衰させるフィルタです。信号の低域と高域 を減らし、カットオフ周波数付近の周波数をそのまま残します。 • HP: 1 オクターブにつき 12 dB 減衰の 2 極フィルタです。カットオフ周波数 より低い周波数のレベルを下げます。 • 「Reso」(Resonance)ノブ: カットオフ周波数より上または下の、あるいは その周辺の周波数が強調されます。レゾナンスのノブがどの程度サウンドに影 響するかは、選択したフィルタモードによって大きく異なります。フィルタの 傾斜が大きいほど、はっきりと音色が変わります。 Space Designer のフィルタエンベロープを使う フィルタエンベロープは、「Filter Env」ボタンが有効なときにメインディスプレ イに表示されます。これを使うと、時間軸に沿ってフィルタのカットオフ周波数 を制御できます。フィルタエンベロープのどのパラメータも、パラメータバーで 数値を入力して調整できます。または、Space Designer のエンベロープパラメー タを設定するで説明している方法によってメインディスプレイのグラフィックス から調整することもできます。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 259 メモ: フィルタエンベロープを有効にすると、自動的にメインフィルタも有効に なります。 Controls the Decay endpoint and End Level parameters simultaneously. Controls the Attack Time endpoint (and Decay Time startpoint) and Break Level parameters simultaneously. • 「InitLevel」フィールド: フィルタエンベロープの最初のカットオフ周波数を 設定します。 • 「Attack Time」フィールド: 「Break Level」(下記を参照)に達するまでの時 間を指定します。 • 「Break Level」フィールド: エンベロープが到達する、フィルタのカットオフ 周波数の最大値を設定します。この値は、フィルタエンベロープがアタック フェーズからディケイフェーズに切り替わるポイントにもなります。つまり、 アタックフェーズがこのレベルに達すると、そこからディケイフェーズが始ま ります。「Break Level」の値を「Init Level」よりも低くすると、変わった傾斜 のフィルタを作り出すことができます。 • 「Decay Time」フィールド: (「Break Level」ポイントを過ぎてから)「End Level」の値に達するまでの時間を指定します。 • 「EndLevel」フィールド: フィルタエンベロープのディケイフェーズが終わる ときのカットオフ周波数を設定します。 Space Designer のグローバルパラメータを操作する Space Designer のグローバルパラメータは、エフェクトの全体的な出力や動作に 作用します。グローバルパラメータは、メインディスプレイの周辺と下部の2つ の部分に分かれています。 260 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ Space Designer のグローバルパラメータ:上部のセクション これらのパラメータは、メインディスプレイ周辺に表示されています。 Output sliders Rev Vol Compensation button Latency Compensation Definition area button Input slider • 「Input」スライダ: SpaceDesignerによるステレオまたはサラウンド入力信号 の処理方法を指定します。詳細については、Space Designer の「Input」スライ ダを使うを参照してください。 • 「Latency Compensation」ボタン: Space Designer の内部レイテンシー補正機能 をオンまたはオフにします。Space Designer のレイテンシー補正機能を使うを 参照してください。 • 「Definition」領域: リバーブの拡散をエミュレートし、CPUリソースを節約す るために定義の少ない IR セットに切り替えることができます。Space Designer の「Definition」パラメータを使うを参照してください。 • 「Rev Vol Compensation」ボタン: Space Designer の内部 IR 音量を合わせる機能 を有効にします。Space Designer の「Rev Vol Compensation」を使うを参照して ください。 • 「Output」スライダ: 出力レベルを調整します。Space Designer の「Output」 スライダを使うを参照してください。 Space Designer のグローバルパラメータ:下部のセクション これらのパラメータは、メインディスプレイの下に表示されています。 • 「Pre-Dly」ノブ: リバーブのプリディレイ時間、つまり原音信号が鳴ってか らリバーブの最初の反響が生じるまでの時間を設定します。Space Designer の 「Pre-Dly」(プリディレイ)を操作するを参照してください。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 261 • 「IR Start」ノブ: IR のサンプルの再生ポイントを設定します。Space Designer の「IR Start」パラメータを使うを参照してください。 • 「Spread」および「Xover」ノブ(合成 IR のみ): 「Spread」は、ステレオま たはサラウンド空間の聴覚上の広がりを調整します。「Xover」は、クロスオー バー周波数をヘルツ単位で設定します。この値よりも低い合成IRの周波数は、 「Spread」パラメータの影響を受けます。SpaceDesignerの「Spread」パラメー タを使うを参照してください。 Space Designer の「Input」スライダを使う 「Input」スライダの機能は、ステレオインスタンスとサラウンドインスタンス で異なります。この「Input」スライダは、モノインスタンスまたはモノ→ステ レオインスタンスでは表示されません。 • ステレオインスタンスの場合、「Input」スライダはステレオ信号の処理方法を 指定します。 • サラウンドインスタンスの場合、「Input」スライダは、リバーブに送られるサ ラウンドチャンネルに LFE 信号をどの程度ミックスするかを指定します。 Stereo Surround Space Designer の「Input」スライダ:ステレオモード • 「Stereo」設定(スライダの一番上): 信号は、原音信号のステレオバランス のまま、左右のチャンネルで処理されます。 • 「Mono」設定(スライダ中央): 信号はモノで処理されます。 • 「Xstereo」設定(スライダの一番下): 左右の信号が反転し、右チャンネル の処理が左チャンネルで、左チャンネルの処理が右チャンネルで行われます。 • 各設定の間の位置: ステレオからモノまでのクロスフィード信号のミックス が生成されます。 Space Designer の「Input」スライダ:サラウンドモード • サラウンドでの「Max」設定(スライダの一番上): 最大量のLFE信号がほか のサラウンドチャンネルとミックスされます。 262 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ • サラウンドでの「0」設定(スライダの一番下): LFE 信号全体が未処理のま まリバーブを通過します。 • 各設定の間の位置: LFEとサラウンドチャンネルをミックスした情報が処理さ れます。 Space Designer のレイテンシー補正機能を使う Space Designer では、複雑な計算には時間がかかります。このため、直接入力信 号と処理された出力信号との間で、処理のレイテンシー、つまり遅延が生じま す。レイテンシー補正機能を有効にすると、エフェクト信号の処理の遅延に合わ せて、直接信号にも(「Output」セクションで)遅延がかけられます。 メモ: これは、ホストアプリケーションのレイテンシー補正とは別のものです。 この補正機能はすべて Space Designer 内部で実行されます。 SpaceDesignerの処理レイテンシーは、元のサンプルレートで128サンプルです。 サンプルレートを半分にするごとにサンプル数はその 2 倍になります。Space Designer の「sample rate」スライダを「/2」にすると、処理レイテンシーは 256 サンプルになります。サラウンドモードの場合または 44.1 kHz より高いサンプル レートの場合、処理レイテンシーは増加しません。 Space Designer の「Definition」パラメータを使う 「Definition」パラメータは、自然な残響パターンが拡がっていく状態をエミュ レートします。100 %未満の値で使うと、CPU 負荷を低減することにもなりま す。 メモ: 「Definition」ボックスは、CPU負荷の大きい合成IRを読み込んだ場合にの みメインディスプレイの下に表示されます。 自然の残響の場合、その空間情報のほとんどは最初の数ミリ秒に含まれていま す。残響が終わりに近付くにつれて、反響のパターン(壁などに跳ね返る信号) が拡散していきます。すなわち、反射した信号は小さくなり、方向性がなくなっ ていくので、含まれる空間情報がはるかに少なくなります。 この現象を(CPU使用率を抑えながら)エミュレートするには、リバーブの最初 だけ完全な分解能の IR を使用し、リバーブの後半では分解能の低い IR を使うよ うに Space Designer を設定するという方法があります。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 263 「Definition」パラメータでは、低い分解能のIRに切り替わる位置を設定します。 このパラメータは、ミリ秒(切り替わりが始まる時間)とパーセンテージ(完全 な分解能の IR の長さを 100 %とした値)の両方で表示されます。 Space Designer の「Rev Vol Compensation」を使う 「Rev Vol Compensation」(リバーブ音量補正)では、IR ファイル同士の(実際 の音量ではなく)耳で聞こえる音量の違いを解消します。 このパラメータはデフォルトでオンになっており、通常はこのモードのままで構 いません。ただし、IRのタイプによっては思い通りの結果が得られない場合があ ります。その場合はオフにして、入力レベルと出力レベルを必要に応じて調整し てください。 Space Designer の「Output」スライダを使う 「Output」パラメータでは、直接の(ドライ)信号と処理済みの信号のバランス を調整できます。使用可能なパラメータは、Space Designer の入力設定によって 異なります。 モノ、モノ→ステレオ、またはステレオエフェクトとして Space Designer を接続 した場合は、2 つの出力スライダが表示されます。1 つは直接信号用、もう 1 つ はリバーブ信号用のスライダです。 サラウンド設定の場合、小さなサラウンド出力ミキサーを構成する、4つの出力 スライダがあります。 Mono/Stereo Surround 264 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ Space Designer のモノ/ステレオ出力設定パラメータ • 「Dry」スライダ: エフェクトがかかっていない(ドライ)信号のレベルを設 定します。SpaceDesignerをバスチャンネルに接続した場合、またはスピーカー シミュレーションなどのモデリング IR を使用する場合は、このパラメータを 0(ミュート)に設定してください。 • 「Rev」(Reverb)スライダ: エフェクトがかかった(ウェット)信号の出力 レベルを調整します。 Space Designer のサラウンド出力設定パラメータ • 「C」(Center)スライダ: ほかのサラウンドチャンネルとは別に、センター チャンネルの出力レベルを調整します。 • 「Bal」(Balance)スライダ: フロント(L-C-R)チャンネルとリア(Ls-Rs) チャンネルのレベルのバランスを設定します。 • 7.1 ITU サラウンドでは、サラウンドアングルを考慮して Lm-Rm スピーカー を軸に、その前後でバランスを設定します。 • 7.1 SDDS サラウンドの場合は、Lc-Rc スピーカーがフロントスピーカーと見 なされます。 • 「Rev」(Reverb)スライダ: すべてのチャンネルのエフェクトがかかった (ウェット)信号の出力レベルを調整します。 • 「Dry」スライダ: すべてのチャンネルのエフェクトがかかっていない(ドラ イ)信号の全体的なレベルを設定します。AUXチャンネルストリップでバスエ フェクトとして Space Designer を使用する場合は、この値を 0(ミュート)に 設定します。バスに送られた各チャンネルストリップの「Send」ノブを使う と、ウェットとドライのバランスを制御できます。 Space Designer の「Pre-Dly」(プリディレイ)を操作する プリディレイは、原音信号が発生してからリバーブの初期反射音が発生するまで の経過時間です。 どのようなサイズおよび形状の部屋についても、この設定値によって、壁、天 井、床と、その音を聞く人間との距離が決まります。Space Designer を使用すれ ば、このパラメータをプリディレイとは別に調整し、自然なプリディレイにとど まらずにさまざまな状態を作り出すことができます。 実際上の観点から言えば、「Pre-Dly」の設定時間を極端に短くすると、信号の位 置を特定しにくくなります。原音信号のサウンドにも影響する場合があります。 一方、「Pre-Dly」の設定時間を極端に長くすると、エコーが不自然に聞こえるこ とがあります。原音信号と初期反射音とが離れてしまい、元の信号とリバーブ信 号の間が空いて聞こえることもあります。 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 265 さまざまなサウンドに理想的な「Pre-Dly」の設定は、原音信号の属性(より正確 に言えばエンベロープ)によって異なります。通常、パーカッシブな信号では、 弦楽器のようにアタックが徐々にフェードインする信号よりも「Pre-Dly」を短く 設定する必要があります。最も良い設定方法は、音響エコーなどの望ましくない 現象が出ない範囲で、プリディレイをできるだけ長くすることです。 以上は、さまざまな信号に適用できる、実際に存在する音響空間を作り出すため の方法です。現実にはありえない音の広がりや自然界には存在しないリバーブや エコーを作り出したい場合は、「Pre-Dly」パラメータにさまざまな値を設定して みましょう。 Space Designer の「IR Start」パラメータを使う 「IR Start」パラメータを使用すると、IRの再生開始ポイントを移動することがで きるので、IR の開始部分をうまくカットしたい場合に役立ちます。 このパラメータを使うと、IRサンプルの開始部分にあるピークを消去できて便利 です。また、「Reverse」機能と組み合わせて使う場合などには、さまざまなオ プションも用意されています。Space Designer のボタンバーを使うを参照してく ださい。 メモ: Synthesized IR モードの場合は、「Length」パラメータが同じ機能を持って いるので、「IR Start」パラメータは使用できません。 Space Designer の「Spread」パラメータを使う 「Spread」および「Xover」ノブは、入力信号の高周波数帯域に通常含まれてい る方向の情報を損なわずに、信号の聴覚上の広がりを大きくします。低周波数の 場合は、中央の低周波数成分が抑えられて左右に広がります。これにより、サウ ンドを優しく包み込むようなリバーブが得られます。「Spread」および「Xover」 ノブは、Synthesized IR モードでのみ機能します。 266 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ メモ: この 2 つのパラメータはステレオまたはサラウンド処理を調整するものな ので、Space Designer をモノプラグインとして使用する場合は無効です。 • 「Spread」ノブ/フィールド: 「Xover」(クロスオーバー)パラメータで指 定した値より低い周波数に対して、ステレオまたはサラウンドベースを広げま す。 • 「Spread」の値が0.00の場合、ステレオまたはサラウンドの情報は追加され ません(ただし、ソース信号とリバーブにもともと設定されていたステレオ またはサラウンドの情報は、保持されます)。 • 値を 1.00 にすると、左右のチャンネルの広がりが最大になります。 • 「Xover」ノブ/フィールド: クロスオーバー周波数をヘルツ単位で設定しま す。この値よりも低い合成IRの周波数は、「Spread」パラメータ(値が0より 大きい場合)の影響を受けます。 Space Designer を自動化する Space Designer は、ほかの多くのプラグインとは異なり、完全に自動化すること はできません。というのも、Space Designer では、オーディオを再生する前に IR を再読み込みする(およびコンボリューションを再計算する)必要があるためで す。 ただし、適切なホストアプリケーションで、以下の Space Designer パラメータの 動きを記録、編集、および再生することは可能です: • ステレオのクロスフィード • 直接出力 • リバーブ出力 第 12 章 Space Designer コンボリューションリバーブ 267 「LogicPro」には、オーディオ作成時にしばしば発生する作業に特化したエフェ クトおよびユーティリティが用意されています。これらのプロセッサは以下の用 途に役立ちます:Denoiserで、しきい値のレベルより小さいノイズを除去したり 減衰したりする。Enhance Timingで、オーディオ録音データのタイミングを補正 する。Exciter で、人工的に高周波数成分を生成して録音データに躍動感を与え る。Grooveshifter で、録音データをリズミカルに変化させる。SubBass で、入力 信号から人工的なベース信号を生成する。 この章では以下の内容について説明します: • Denoiser (ページ 269) • Enhance Timing (ページ 272) • Exciter (ページ 272) • Grooveshifter (ページ 274) • Speech Enhancer (ページ 275) • SubBass (ページ 276) Denoiser Denoiserでは、しきい値の音量レベルより小さいノイズを除去したり減衰したり することができます。Denoiser では、高速フーリエ変換(FFT)分析を利用して 音量が小さく倍音構造が比較的単純な周波数帯域を認識します。続いて、このレ ベルが低く複雑ではない帯域を目的の dB レベルに減衰します。Denoiser のメイ ンパラメータを参照してください。 Denoiserを過度に用いるとアルゴリズムによる影響が現れ、たいていは元の雑音 よりひどいものになってしまいます。グラスノイズの抑制と除去には、 「Smoothing」セクションの 3 種類のノブを使用するとよいでしょう。Denoiser の「Smoothing」パラメータを参照してください。 Denoiser を使うには 1 ほとんど雑音しか聞こえない部分を探し、その部分の信号が除去されるように 「Threshold」の値を設定します。 269 スペシャルエフェクト/ユー ティリティ 13 2 オーディオ信号を再生し、「Reduce」の値を設定します。ノイズが最大限除去さ れ、該当する信号は最大限残るようにします。 3 ノイズが生じた場合は、スムージングパラメータを使います。 Denoiser のメインパラメータ Denoiser には以下のメインパラメータがあります: Graphic display Reduce slider and field Threshold slider and field Noise Type slider and field • 「Threshold」スライダ/フィールド: しきい値レベルを設定します。このレ ベルを下回る信号は Denoiser によって低減されます。 • 「Reduce」スライダ/フィールド: しきい値より小さい信号に適用するノイ ズの減衰量を設定します。ノイズを減衰する際は、6dB減衰するごとに音量レ ベルが半分になる(6dB増幅するごとに音量レベルが倍になる)ことに注意し てください。 270 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ メモ: ノイズフロアが非常に高い場合(- 68 dB 以上)、聞いてみて特に不具 合がなければ、-83〜-78dB程度にまでノイズレベルを下げれば十分でしょ う。雑音が 10dB 以上、すなわち音量でいえば半分以下に減衰することになり ます。 • 「Noise Type」スライダ/フィールド: 削減したいノイズのタイプを指定しま す。 • 値0は、ホワイトノイズ(どの周波数帯にもノイズが均一に存在している状 態)を表します。 • 正の値では、ピンクノイズ(低域のレスポンスが大きいハーモニックノイ ズ)になります。 • 負の値では、ブルーノイズ(テープヒスノイズ)になります。 • グラフィックディスプレイ: オーディオ素材の最も低い音量レベル(ほとん どまたはすべてがノイズ)がどのように低下するかを表示します。パラメータ の値を変更すると瞬時に反映されるため、注意が必要です。 Denoiser の「Smoothing」パラメータ Denoiser には以下のスムージングパラメータがあります: Time knob and field Frequency knob and field Transition knob and field • 「Frequency」ノブ/フィールド: 隣接する周波数に滑らかに移行するように、 その値を調整します。ある周波数帯にノイズしかないことが検出された場合、 「Frequency」パラメータの値が大きいほど、Denoiserは隣接周波数帯を減衰さ せて、グラスノイズを抑えようとします。 • 「Time」ノブ/フィールド: Denoiserが最大の減衰率に達するまでの時間、ま たは減衰を中止するまでの時間を設定します。これは最も単純な形式のスムー ジングです。 • 「Transition」ノブ/フィールド: 隣接する音量レベルへ滑らかに移行するよ うに、その値を調整します。ある音量の範囲にノイズしかないことが検出され た場合、「Transition」パラメータの値が大きいほど、Denoiserは隣接する音量 レベルの信号を減衰させて、グラスノイズを抑えようとします。 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ 271 Enhance Timing Enhance Timingは、録音したオーディオの締まりのない演奏をプロダクションの 段階で引き締める目的で使います。さまざまな素材や作品に対してリアルタイム で使用できます。 適した素材には効果的ですが、このタイプのリアルタイムクオンタイズには限界 もあります。極端にオフビートな演奏はうまく補正できません。また、かなり複 雑に音が重ねられたドラムトラックも同様です。 ただし、ある程度タイトでパーカッシブなメロディー素材で、8 分音符または 4 分音符単位のリズム感で演奏された音楽には効果的なタイミング補正ができま す。大幅なタイミング補正が必要な場合、トランジェントが極端に動いてしまう と、人工的な個所が目立つようになるかもしれません。サウンドの品質とタイミ ング補正とのバランスをうまく取るようにしましょう。 重要: 技術的な理由から、EnhanceTimingプラグインはオーディオチャンネルス トリップでしか使うことができません。また、インサートスロットの最上部に挿 入する必要があります。 • 「Intensity」スライダ/フィールド: タイミング補正の量を定義します。グ リッドの分割(「Note Grid」ポップアップメニューで値を選択)に入らない オーディオトランジェントが修正されます。 • 「NoteGrid」ポップアップメニュー: 4 通りのグリッドの分割から選択できま す。グリッドの分割はタイミング補正過程で参照するポイントになります。8 分音符の 3 連符の場合には、12 分音符を設定してみてください。 Exciter Exciterは、元の信号に存在しない高周波成分を生成します。これには、オーバー ドライブやディストーションなどのエフェクトに似た非線形のディストーション 処理が採用されています。 272 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ ただしこれらのエフェクトとは異なり、Exciterでは入力信号をハイパスフィルタ に通してから、ハーモニクス(ディストーション)生成システムに送ります。こ れにより、元の信号に人工的なハーモニクスが追加されます。追加されるハーモ ニクスの周波数は、ハイパスフィルタのしきい値より少なくとも1オクターブ上 です。その後、歪ませた信号は元の(ドライ)信号とミックスされます。 Exciterを使うと、録音データに躍動感を与えることができます。高音域が何らか の理由で飛んでしまっているオーディオトラックには特に向いています。また、 ギタートラック全般に使用するツールとしても効果的です。 • 周波数ディスプレイ: 入力信号のうち、Exciter の処理の対象となる周波数範 囲が表示されます。 • 「Frequency」スライダ/フィールド: ハイパスフィルタのカットオフ周波数 (ヘルツ単位)を設定します。入力信号がフィルタを通過してから、(ハーモ ニクス)ディストーションが生成されます。 • 「Input」ボタン: 「Input」ボタンを有効にすると、オリジナル(エフェクト をかける前)の信号がエフェクトをかけた信号とミックスされます。「Input」 を無効にすると、エフェクトをかけた信号しか聞こえなくなります。 • 「Harmonics」ノブ/フィールド: エフェクト信号と元の信号の比率をパーセ ンテージで設定します。「Input」ボタンの選択を解除すると、このパラメータ は作用しなくなります。 メモ: ほとんどの場合、「Frequency」および「Harmonics」の値は大きめに設 定する方がよい効果が得られます。高周波帯では、元の信号と人工的に生成し た信号の違いを人間の耳ではほとんど区別できないからです。 • 「Color 1」/「Color 2」ボタン: 「Color 1」では、ハーモニクス・ディストー ション・スペクトラムの密度が小さくなります。「Color2」では、ディストー ションの密度が大きくなります。また、「Color 2」には、混変調ディストー ションが起きやすくなるという短所があります。 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ 273 Grooveshifter Grooveshifterには、オーディオ録音データのリズムに変化を与えて、入力信号に スウィング感を与える効果があります。たとえば、ストレートな 8 分音符や 16 分音符でギターソロを演奏してから、このエフェクトを使うと、オリジナルのス トレートなリズムにスウィング感を与えることができます。 参照テンポはプロジェクトテンポです。Grooveshifterは自動的にすべての変化を プロジェクトテンポに合わせます。 メモ: Grooveshifter では、プロジェクトテンポと、録音時のテンポが完全に一致 している必要があります。テンポに変動があると、正確な結果が得られません。 Grooveshifter の「Source Material」パラメータ • 「Beat」/「Tonal」ボタン: 2 種類のアルゴリズムを切り替えて、元のオー ディオ素材に適したほうを使用します。 • Beatアルゴリズム: 打楽器系の素材に向いています。「Beat」ボタンが選択 されている場合、「Grain Size」スライダは使えません。 • Tonal アルゴリズム: 音程のある素材に向いています。このアルゴリズムは グラニュラ合成に基づいているため、「GrainSize」スライダが追加されてい ます。 • 「Grain Size」スライダ/フィールド: グレインのサイズを設定します。技術 的に言うと、分析の精度を指定します。「Auto」(デフォルト)に設定する と、入力信号に基づいて適切なグレインサイズの値が自動的に設定されます。 Grooveshifter の「Swing」パラメータ • 「Grid」ボタン: オーディオ素材を分析するために使用するアルゴリズムで単 位とする拍を設定します。 • 主として 8 分音符から成る曲ならば「1/8」、16 分音符から成る曲ならば 「1/16」を指定してください。 • 「Swing」スライダ/フィールド: ビートを遅らせる度合いを定義します。 50%ならばスウィングなしということで、ポップスやロックなどの曲ならばこ の設定になります。値が大きくなるほど、スウィングが強くかかります。 274 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ • 「Accent」スライダ/フィールド: 強調する拍のレベルを上げたり下げたりし ます。リズミカルなスタイル(スウィング、レゲエなど)によく使用します。 Speech Enhancer Speech Enhancer では、コンピュータ内蔵のマイクがある場合に、そのマイクで 録音した音声の音質を改善できます。ノイズ除去、マイク周波数の補正、および マルチバンドコンプレッションなどの機能を組み合わせて使用することができま す。 • 「Denoise」スライダ/フィールド: 録音におけるノイズフロアを定義(また は予測)し、除去するノイズレベルを設定します。設定を-100dBに近付ける と、通過するノイズは多くなります。設定を0dBに近付けると、バックグラウ ンドノイズは小さくなりますが、アーチファクトが多くなります。 • 「Mic Correction」ボタン: 「On」ボタンを選択すると、内蔵マイクで行った 録音の周波数応答を改善し、高級マイクを使用したような印象になります。 • 「MicModel」ポップアップメニュー: Macintoshに内蔵されている、特定のマ イクのトーン特性を補正するマイクの機種を選択します。 メモ: Speech Enhancerエフェクトは内蔵マイク以外にも使用できますが、補正 内容はMacintosh内蔵のマイクとiSight専用に設定されています。Apple以外の マイクを使用する場合は、「Generic」に設定した方が良い結果が得られます。 • 「Voice Enhance」ボタンおよび「Enhance Mode」ポップアップメニュー: この ボタンを選択すると、Speech Enhancer のマルチバンド圧縮回路が有効になり ます。いったん選択すると、4 つの設定から、音声を大きく聞き取りやすいよ うに設定できます。録音状況に応じて最適な結果が得られる設定を選択してく ださい。 • 「Female Solo」/「Male Solo」: 録音信号がボーカルのみの場合に使いま す。 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ 275 • 「Female Voice Over」/「Male Voice Over」: ボーカルの歌声と、音楽または 音響による土台の部分の両方が録音信号に含まれている場合に使います。 SubBass SubBass プラグインでは、オリジナル信号よりも低い周波数成分を人工的に作っ て重ね合わせます。 最も単純な使いかたは、エレクトリックベースギターのオクターバーペダルのよ うに、オクターブ下の低音を重ねるというものです。ただし、ピッチが整ったモ ノフォニックな信号入力しか処理できないオクターバーペダルとは異なり、 SubBass は複雑に重ねられた信号も操作できます。SubBass を使うを参照してく ださい。 SubBass では、入力信号を 2 つに分け、それぞれから低音信号を生成します。こ れらは「High」および「Low」パラメータで定義します。SubBass のパラメータ を参照してください。 警告: SubBass は非常に大きな出力信号を生成する場合があります。再生音量 は中程度にし、低音域に対応していないスピーカーでは再生しないようにする ことが重要です。イコライザを使って、この周波数帯を無理にスピーカーに出 力するようなことは避けてください。 276 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ SubBass のパラメータ SubBass には以下のパラメータがあります。 • 「High」の「Ratio」ノブ/フィールド: 「High」側の周波数帯の元の信号と 生成信号との比率を調整します。 • 「High」の「Center」ノブ/フィールド: 「High」側の周波数帯の中心周波数 を設定します。 • 「High」の「Bandwidth」ノブ/フィールド: 「High」側の周波数帯の幅を設 定します。 • グラフィックディスプレイ: 選択した「High」側と「Low」側の周波数帯を表 示します。 • 「Freq.Mix」スライダ/フィールド: 「High」側と「Low」側の周波数帯をミッ クスする比率を調整します。 • 「Low」の「Ratio」ノブ/フィールド: 「Low」側の周波数帯の元の信号と生 成信号との比率を調整します。 • 「Low」の「Center」ノブ/フィールド: 「Low」側の周波数帯の中心周波数 を設定します。 • 「Low」の「Bandwidth」ノブ/フィールド: 「Low」側の周波数帯の幅を設定 します。 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ 277 • 「Dry」スライダ/フィールド: ドライ(エフェクトがかかっていない、元 の)信号の量を設定します。 • 「Wet」スライダ/フィールド: ウェット(エフェクトあり)信号の量を設定 します。 SubBass を使う Pitch Shifter とは違い、SubBass が生成する信号の波形は入力信号の波形に基づい ておらず、正弦曲線になっています(正弦波を使用)。通常、純粋な正弦波のま までは複雑なアレンジになじまないため、生成信号と元の信号の量(および割 合)は「Wet」と「Dry」スライダで調整できるようになっています。 「High」/「Low」の各パラメータで、2つの周波数帯域(SubBassがトーンを生 成するのに使用)を定義します。「High」/「Low」の「Center」では各帯域の 中心周波数を定義し、「High」/「Low」の「Bandwidth」では周波数帯の幅を設 定します。 「High」/「Low」の「Ratio」ノブでは、各帯域で生成信号がトランスポーズさ れる量を定義します。これは元の信号の比率で表示されます。たとえば、「Ratio = 2」の場合、信号は 1 オクターブ下にトランスポーズされます。 重要: 各周波数帯域内では、フィルタをかけた信号にある程度の安定したピッ チを持たせないと、正確に分析できません。 実際に、帯域幅が狭いと不要な混変調が発生しないため、よい結果が得られま す。「High」の「Center」設定を「Low」の「Center」より 5 度高く、つまり 1.5 倍の中心周波数にしてください。信号に含まれるベース成分から合成するサブ ベースを引き出し、両帯域で1オクターブ下(Ratio=2)にトランスポーズしま す。この処理を過度に行うと、歪みが生じてしまいがちです。周波数帯による音 の不均衡が感じられたら、「Center」周波数ノブの 1 つまたは両方を動かすか、 「Bandwidth」(両周波数帯域幅の 1 つまたは両方)を少し広げてみるとよいで しょう。 ヒント: SubBass の使用にあたってはその効果をよく考え、極低音部分の響きを ほかのいろいろな曲とも比較してください。行き過ぎは避けるべきでしょう。 278 第 13 章 スペシャルエフェクト/ユーティリティ ユーティリティに分類されるツールを使うと、制作現場での以下のようなルーチ ン的な作業や状況を処理することができます:Gainプラグインで、入力信号のレ ベルまたは位相を調整する。I/O ユーティリティで、外部のオーディオエフェク トをホストアプリケーションのミキサーに統合する。TestOscillatorで、静的な周 波数またはサインスイープを生成する。 この章では以下の内容について説明します: • Down Mixer (ページ 279) • Gain プラグイン (ページ 280) • I/O ユーティリティ (ページ 281) • Multichannel Gain (ページ 283) • Test Oscillator (ページ 283) Down Mixer Down Mixer を使用すると、サラウンド・マスター・チャンネルストリップの入 力形式を変更できます。これにより、たとえばサラウンドミックスをステレオで チェックするといったことが簡単にできるようになります。 279 ユーティリティとツール 14 重要: プラグインを挿入したときに、「Insert」メニューから目的のサラウンド フォーマットを選択します。「To Stereo」、「To Quad」、「To LCRS」のいずれ かを選択できます。 チャンネルのマッピング、パン、ダウンミキシングは自動的に行われます。ミキ シングに関しては、パラメータで調整することもできます。「Level」スライダ で個々のチャンネルのレベルを調整します。スライダの数(と名前)は選択した プラグインの形式によって異なります。 Gain プラグイン Gainは特定のデシベル値で信号を増幅(または減衰)させます。これは、ポスト プロセスで自動化されたトラックに対してすばやくレベルを調整したい場合に大 変便利です。たとえば、専用のゲインコントロールがないエフェクトを挿入した 場合や、リミックスバージョンでトラックのレベルを変更したい場合などが相当 します。 • 「Gain」スライダ/フィールド: ゲインの値を設定します。 • 「Phase Invert」の「Left」/「Right」ボタン: 左右のチャンネルの位相をそれ ぞれ反転させます。 • 「Balance」ノブ/フィールド: 左右のチャンネル間の入力信号のバランスを 調整します。 • 「SwapL/R」(Left/Right)ボタン: 左右の出力チャンネルが入れ替わります。 入れ替わりは信号パスの「Balance」パラメータの後に行われます。 • 「Mono」ボタン: 左右のチャンネルの合計のモノラル信号が出力されます。 メモ: Gain プラグインは、モノラル、モノラル->ステレオ、およびステレオイン スタンスで使用できます。モノラルおよびモノラル->ステレオモードでは、1 つ の「PhaseInvert」ボタンのみを使用できます。モノバージョンでは、「Balance」、 「Swap L/R」、および「Mono」パラメータは使用できません。 280 第 14 章 ユーティリティとツール 位相反転機能を使う 位相を反転すると、時間配列の問題、特に複数のマイクで同時に録音する際に 生じる問題に対処することができます。分離した信号の位相を反転させると、 オリジナルとまったく同様に聞こえます。ほかの信号と結合した信号では、位 相を反転させるとエフェクトがかかって聞こえる場合があります。たとえば、 スネアドラムの上下にマイクを配置した場合、どちらかのマイクの位相を反転 させるとサウンドが向上(または低下)することが分かります。いつものよう に、自分の耳を信じましょう。 I/O ユーティリティ I/Oユーティリティでは、「LogicPro」の内蔵エフェクトを使うのと同じ方法で、 外部のオーディオ・エフェクト・ユニットを使うことができます。 メモ: 実際にこのことが役立つのは、個別の入力と出力(アナログまたはデジタ ル)を提供するオーディオインターフェイスを使用する際に、外部のオーディ オ・エフェクト・ユニットとの間で信号のやりとりをする場合のみです。 • 「Output Volume」フィールド/スライダ: 出力信号のレベルを調整します。 • 「Output」ポップアップメニュー: お使いのオーディオハードウェアの個々の 出力(または出力ペア)を割り当てます。 • 「Input」ポップアップメニュー: お使いのオーディオハードウェアの個々の 入力(または入力ペア)を割り当てます。 メモ: 「Input」ポップアップメニューは、複数の入力があるオーディオイン ターフェイスが有効な場合にのみ表示されます。 • 「Input Volume」フィールド/スライダ: 入力信号のレベルを調整します。 第 14 章 ユーティリティとツール 281 • レイテンシ検出(Ping)ボタン: 選択した出力と入力の間にディレイがあるか どうかを確認し、検出された場合は補正します。 メモ: トラック上のレイテンシを伴うプラグインをバイパスすると、読み取り 精度が増します。 • 「LatencyOffset」フィールド/スライダ: 選択した出力と入力の間に検出され たレイテンシの値が表示されます。レイテンシを手動でオフセットすることも できます。 I/O ユーティリティで外部のエフェクトユニットを統合して使用するには 1 オーディオインターフェイスの出力(または出力ペア)をエフェクトユニットの 入力(ペア)に接続します。エフェクトユニットの出力(または出力ペア)を オーディオインターフェイスの入力(ペア)に接続します。 メモ: これらの接続は、オーディオインターフェイスやエフェクトユニットに合 わせて、アナログ接続とデジタル接続のどちらでもかまいません。 2 Auxチャンネルストリップのインサートスロット(バスセンド/リターンとして 使用)をクリックして、「Utility」>「I/O」と選択します。 3 I/O ウインドウで、(エフェクトユニットを接続する)オーディオハードウェア の出力と入力の両方を選択します。 4 処理するチャンネルストリップの信号を手順 3 で選択したバス(Aux チャンネル ストリップ)に送り、適切なセンドレベルを設定します。 5 I/O ウインドウで、必要に応じて入力や出力の音量を調整します。 6 選択した出力と入力の間にディレイがあるかどうかを確認し、検出された場合は 補正したいときは、レイテンシ検出(Ping)ボタンをクリックします。 再生を始めると、Aux チャンネル(手順 3 で選択)に送ったチャンネルストリッ プの信号が、外部エフェクトユニットによって処理されます。 282 第 14 章 ユーティリティとツール Multichannel Gain Multichannel Gain では、サラウンドミックスの各チャンネルのゲイン(および位 相)を個別に制御することができます。 • 「Master」スライダ/フィールド: チャンネル出力を組み合わせるためにマス ターゲインを設定します。 • チャンネルのゲインスライダ/フィールド: 対応するチャンネルのゲインの 量を設定します。 • 「Phase Invert」ボタン: 選択したチャンネルの位相を反転させます。 • 「Mute」ボタン: 選択したチャンネルをミュートします。 Test Oscillator TestOscillatorは、スタジオの機材や楽器のチューニングに便利です。音源プラグ インとしてもエフェクトプラグインとしても挿入できます。2つのモードで操作 でき、静的な周波数またはサインスイープを生成します。 第 14 章 ユーティリティとツール 283 1つ目のモード(デフォルトのモード)では、挿入するとすぐにテスト信号の生 成を開始します。切り替えはバイパスすることで行うことができます。2つ目の モード(「Sine Sweep」ボタンをクリックすると有効になります)では、 「Trigger」ボタンでトリガすると、ユーザが定義した周波数スペクトラム・トー ン・スイープが生成されます。 • 「Waveform」ボタン: テスト・トーンの生成に使用する波形の種類を選択し ます。 • 「Square Wave」および「Needle Pulse」の波形は、エイリアシングまたはア ンチエイリアシングのいずれかの処理をしたものを使うことができます。ア ンチエイリアシングでは「Anti Aliased」ボタンも併用します。 • 「Needle Pulse」はシングル・ニードル・インパルスの波形です。 • 「Sine Sweep」ボタンが押されている場合、「Waveform」セクションにおけ る固定されたオシレータ設定は解除されます。 • 「Frequency」ノブ/フィールド: オシレータの周波数を定義します(デフォ ルトは 1 kHz)。 • 「Sine Sweep」ボタン: サインスイープ(周波数スペクトラムは「Start Freq」 および「End Freq」フィールドで設定)が生成されます。 • 「Time」フィールド: サインスイープの長さを指定します。 • 「Start Freq」/「End Freq」フィールド: 上下にドラッグして、サインスイー プの最初と最後におけるオシレータの周波数を定義します。 • 「SweepMode」ポップアップメニュー(拡張パラメータ領域): スイープカー ブとして「Linear」または「Logarithmic」のいずれかを選択します。 • 「Trigger」ボタン/ポップアップメニュー: 「Trigger」ボタンをクリックする と、サインスイープがトリガされます。ポップアップメニューで「Trigger」ボ タンの動作を選択します: • Single: スイープを 1 回トリガします。 284 第 14 章 ユーティリティとツール • Continuous: スイープを無限にトリガします。 • 「Level」スライダ/フィールド: Test Oscillator の全体の出力レベルを定義し ます。 第 14 章 ユーティリティとツール 285